2024年10月09日

◆ 被災地を復興するな .4

 ( 前項 の続き )
 山形の水害について。(つづき)

 ──

 山形の水害……各地


 山形の三つの地域(水害被災地)について、個別に論じよう。


 (1) 戸沢村

 一つ目は、戸沢村だ。ここでは、最上川の氾濫で大きな被害が出たようだ。(前項記事)
  → 山形 記録的な大雨で被害深刻な戸沢村 川沿いで5.7m浸水か | NHK | 気象

 特に、戸沢村役場のあるあたりは、人口密集地で、被害が大きかったようだ。





 戸沢村役場のあるあたりは、最上川のすぐそばだ。川沿いにあり、しかも、谷間にある。典型的な危険地域であると言える。集団移転するべきだろう。
 移転先は? 次の二箇所が候補だ。
  ・ 現在地の南西にある田畑。(場所は近い)
  ・ 現在地の北東にある、広大な平地部。(3キロメートルほど先)

 前者は、すぐそばだが、ここも低地なので、安全だとは言えない。
 後者は、戸沢村生涯学習センターのあたりだ。このへんならば、川から遠く離れているので、水害の恐れはない。周囲に広い田畑があるので、土地はありあまっている。また、もともと 50軒ぐらいの住居があって、村ができているので、文化的にも住みやすい場所だと言える。そばにはスーパーもコンビニもある。
 ともあれ、集団移転というのが、最善の策だ。

 上記の場所(役場のそば)とは別に、蔵岡地区というのがある。この地区の住民は、そろって集団移転をする方針だという。
  → 大雨被害を受けた戸沢村蔵岡地区の集団移転に9割以上の住民が賛同 県や国とともに事業を進めていく方針(山形) | TBS





 こういうふうに集団移転するのが好ましいと言えるだろう。(谷間の川沿いは危険だから離れよ、という方針の通り。)


 (2) 新庄市

 二つ目は、新庄市だ。
 新庄市の地図を見ると、市の中心部に市街地があり、人家が密集している。ここで水害があったら大変だが、今回の水害は、そこではなかった。市のはずれを流れる最上川のそばが冠水しただけだ。その大部分は田畑だから、人家は関係ない。
 ただし一部は、戸沢村と同様に、川沿いの人口密集地がある。ここは危険地域だ。そこに少数ながらも、住居があるわけだ。
 これもまた、集団移転が妥当だ。川沿いの危険地域に住むべきではないのだ。戸沢村と同様の措置を取ればいい。ただし、対象住居は、少ない。
 ※ 新庄市の大部分は、水害とは関係ない。
  

 (3) 遊佐町

 三つ目は、遊佐町(ゆざまち)だ。
 ここは、平地だ。谷間ではないし、そばに大きな川もない。「谷間の川のそば」という危険地域の条件を満たしていない。ではなぜ、ここで洪水が起こったのか? 不思議に思って、調べてみた。
 Perplexity などのAIを駆使して調べたが、どれもまともな答えがない。「降水量が多かったから」というような理屈だけだ。それでは答えになっていないのだが。
 そこで私が頭をひねって考えた結論は、こうだ。
 「この地域では水害が多かった理由は、地形である」
 地形とは何か? この地域の東側に鳥海山という山があるからだ。これは「出羽富士」とも呼ばれる、富士山タイプの山(独峰)だ。


tyokaisan.jpg


 このような巨大な山があると、近くの平地部には水害が起こりやすい。理由は二つ。
 第1に、南風が山にぶつかると、そこで積乱雲が発生して、手前のふもとに大量の降水量をもたらす。(関東平野を走る南風が、北部の群馬県あたりで積乱雲を生んで降水量をもたらすのと同様だ。)
 第2に、鳥海山の頂上から裾野にかけて、広大な斜面がある。そこに降った雨水は、裾野に向けて流れ落ちる。その水の集まりやすい場所は、月光川だ。月光川のあたりは、地形的にはことさらはっきりとした谷間というわけではないのだが、大量の降水量があった場合には、ここに水が集まるので、谷間と同様の役割を果たす。そして、その月光川の流れの先に、遊佐町がある。そこに、月光川を下った大量の水が押し寄せる。


tyokaisan2.png
遊佐町に至る川の流れがある(月光川)



 以上のように、地形が理由となって、この地域には大量の降水量がある。
 となると、その対策は難しい。なぜなら、「特定の一地域(川沿いの地域)だけが危険だ」というわけではなく、広範な地域が対象となるからだ。
 前項の Perplexity の回答によると、遊佐町の被害件数は 350軒とある。具体的な記事は下記。
  → 遊佐町の住宅浸水被害 およそ350棟に|NHK 山形県のニュース
 これほどにも数が多いと、集団移転もしにくい。では、この問題をどうやって解決するべきか? 

 私のお薦めは、遊水地だ。山の水が遊佐町の市街地に届くまでの間には、周辺に広大な田畑があるので、これらの田畑を遊水地として利用すればいい。普段は田畑として利用し、いざというときには水没させればいい。そのためには、田畑の主編部に土堤を作るだけでいい。(高さ2メートルぐらいの土堤。)……そのための工事費は、あまり多くはならないだろう。(コンクリ護岸にすると大金がかかるが、ただの土堤ならば、工費は少なめで済む。)
 ※ なお、都会の建設の残余土砂を受け入れると、余剰物の受け入れということで、お金をもらえるそうだ。Perplexity に質問したら、1立方メートルあたり 1,892円 をもらえる、という回答を得た。

 ただし、遊水池を作るにしても、作るにはかなりの費用がかかる。それを得る受益者の数は、あまり多くはない。仮に受益者負担にするとしたら、1軒あたり 100〜300万円ぐらいになるかもしれない。いや、もっとずっと多額になりそうだ。
( ※ ここに寄せる水量はあまりにも多大で、巨大な遊水地が必要となる。)
 結局、遊水地という案は、あるにはあるが、強くお薦めできる案ではない。

 別の案もある。遊佐町の人口密集地は、やはり月光川の川沿いにある。だから、この川沿いの人家を、よそに集団移転させる。
 とはいえ、これは容易ではない。
  ・ もともと被害が床上浸水ぐらいで、たいしたことはない。
  ・ 家を集団移転させると、費用がかかりすぎる。

 この二点ゆえに、集団移転は「長期的な勧奨」とするだけでよさそうだ。それまでは、各人の自主判断となる。
  ・ 危険を覚悟して、現地に留まる。予防費用はゼロで、被害額は最大。
  ・ 危険を避けて、よそに移転する。予防費用は最大で、被害額はゼロ。

 どっちにするかは、各人の選択となる。
 後者の場合、費用は最大化するが、新たな住居を得るので、損をするわけではない。払った金の分だけの価値は得られる。(たとえば、3000万円を払って、3000万円分の価値を得る。)
 一方、遊水池を作って、金を自己負担すると、金は丸損となる。(たとえば、200万円を払うが、新たな価値は何も得られない。価値としては丸損だ。得られるのは、価値ではなく、安全性だけだ。)
  ※ 価値というのは、利便性と言い換えてもいい。商品価値と言い換えてもいい。

 ──

 なお、このあたりは米どころである。どこもかも一面の水田だ。とはいえ、規模は大きくない。日本の米作農家の平均耕地面積は、1戸あたり1ヘクタールだ。100メートル四方だ。あまりにも狭すぎる。大規模農法とは程遠い。
 となると、将来的には、50戸分の農地を1戸に任せるような集約化が必要だろう。集約化にともなって、戸数は激減する。遊佐町のような町は消滅する。残った農家は、ずっと離れた酒田市のあたりの市街地に住居を置いて、その住居から自動車に乗って、農地に通うことになる。
 そういう将来を描くべきだ。かくて、結果的には、「遊佐町(人口密集地)は消滅するのが正しい」と言えそうだ。

 ※ 危険な土地を復興するのではなく、危険な土地を消滅させて、新たな土地を新興するのが正しい。「被災地を復興するな」という基本方針の通り。

 ※ 該当地域は下記。





 これをつぶして、別のところに「新遊佐町」または「シン遊佐町」を作ればいいわけだ。




 【 追記 】
 山形の線状降水帯の発生について、気象庁の分析はこうだ。
 日本の南に張り出した太平洋高気圧の西側から暖湿気が九州を縦断しながら北上、海面水温が平年を上回る日本海で水蒸気を吸収し、東北にかかる梅雨前線にぶつかって山形を中心とした日本海沿岸に局所的な豪雨を降らせたと分析。
( → 東北日本海側で大雨 河川氾濫、田畑に濁流 線状降水帯予測できず / 日本農業新聞

 南西の風が山形に吹いたことになる。そこで鳥海山にぶつかると、鳥海山の南西にある遊佐町の上空で積乱雲が発生する。……こう考えれば、本項の話と整合的だ。
 上の記事は、本項の話をいっそう補強すると言えるだろう。

 なお、次の推定もできる。
 「大量の降雨があったのは、遊佐町の平地部ではなく、鳥海山の斜面(南西部)である。その上空に積乱雲が発生して、鳥海山の斜面に大量の降雨をもたらした。その水が斜面を流れて、月光川に集まってから、ものすごい水量が遊佐町の市街地を襲った」
 遊佐町の広い平地のすべてに大量の降雨があったのではない。大量の降雨があったのは、鳥海山の斜面だ。その水が遊佐町の市街地という一部地域に襲いかかったのだ。(上記地図の場所。)
 だからこそ、この危険な土地を離れるべきなのだ。




 ※ 次項に続きます。

posted by 管理人 at 23:32 | Comment(3) |  地震・自然災害 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2024年10月10日 11:29
ご提案内容はまったく正しいと思うのですが、「被災地を復興するな」というタイトルですと、例によって「タイトルしか読まないで、誤読して、反発する」人たちが、「被災地は見捨てろということか!」と言い出すでしょう。
ですので、実際に本案を推進する際には、「被災地は移転せよ」といったようなタイトルにする必要があるかと思います。
Posted by ジョー at 2024年10月10日 18:54
「復興するな」、良いと思います。東北沿岸の「これより下に家を建てるな」と一緒で、必ず災害が起こる場所で「復興」するのは、被害をわざわざ受けようとする行為に他なりません。
各地で(記事で取り上げられた自治体でも)、洪水、津波、土砂災害、噴火などのハザードマップを作っているので、危険度の高い地域はわかっています。住居を借りる際には、不動産屋さんから説明を受けます。
現状では「気をつけてね」「いざという時には避難してね」で済ませられていますが、居住禁止くらいの措置をとってもかまわないのではないでしょうか。移転費用をある程度補助してもよい。後々の災害対策に比べたら微々たるものです。

大津波に見舞われた地区では、建物の新築増築が禁止されているところもあります。
https://www.city.sendai.jp/kenchikushido-kanri/jigyosha/taisaku/kenchiku/gyose/oshirase/naiyo.html
先祖代々の土地だろうが長期ローンを組んだ物件だろうが、人口減少・気候変動の時代には仕方のないことという共通認識を醸成する。防災庁の仕事の一領域になることでしょう。
Posted by けろ at 2024年10月10日 22:36
コメントを書く
お名前: [必須入力]

メールアドレス:

ホームページアドレス:

コメント: [必須入力]

  ※ コメントが掲載されるまで、時間がかかることがあります。

過去ログ