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フランスの暴動が激しさを増している。
フランスで警官による少年の射殺事件をめぐる暴動が始まってから、4日で1週間を迎えた。亡くなった少年は北アフリカ系移民の出身で、移民や低所得者層が多いパリ郊外に住んでいた。事件をきっかけに「人権の国」を標榜(ひょうぼう)するフランスで、人種差別や不平等の議論が再燃している。
仏政府筋によると、抗議行動が始まった6月27日からの逮捕者数は合計で3400人を超えた。負傷した警察官や消防隊員は684人に上る。抗議行動の規模は縮小傾向にあるが、仏内務省は4日未明にも全土で4万5千人の警官隊を配置。政府高官は3日、「危機を脱したとはまだ言えない」と述べ、警官隊の大規模な配置を続ける考えを示した。
抗議が始まったきっかけは、6月27日朝、乗用車を運転していた北アフリカ系の少年(17)がパリ郊外のナンテールで警察官の交通検問を拒否した際に射殺された事件だった。警察は当初、発砲が正当だったと主張したが、事件当時の動画がSNSで拡散。車が立ち去ろうとした瞬間に警官が銃を撃つのが映っていた。
( → フランスの暴動の背景に何が?「人権の国」が抱えるタブーと深い分断:朝日新聞 )
米国の人種差別問題のときにも暴動が起こったが、それよりも大規模になっている。「全土で4万5千人の警官隊を配置」というのは、容易ならざる事態だ。
さて。こういう問題が起こると、「人種差別問題が起こるのは、移民を大量に導入したからだ。移民をやたらと増やさなければいい」というふうに思う人も出てくるだろう。だが、話はそう単純ではない。フランスの移民というのは、ただの移民ではなくて、植民地だったアルジェリアからの移民だからだ。日本で言えば、かつて支配した朝鮮からの移民が、在日朝鮮人(在日韓国人)として暮らしているのと似ている。こういうのは、単に「移民を規制すればいい」というのとは違う。長い歴史的な背景があるからだ。(今さら移民を規制しても、過去の分は是正できない。)
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この件をどうとらえればいいのか、私としてもよくわからないままでいたのだが、朝日新聞夕刊コラム記事で、興味深い見解を見出した。記者がパリにいて、タクシーに乗ったとき、運転手(アルジェリア移民)から聞いた話。
運転手は……パリ生まれだという。
家族はアルジェリアから来た。親は教育を受けていない。植民地支配下のアルジェリアでは初等以上の教育を受けることができなかったが、フランス生まれの自分は高等教育を受けた。イギリスの学校でも学んだ。
運転手の言葉は激しくなった。テレビは本当のことを伝えていない、いまフランスで起こっていることは植民地支配によって教育を奪ってきた当然の結果だ。日本人ならそれがわかるだろう。
( → (時事小言)フランスの暴動 「もう一つの世界」の怒り 藤原帰一:朝日新聞 )
フランスはアルジェリアを植民地として支配してきた。その際、現地人を半ば奴隷のように扱い、労働力を搾取するばかりだった。一般市民としての権利である教育を与えることはなかった。そのせいでずっと貧しいままだった。
とすれば、ここでは、問題はただの移民問題ではない。貧しい途上国民が、豊かな先進国に憧れて、こっそりもぐりこんだのではない。先進国が、勝手に途上国を併合して、植民地にした。そのとき、植民地の国民は、フランスの支配下になるという形で呑み込まれた。と同時に、自治の権限を奪われ、教育を受ける権利も奪われ、奴隷のように扱われることになった。……そういう歴史があったのだ。そして、その歴史ゆえに、歪みの噴出という形で、昨今の暴動が起こるわけだ。
これは、アメリカの暴動が、アフリカや南米から招いた黒人奴隷の子孫としての黒人米国人によって起こるのと、似た点がある。(どちらも歴史的な背景がある。植民地と移入奴隷という違いはあるが。)
なお、フランスによるアルジェリア支配は、「残虐」「虐殺」「収奪」「レイプ」など、ほとんどありとあらゆる悪のやり放題だった。悪魔のごとき所業と言える。娯楽映画には、「悪の秘密結社」や「征服者」や「ロシアのスパイ」などの悪党が出てくるが、これらの方がはるかにマシだ、と思えるほどだ。現地住民をなぶり殺しにする中国政府と同じぐらい残虐だ。それがフランスのアルジェリア支配だった。
→ フランス領アルジェリア - Wikipedia
こういう歴史の結果として、フランスの暴動がある。それは今現在の出来事ではあるが、氷山の一角の下には、巨大な歴史が(見えないまま)ひそんでいるのである。そこに留意するべきだろう。見えないところに真実があるのだ。

※ 次項 に続きます。
