2023年03月11日

◆ 震災の復興は遅れているが……

 三陸の被災地で、震災の復興が遅れているそうだ。それを問題視する声もあるが、遅れていてもいいのだ。

 ──

 三陸の被災地で、震災の復興が遅れているそうだ。1年前(震災の11年後)の記事だが、紹介しよう。
 岩手県大槌町の中心市街地・町方地区は、三陸鉄道の線路を境に「別の世界」になっている。山側に住宅が集まる一方、海側には広大な空き地が広がる。
 住民は防災集団移転促進(防集)事業で山側をかさ上げした地域や高台に移った。住宅が移転したあとの「移転元地」には昨年5月、サッカー場がオープンしたが、残る8.4ヘクタールは具体的な利用計画がない。
 大槌町を含む沿岸の26市町村が、津波被害を受けた地域を災害危険区域に指定。防集事業を行って移転元地を買い取っていた。その面積は沿岸部を中心に3県で計2128ヘクタール。うち3割にあたる約638ヘクタール(宮城326ヘクタール、福島164ヘクタール、岩手の149ヘクタール)が利用されていない。東京ドーム136個分に相当し、このまま空き地として残り続けるおそれがある。
 震災では約3万7千戸の住宅が移転。国は移転先の用地取得や造成、移転元地の買い取りにかかる費用を市町村に全額補助し、完了した。
 一方、まだゴールが見えない移転元地の整備について、国は市町村の負担がほぼない復興交付金を使った津波復興拠点整備事業などで促してきたが、震災10年となった21年3月に終了した。朝日新聞の調査では、移転元地が利用できない理由として、9市町が「整備を後押しする国の補助金や制度が乏しい」ことを挙げた。

 市は19年、この土地を活用した「令和の果樹の花里づくり構想」を打ち出した。
 だが、買い取るなどして利用できるようになった土地は約35%。担当者は「構想はまだ夢の部分が多い。すべての完成には数十年かかるかもしれない」と表情を曇らせる。

 陸前高田市では、外食チェーン・ワタミの子会社が昨年4月、移転元地を中心とした23ヘクタールを5年間無償で借り、「オーガニックランド」を開いた。 だが、コロナ禍でワタミの業績が悪化。 現在利用している土地は1割にとどまる。

 復興の取材を続け、被災した沿岸を歩くと、造成されて建物が増えていく山側のまちと、草が生い茂る海側のかつての住宅地の差を、年々より強く感じる。
( → 被災地に残った大きな「虫食い」 別世界の海側、整備に「数十年…」:朝日新聞

 要するに、津波の来ない高台では復興が進んでいるが、津波の来そうな海側の移転元地は復興から取り残されている。そのことは、前項の「人の通らない橋」を見ても明らかだろう。
 では、どうすればいいのか? 

 ──

 私の見解を言おう。
 移転元地は、復興するべきではない。もともとそこは「人のいる街中」として存在していた。なのに、人々の住居は高台に移転した。とすれば、移転元地は「もぬけの殻」になったのである。そこに元のような街並みが成立するはずがない。
 何かができるとすれば、そこは「海産物の作業地」となるだけだろう。船の作業場とか、海産物の加工場とか、荷物置き場とか。……そんなものが置かれるだけだ。
 一方で、住居や店舗などの「街中」としての建物は、あるはずもない。そもそもそこは居住禁止(も同然)なのだから。
 なのに、こんな無人地帯を復興するために、政府は嵩上げなどで、莫大な工事費を投入した。一戸分あたり数千万円の巨費を投入した。(土地造成費)……あまりにも馬鹿げている。その金を被災者に渡したら、どれほど有益だったことか。結局、金は土木会社に渡っただけで、土木工事の結果はただの無人地帯ができただけだったのだ。
 そのことは、前項の動画を見ても明らかだろう。(再掲しよう)





 まったく、虚しいね。広大な無人地帯が広がるだけだ。

 ──

 海辺の復興は遅れていてもいい。というか、このまま永久に復興しないでいい。そもそもそこは「危険地帯」として放棄された場所なのだ。そこを復興するということは、そこに住むと言うことであり、それは、いつかまた、そこで多数の死者を出すということだ。そんなことは愚の骨頂である。
 危険な土地はすでに捨てた。かわりに新しい場所が高台にある。そこで新しい街並みを作ればいい。
 朝日の記事は、「海辺でも元のように復興したい」というものだが、そういうセンチメンタリズムは、莫大な死者の再現を招くだけだ。愚かなセンチメンタリズムは、懐かしい過去を再現させるが、同時に、悲しい不幸を再現させる。そのことを自覚するべきだ。



 【 追記 】
 3月12日の朝日新聞社説から。
 かさ上げした土地に広がる空き地の多さだ。岩手県陸前高田市では約300ヘクタールの造成地の6割余りに、いまだ利用計画がない。
 最大の原因は津波で破壊された市街地全体を再興する制度が土地区画整理事業しかなかったことだ。
( → (社説)大震災12年 災害法制を進化させよ:朝日新聞

 かさ上げした土地の6割が未利用地になっている。その理由を「再興する制度が土地区画整理事業しかなかったこと」だと見なしている。
 いやいや。そうではないでしょう。人はすでに高台に移っているのだ。なのに危険な低地に戻ってくるはずがない。かさ上げした取っても、5〜7メートルぐらいだろう。一方、津波は 12メートル以上になる。津波が来れば水没するとわかっているところに人が来るはずがない。すでに高台に街並みができているのに、人のいないところに街並みを作るはずがない。……そういう根源的理由があるのに、朝日新聞は理解できないようだ。
 なるほど、地域を再興することは大切だ。しかしそれは、元と同じ場所である必要はない。高台で済むのだ。そして、高台を地元の人は選択したなら、元の地域は捨てられるしかないのだ。なぜなら人の体は一つしかないからだ。海辺と高台の双方で過ごすことはできない。人々が高台を選んだ時点で、海辺は捨てられるしかない。どうしてそんな簡単なことがわからないのだろう?

 ※ 「高台と海辺の両方でやればいいだろ」と思う人もいるかもしれないが、両方でやれば、半々になるので、街が一つできるかわりに、中途半端な集落が二つできるだけで、町は一つもできなくなる。人口集中効果がなくなる。最悪だ。二兎を追うものは一兎をも得ず。



 【 関連項目 】

 土地のかさ上げという工事は、巨額の金を食うばかりで、まったくの無駄だである。そのことはこれまで何度も、口をすっぱくして指摘してきた。その過去記事は下記だ。
  → 史上最大の愚行(被災地): Open ブログ (2012年11月11日)
  → 被災の跡地をどうする?: Open ブログ (2013年09月12日)
  → 数千億円の盛り土が無駄に: Open ブログ (2019年05月14日)
  → 陸前高田の現在: Open ブログ (2020年02月18日)
 
 これらの項目で、詳しく指摘してきた。今になって「巨額の工事費が無駄になった」と騒ぐ必要はないのだ。そのことは 10年以上も前の当初から指摘されてきたのである。

posted by 管理人 at 23:09 | Comment(1) |  震災(東北・能登) | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 最後に 【 追記 】 および 【 関連項目 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2023年03月12日 20:30
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