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(1) 現状
現状はどうか? 韓国政府が、新大統領の方針で、新たな解決策を出した。韓国の民間企業による拠出金で、元徴用工と遺族に賠償金を払う、というもの。これで解決ができればいいのだが、一部の原告は合意を拒否しているので、完全解決はできそうにないらしい。
日韓の懸案となってきた徴用工の訴訟をめぐる問題で、韓国政府は6日、傘下の財団が寄付金で日本企業に命じられた賠償分を肩代わりする「解決策」を発表した。日本政府は植民地支配への「反省とおわび」を盛り込んだ歴代内閣の歴史認識の継承を表明。韓国側が求めた「誠意ある呼応」の一つで、両政府が政治的な決着をはかった。
韓国政府が発表した「解決策」では、元徴用工らを支援する「日帝強制動員被害者支援財団」が賠償に相当する額を原告らに支給する。 当面は請求権協定によって日本から支払われた経済協力金の恩恵を受けた韓国企業などからの寄付金を元手にするといい、韓国側は日本企業への自発的な寄付の呼びかけを続ける。
被告企業による直接の謝罪や賠償を求める一部の原告らは「屈辱的だ」などと「解決策」に強く反発している。今後も被告企業による賠償の履行を求めていく考えだ。6日には、ソウルなどで「解決策」を批判する集会も開かれた。
( → 徴用工、日韓「政治決着」 韓国、財団が賠償肩代わり 日本、「おわび」継承で呼応:朝日新聞 )
原告側の不満は消えそうにない。
「日本の企業が『苦労をかけた』『申し訳なかった』など何らかの意思表示をしないままでは、当事者は納得できないでしょう」
「2人が望んでいたのは企業側の誠実な対応だった。知らん顔で何もしないのは許されない」
( → 「解決しない」「前向きなアクション」 徴用工「解決策」に賛否の声 [徴用工問題]:朝日新聞 )
韓国では原告や野党から批判が相次ぎ、日本側からも韓国側の今後の対応を警戒する声が上がる。火種は残ったままだ。
日本の被告企業による賠償の責任をなぜ被害国である韓国が代わりに弁済するのか」「韓国外交の恥辱だ」などと厳しく非難した。
「判決が確定した原告のうち、日本の謝罪や資金拠出のない解決策に肯定的なのは半分以下だ」
( → 「なぜ被害を受けた韓国が代わりに」 徴用工「解決策」に残る火種 [徴用工問題]:朝日新聞 )
以上のように、韓国内で不満に思う人々は多い。今回の解決案は、解決に結びつくかもしれないが、反対者の声は残る。たとえ合意が成立したとしても、原告の全員の同意を得ることはできそうにないので、完全解決はほとんど不可能だと言える。
困った。どうする?
(2) 法律と正義
そこで、困ったときの Openブログ。何とか解決案を探ろう。そのためには、問題の本質を探ればいい。この問題の本質は、どこにあるか? 換言すれば、どうしてこのような対立が生じるのか? 対立の原因を探ろう。
日本政府の言い分は、こうだ。
「日韓請求権協定で賠償問題は法的に解決済み」
韓国人原告の言い分は、こうだ。
「被告企業の謝罪と賠償がなければ、受け入れられない」
この対立はどこから生じるのか? それは、こうだ。
・ 日本側 …… 法的正当性を訴える
・ 韓国側 …… 正義を訴える
これは、次のことを意味する。
日本側は、「法的正当性」を訴える。「日韓請求権協定で賠償問題は法的に解決済み」ということで、法的には完全に解決していると見なす。法的に正しいことを言っているのだから、譲歩の余地はない。一歩も譲歩しない。
韓国側は、「正義」を訴える。法律がどうのこうのなんかは関係ない。正義か不正義かを考える。そうすると、人生の大事な時期を奪われたのに、ろくに賠償金ももらえない。それでいて、被告企業は利益を得て、のほほんと過ごしている。そんな不正義は許されない! 悪は悪として認定する必要がある。「金をくれてやるから悪を見逃せ」というふうに、札束で頬をビンタするような真似は受け入れられない。物事には道理というものがある。金で筋を曲げるわけには行かない。こっちは金がほしいんじゃない。正義を貫きたいんだ。金をやるから正義を踏みにじろうとするような真似は、断固として認められない!
この二つの立場を比較するなら、韓国側の方に道理がある。比喩的に言えば、こうだ。
“ 日本では、自民党がとんでもない悪政をしている。経済成長率は低迷し、人口は少子化で激減し、平均賃金は先進国中の順位がどんどん低下している。なのに、首相は統一教会とべったりで、安倍首相(当時)も岸田首相も統一教会と手を切れない。五輪では電通と癒着する。滅茶苦茶な政治をしているのが自民党だ。
当然、自民党は政権から離れるべきだ。なのに、政権を握っている。なぜか? (直近の衆院戦・参院選で)得票率が 35%未満しかないのに、歪んだ選挙制度のせいで、自民党が過半数の議席を握っているからだ。ここでは、法の歪みのせいで、正義が踏みにじられている。
こういうときに、「文句を言わずに、法に従え。自民党は法的に認められたことやっているだけだ。だから、法的には正しいことをしている自民党に、国民は黙って唯々諾々と従え」と言われたら、どうする? 多くの国民は怒るだろう。35%の国民は自民党を支持しているので、「はいはい」と従うだろうが、残りの多くは不満に思うだろう。”
ここでは、多くの人々は、「悪法に従おう」と思うよりは、「正義を貫け」と思うはずだ。
とすれば、韓国人だって同様だ。「法に従え」と言われて足の裏で踏みにじられるよりは、「法に逆らって正義を貫こう」と思うのが当然だ。
(3) 犯人の誤認
ならば、日本はどうするべきか? 「法に従え」「法的に決着済みだ」というふうに、冷たく玄関払いするだけでは、解決はできないと悟るべきだ。その上で、韓国人の心情に沿って、別の解決策をとるべきだ。
別の解決策とは? 法を歪めて譲歩することか? 違う。韓国人の心情に沿って、「正義を貫くこと」だ。彼らは「正義を貫くこと」を要求しているのだから、その通りにすればいいのだ。そして、日本に正義があるのであれば、韓国人の要求に従うことは簡単だ。
では、どうやって? そのためには、真実を明かせばいい。真実を明かすこと。それが問題の解決策なのだ。なぜか? 韓国人の主張には、誤認があるからだ。その誤認とは、こうだ。
「韓国人は不正義を唱えるとき、誤認をしている。それは犯人の誤認である。犯人は日本企業だ、と彼らは信じているが、それは誤認なのだ。真犯人は別にいるのだ」
要するに、韓国人は、犯人を取り違えているのである。たしかに元徴用工には被害がある。その被害を受けたことの不正義はある。ただし、その犯人は、彼らの信じている日本企業ではない。別のところに真犯人はいるのだ。
原告側は、不正義を訴えていて、そのこと自体は正しい。ただし、不正義をなした犯人を取り違えているのだ。そのことを指摘するべきなのだ。つまり、真相を明かすべきなのだ。
(4) 真相
では、真相とは? それは、こうだ。
「日韓請求権協定のとき、日本は賠償金を払った。このとき、(被告企業だけでなく)日本人全体として賠償金も謝罪も十分になした。ところが、それは徴用工や慰安婦には届かなかった。なぜか? 韓国政府が、その金を ちょろまかしてしまったからである。つまり、日本が払った金をかすめ取ってしまったのは、韓国政府であり、韓国政府こそが真犯人なのだ」

では、韓国政府はなぜ、(個人に渡すべき)金をかすめ取ってしまったのか? それは「その方が国家の発展に寄与する」と信じたからだ。実際、その金を個人賠償に回さず、国家建設に投資したことで、韓国は大幅な経済成長をなし遂げることができた。例は浦港製鉄所(POSCO)だ。これは日本からもらった金で建設された。
韓国政府は……日韓基本条約にともなう対日請求権を流用することにし、対日請求権5億ドル(無償3億ドル、有償2億ドル)のうち約7723万ドル、さらに日本輸出入銀行から商業借款5450万ドルを受けた。これにより慶尚北道浦項市に国営の浦項総合製鉄所第一期設備が1970年から建造され1973年 に竣工した。
( → ポスコ - Wikipedia )
日本は金を払ったのだ。ただしその金を、韓国政府は被害者に渡さず、国家的な投資に流用した。一種の泥棒または猫ババみたいなものである。
この意味で、真犯人は韓国政府なのだ。被害者は「日本が金を払わなかったから、日本が悪だ」と信じているが、真相はそうではない。日本は金を払ったのに、その金を ちょろまかしたのが韓国政府だったのだ。
不正義は確かにあったのである。しかしその不正義の犯人は、日本ではなく、韓国政府だったのだ。その真相を明かすべきだ。
(5) 韓国政府による謝罪と賠償
上のことから、なすべきこともわかる。それは、韓国政府による謝罪と賠償だ。
実を言うと、韓国政府が金を経済的な投資のために流用したということは、それ自体は間違いではない。「国家の成長のために金を投資する」というのは、正しい方針だ。実際、そのおかげで、韓国は今日のような繁栄をなし遂げたからだ。他のインドネシアやフィリピンやカンボジアなどが貧しいままなのに、韓国だけは大幅な成長をなし遂げた。
ポスコ(POSCO)は……日韓基本条約に伴う対日請求権資金などによる資本をもとに、朴正煕大統領の肝いりで1968年に設立、1973年に浦項市にて操業開始。八幡製鐵と富士製鐵、日本鋼管の技術供与で急速に発展して、設立当時1人あたりの国民所得が200ドル程度だった韓国の経済発展に大きく貢献した。
( → ポスコ - Wikipedia )
だから、韓国政府の方針は(歴史的に)十分に正しかったのだ。
ただし、である。それは「猫ババをしたのが正しい」という意味ではない。その金は本来は被害者のものである。だから、その金は「被害者から借りただけ」とも言える。とすれば、借りた金は返すべきなのだ。
つまり、韓国政府は「これまで日本政府の払った金を流用していました。ごめんなさい」と謝罪して、「借りていた金を返します」と表明すればいいのだ。
そして、そのためには、単に現金を払うのは不適切だ。POSCO の株券で払うのが妥当だ。
浦港製鉄所の投資額は、もともとは 1億ドル弱。(当時のレートは1ドル = 360円)。それが、今では POSCO の時価総額が 29兆円なので、100倍程度になっている計算だ。さらにその間の配当金の利回りの分の金もある。被害者の金は、 POSCO への投資の形で運用されていたと見なせるので、おおざっぱに言って、5000万円分ぐらいにまで株価が上昇しているだろう。とすれば、被害者への補償は、POSCO 株で 5000万円分を給付すればいい。そうすれば、「被害者の金を政府が運用していました」ということになるので、道理が通る。「金ではなく株券で給付する」ということで、物の道理がいっそう良く通る。
- ※ 本来の賠償金が 1000万円なら、POSCO に流用した分の運用益を別途、支払うべきだろう。その運用益の分も加えれば、最低でも 2000万円にはなるはずだ。ま、5000万円でなく 3000万円でもいいが。
※ 原告側が「どうしても現金で」と訴えた場合には、運用益は得られないので、現金 1000万円を渡せばいい。現金で 1000万円か、株券で 5000万円分か、どちらでも好きな方を選択させればいい。
(6) 法的制約
なお、上の方針を取ろうとしても、法的な問題点もある。というのは、韓国政府はかつて被害者に 200万円を払ったことがあるからだ。このときたぶん、「韓国政府に対する請求権はこれで終了。これ以上の請求権はなし」という文書に調印させているはずだ。
そうなると、被害者としては、はした金みたいな 200万円で我慢するしかなくなる。そうなると、不満だ。そこで、韓国政府との合意文書に縛られないように、その枠外で、日本企業から金をせしめようとしたのだろう。一種の裏道である。
こういう事情が、対立の真相であるようだ。原告は自分の失敗を隠すために、日本企業のせいにしているわけだ。
だが、そういう気持ちも、わからなくはない。当時は背に腹は代えられない思いで、安い金で請求権を手放してしまったのだろう。
そしてまた、こういう事情(調印済み)があるがゆえに、韓国政府としては、さらに金を払うわけには行かないのだろう。
結局、被害者が韓国政府から金をもらうことには、法的な面から制約があるわけだ。(過去の契約のせいで。)
(7) 立法化の困難
また、仮に韓国政府が金を払うつもりがあるとしても、現実にはそれは困難だ。なぜなら、そのような法律を立法化しようとしても、韓国の立法府は野党が多数派なので、立法化が困難だからだ。いくら大統領が頑張っても、野党が法案をつぶしてしまう。
ゆえに、現実的には、韓国政府が金を払うということは困難だ。つまり、本項で述べた方法(韓国政府による賠償金の支払い)は、現実的には困難だ。
(8) 現実策
では、どうすればいい? 現実的には、金は政府から出せないので、韓国の民間企業に払ってもらうのが妥当だろう。特に、POSCO に払ってもらえばいい。
実は、徴用工の人数はごく限られているので、支払う金額は POSCO にとっては微々たる額である。痛くも痒くもない。だから、POSCO が払えばそれで済む。
ただし、そのためには、あらかじめ「真相」を明かす必要がある。「金を猫ババしたのは過去の韓国政府である」と。
そして、そのことを明かさない限り、原告は「日本の不正義を許さん」というふうに、勘違いをしたまま怒り続けるだろう。
だから、真の解決をもたらすには、「真犯人は過去の韓国政府だ」という真実を明かすしかないのである。そして、これと合わせて、次の二点を実施するべきだ。
・ 韓国政府から被害者への真摯なお詫び。(猫ババの謝罪)
・ 被害者には 5000万円分、ポスコ株の給付。
こうすれば、被害者としても十分に満足できるだろう。
ついでだが、次のこともあるといい。
「過去の韓国政府が、日本に責任転嫁したことへの、日本に対するお詫び」
特に、前政権が不合理であったことを批判して、日本にお詫びするといい。「猫ババの正当化をした前政権がみんな悪いんだ」というふうに責任を押しつければ、日本人も韓国人も満足できそうだ。
[ 付記1 ]
POSCO は日本の国鉄のように民営化されて、株式は今では民間に売却されたから、今では政府保有会社ではない。しかしそのことは、議論には影響しない。
[ 付記2 ]
最近では、韓国民の対日感情が好転しているそうだ。若い人は反日でない。政府が反日でなくなったことに対応しているようだ。韓国人が日本に旅行する数も大幅に増えている。
[ 付記3 ]
「被害者の金を ちょろまかすなんて、韓国政府はひどいな。だったら、日本政府はそのことを指摘するべきだ」
と思う人もいるだろう。だが、それはできない。なぜなら、日本政府もまた同罪だからだ。そのことは、原爆被災者(という被害者)への補償金に当てはまる。彼らに渡すべき賠償金を払わないで、国家建設のために金を流用した。その点では、韓国政府と同罪である。
日本政府は、原爆被害者にはろくに金を払わなかった。その理屈は、韓国人に賠償金を払わなかったのと同じ理屈だ。(個人賠償金を払わない、ということ。) この件は、前に述べたとおり。
→ 韓国の徴用工の問題 3: Open ブログ
※ 戦争をした軍人には莫大な恩給を払ってきたんだけどね。
こういう真相を指摘されるとまずい。「オマエモナー」と言い換えされると、ヤブヘビだ。過去の歴史的巨悪は隠蔽しておきたい。それが日本政府の体質だ。だから、都合の悪いことには知らんぷりをするのである。ブーメランを避けるために。
※ しかし本サイトが、全部 暴露しちゃうけどね。
【 関連項目 】
本サイト内で、過去記事もある。本項で述べたことの前段となるような話もある。
→ 韓国の徴用工の問題 1: Open ブログ
→ 韓国の徴用工の問題 2: Open ブログ
→ 韓国の徴用工の問題 4: Open ブログ
【 関連動画 】

原爆の被災者と焼夷弾の被災者を区別する法的な根拠も無いかと。
私の父も被爆者ですが、戦争したんだから仕方ないと言ってました。
だから、日本人の個人は米国に請求する権利がある。しかしその権利を日本政府によって放棄させられたので、日本政府が肩代わりする義務がある。……という話は、リンク先で説明済み。ちゃんと読んでください。
焼夷弾も同様。戦争犯罪なので、個人賠償の権利があるはず。「ともにもらえない」ではなく、「ともにもらえる」はず。だが、焼夷弾の規模は、全国民がほぼ同等なので、結果的には意味がない。残酷に命を削られるほどの損害を負ったのは、原爆被爆者だけだ。
死者には請求権がないとして、手足を切断した戦傷者には多額の恩給が出たように、被爆者にもそうするべきだったが、現実には違う。
> 被爆者ですが、戦争したんだから仕方ない
被爆は仕方ないが、補償がろくにないのは「仕方ない」では済まされない。実際、野党は「被爆者に補償しろ」と言い続けたのに、自民党政権が頑なに拒否してきた。
それは自民党が核の傘を正当視するという、政治的な理由のため。政治的な自己都合。被爆者はその犠牲にされた。