2021年12月11日

◆ 航空燃料の脱炭素化

 航空燃料の脱炭素化という方針を政府が打ち出した。だが、コスト高という問題がある。

 ――

 朝日の記事を紹介しよう。
 国土交通省は10日、2050年に向け、航空機の脱炭素化を進めるための工程表をまとめた。30年までに国内航空会社が使う航空燃料の10%を、環境に優しいとされるSAF(持続可能な航空燃料)にすることなどが柱。
 SAFはゴミや廃食油などが原料で二酸化炭素(CO2)の削減につながるが、通常の燃料より費用が数倍かかる。
 工程表によると、……25年をめどに、廃食油が原料のSAFの一部商用生産を目指す。
( → 航空エコ燃料、30年に10%へ 国交省が工程表:朝日新聞

 これを読んで思ったのは、「ユーグレナのバイオ燃料のことかな?」ということだった。実際、すでに部分的に実証実験が済んでいる。
  → 航空業界、脱炭素へ本腰 植物由来の代替燃料活用:時事
  → ホンダジェットでバイオジェット燃料『サステオ』を初使用! | ユーグレナ

 だが、ユーグレナのバイオ燃料は、品質の点では問題ないとしても、コストが化石燃料の100倍もかかる。とても数倍では収まらない。では、どういうつもりなのか? 

 とりあえず思い浮かんだのは、「太陽光発電に由来する電力を、液体燃料に変換することかな」ということだった。
   太陽光発電 → 水素 → 液体燃料

 というふうにして、太陽光発電のエネルギーを、液体燃料に変換することだ。業界用語では「合成燃料」という。具体的な例は下記。
  → エンジン車でも脱炭素?グリーンな液体燃料「合成燃料」とは|資源エネルギー庁
 ここに、次の図がある。


gosei-fuel.png


gosei-fuel2.png


 価格は安くとも 300円/L であり、将来水素価格が激安になったという条件ですら 200円/L にしかならない。化石燃料の3〜4倍の価格であり、およそ競争力をもたない。要するに、この方法では根源的な無駄が発生している。その無駄を解消しない限り、実用化は困難だ。

 では、どうしてこういう無駄が発生するのか? 
 それは、「化学的な合成」というのが、根本的にコストだからだ。上記の図では、水素と炭酸ガスから(低分子ではない)液体燃料を作るが、これはいわば、人工光合成である。そして、人工光合成というのは、植物に比べると効率が悪いというのは、どうしようもないことなのだ。
 人類が工業的に低コストで生産できるのは、あくまで低分子の有機物(メタンやメタノール)に限られる。それよりもっと高分子の液体燃料となると、とても植物には勝てそうにないのだ。

 では、植物由来のバイオ燃料を使えばいいか? 陸上でトウモロコシなどを生産して、それを液体燃料に変換すればいいか? なるほど、それならば、コスト的には十分に燃料生産ができる。その意味で、コスト的には問題がない。
 だが、そうすると今度は、食料生産が減ってしまうという問題が生じる。すると、食糧問題が発生する。燃料問題が消えても、食糧問題が発生してしまうのだ。これでは、元も子もない。
 困った。どうする?

 ――

 そこで、困ったときの Openブログ……と言いたいところだが、実は、私が考えるよりも前に、うまい案を考えた人がいた。以下で紹介しよう。

 そもそもの話、今回の方針は、国が立てたのだが、それ以前に、日本航空がその方針を出していた。
 日本航空(JAL)は一般廃棄物を原料とするバイオジェット燃料を早ければ 2023年度から定期便に導入する。JALは二酸化炭素(CO2)削減で50年度に総排出量実質ゼロを掲げる。30年度にSAF(持続可能な航空燃料)の利用を全燃料の10%に引き上げる方針。
( → JALが一般ゴミ原料のバイオジェット燃料を北米定期便に導入へ|日刊工業新聞社

 国の方針は決して無理難題ではなく、JALの方針を受け継いでいるにすぎなかった。では、JALはどうやってそれを実現するつもりなのか? 全日空やホンダのように、ユーグレナを使うのでは、できそうにないが。
 その答えは、同じ記事の後半にある。こうだ。
 一般廃棄物からバイオジェット燃料を製造する技術を持つ米国フルクラム・バイオエナジーに出資している。フルクラムなどの燃料を活用し、米国発日本行きの国際定期便で導入する方向だ。

 米国フルクラム・バイオエナジーの技術を使うそうだ。では、それはどんな技術か? 
  → 都市のゴミを航空燃料に変えるフルクラムの戦略
 ここには、こうある。
 フルクラムは2019年、ほとんど無料で入手できる地方自治体の固形廃棄物を回収して、旅客機を動かす燃料「ジェットA(Jet A)」に転換する予定だ。ジェットAは現在、1ガロン当たり5.2ドルで販売されている。

   1ガロン当たり5.2ドル = 156円/リットル
 であるから、これは十分に競争力のある価格だ。(合成燃料の理想価格である 200円/リットル よりも安い。)
 
 では、どうやってその低コストを実現しているのか? 記事にはこうある。
 競合他社は一般に、バイオマス源としてトウモロコシやスイッチグラス(イネ科の多年生熱帯牧草)などを使用している。フルクラムがエネルギー源として地方自治体からの固形廃棄物(ゴミ)を使用するのは、これらの供給がトウモロコシなどと比べて予測可能だからだ。実際、都市からのゴミは必然的に発生する。
 無機廃棄物を除去された有機物は、大型容器に投入され、高圧や高温で分解される。
 ガス化プロセスのなかで、有機廃棄物の中の炭素と水素は、炭化水素に転換される。炭化水素は、石油や天然ガスの化学的基礎だ。こうして製造された合成燃料「シンガス(syngas)」は、硫黄や粉塵などの不純物を取り除いたのちに、ジェット燃料に精製される。

 つまり、原料は都市のゴミ(生ゴミや紙類)である。そこにある炭素を、高圧や高温で分解して、炭化水素に転換する。そのあとで、合成燃料「シンガス(syngas)」を作ってから、ジェット燃料(≒ 灯油)に精製する。

 これは、ゴミ発電に似ている。ただし、熱エネルギーを電力に変換するのではなく、物質的な炭素と水素を、液体燃料に転換しているのだ。

 ――

 では、この方法は、バイオ燃料と比べて、どこが有利なのか? 原料費自体は、それほど大きな差はない。ゴミが原料だと、材料コストがゼロになるという利点はあるが、原料費自体はもともと大きな比率を占めない。
 決定的に有利なのは、運送費がかからないということだ。ゴミの原料を集めるのは、ゴミの収集をする自治体である。自治体がゴミ焼却工場にまでわざわざ運んでくれるのだ。
 だから、その運搬先をちょっと変更することで、この新しい企業の工場にまでゴミを運んでくれる。運送費は無料で。……かくて、運送費ゼロで、原料を得ることができるのだ。(原料費はもちろんゼロだ。場合によっては、ゴミ処理の手数料を、自治体から頂戴できるので、コストはゼロどころか、マイナスになるかもしれない。)

 こうして、上記の企業は、ごく安いコストで、液体燃料を生産できる。それも、都市のゴミの山を利用することで。
 こういう頭のいい方法があるわけだ。

  ※ 困ったときには、Openブログに頼らなくても、他の誰かがすでに考えていることもある。



 [ 付記 ]
 この液体燃料を、JAL は米国から輸入する方針らしいが、輸入すると、運送コストがかなりかかる。
 この種の燃料は、輸送コストを節約するために、消費地で生産するのが原則だ。とすれば、国内企業が自力で生産するべきだろう。特に特許で縛られているとも思えないので、東芝や日立も自社で技術開発して、生産してもらいたいものだ。

 ※ 東芝や日立は、すでにゴミ発電の分野で大きな実績を上げている。ならば、その延長で、本項の技術にも進出してもらいたいものだ。(すでにやっているかも。)

posted by 管理人 at 22:54 | Comment(3) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
都会のゴミが原料・・・ということであれば、東京都内でゴミ問題が深刻な小金井市にとっては朗報になるかもしれませんね。

東京都小金井市のゴミ問題は、『小金井市 ゴミ問題』でググってみてください。
Posted by 反財務省 at 2021年12月12日 00:08
大型容器に投入・高圧や高温で分解 というのが、
ごみ処理のための一工程であることが重要ですね。
燃料取り出しのためにするのであれば、投入エネルギーと採集エネルギーとの差の分しか意味が無いですし。
Posted by けろ at 2021年12月12日 17:18
> 小金井市 ゴミ問題

 小金井市で、ゴミ焼却場の適地がない、という問題が起こっているそうですね。
 適当な場所がないのかな……と思って、地図を見たら、小金井市の隣接地に、適地がある。

 (1) 小金井カントリークラブというゴルフ場
 (2) 調布飛行場

 前者は、まさしく隣接地なので、ゴルフ場をすべて買収すれば、小金井公園と一体化して再開発できる。土地の買収費は巨額になるが、買収後に住宅地として販売すれば、かえって黒字になる。(農地転用みたいにする。地目変更。)

 後者は、調布飛行場の再開発といっしょにやる。
  → http://openblog.seesaa.net/article/435851296.html

 調布飛行場と小金井市との間には、ほんの少しだけ住宅があるが、少しだけなので、何とかなるだろう。迷惑料を少し払うだけで済む。

 この二つの案を同時に発表して、実行しやすい方を実行すればいい。実行されなかった方の地主は、大金をもらいそこねた分、損をする。
Posted by 管理人 at 2021年12月14日 01:04
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