2021年12月10日

◆ 太陽光発電の話題を二つ

 (1) 住宅の屋根に太陽光パネルの設置を義務づける(東京都)
 (2) 日本企業は太陽光パネルの生産からすべて撤退した

 ――

 (1) 住宅の屋根に太陽光パネルの設置を義務づける(東京都)


 住宅の屋根に太陽光パネルの設置を設置するのは、小規模であるせいで、高コストで非効率である。だから、やめるべきだ(かわりに別のところで大規模に設置せよ)……と前項で述べた。
  → 太陽光発電は屋根より中山間地で: Open ブログ
  → 屋根に太陽光パネルを載せるな: Open ブログ

 ところが、これと真っ向から対立する方針を、東京都知事が示した。「住宅の屋根に太陽光パネルの設置を義務づける」と。
 新築が対象だ。小規模販売の建築会社は対象外で、大規模販売のプレハブメーカーが対象のようだが、メーカー側に義務づけるという。
 都の環境確保条例の改正を目指す。都によると、改正されれば一般的な中小規模の戸建て住宅に再生可能エネルギー設備設置を義務付ける全国初の条例になるという。
 都の案によると、延べ床面積が2000平方メートルに満たない住宅のような中小建築物を新築する場合、メーカー側に太陽光など再生エネ設備の設置を義務付ける。対象は、都内で供給する新築物件の延べ床面積が年間2万平方メートル以上になるメーカー(約50社)を想定している。
( → 太陽光発電、住宅メーカーに設置義務 都知事、新制度検討を公表 | 毎日新聞

 地球温暖化阻止のために太陽光パネルを設置する……というのは、全体的な方針としては好ましいことだから、傾向としては間違っていない。
 とはいえ、戸建て販売の住宅の屋根に太陽光パネルを設置するというのは、多大な工事費がかかるので、すごく無駄なのだ。前項でも述べたように、大規模発電ならば 12円で済むところを 21円もかけることになる。とすれば、住宅用に設置するのをやめて、大規模に設置することにすれば、コストはほぼ半減するわけだから、無駄も大幅に減少する。設置の時点でも大幅にエネルギーを節約できるとも言える。

 「エコをめざすのが大切だ。エコのためならば、どんなに無駄なことをしてもいいし、どんなにコストをかけてもいい」という立場を、「エコ教」と読んで、私は何度も批判してきた。
 こういう盲目的なエコ信仰は、かえってエコに反するのだが、そういうことも理解できないまま、エコ教の信者はひたすら邁進する。猪突猛進の猪のように。
 小池都知事もまた、こういう愚かなエコ教の信者なのである。

 (2) 日本企業は太陽光パネルの生産からすべて撤退した


 かつて菅直人首相が FIT を導入を決めて、太陽光発電を推進したが、そのときは、「この政策で日本に太陽光発電の企業を育てる」という意図があったようだ。(2011年)
 その7〜8年ほど前の時点(2003〜2004年)では、太陽光パネルの生産で、日本は世界の過半数という大きな比率を占めていた。
 ところが 2007年には比率をかなり落として、以後は奈落の底に落ちるように、比率を急激に下げていった。2020年にはとうとう1%を切った。


solar-share.png


 このなかで、新たに1社が日本で生産から撤退すると決めた。
  → ソーラーフロンティア生産撤退で「日の丸太陽光」は風前の灯(上図も)

 これで事実上、日本の太陽光パネルメーカーは消滅したことになる。(ごく小規模の生産会社だけは残るが、大規模生産はなくなる。)
 出光興産は10月12日、太陽電池の生産から撤退すると発表した。100%子会社のソーラーフロンティアは日本国内で唯一、大規模な生産拠点を持っており、太陽電池製造の最後の砦と言われていたが、中国メーカーとの価格競争に敗れ、撤退に追い込まれた。
( → 出光興産も生産撤退 日本は太陽電池製造の使命を終えたのか | EnergyShift

 ソーラーフロンティアの国内生産撤退により、国内で本格生産する大手パネルメーカーは姿を消すことになる。
( → ソーラーフロンティア、太陽光パネル生産から撤退、OEMに切替 - ニュース - メガソーラービジネス : 日経BP

 菅直人首相が FIT 導入を決めたあと、日本国民は馬鹿高い金を FIT のために支払い続けた。あまりにも高コストな太陽光パネルを導入するために、多額の金を払い続けた。……それで日本に太陽光パネル産業が残ればまだ良かったのだが、現実には、日本の太陽光パネル産業はすべて消えてしまった。
 残ったのは莫大な赤字だけだ。その赤字のために、国民は今後も莫大な金を払い続けるのだ。





 笑うチェシャ猫が消えたあとに、猫なしに笑いだけが残る。
 それと同じように、赤字をもたらす太陽光パネル産業が消えたあとに、産業なしに赤字だけが残る。
 
posted by 管理人 at 22:24 | Comment(8) |  太陽光発電・風力 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 本稿で提示されている記事の記載中、元々は昭和シェル石油に長らくいて、その後ソーラーフロンティア社の社長になった平野氏という人が、ソーラー〜社の親会社の出光興産に移ってきて、現在は取締役にまで昇格しているという点が気になりましたね。

 https://irbank.net/E01084/officer?m=%E5%B9%B3%E9%87%8E%E6%95%A6%E5%BD%A6
Posted by かわっこだっこ at 2021年12月11日 11:55
FIT前のRPSという制度下で日本と世界の再エネの伸び量が乖離しています。日本の再エネメーカはその間に没落。FITはその間に力をつけた主に中国のメーカーを支援することになってしまいました。
https://vaceba.hatenablog.com/entry/2021/11/20/234912
Posted by vaceba at 2021年12月13日 16:02
《参考記事》
『戸建てに太陽光発電義務化を 東京都が条例制定目指す、小池知事「ゼロエミッション東京の実現」』(東京新聞)
https://www.tokyo-np.co.jp/article/152111
Posted by 反財務省 at 2022年01月03日 16:58
 東京都の政策は、まずい政策なんだけど、小池都知事が単独で愚かだというよりは、世間全体が間違っているから、小池都知事もその風潮に引きずられているだけだ。
 愚かさと善意のペア(コンボ)を、世間全体で取っているから、彼らのかついでいる神輿となる知事も間違う。知事だけを批判しても仕方がない。

 諸悪の根源は、朝日新聞かもね。FIT を推進するキャンペーンをしたのも、朝日新聞だし。非科学性と善意のペア(コンボ)。

 高橋真理子さんみたいな優秀な人が気付いてくれるといいんだけど。
Posted by 管理人 at 2022年01月03日 17:37
>諸悪の根源は、朝日新聞かもね。

朝日新聞の記事やコラムなどは、ずっと昔から学校教育の現場で使われることが少なくないため、特に環境問題に関しては、子どもたちに及ぼす影響が心配です。学校の教員が朝日新聞の記事内容の『愚かさ』に気づきながら子どもたちに教えることができれば良いのですが、学校教員のレベルでは難しいでしょうし。

子どもたちは素直ですから、太陽光発電は良いことだと無条件に受け入れてしまいます。
Posted by 反財務省 at 2022年01月03日 20:08
 続報  2022年5月25日

> 東京都は、戸建て住宅を含む都内の新築建物に、太陽光パネル設置を義務付ける方針を固めた。有識者らで構成する都環境審議会が24日、義務化を求める中間答申をまとめた。都はパブリックコメント(意見公募)などを経て、年度内にも関連条例を改正する。

 https://www.yomiuri.co.jp/national/20220524-OYT1T50137/
Posted by 管理人 at 2022年05月25日 10:05
都が屋根を借り受けて、太陽光パネルの設置〜メンテ〜撤去・電力の販売等を行うことはできないのでしょうか。
Posted by 単純脳 at 2022年07月29日 01:55
 都ではなく第三者が屋根を借り受けて、そういう業務をして、利益を上げる……というのを許容するような補助金を出す、ということは検討されているそうです。報道済み。実現する可能性は高い。
Posted by 管理人 at 2022年07月29日 06:43
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