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朝日新聞が報じている。信託銀行だけでなく、証券会社や普通銀行も同様である。
証券会社や銀行など金融のプロにお金の投資先と運用を任せる「ファンドラップ」が人気だ。運用されているお金の残高は、この5年で倍増した。だが、手堅い運用の「バランス型投資信託」に成績で勝っているものはほとんどない。金融庁も問題視している。
ファンドラップで顧客から得られる収入は金融機関にとって魅力的だ。販売時に手数料はとらないが、残高などに対し毎年1〜2%を得ている。信託報酬に相当するお金もとっている。
金融庁が主要各社のファンドラップを調べたところ、残高に対し年間最大3.4%の手数料などがかかっていた。さらに、こうしたコストも考慮した過去5年の運用効率(シャープレシオ)を分析すると、株や債券などを組み合わせて手堅く運用するバランス型投信の平均を上回っていたのは、比較可能な11社のうち1社だけだった。ある大手証券では、運用で得たもうけの半分以上が手数料などに消えていた。
( → 投資は「プロ」にお任せ、それで大丈夫? ファンドラップ残高12兆円超、5年で倍増:朝日新聞 )
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さて。これはどういうことか? 朝日の記事では、腰が引けていて、明示していないが、私がはっきりと指摘しよう。
これは、詐欺である。金融詐欺である。その理由は次の通り。
ファンドラップの広告では、「こんなに有利ですよ」というふうに宣伝して、運用の利回りが高いことを強調する。預金や社債やバランス型投信に比べて、ファンドラップの運用の利回りは上回っている、とグラフで明示する。こうして「客が得をする」と見せかける。
→ 三井住友信託ファンドラップ | 三井住友信託銀行
→ SMBCファンドラップ・日本バリュー株 | 三井住友DSアセットメントマネジメント
→ ファンドラップ : 三井住友銀行
→ ファンドラップ|りそな銀行・埼玉りそな銀行・関西みらい銀行
→ ファンドラップ | 商品 | 大和証券
→ 野村ファンドラップ|商品・サービス|野村證券
→ みずほ証券のファンドラップ | みずほ証券
しかしそこで示されるのは、運用の利回りだけだ。客が実際に手にする分(手取り)は、運用の利回りから手数料を引いた残額だ。その額は、バランス型投信に比べて、明らかに低い。(上図。金融庁調べ)
つまり、「高い利回りだからお得ですよ」と見せかけて、実際には低い利回りの額しか渡さない。
どうしてこういう違いが生じるかというと、「運用の利回り」と「手取りの利回り」とは異なるからだ。そして、その差額は、「会社側の手数料」となる。

しかも、手数料の額の割合があまりにも大きい。通常の手数料ならば、せいぜい1割ぐらいだと見なされるだろうが、ファンドラップでは、手数料の額が3〜6割ぐらいになる。
かくて、「多額の運用利回りを得られますよ」と口では見せかけて、実際には「客の手取り」は少額となる。口で見せかけることと、現実とは異なる。その差額は黙ってこっそり頂戴する。
これでは詐欺も同然だというしかない。

ちなみに、「マルチ商法詐欺」というのもある。先日も 650億円詐欺が話題になった。
→ 650億円詐欺と 4000億円贈与: Open ブログ
こういうマルチ商法詐欺では、「ものすごく高い高利回り」と見せかけておいて、「手数料」の名目で元金から莫大な額をかすめ取る。「社員の給与」「社長の給与」などの名目で、「必要経費」と称して、莫大な額をかすめ取る。……こうやって、顧客から預かった金の大部分を、自分たちのものにしてしまう。「必要経費」または「手数料」の名目で。
これは、やり口はちょっと異なるが、ファンドラップと同様の手口である。(手数料の名目で莫大な額をかすめ取る。)
逆に言えば、ファンドラップ詐欺というのは、マルチ商法詐欺と原理的には同じである。ただ一つ、異なるのは、ファンドラップ詐欺はまだ違法化されていない、ということだ。(マルチ商法詐欺も、昔は違法化されていなかった。それと似た状況だ。)
今は、法律の未整備という「穴」をつく形で、信託会社の多くがファンドラップ投信に入れ込んでいる。これが詐欺であることを自覚した上で、反省して手を引くどころか、「儲かるからどんどん注力する」と言って、どんどん拡大する方針の会社が多い。
→ 個人向け収益、残高手数料を5割に 中田・大和証券社長:朝日新聞
→ 自社商品通じ、地銀と連携強化 りそなHD・南昌宏社長:朝日新聞
→ 資産運用、地銀と連携強化 来秋にも新システム りそなHD:朝日新聞
かくて、詐欺師の
詐欺師にだまされないよう、ご注意あれ。
[ 付記 ]
fund wrap というのは、いくつかのファンドをラップして(まとめて)、安全性を高めることで、もともとハイリスク・ハイリターン型の商品を、ローリスク・ハイリターンにする……という趣旨のものだ。
しかしそれは、リーマンショックの前に「デリバティブ」という言葉でもてはやされたものと同じである。あの当時の「デリバティブ」商品が、名前を変えて再登場したわけだ。どうせなら「デリバティブ」と呼べばいいのに、「デリバティブ」の商品は一挙に破綻して、リーマン・ショックをもたらした……という記憶がしみついているから、その名前を使えないのであろう。
しかし基本的には、デリバティブと同様であり、つまりは、口先だけで「儲かりますよ」と見せかけているだけだ。
金融業界の連中は、まったくあこぎな輩が多すぎる。立派な数学を、(客を煙に巻いてたぶらかす)詐欺のために使っている。
[ 補足 ]
金融会社のなかでも、保険会社は、さらにあこぎである。「保険」という枠組みを使って、金融商品を売ろうとするが、そこでは手数料が 82% になることもある。
→ 手数料率、初年度82%も 変額保険売る側の「うまみ」:朝日新聞
これではもはや 99% や 100% の手数料を取るのも同然だ。つまり、泥棒と同じである。泥棒と同じことを、「契約で合意しました」と見せかけて、合法化するわけだ。……しかしそれは、常識的には「詐欺」と言う。
こういうのを放置する金融庁というのも、どうなんだろうね。詐欺の仲間か。

