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コロナでは急激な重症化が起こることがある。数時間のうちに、元気な状態から、呼吸困難な状態へ、というふうに。
このように急激な重症化が起こることは、他の病気にはないコロナ特有の症状だと見なされて、原因不明なまま「謎」だとされてきた。
この件では、当初は「サイトカインストームが理由で急激な重症化が起こる」と推定された。重症者はたいてい、肺炎があって、サイトカインストームが起こっていると見なされたからだ。
しかし一方で、サイトカインストームならば、そんなに急激に症状が悪化するのはずがないとも思える。むしろ、徐々に少しずつ悪化していくのが普通だ。実際、(コロナ以外の)たいていの肺炎では、そういうふうになっている。なのにどうしてコロナでは、これほど急激な重症化が起こるのか?
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そこで新たに疑われたのが、血管の症状である。この件は、前回の項目でも説明した。
→ 急激な重症化(コロナ): Open ブログ
血管の病気については、D-ダイマーという検査法が有効なので、それで検査するといい、というふうに述べた。
とはいえ、こここで示したのは、次のことだ。
・ 血栓症や DIC という病気については診断が付く。
・ 治療法については、不明。
ここでは、話は完結していない。特に、「診断は付いても、治療法がわからない」という状態にあった。
ここまでは、すでに述べた話だ。
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本項では、さらに問題を考えよう。
血栓症や DIC という病気(血液の病気)については、下記に説明がある。
→ 深まるコロナウイルス血栓症の謎 | Nature ダイジェスト | Nature Research
→ 新型ウイルス感染の入院患者、3分の1に危険な血栓 - BBCニュース
血管や血栓が問題であるらしいのだが、はっきりとしていないので、研究途上であるようだ。
一方で、本日の朝日新聞・夕刊に、次の記事が出た。
新型コロナウイルス感染症の重症化には、免疫が暴走する「サイトカインストーム」がかかわることが報告されている。大阪大学などの研究チームは「PAI1」というたんぱく質が血液中に増えることが、サイトカインストームの引き金になることをつきとめた。
患者91人と、健康な人36人の血液を調べた。すると、サイトカインストームが起きた患者では、「PAI1」が増えていることがわかった。これは、血管中に血栓(血の塊)をできやすくする働きがあるたんぱく質だ。
重症の新型コロナ患者7人でも PAI1が増え、全身の炎症を示す数値があがっていた。血栓ができると、血管が傷ついて血液成分がもれだし、免疫が過剰に働いて、全身の炎症などを起こすと考えられるという。
( → コロナ重症化招く「免疫の暴走」、阪大などが端緒を解明 :朝日新聞 )
この情報自体は、数日前に出た情報なのだが、朝日の記事では詳しい話があるので紹介した。
この記事の話では、「血栓症が理由で、サイトカインストーム起こる」というシナリオになっている。再掲すると、こうだ。
血栓ができると、血管が傷ついて血液成分がもれだし、免疫が過剰に働いて、全身の炎症などを起こすと考えられるという。
この過程は、図で説明されている。
しかし、この説は、信頼性が乏しいと思う。
今回の研究では、「PAI1」が血栓症に関与している、ということが示された。なるほど、それは研究報告であるから、事実であろう。それはいい。
PAI1 で血栓症が出たあとの話は、今回の研究とは関係がなく、ただの憶測であるにすぎない。それが事実である保証はまったくない。
新型コロナの患者では、「PAI1」が血栓症に関与していて、血栓症が起こりやすい。そこまではいい。だが、血栓症があるとサイトカインストームが起こりやすいというのは、まったく不確かなのだ。
私の個人的な推測を言うなら、
・ 血栓症の問題
・ 免疫暴走(サイトカインストーム)
という二点は、直接の因果関係はないと思う。なるほど、新型コロナの患者では、この双方が同時に見られるし、相関関係が高い。そこで、論文執筆者たちは、
「相関関係があるから、因果関係があるのだ。ゆえに、血栓症はサイトカインストームの原因だ」
と考えたのだろう。しかし、それは必ずしも成立しない。
私はむしろ、次のように考える。
「上の二点には、共通となる原因がある。その原因が、上の二点という結果をもたらす」
こう考えれば、
・ 上の二点に、相関関係があること
・ 上の二点に、因果関係はないこと
が、うまく説明できる。
共通の原因 → 二つの結果
という図式が成立するわけだ。
例示すると、こうだ。
「風邪を引くと、発熱と咳が同時に発生する。ここで、発熱と咳には相関関係が高いが、だからといって、発熱と咳に因果関係があるわけではない。発熱と咳は、風邪という共通の原因から生じた、二つの結果である。ここでは因果関係を間違えてはならない」
血栓症とサイトカインストームについても、同様のことが言えるだろう。そこには、相関関係はあったとしても、因果関係はないはずだ。(私見では)
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なお、記事では、次の話もある。
研究チームはヒトの血管細胞を免疫にかかわるサイトカインの一種、インターロイキン6(IL6)で刺激したところ、PAI1が増えることを実験で確認。さらに、IL6の働きを邪魔するリウマチなどの薬「アクテムラ」を使えば、PAI1が増えるのを抑えられることも確認した。
この方針でアクテムラを使った。彼らの主張が正しければ、アクテムラを使うことで、血栓症が抑制され、かつ、サイトカインストームが抑制されるはずだ。
その結果は? まったくの無効であった。
→ アクテムラ 新型コロナ重症患者対象の欧米フェーズ3で有用性示せず ロシュ
アクテムラはそもそも、サイトカインストーム対策として使われるはずだった。前にも述べたとおり。
→ 新型コロナの薬(免疫系): Open ブログ
それを、血栓症の抑制の用途で使うことで、サイトカインストーム対策にもしよう……という目論見だったようだ。しかしながら、その期待は「効果なし」という結果に終わった。(上記のロシュ)
しかも、これは不思議ではない。アクテムラのようなサイトカイン・ブロッカーが、もともとたいして期待できないということは、試験を始める前から予想されていた。コロナ以前の肺炎におけるサイトカインストームで、ろくに効果が上がっていなかったからだ。「どうせ効果は期待できない」ということは、私がとっくに記していた。
→ 新型コロナの薬(免疫系): Open ブログ(5月16日)
→ 新型コロナの本質: Open ブログ(6月06日)
とすれば、「アクテムラに効果なし」というロシュの治験結果は、私の予想したとおりになった、というぐらいの意味しかない。
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ここまで述べた話は、悲観的な話ばかりだった。
血栓症が問題らしいということはわかったし、血栓症を診断できる D-ダイマー という検査法があることもわかったが、肝心の治療法が見つかっていないようだ。
困った。
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しかしそこは、Openブログ。きちんとした案を出そう。こうだ。
「血栓症の対策には、フサンが有効であると言われている。フサンはさらに、抗ウイルス効果もあると言われている。そのどの部分が有効であるのかははっきりとしないが、とにかく、フサンを使えば有効性があると判明している。ただし、アビガンと併用することが条件」
このことは、「アビガンとフサンの併用」ということで、前にも述べたとおり。
アビガンとフサンという二つの薬を併用することで、重症者に圧倒的な治療効果があることが判明した。これでコロナの死者は激減しそうだ。(国内では)
( → アビガンが重症者に有効: Open ブログ )
詳しい話は、上記項目を参照。
というわけで、血栓症の問題には、「アビガンとフサン」という形で、うまく治療法が見つかったことになる。
ただ、現実にどうなっているかというと、その後、特に報告もないようだし、治療例は多くないのかもしれない。もっと一般化するべきだろう。
※ 最近では、重症者や死者が多数出ているので、フサンを使うべき患者は多く出ているはずだが、どうなっているのだろう? ……そう思って調べたら、次の記事が見つかった。
ナファモスタットをめぐっては、先発医薬品「フサン」の製造販売元である日医工に、第一三共、東京大、理化学研究所を加えた4者が、共同で吸入製剤の開発に着手。7月から非臨床試験を始め、来年3月までの臨床試験開始を目指しています。
( → 新型コロナウイルス 治療薬・ワクチンの開発動向まとめ【COVID-19】(8月21日UPDATE) | AnswersNews )
吸入というのは初めて聞くので調べてみたら、新規開発するそうだ。
→ 新型コロナ:第一三共や日医工、コロナ薬で吸入タイプ開発へ
→ 第一三共、新型コロナ用で「フサン」を吸入薬化 | 化学工業日報
※ フサンについては、次の解説記事もある。
→ 私が新型コロナウイルスに罹ったら、フサンをぜひ使用したいと思う理由
※ 血栓症の治療には、ヘパリンという薬も知られている。これをコロナの患者に使うと、いくらか効果があったという報告が出ている。
→ ヘパリン コロナ - Google 検索
[ 付記1 ]
血栓症がサイトカインストームを起こすということは、ありえそうにない。世の中の血栓症の患者は、ほとんどがサイトカインストームを起こすことがないからだ。
一方、血栓症の引き金となる PAI1 の、そのまた引き金であるインターロイキン6は、サイトカインストームの原因であることが強く疑われている。
この場合、インターロイキン6は、PAI1 を経由せずに、別の経路をたどって、サイトカインストームに行き着くわけだ。(その経路は未判明だが。)
ただ、その筋書きが妥当であるかどうかは、未判明である。インターロイキン6を阻害するアクテムラが、サイトカインストームにはあまり有効ではない上、コロナにはまったく無効であるからだ。
サイトカインストームについては、まだまだわかっていないことが多すぎるというしかない。朝日の記事で示した大阪大の研究は、あまりにも勇み足であるというしかない。
( ※ 実は、大阪大の研究の執筆者である岸本教授は、アクテムラの特許を持っているので、自分の特許料収入を得るために、アクテムラを過剰に持ち上げているという疑いがある。)
[ 付記2 ]
「血栓症がサイトカインストームを起こすということは、ありえそうにない」
とすぐ上で述べた。だが、そうだとすれば、「急激な重症化」をもたらすのが何であるのかは、謎となる。
なぜか? 血栓症それ自体は、「急激な重症化」をもたらさないからだ。血栓ができたからといって、それで呼吸困難になるわけではない。呼吸困難になるのは、肺の機能が悪化したからであり、それはサイトカインストームがあったからだ。
本項の論理で言うと、次のことが推察される。
「共通の原因となるものが急激に進捗して、そのせいで、血栓症の悪化と、サイトカインストームの悪化が、どちらも急激に起こる」
あるいは、次の可能性もある。
「サイトカインストームの悪化は、呼吸困難とは直接の関係がない。サイトカインストームの悪化は、それ単独で、徐々に推進していく。一方、血栓症の悪化は急速に進むが、血栓が肺の細胞で詰まるので、肺の機能が悪化して、呼吸困難に陥る」
これは十分に考えられる。病名としては、「肺血栓塞栓症」というものが該当する。(まさしく呼吸困難を発症させる。)
→ 肺血栓塞栓症 - Google 検索
つまり、人々が「コロナで呼吸困難になるのは、サイトカインストームのせいだ」と思っているのは、実は誤診であって、正しくは「コロナで呼吸困難になるのは、肺血栓塞栓症のせいだ」ということになる。
現実には、サイトカインストームと肺血栓塞栓症が同時に起こるのだが、急激な重症化の方は、肺血栓塞栓症が原因だ、というわけだ。
これは仮説である。とりあえずは、こういう仮説が考えられるということで、ここに提示しておこう。
なお、急激な重症化の原因であるかどうかは不明だが、サイトカインストームと肺血栓塞栓症が同時に起こるということ自体は、すでに確認されているようだ。
炎症により血液が固まりやすくなり、肺動脈内にできる血栓が肺末梢血流を減らし、慢性肺血栓塞栓症のような状態になることもあり得る。この肺組織そのものと肺血流の両方が傷つくことで、非常に深刻な後遺症生じ得る。
( → 新型コロナから回復した人の3割以上に何らかの呼吸器の後遺症が【新型コロナ後遺症の正体】(日刊ゲンダイDIGITAL) )
ここで示されたのは、後遺症を残す人(つまり、死ななかった人)だ。死んでしまった人がどうであるかは、解剖しないとわからないだろう。しかしコロナの患者を解剖するのは、感染の危険があるので、あまりなされていないと思える。だからよくわかっていないのかもしれない。(解剖で死因を詳しく探るべきだろう。)
[ 付記3 ]
肺血栓塞栓症とコロナの関係については、日本語文献はほとんどないようだが、英語文献はいくらか見つかる。肺血栓塞栓症 Pulmonary Thromboembolism でなく、肺塞栓症 Pulmonary Embolism ( PE )という用語で見つかる。
→ Pulmonary Thromboembolism covid-19 - Google 検索
これらによると、次のことがわかる。
・ 検査は D-ダイマー で。
・ 治療はヘパリンなどで。
いずれもすでに言及したことなので、特に目新しいことはないようだ。
※ 日本ではさらに「アビガンとフサンの併用がいい」と判明している。ただしいずれも日本の薬であって、英語圏では入手は容易とは言えない。


最後に [ 付記 ] を加筆しました。
肺血栓塞栓症の話。
英語文献の話。