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テスラの自動運転車が死亡事故を起こした。
《 米テスラ、自動走行で初の死亡事故 相手車の色が原因か 》
米電気自動車ベンチャー「テスラ」は6月30日、同社製の自動車で自動走行中に死亡事故が起き、米高速道路交通安全局(NHTSA)が調査を始めると明らかにした。AP通信によると、自動走行中の車としては初の死亡事故という。
NHTSAによると、事故があったのは5月7日、フロリダ州の高速道路上。テスラの「2015モデルS」が自動走行モードで走行中、側道から入ってきたトレーラーが目の前を横切るように左折。テスラはそこに突っ込むように衝突し、運転手は死亡した。
テスラによると、トレーラーの車体が高かったことに加え、当日は晴天でトレーラーの車体の白い色をセンサーが感知できず、ブレーキが作動しなかった可能性があるという。
( → 朝日新聞 2016-07-01 )
「白い色」というのがポイントらしい。そう思って、英文記事を検索してみたが、特に解説記事はヒットしなかった。
→ tesla autopilot white - Google 検索
そこで、以下では、解説を加えてみよう。
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テスラの自動運転は、autopilot と呼ばれるもの。これは、単眼カメラで画像を得てから、分析するものである。
実例は、次の画像のようなものだ。つまり、枠で囲む感じ。
→ tesla autopilot 画像
→ Mobileye 画像
→ 動画
この画像分析の装置は、モービルアイ Mobileye という会社のものであるらしい。
《 モービルアイ 》
同社の運転支援システムは、BMW、フォード、ホンダ、三菱、日産、ルノー、テスラモーターズ、その他有名メーカーに搭載されており、2016年には20社213モデルで採用されると予想されていま
( → (MBLY) )
同社システムの特徴は、単眼カメラで情報を取り込むというシンプルかつ低コストな点にあります。スバルの「アイサイト」のように複眼カメラによる情報処理ではありません。またレーダーや超音波、レーザースキャナーなどのセンサーも用いず、あくまで一つのカメラによって障害物や車線、車間距離などを分析しているのです。一方、グーグルの自動運転システムはGPS機能や地図情報など、人の眼には映らない多くのデータに依存しており、全く違う仕組みとコストを持ちます。
つまり同社システムは人の眼と同じ働きをするものであり、眼前に映った情報が全ての安全システムの元となります。従って暗闇など、カメラに映りにくい状況では不十分なため、実際の車には他社製のレーダーなど、別センサーからの情報と合わせて衝突を防止して行く必要あります。
( → All About )
単眼カメラであるため、低コストではあるが、暗闇(や白色)などの状況では、機能が不十分になるわけだ。
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さらに、私なりに推測してみよう。
単眼カメラで距離を測定するというのは、たぶん、一眼レフの合焦と同じシステムだろう。コントラストが強まる位置で合焦するようにピントを合わせるが、それと同様のシステムで、ピントが合う位置から距離がわかる。
このシステムは、安価なカメラと同様の部品(汎用品)を使えばいいので、ごく安価にシステムを構築できる。しかし、真っ白とか真っ黒とかいうような、コントラストに低い対象には、ピントが合わないし、距離もわからない。
今回は、そういう問題が発生したと推定される。
ちなみに、テスラのカメラが単眼式であることは、画像でも確認できる。
→ tesla autopilot camera - Google 検索
では、どうすればいいか? 上の記事でも示されているが、レーダーを併用する、というのが一案だ。ミリ波レーダーを使えば、対象との距離がわかるから、少なくとも自動ブレーキをかけるには足りる。
ミリ波レーダーは、解像度が低いので、対象の形状を知ることはできない。しかし、対象との位置を知ることはできる。その意味で、自動ブレーキをかけるには役立つ。
実際、今回の事故は、「自動運転に失敗した」というよりは、「自動ブレーキに失敗した」というタイプだ。何らかのハンドル操作やアクセル操作がまずかったのではなく、単にブレーキがかからなかっただけだ。このような問題は、「ミリ波レーダーによる自動ブレーキ」があれば、解決できたはずだ。
とはいえ、ミリ波レーダーは、けっこうコストがかかる。(汎用品とは言えない。)こんなものをカメラとは別途に装着するとしたら、カメラを2台搭載するよりも高価格になってしまう。だったら、ステレオカメラの方がマシだろう。
となると、単眼式カメラによる自動運転車は、自己矛盾に陥る。
・ コストを下げようとすれば、ミリ波レーダーを採用できない。
・ 安全性を重視すれば、ミリ波レーダーを採用するが、高コストになる。
どっちにしても成立しない。とすれば、
「単眼式の自動運転車は、もはや利用価値がない」
というのが、今回の事故の教訓だろう。
単眼式のカメラは、自動ブレーキの性能比較でも、ステレオカメラ方式に比べてかなり性能が落ちる。
→ 自動車の自動ブレーキ
単眼式のカメラで、唯一、まともに止まるのは、日産のスカイラインだが、こいつは、ミリ波レーダーを採用しているせいで、コストが滅茶苦茶に高い。( 40万円ぐらい。)
一方、ステレオカメラは、スバルで 10万円、スズキで7万円台。圧倒的に安い。(上記項目)
他社は、ミリ波レーダーなしの単眼式カメラを採用しているが、まともに自動ブレーキがかからず、障害物に衝突してばかりだ。
以上のことからして、単眼式カメラによる自動運転にはもはや見込みがない、というのが、現時点での結論となる。
単眼式の自動運転車は、こうだ。
・ 自動ブレーキではとても低性能
・ そのせいで正面衝突ふうの死亡事故が起こる
これは、「欠陥品」というほどではないが、「低性能すぎる」として、実用レベルにはならないと見ていい。
なのに、スバルとスズキ以外のたいていの会社が、単眼式カメラを採用している。各社はこの先、まったく見込みがないね。全員そろって、泥沼に入ろうとしている。(スバルとスズキは違うが。)
( ※ ついでだが、単眼式カメラはコストが安いというが、カメラの値段は、レンズと CMOS 込みでも、単体カメラよりかなり安いはずだ。たぶん1万円程度。この程度のコストをケチって、カメラを1台減らして、ステレオカメラのかわりに単眼式カメラにする。こういうふうにして、安全性を大幅に下げようとするのだから、自動車メーカーというのは、頭がイカレているね。コスト・パフォーマンスという概念を理解できずに、コストばかりを下げようとする。……頭 悪すぎ。例外は、スバルとスズキぐらい。)
[ 付記1 ]
Google はどうか? 調べてみたら、すごい重装備だった。ステレオカメラとミリ波レーダーという二重装備。さらに、360度カメラもあるし、あれやこれやと、至れり尽くせりだ。
→ Googleの自動運転カーの外界認識センサーはこんなにある
→ Autoblog Japan Staff
レーダーは 200メートル先も検知するそうだ。さすが Google 。
Google は、スバルと並んで生き残る。他の自動車メーカーは、全滅か。今からステレオカメラ方式で自動運転を初めても、とうてい追いつけそうにない。たとえ追いつけると見えても、それは「正面衝突の危険のある、危険なシステム」であるにすぎない。しかも、それを解決するには、ミリ波レーダーの搭載が必要で、大幅なコストアップ。スバルにはとうてい対抗できまい。
[ 付記2 ]
今回の死亡事故を見て、「自動運転はまだまだだな」と思う人も多いようだが、それは勘違い。
第1に、今回は、自動運転に失敗したというより、自動ブレーキに失敗しただけだ。いわゆる自動運転は関係ない。
第2に、肝心の自動運転では、人命を救ったことがある。横から急に飛び出したトラックに撥ね飛ばされそうになったのを、自動運転車が自動的にハンドル操作をして、衝突回避してくれたのだ。来た
→ YouTube の動画
このときは、自動運転車のおかげで助かった。なのに、同じ自動車と同じ運転手が、今回の事故で死んでしまった。一勝一敗、というと、不謹慎だが。すみません。
ただ、考え方によっては、自動運転車のおかげで2カ月ぐらい長生きできたとも言える。
( ※ そもそも自動運転車の運転という仕事をしていなければ……という話は、なし。)
[ 付記3 ]
用語は ……
日本語では : 自動運転
テスラでは : auto pilot
Google では : self-driving(car)
【 関連項目 】
本項の続編があります。
→ 自動運転車で死亡事故 2
※ 新たな報道から、事実情報についての修正などもあります。

→ http://j.mp/29euAAx
運転手は走行中に DVD を見ていて、前方不注意だったらしい、という証言。
→ http://japanese.engadget.com/2016/07/01/dvd/
http://srad.jp/story/16/07/01/0815215/
> モデルSの場合、センサーではすでにCar Watchでも紹介されているとおり、車両前のナンバープレート下に配置された「ミリ波レーダー」(25GHzと77GHzの2種類と推察)
http://car.watch.impress.co.jp/docs/news/739698.html
あるけど、まともに作用していなかったようだ。「トラックが高いから」というのは理屈にはならないだろう。ソフトウェアの欠陥という、設計上の欠陥である可能性が高い。
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この記事によると、オートパイロットは(実験車ではなく)市販車で正式に許認可されたそうだ。
その一方で、このオートパイロットはベータ版の扱いだという。
http://j.mp/29gz5e2
市販車に搭載している機能がベータ版。これじゃ、話が矛盾しているね。金を出して買ったユーザーを、メーカーの実験のモルモットにするということかな? 呆れる。
私なりに、推測してみます。
1.輝度が大変高い「白い色」がカメラに入ってきた。
2.撮像素子は、感度を落とそうとしたが、レンジがたりずに飽和したままになった。(レンズは使っていないと仮定)
3.「白い色」のため電気信号は飽和したので、異常と考えた制御装置は急ブレーキをかけたが間に合わなかった。
一方、単眼式のカメラの距離測定は、コントラスト式なので、コントラストの弱い被写体(真っ白・真っ黒)の距離測定に失敗することは、普通にしばしばあります。(カメラの自動合焦の失敗。)……本文に書いてある通り。