フォルクスワーゲンのディーゼルの偽装が話題になった。そのついでに、ガソリン・ターボも扱う。ここにもちょっと似た事情が窺える。
(1) テーマ
日本と違って、欧州ではターボが優勢だ。日本車はあまりターボを使わない。日本車が遅れているのか? 欧州(特にフォルクスワーゲン)が技術的に優れているのか? これが問題となる。
(2) 原理
ターボがよく使われていることには、理由がある。
・ 排気量を小さくすることで、抵抗とコストの削減効果がある。
(ダウンサイジングという用語で呼ばれる。)
・ ハイブリッドと違って、メカニズムが簡単だ。
・ トヨタ・ハイブリッドは高速燃費が良くないが、ターボは高速燃費もいい。
このような利点を訴えて、フォルクスワーゲンは大幅に販売量を増やした。日本車と比べても圧倒的に大きな伸び率を示している。世界一を窺う情勢だ。
また、日本のターボ会社もターボの売上げが増えて、大喜びだ。現状については、下記に報道がある。
→ 三菱重工とIHI、ターボ事業が大繁忙の理由
→ 三菱重工とIHIの“金のなる木”、ターボチャージャーはどこまで伸びる?
(3) コスト
しかし私は過去記事で、この件を扱って、「コストが問題だ」と指摘した。
・ ターボの価格
・ インタークーラーの価格
このふたつがそれぞれ 10万円ぐらいかかる。(昔のターボ隆盛時代。) 今では技術革新によって、もっとコストが下がっているだろうが、それでもかなりの価格になるはずだ。
排気量が小さくなることでエンジン価格は下がるが、それでも 20万円も下がることはあるまい。とすると、どうしてもコストアップになるはずだ。
つまり、フォルクスワーゲンのエンジンはコストアップの問題を乗り越えられないはずだ。……これが、過去記事における結論だった。
(4) 現状
しかしながら現状では、フォルクスワーゲンは販売量を圧倒的に伸ばしており、私の過去記事の「コストアップ」という難題を解決したことになる。とすれば、現状は、次のようになる。
「 Openブログが間違っている。フォルクスワーゲンは技術的に圧倒的に優れている。日本メーカーはフォルクスワーゲンにはとうてい及ばない。エンジン技術はフォルクスワーゲンが世界最高! 日本メーカーはペケ! Openブログは嘘つき!」
これが現状からの結論だ。
(5) 真相
しかしながら、以上の話は、フォルクスワーゲンのディーゼルの偽装に似ている。フォルクスワーゲンだけが圧倒的に優れているなんて、不自然だ。そう思っていたところ、読売新聞 2015-09-24 で、次の記事を見つけた。
VWの乗用車(アウディやポルシェなど傘下ブランドを除く)の14年の営業利益率はわずか2.5%で、10.1%のトヨタに大きく水をあけられている。
( → 読売新聞 2015-09-24 )
ついでだが、アウディやポルシェの方は、大幅に高い利益率だ。
→ ポルシェが1台売れればVWが30台売れたのと同じ!?ポルシェの驚きの営業利益!
要するに、フォルクスワーゲンの利益率は圧倒的に低い。換言すれば、正常な価格に比べて、大幅に値引きをして売っている。ざっと見て、1台あたり 10〜20万円ぐらい安売りしている。……これは、ターボとインタークーラーを合わせた価格と同じぐらいだ。 (^^);
(6) 結論
こうして真相が判明したことになる。
フォルクスワーゲンがダウンサイジングと称して小排気量ターボを売って、大量販売に成功しているのは、技術的に優れているからではない。「技術的に優れている」と見せかけながら、高価格の技術を安売りしているからだ。そのせいで、利益は大幅に減ってしまう。
他のメーカーが追随しないのは、当然だ。そんなことをすれば利益が吹っ飛んでしまうからだ。
要するに、ダウンサイジングと称した小排気量ターボは、技術的に優れているわけではない。単に「高価で高機能な商品」であるというだけだ。総合的には、燃費削減でコストを下げられる分を、回収し切れていない。(元の本体が高値すぎる。)たとえば、燃費で 10万円安くなるが、本体のコストが 20万円もアップとなる。これでは割に合わない。
で、日本メーカーは、どうしているかというと、そんな馬鹿なことはしない。かわりに、自然吸気エンジン(ターボなし)の範囲で、燃費向上を狙う。ホンダやマツダあたりは、この技術が優れているようだ。……これが正解だろう。
(7) 例外
ただし、例外もある。高級車だ。BMW や アウディのような高級車なら、元の本体価格が高値なので、ターボやインタークーラーを付けても、そのコストを回収できるだろう。したがって、大排気量の高級車に限っては、ダウンサイジングによるターボは成立する。
日本車で言えば、スカイラインのターボ(エンジンはベンツ製)あたりが該当する。このエンジンは、3.7リットルの自然吸気エンジンよりも、優秀かもしれない。(少なくとも燃費面では優秀だ。)
[ 付記1 ]
ダウンサイジングターボは、圧縮比が高い。このことからして、ミラーサイクルエンジンになっていると推定される。(さもなくば、圧縮比が高すぎて、ノッキングしてしまう。)
兼坂サイクルとも言われるミラーサイクルエンジンが、フォルクスワーゲンによって普及したことになる。そのこと自体は、めでたい。……ただし、当初から懸念されていたように、コスト高がひどい。
[ 付記2 ]
日本の各社の状況は?
日産は、ベンツのエンジンをスカイラインで導入したほか、ノートでスーパーチャージャーを使って、同様の結果を導いた。これは、一時の成功のあとで、衰退した。やはり、コストアップの問題を解決できなかった。
ホンダは、フィットで、過給器なしで省エネ果たした。これは低コストなので、ベストセラーとなった。正解。
マツダは、過給器なしのミラーサイクルを使った。圧縮比は同社のディーゼルと同程度だが、効率は十分だ。これも正解だろう。
トヨタは以前、ターボを出すと声明した。
→ トヨタの新開発アトキンソンサイクルエンジン
→ トヨタ、熱効率38%などを達成した新型アトキンソンサイクル低燃費エンジン説明会
その後、レクサスに搭載した。
→ 「レクサスNX」の直噴ターボエンジン
たしかに高機能だが、いかにも高額そうだ。レクサスという高級車に搭載したところから見て、高級車専用っぽい。
さらにその後、カローラに搭載された。
→ トヨタ 熱効率No1?! 新型カローラに搭載された最新エンジン「2NR-FKE」
ただ、これがどれほど売れているのかは、私は知らない。一般によく売れている普及車に採用されているのか、一部の特殊モデルだけなのか。……調べればわかるのだろうが、面倒臭いので、調べない。誰か調べてほしい。
《 追記 》
調べました。主力車種はこのエンジンです。
販売量の大半がこのエンジンだと考えていいだろう。
燃費は、23.4 km/L で、日産ノートの数値と同じ。
ただ、ターボを使わず、自然吸気でアトキンソンサイクル( = ミラーサイクル)というのは、マツダと同じで、正解だ。(トヨタはマツダの SKYACTIVE 技術を導入したので、単にマツダの技術を使っているだけかもしれないが。)
こうして見ると、日産だけが遅れている感じですね。この会社、ゴーンが退任しないと、どうにもならないな。つぶれるかも。その理由は、下記。
→ 英語の社内公用語化は?

ヘリでコンビニ行くようなものでしょうね
たとえば下記。
→ http://openblog.meblog.biz/article/1194299.html
1.4リッターで、 122ps です。ライバルはオーリスなどで、2リッターで、同程度の馬力。
廉売の原資についてはVWは自分で出しているので文句はありませんが、日本車(特にプリウス)はずっと前に管理人様がご指摘のように、国民が皆で出しています。
クルマに日常の足以上は何も期待していない人(特にクルマを必要悪と捉えている人たち)にはわからないかもしれませんが、手頃な価格で運転が楽しいというのはターボですね。(NAでもそういうのはありますが、高価です)
最新の1.4Lエンジンは 150PSです
燃費はJC08モード20.4km/L
http://www.volkswagen.co.jp/ja/models/passat/specs.html
しかも1500rpmで25.5kgmのトルクを発生しています
http://www.nikkei.com/article/DGXNASGM2204R_S3A121C1FF1000/
今回の事件がえらいことになりそう(;゜0゜)
旧フィットシャトル(現シャトル)には既に投入済み。
軽+ターボでは軽量な車体+馬力で、坂道の多い地方でメリットがあり、アルトは人気ですね。
・ダウンサイジングターボが十数万円のコスト高として、トヨタ主流のハイブリッドはどうか、果たして20万に収まるものか(無理だろう)。
・2014年以前の利益率はどうなのか。
・今の円安が円高に転じれば、トヨタの(日本メーカーの)利益率は吹っ飛ぶのではないか。(間違いない。そしていつリーマン・ショックの二の舞いの超円高になるかしれない)
・ダウンサイジングターボはVWの専売特許ではなく、全欧州のトレンドだ。
今は部品を含めて海外生産が進んでいます。国内からの輸出は少ない。あまり影響はないでしょう。(少しはあるが。)
利益が全部すっ飛ぶというようなことはなくて、2割減ぐらいで済むでしょう。
あと、フォルクスワーゲンは、ユーロ安の影響を受けている(マルク高にならない)から、こっちも似たようなものだ。円安ならぬユーロ安。
> ダウンサイジングターボはVWの専売特許ではなく、全欧州のトレンドだ。
確かにトレンドはあるけれど、たいていは、自然吸気の車と併売で、自然吸気の車の方がずっと安くなっている。自然吸気なしでダウンサイジングターボばかり、という販売政策は、フォルクスワーゲンぐらいではないかな?
 ̄ ̄
しかしまあ、そちらの疑問はわかります。私もそういう感じがあります。ちょっとすっきりしない感じがある。
ダウンサイジングターボのコストがどのくらいなのか、きちんとわかっていないので、私としてもよく知りたいところ。もしかして、5〜10万円ぐらいなのかな? たしかにダウンサイジングターボにはメリットはあるので、5万円ぐらいなら妥当かな、とは思うが。10万円では、高すぎる。
直噴ガソリンエンジンのPM2.5問題について
http://www.cordia.jp/blog/?p=1647
→ https://www.nies.go.jp/whatsnew/2013/20131216/20131216.html
> 直噴をすると,燃料の気化熱で燃焼室内が冷却されるため,ノッキングしにくくなります。例えばBMWでは,直噴ターボで圧縮比は10.5です。
http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1233641852
ミラーサイクルターボだと、圧縮比を高めるために、直噴にせざるを得ないようだ。
ターボでなくとも、マツダやホンダの燃費のいい車は、直噴であるようだ。(圧縮比を高めている。)
で、直噴にすると同時に、微粒子がいっぱい出るようだ。
日産は、一時は直噴をやめたが、ノートのスーパーチャージャーでは復活させた。
燃費優先の時代だと、直噴が増える傾向にある。と同時に、空気は汚染される。
また、エンジン内も汚染して、カーボンが付着するそうだ。トヨタの例。
→ http://minato-motors.com/blog/?p=6191#
いろいろ問題ありますね。
燃費なんて気にして 運転したことがないです 高性能キャブレターによるアクセル操作 体感したことがある運転者 少なくなりました
クルマに魅力を感じるのは オンナだからでしたね いとおしい対象
ターボは空気をたくさん送り込むんじゃなくて、圧縮するだけです。
「空気をたくさん送り込むと三元触媒が効かなくなります」というのは、ターボじゃなくて、リーンバーン。
今は、リーンバーンはなくなって、EGR が使われています。だけど、ターボはなくならない。
また、シリンダー容量より多くの空気を圧縮するという意味で「たくさん空気を送り込む」という表現は正しいと思います。
→ http://detail.chiebukuro.yahoo.co.jp/qa/question_detail/q1276856177
どちらも燃費削減のためにポンピングロスを下げるのが主要点。ちょっと専門的すぎるので、わからなくてもいいです。
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空気がたくさんというのは、ここでは空気の絶対量でなく、ガソリンと比較しての空気の多さです。「三元触媒が効かなくなります」というのは、空気の絶対量ではなくて、ストイキかどうかという問題です。これも、ちょっと専門的すぎるので、わからなくてもいいです。
いくら機械的特性(材料強度・硬さ)が高くても、材料というものは摩擦に弱い。
そのため潤滑油が存在する。しかしながら、それでも弱いので
コーティングをする。
しかし、日立金属が開発した自己潤滑性特殊鋼SLD-MAGICは
コーティングレスで摩擦に強いことが特徴。そのメカニズムは
潤滑油と鉄鋼材料が相互作用を起こし、グラファイト層間化合物(GIC)
という高性能な潤滑物質を作るためであることが、日立金属技報
2017で公表された(CCSCモデル、炭素結晶の競合モデル)。
これにより機械部品の設計は小型化され、摩擦損失と軽量化の同時
解決が見込まれ、低フリクションによる自動車の燃費向上に大いに寄与することが期待
されている。
つまり、「ダウンサイズはダメ。コストもかかるし、燃費も悪い。ただし大排気量のV6を直4にする場合は例外」と語っている。本記事の3カ月後ごろの各種インタビュー記事。(本項よりも後で出た記事だ。)
http://j.mp/2Id3w5A
この天才技術者のことは、下記記事で紹介されている。(スカイアクティブや HCCI の開発者)(本日記事だが、公開は期間限定)
http://tech.nikkeibp.co.jp/atcl/nxt/column/18/00134/030600024/