2015年02月24日

◆ ガン保険は保険か?

 ガン保険は保険か? いや、保険ではない。ただの詐欺だ。 ──

 ガン保険は割に合わない、という調査をした人がいる。
  → 宝くじ以下? がん保険の費用対効果を試算

 「確率と期待値」の考え方を応用して、統計的なガンの確率と保険支払額の掛け算で、金が戻ってくる期待値を考える。それと、自分が支払った額とを、比較する。すると、「負担した保険料が給付金として戻ってくる確率(還元率)」が、「還元率は最も高い40歳加入の男性でも42%、それ以外は32〜34%程度である」のだそうだ。
 つまり、3割から4割程度しか戻ってこない。会社の手数料がかかることを考えても、これは戻る量があまりにも少なすぎる。

 ──

 さて。以上の指摘は妥当だが、これを見て、批判する人がいる。「保険というものは、リスクに備え、リスクを分散させるためにあるのだから、不幸にぶつからなかった人が金を得られないのは当然だ」というふうに。
  → はてなブックマーク(人気コメント)

 しかしこれは、勘違いをしている。上の記事で示しているのは、「不幸にぶつからなかった人が金を得られない」ということではない。「不幸にぶつかった人が、あまりにも少しの金しか得られない」ということだ。つまり、話の方向性が逆だ。
 というわけで、批判者は論理的に勘違いをしている。誤読していると言ってもいい。

 ──

 しかし、他人の誤読を指摘するのが、本項の目的ではない。本項の目的は、「ガン保険は詐欺だ」と示すことだ。
 これはどういうことか? 

 そもそも、保険とは何か? 次のようなものだ。
 「大多数の人は不幸にはぶつからないが、例外的に不幸にぶつかる人がいる。その人だけが大金を得て、他の人は金を得ない。このことで、不幸の度合いを、人々で分かちあう(もしくは助け合う)」

 実際、自動車保険とか、生命保険とか、傷害保険とかは、上記の意味でまさしく有益な保険となっている。保険会社の利益が3〜4割ぐらいあって、保険会社がボロ儲けをしているという点を差し引いても、保険としての機能はきちんと果たされている。
 では、ガン保険はどうか? ガン保険は、上の意味では、保険としての機能を果たしていないのだ。なぜなら、「大多数の人は不幸にはぶつからない」ということはないからだ。むしろ「たいていの人は不幸にぶつかる」というふうになっている。
 ここで、「たいてい」というのはちょっと大げさかもしれないので、具体的に数字を示すと、「5割」である。つまり、「2人に1人」だ。そのくらいの頻度で、人々はガンになる。
 「がん」は怖い病気だとよく言われますが、具体的な統計をみてみましょう。生涯でがんに罹患(りかん)する確率は、男性58.0%(2人に1人)、女性43.1%(2人に1人)と言われています。
( → 価格.com - がんの発症率・生存率

 このページに詳しい統計データがあるので、よく読んでみるといいだろう。
 ともあれ、5割(男性に限っては 58%)の人々がガンになる。とすれば、「大多数の人は不幸にはぶつからない」ということはないのだ。
 ここで、話を簡単にするために、癌の罹患率がきっちり5割であると仮定しよう。その場合、原理的には、次のようになるはずだ。
  ・ ガンになった人は、払った金の2倍の金を得る。
  ・ ガンにならなかった人は、払った金をすべて失う。

 これで、つじつまが合うはずだ。(保険会社の手数料は別として。)
 一方で、冒頭の記事で示されているように、ガン保険の還元率は4割程度である。(残りの6割は、還元されずに、保険会社の収入となる。)
 とすると、次のようになるはずだ。
  ・ ガンになった人は、払った金の 0.8倍(= 2×0.4)の金を得る。
  ・ ガンにならなかった人は、払った金をすべて失う。

 ガンになった人は、払った金の2倍の金を得るはずだが、還元率が4割なので、実際には 2×0.4 に相当する 0.8 倍の金しか得られない。
 ガンにならなかった人は、もちろん、まったく金を得られない。
 これでは、ガンになってもならなくても、ただの損でしかない。

 整理すると、こうなる。
 (1) ガン保険に加入した場合。
 ガンになるかならないかは、五分五分。
  ・ ガンになれば、0.8倍の金を返してもらえる。
  ・ ガンにならなければ、金をすべて失う。
 (2) ガン保険に加入しない場合。
 ガンになってもならなくても、貯金した金はすべて自分のもの。(払い戻しの率は1倍。)


 要するに、ガン保険とは、「勝ちのない賭け」なのだ。五分五分という点では、丁半バクチによく似ている。だが、丁であれ、半であれ、どっちが出たとしても、必ず負けるのだ。
  ・ 当たれば  …… 賭けた金の2割を奪われる。
  ・ はずれれば …… 賭けた金の全額を奪われる。

 どっちみち、金を奪われてしまうのだ。そういう意味で、「勝ちのない賭け」である。なのに、「お得ですよ」もしくは「保険で安心を買えますよ」と見せかけるのだから、これは詐欺であるにすぎない。

 ──

 ただし、上記の話にはたった一つ、例外がある。それは、次の場合だ。
 「ガンになる確率が低い場合。つまり、年齢が50歳未満である場合」
 この場合には、たいていの人はガンにならない。つまり、たいていの人は不幸にならない。ゆえに、普通の意味の「保険」が成立する。

 従って、次の形であれば、「保険」があってもいい。
 「1年また数年間だけの、掛け捨てのガン保険」(50歳未満)
 これならば、ガンになる人が少ないので、保険は成立する。

 一方、これに反する形であれば、保険は成立しない。たとえば、次のようなものだ。
  ・ 掛け捨てではない終身保険
  ・ ガンだけでなく多様な疾病が対象
  ・ 50歳以上の年齢を含む

 このような場合には、「たいていの人は不幸にならない」という原則を満たさないので、保険が成立しない。単に保険会社に多額の金を奪われるだけだ。つまり、「勝ちのない賭け」となる。

 ──

 まとめ。

 普通のガン保険は、保険というよりは、詐欺である。(特に高年齢や生涯の保険の場合。)
 その理由は、ガンになる人が5割もいるからだ。これでは保険にならない。
 一方で、還元率が4割しかない、という難点がのしかかる。
 そのせいで、普通のガン保険は、「勝ちのない賭け」であるにすぎない。
 例外は、50歳未満における「掛け捨て」のガン保険だけだ。
 (これならば普通の保険になる。)



 【 関連サイト 】

 ガン保険がろくでもない詐欺だ、ということは、次のページからもわかる。
  → 「がん保険」がんになってもカネは出ない
  → 癌死亡保障はまず満額貰えません
  → 乳がんは乳がんでも、生命保険が降りない癌というものがありまして



 【 追記 】
 余談だが、ガンになってから金をもらっても手遅れだと思う。(つまりガン保険に加入する意義がない。)
 ガンになっても、たいていの治療には国の健康保険が利く。高額医療の補助制度もある。だから特に多額の金が必要となることはない。
 一部、例外的に、300万円ぐらいの金がかかる健康保険外の治療もある。重粒子線治療がそうだ。ただ、重粒子線治療は、「効果があると期待されている」と解説されているように、期待はされているが、効果ははっきりとしていない。(だから健康保険も認定されていない。)つまり、金をかけたから命が助かる、というわけではないのだ。新しい抗ガン剤と同様で、「莫大な金がかかるが、効果は不確実。患者の期待ばかりが強くて、藁にもすがる期待に乗じて、多額の金を徴収するが、結局は死んでしまう」というのが普通だ。
 人には寿命というものがある。永遠の生命などはあり得ない。遅かれ早かれ死は来るのだ。そのときになってあわてふためいても手遅れなのだ。
 では、どうするべきか? 普通の健康保険のガン治療だけで十分だ。それで助かるならそれで良し。それで助からなければ天命だと思って受け入れればいい。これをガン保険で何とかしようと思ってジタバタすれば、保険会社の餌食になるだけだ。食い物にされるだけ。
 それよりむしろ、若くて健康であるときに、その金を十分に活用すればいい。死ぬ間際になって効果のわからない治療法に大金を払うよりは、ちゃんと生きているときに自分の生命を充実させればいい。たとえば? 美食でもいいし、旅行でもいいし、趣味でもいいし、女遊びでもいい。100万円もあれば、結構楽しめるだろう。
 ただ、世界でもトップクラスの金持ちであるジョブズは、そういうことには金を費やさなかった。彼は最後まで仕事のために突っ走った。なぜ? それこそが彼の望みだったからだ。それこそが彼の生命を充実させることだったからだ。
 どんな生き方をするにせよ、自分の生命を充実させることにこそ、最高の意義がある。一方、ガンになったあとで保険金をもらっても、その使い道は、死後の遺産を増やすことだけかもしれない。あるいは、病院に多額の金を渡して病院の売上げに貢献することだけかもしれない。

posted by 管理人 at 21:37 | Comment(3) | 一般(雑学)2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
最後に <FONT COLOR="#dd0000">【 追記 】</FONT> を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2015年02月25日 06:47
なんか・・・ほんと涙出ますわ。
Posted by nira at 2015年02月25日 12:50
この記事へのコメントではありませんが、私は貴方の
物理.天文の記事の大ファンです。最近、物理の記事
がないのが、寂しい限りです。特に超球理論は秀逸だ
と思っています。
Posted by 坂本 昌弘 at 2015年02月26日 18:59
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