箱根駅伝で駒大の最終走者がふらふらになってゴールに倒れ込んだ。私も見ていたが、ひどい状況だった。山の途中で前屈みにしゃがみ込むようになったあと、かろうじて歩き出して、ジョギング状態で走ったが、あまりにも遅くて、次々と抜かれてしまう。最後のころは、ゴール前でまたも抜かれたあと、またも前屈みにしゃがみ込むようになって、それからまた起き上がった。ゴールに入ったあとは、崩れて、運ばれていった。
要するに、まともに走れない状況。スポーツマンどころではない。では、なぜ? 疲労で? いや、違う。低体温症だ。
もうろうとした駒大・馬場が路上に崩れる。5区20キロすぎ。幾度も手を付き、再び立ち上がって動かぬ足を前に運んだ。ゴール直前でも転倒。最後は倒れ込むようにテープを切り、起き上がれなかった。
「低体温症のようになった」と大八木監督。「5キロくらいまでに汗をかき、山に入って、だんだん体が動かなくなった」。箱根の寒暖差は、前回5区3位の3年生から体温と勢いを奪った。
( → 産経ニュース )
芦ノ湖へ向けた山登りで、箱根の山の寒さに馬場が低体温症(大八木監督)を発症。2位を走っていた20キロ過ぎで転倒すると、残りの約3キロはフラフラ状態で芦ノ湖へ。ゴール直前でも2度の転倒があったが、倒れ込むようになんとかゴールに飛び込んだ。
大八木監督は「最後はよく頑張りました。意識がなくなっていた。山に入って急に寒くなり、体が動かなくなったようだ」と話した。この日の箱根は前日から雪が降り、朝から冷え込んでいた。
( → nikkansports.com )
では、低体温症とは? 実は、生命にも関わる、重大なものだ。そのとき自体では生きていても、以後の処置の仕方しだいでは、生命に関わることもある。
Wikipedia から引用しよう。
対処法・軽度
とりあえずどんな方法でもよいので体を温めるようにして、温かい甘い飲み物をゆっくり与える。ただし目が醒めるようにとコーヒーやお茶の類いを与えると、利尿作用で脱水症状を起こすので避ける。
アルコール類は体は火照るが、血管を広げて熱放射を増やし、さらには間脳の体温調節中枢を麻痺させて震えや代謝亢進などによる体温維持のための反応が起こりにくくなるため、絶対与えてはいけない。
リラックスさせようとしてタバコを与えるのも、末梢血管が収縮して凍傷を起こす危険がある。眠ると代謝や震えによる熱生産が低下するので、十分に温まるまでは覚醒状態を維持させる。
( → 低体温症 - Wikipedia )
軽度だからといって安心できないわけだ。素人が下手にいじると、状況はひどく悪化する。
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そもそも、この問題は避けられたはずだった。
(1) ウインドブレーカー
途中で山中に入って急激に寒くなったというのだから、山中のところどころに、ウインドブレーカーを用意しておくべきだった。そして、選手が寒さを感じたら、いつでもウインドブレーカーを着用できるようにするべきだった。
また、場合によっては、サービスマンがそばに出向いて、手渡しすることもできるようにするべきだった。直接手渡しするのが(他人の介助ということで)まずいのであれば、走者の10メートル手前に「臨時サービス所」を設置して、そこからウインドブレーカーを入手できるようにするべきだった。
いずれにせよ、人命や健康が第一である。人を死なせたり重症にさせてまで守るべきスポーツ・ルールなどはない。特に、今回の例で言えば、スポーツルールというよりは、ただの大会の運営のまずさにすぎない。まともに運営をするべきだ。
(2) ウインドブレーカーの効果
「ウインドブレーカーなんかに効果があるのか?」と疑う人もいるだろうが、効果ははっきりとある。そのことは、今回のゴール時の写真を見ればわかる。
まずは、駒大の選手。
→ 駒大のゴール
→ 駒大の途中
2番目の写真を見ればわかるが、駒大の選手はランニングシャツだが、青学の選手は半袖である。腕のチューブを考えれば、青学の選手はほぼ完全防備だが、駒大の選手はほとんど裸みたいなものだ。(手袋もない。これも重要な差だ。)
では、他の大学ではどうか? 写真の一覧がある。
→ 時事通信 写真特集
この写真は 10枚以上もあって大変だから、サムネイルを下記に記しておこう。
見ればわかるように、どの大学も半袖である。(例外は駒大のほかには、アフリカ人のいる1大学だけであるらしい。)
半袖の場合、腕のチューブも考えると、長袖も同然である。また、たいていは手袋もしている。
ここから容易に、次の結論が得られる。
「駒大の選手だけが低体温症になったのは、駒大の選手だけがランニングシャツで、手袋もなく、裸みたいなものだったからだ」
彼が低体温症になったのは、彼のせいではない。半袖シャツを着せなかった監督のせいだ。監督の作戦ミスのせいで、低体温症になってしまって、おまけに生命を危険にさらしかねない状態になってしまったのだ。
そしてまた、このことは、「ウインドブレーカーがあれば低体温症にはならなかった」ということを、明白に示している。
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なお、ウインドブレーカーといっても、いろいろとある。アマゾンで検索すると、「裏起毛」というような高級品がいっぱい並んでいるが、スポーツで使うのはそういうものではなくて、風を通さない薄っぺらな素材だけでできたものを使う。
私も一つ持っている。(下記のようなもの。ただし前ファスナー付き。値段は 1000円程度。)
こういうのは、とても軽量なので、コンパクトに収納できる。山登りのときには、万一のために、リュックに入れておくといい。(雨で濡れて体温を奪われるのも防げる。)
ま、とにかく、「駅伝で死者」なんてことが起こらないように、大会運営者も、チームの監督も、きちんと対処してもらいたいものだ。
今回の事例には、はっきりとした原因があった。それを理解して反省することが大切だ。
【 関連サイト 】
→ 長野・天狗岳で東京の男性死亡 低体温症で約1週間前に死亡か
低体温症で人が死ぬこともあるわけだ。

→ http://mainichi.jp/journalism/listening/news/20141227org00m050015000c.html
以下、引用。
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高い山を上り下りする箱根のコースは世界のロードレースとしては極めて特殊で、記録は公認されない。その過酷な坂道を走る走者を「山の神」などと称賛すればイベントは盛りあがるだろうが、そんなレースを全国の若いランナーが目指せば、日本の長距離界はさらに優秀な人材を失うだろう。