「言葉には、複数の語義があるのではなくて、一つの基本的な語義が、文脈によって多様に解釈されるだけだ」ということだ。 ──
これは、前項 のコメント欄に記したことだが、大切なので、以下に転載する。
> 「爆弾」と「ホームラン」を表す'bomb'を両意で引っかけて
「言葉には複数の意味がある」と思う人が多いけれど、基本的には、言葉は一つの意味しかありません。それが幅広い領域で別々の形で使われますが、別々の意味として使われるのではなく、共通の一つの概念で理解されます。
「爆弾」と「ホームラン」は別々の概念ではなくて、ひとつの「爆発的なもの」という概念で理解されます。爆弾はもちろん爆発する。ホームランも同様で、打者がドカンと打ってボールを遠くに飛ばす。それは爆弾と同じ概念(つまり爆発的なもの)で理解されます。
ここで、「爆撃機」は、「爆弾を落とすもの」という意味ですから、「爆発的なもの」という概念はありません。爆撃機は、それ自体は爆発することもないし、何かを爆発させることもありません。(爆発するのは爆弾であって、爆撃機ではありません。)
したがって、ブロンクス・ボンバーズは「爆発するもの」ではあっても、爆撃機ではあり得ません。(敵を爆撃するのならともかく、自分自身が爆発するからです。)
一方、「大砲」は、「発射するもの」という概念で理解されます。だから、砲弾を発射したり、野球のボールを発射したり、……という共通の概念で、ホームランバッターを「大砲」と呼ぶことが可能です。ここでは、鉄の大砲とホームランバッターという別々の概念があるというよりは、共通する一つの概念ゆえに共通する言葉で呼ぶわけです。
それぞれの言語は、言葉の意味の文節の仕方が異なります。日本語の「青」という言葉と、英語の「青」という言葉は、意味する領域が微妙にズレています。同様に、「爆撃隊」「 bombers 」という言葉も、意味する領域がズレています。「爆撃隊」「 bombers 」には、共通する領域もありますが、共通しない領域もあります。ブロンクス・ボンバーズは、英語の「 bombers 」の領域には入りますが、日本語の「爆撃隊」の領域(広義の領域)には入りません。
一方、ホームランバッターは、日本語の「大砲」の領域(広義の領域)に入ります。
ここでは、「言葉の広い領域に入るかどうか」が問題になっています。「二つの異なる語義の一方を取る」というようなことではありません。語義というものは、複数のものが別々に並立しているのではなくて、共通する一つの基本概念が、さまざまな文脈で微妙にズレながら適用されるものです。あるときには軍事の領域で。あるときには野球の領域で。……領域が異なると、具体的な意味内容(狭義の意味内容)はズレますが、基本的概念が変わるわけではありません。
( → ブロンクス・ボンバーズの訳は? )
話の前提は、前項のことだ。詳しくは、前項を読んでからにしてほしい。
