政府は、脱法ハーブ(脱法ドラッグ)を、「危険ドラッグ」というふうに呼び方を変えた。こういう名前の変更には熱心だ。(「母さん助けて詐欺」もそうだが。どちらもあまり定着していない。)
しかし、名前を変えることには熱心でも、規制することには熱心ではない。いまだに多くの脱法ハーブが出回っている。たとえば、下記だ。
→ 合法パウダー合法ハーブ通販ファンタジスタ
ちょっとネットで検索しただけでも、簡単に見つかる。こういうふうに「脱法ハーブ」が堂々とネットで販売されており、誰でも簡単に購入できる。政府はそれを規制できない。というか、規制する気もない。「何とか規制してやりたい」と必死になって考えたあげくの名案が、「危険ドラッグ」への名称変更だ。呆れるしかない。
警察は? もちろん、何もしないで野放しだ。警察がやっているのは、せいぜい、無実の人を虚構の犯罪で逮捕することぐらいだ。たとえば、こんなふうに。
→ 踏切前で停止したのに警察が「止まってねーぞ」と難癖
では、警察が規制しないのは、なぜか? それは、規制したくても、規制する法律がないからだ。
現状でやるとしたら、薬物を指定するのが普通だが、これは無効となっている。
脱法ドラッグそのものの取り締まりは難しい。厚生労働省令による指定薬物は「1300物質以上」あり、これらの物質が含まれていれば、違法として販売や授与などした場合に摘発できるが、分子の一部を、別のものに置換することで、指定外の物質となってしまう。
似た作用を持つ物質を一気に規制しようと、昨年、包括指定という扱いも始まった。…… 一気に数百通りの物質を指定できた(医療用途物質など一部は除外)。
しかし、いくら新たな物質を指定しても脱法ドラッグやハーブにまぜる薬物からそれを外し、代替物質を使えば“合法”になってしまう。まさにいたちごっこかモグラたたきで、撲滅は困難を極める。
( → 産経 2014.7.19 )
まさしく、「脱法」という手法で、法律の目をかいくぐっている。
そこで、薬事法で規制できないか、という案もある。
脱法ドラッグを麻薬に指定すれば、より罰則が重い麻薬取締法を適用できるが、麻薬に指定するには動物実験で依存性まで明らかにする必要があるという。
そこで、化学構造の一部を変える「いたちごっこ」対策として、国は指定薬物に定める前の脱法ドラッグでも、中枢神経への作用が強いと立証できれば未承認の「医薬品」とみなして、薬事法で取り締まる検討を始めた。
( → 朝日新聞 2014年7月17日 )
しかし、これは無理筋だ。というのは、薬事法で規制するには、「薬効」を謳っていることが必要だが、脱法ハーブは「薬物」としては販売されておらず、「香料」として販売されていることがほとんどだからだ。
──
では、どうすればいいか? まずは、本質を考えるといい。
政府は「危険ドラッグ」という名称を使って、危険性を重視した。しかし、危険性だけなら、普通の麻薬と区別は付かない。それでは物事の本質を見誤る。
脱法ハーブの本質は、やはり「脱法」なのである。だから、この本質に着目して、「脱法」という点から規制することを考えるべきだ。
では、どこに規制を書けるか? 次の記事が参考になる。
→ 住宅街に工場、稼ぎ月1億円
この記事からも明らかなように、初歩的な方法で簡単に脱法ハーブが製造され、しかも月1億円というボロ儲けだ。ここでは金銭的利益が主目的となっている。
とすれば、やたらと「懲役刑」をかけて規制しようとするより、「利益を出せなくする」というふうにすること(経済的規制)が有効だ、とわかるだろう。
具体的には、次のことを提案する。
「脱法ハーブには、高率課税をする。たとえば、1グラム1万円の課税」
このように高率課税をすれば、ボロ儲けの規模は大幅に減少する。たとえば、売り手が販売額を10倍にすれば、売上げの規模は 10分の1ぐらいに減少するだろう。(買い手の払える金額はほぼ一定だからだ。)……こうして、ボロい儲けが大幅に縮小するので、脱法ハーブの販売総額を大幅に縮小させることができる。(皆無にはならなくてもいい。犯罪を皆無にする必要はない。世の中には犯罪というものは常にいくらか存在する。)
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上記のアイデアを実行するには、前に述べた別項の手法が参考になる。
→ 合法ハーブを取り締まるには
ここでは、次の方式を提案した。(再掲する。)
(1) 価格規制
合法ハーブは1グラム数千円という価格が普通だ。そこで、このような高価格の植物については、原則、取引を禁止する。具体的には、次の基準。
「グラムあたり 100円を超える販売」
これについては、原則、禁止する。
( ※ このことで、普通の野菜類は、免除される。)
(2) ホワイトリスト方式
上の (1) の方式では、香辛料が含まれてしまう。たとえば、サフランなどは、とても高価だ。そこで、香辛料を除外するために、(1) に該当するもののについては、ホワイトリスト方式で除外する。たとえば、「サフラン」「ローレル」などを次々とホワイトリストに登録する。ホワイトリストに登録されたものについては合法化される。
※ ホワイトリストへの追加は、行政の裁量で簡単に。
以上の (1)(2) がある。
この方法を適用して、「脱法ハーブ」を「高額植物」という形で定義するといい。その上で、「高率課税」という処置を執る。
すると、どうなるか? 規制する仕方は、厚労省による「危険物の規制」から、国税庁による「脱税の規制」という形になる。まともに金を払っていない業者には、高率で課税追徴すればいい。
さらに、「脱法ハーブ特別課税」みたいな形で、特別な「脱税対策」をするといい。たとえば、こんな感じ。
・ 1グラム 100円以上の植物には、1グラム1万円の課税
・ 納税すれば合法だが、納税しなければ脱税。
・ 1万円の脱税につき 10万円の追徴課税。
こうすれば、1グラムの販売と脱税のたびに、10万円の追徴課税ができる。1000グラムを販売すれば、1億円の追徴課税だ。厳しい! こうして、経済的な方面から、悪を激減させることができる。
比喩的に言うと、これは、アル・カポネの逮捕に似ている。彼を刑事罰でとらえようとしても、どうしてもとらえることができなかった。しかし、脱税という方法でなら、あっさり逮捕することができた。
これまで数々の殺人を指揮しながら、カポネが殺人で逮捕されなかったのは、シカゴ警察を買収していたからだと言われる。実際、警察におけるカポネの影響力は大変なもので、シカゴ警察は手が出せないような状況だった。
カポネを再び刑務所に送るために、今度は殺人ではなく酒の密売と脱税という面から捜査が開始された。カポネは税金を払ったことがないのだ。
( → アル・カポネ06 )
ここには、「カポネ問題は警察だけではなく、政府も乗り出すこととなった」という記述がある。その通り。警察だけに任せるべきではない。国税庁が乗り出すべきなのだ。これこそが最も強力な権限を持つからだ。
ひるがえって、「薬効の面から規制する」というのは、隔靴掻痒の感がある。これはいわば、「犯人を殺人犯や傷害犯として逮捕する」という方針だが、あまりにも見当違いだ。犯人は客を殺したいわけではないし、傷つけたいわけでもない。単に金儲けをしたいだけだ。とすれば、「薬効の面から規制する」のではなく、「金銭の面から規制する」のが本質的だろう。
なのに、「危険ドラッグ」という名称を使って、危険性ばかりに着目すると、物事の本質からどんどん逸れてしまう。これではとうてい犯人はつかまらない。
脱法ハーブの本質は、あくまで「脱法」と「金銭利益」である。この面から捕らえることこそが大切だ。「危険ドラッグ」という名称は、相手の悪質さを指摘したいのだろうが、そういうふうに、「自分は正義だ」というふうにばかり思っていると、自己陶酔に陥って、肝心の規制ができなくなる。
脱法ハーブにおいて狙うべきことは、犯人の逮捕ではない。悪の根絶ではない。では、何か? 被害者の健康を救うことだ。そこを、警察も厚労省も理解できていない。だから、「危険ドラッグ」という名称を使うことで、利用者に警鐘を鳴らそうと狙う。つまり、利用者を何もわからない(危険性を理解しない)ただの阿呆だと思っているわけだ。思い上がりも甚だしい。
一般に、煙草であれ、酒であれ、何らかの危険性はある。それでも利用者はそれを利用する。ここで「危険性を教えて上げれば、馬鹿な利用者は酒も煙草も取らなくなる」と思うのは、思い上がりも甚だしい。利用者は、愚かだから酒や煙草を取るのではない。依存性ゆえに取るのだ。そして、その依存性は、なかなか止まらない。
ここで「危険性を教えて上げれば問題は解決」なんて思うような頭は、どうしようもない。頭がラリっているのも同然だ。「危険ドラッグ」という名称を決めた人は、何か飲んでいるんじゃないか? (^^);
なすべきことは、危険性を教えることではない。購入者が購入できなくなるようにすることだ。そのためには、売る人が売れなくなるようにするべきだ。そして、そのためには、成分の分析が必要となるような厳密な方法ではなく、値段だけで処罰できるような簡便な方法がいいのだ。
警察や政府が、いつまでたっても被害者を救えないのは、犯罪者を罰することばかり考えているからだ。彼ら(警察や政府)に必要なのは、「正義をなす」という自己陶酔ではなくて、「被害者を救う」という優しさなのである。……とはいえ、それは、警察や政府には最も欠けているものだろう。
[ 付記1 ]
ここでは「課税」という方式を示した。これに対して、「金を払えば麻薬を許すということか?」という疑問が来るだろう。それには「ノー」と答える。
課税は合法化を意味しない。別のことである。仮に、「殺人税」というものがあったとして、その場合には、殺人をすると税金を取られるが、だからといって、殺人が合法化されることにはならない。ま、「殺人税」というのは、「罰金」と同じである。
というわけで、「課税」は「合法化」を意味しない。
似た例はある。自動車課税や酒類課税はあるが、だからといって自動車運転と酒飲みの双方が合法化されるとは限らない。実際、酒飲みの運転は非合法である。「自動車税と酒税を払っているんだから、酒酔い運転をしてもいいはずだ」という理屈は成立しない。
また、未成年者が酒や煙草を買うことも同様だ。「買ったときに消費税を払っているから、買うことは合法だ」ということは成立しない。
税を払うということは、合法性を意味しない。両者は別のこと。悪に対しては、通常の規制と、高率課税とを、併用できる。それだけのことだ。
[ 付記2 ]
どうせなら、大麻の合法化の方が、有効かもしれない。大麻なら、有害性があまりないので、これを合法化することで、危険ドラッグの使用量を激減させることが可能だろう。悪をもって悪の対抗とする。毒を以て毒を制す。そんな感じ。
実は、大麻の合法化というのは、それほど悪いことではない。下記の記事がある。
米紙ニューヨーク・タイムズ(NYT)は27日、大麻の所持や使用を禁止する米国の連邦法を撤廃し、禁止するかどうかは州に委ねるべきだと主張する社説を掲載した。かつて、米国で制定された禁酒法と大麻を禁止する法律を比較し、「アルコールよりずっと危険性が低い物質を禁止するために、社会に大きな損失をもたらしている」と述べた。
NYT社説は、2012年には若い黒人男性を中心に約65万人が大麻所持で逮捕されるなど、社会的な影響の大きさを指摘。さらに、中毒や依存症の問題がアルコールやたばこと比べて比較的軽いと指摘。「健康な成人が少量の大麻を使用することによるリスクはなさそうだ」と述べ、国としては合法化すべきだと主張した。
( → 朝日新聞 2014-07-28 )
今回に即して言えば、大麻と脱法ハーブは似た効果があるので、大麻が脱法ハーブに置き換わることは可能だ。しかも、健康への被害は、大麻の方が圧倒的に少ない。
「自由放任」とは言わないが、一定の規制の下でならば、大麻を合法化してもいいだろう。
( ※ 規制の例。個人カード導入。氏名登録と購入量の履歴管理。購入量に応じた重課税。)

大麻は限定許可している国も多いので毒物摂取より良いでしょう。
予期しない作用が出すぎですよね
このロットが消費され尽くさない限り
まだ続くのではないでしょうか
報道によると、規制が進むにつれて、使いやすいものは使えなくなり、使いにくいもの(不純物の多いもの?)が使われるようになるので、副作用がどんどん出るようになったとのことです。
単に死者を減らすのならば、当初の脱法ハーブを合法化して、そっちを使ってもらえばいいのだが、そうはならない。規制を強めれば強めるほど、かえって死者・健康被害者が増えるという逆効果になっている。
http://www.nikkan-gendai.com/articles/view/newsx/151827
裏DVDのほうがよっぽどマシだと思いますが、このへんでどうにかできませんかね。
→ http://www.tokyo-np.co.jp/article/living/life/CK2014073102000177.html
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> 危険ドラッグの主な化学物質は、大麻に似た作用のある合成カンナビノイド系と、覚せい剤に似たカチノン系。これらを乾燥した植物片に混ぜると危険ハーブになる。これらの依存性や有害性は十分に解明されていないが、業者は規制逃れのために新たな物質を作り、それらが複数混ざり合う商品も。
合成カンナビノイド系の化合物をマウスに投与した実験では、依存性は大麻の十〜二十倍。脳神経細胞に与えると神経線維が切れたり、細胞が減ったりする有害性が確認された。
→ http://mainichi.jp/shimen/news/20140802ddm001040136000c.html
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警察庁は1日、危険ドラッグに絡んで今年上半期(1〜6月)に摘発された事件と人数が、それぞれ前年同期比2・5倍増の128件、同2・2倍増の145人に上ったと発表した。 一方で、販売店舗の関係者など供給側の摘発は16件、29人にとどまっており、同庁は流通ルートの摘発を強化する方針。
危険ドラッグ吸引後の暴走事故など交通関係の違反で摘発されたのは33人。
単純所持と使用で摘発されたのは、それぞれ28人、2人だった。
警察庁によると1グラム7万円程度の覚醒剤に対し、危険ドラッグの葉片は3グラム程度が4000〜5000円で流通しているとされ、担当者は「安価で入手がしやすいことが薬物経験のない人が手を出している理由ではないか」とみている。毎日新聞の調査では11年以降の約3年半で、危険ドラッグの吸引などが原因で死亡したとみられる人は40人いたことが判明している。
入手先については約6割が街頭店舗、約2割はインターネット経由だった。店舗とネットでの販売を兼ねている場合もあるという。