慢性赤字の北総鉄道は、運賃が高すぎる。このことは以前から問題になっていたが、このたび代替バスが出た。記事を一部引用しよう。
(高運賃に)耐えかねた住民が行動に出た。別の鉄道と接続する乗換駅まで直行バスを走らせる社会実験をした。
実験に協力した鎌ケ谷観光バスは4月からの路線バス運行を計画。乗降客が多い千葉ニュータウン中央駅と新鎌ケ谷駅を往復する直行便を月?金曜に1日約25便、片道300円で走らせる。鉄道で所要10?11分の区間がバスだと25分。それでも240円安い。
北総鉄道を使うと……都心まで出ると片道千円以上がかかる。
( → 朝日新聞 2014年2月7日 )
ここで、代替バスというのは、うまい案だと思える。これで住民はかなり助かりそうだ。
とはいえ、これが進むと、乗客がどんどん減るので、北総鉄道はますます客が減る。すると北総鉄道はますます値上がりするだろうし、最終的には客がなくなって倒産しそうだ。「バスを使えば安上がり」と思ったら、「北総鉄道そのものがなくなってしまった」という結果になりそうだ。
では、どうすればいいか?
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この件については、前にも論じた。
→ 北総鉄道の運賃の謎 (2013年03月26日)
ここでは、高運賃の理由を、次のように説明した。
「東京 ? 成田 間は、JR との競争があるので、料金を引き下げる。北総の部分は、競争相手がいないので、料金を引き上げる。これはつまり、『独占区間については料金を人為的に引き上げるという操作をしている』ということだ」
だから、この問題の本質は、「独占区間における不当な料金設定」であり、一種の「独禁法違反」なのである。
高運賃の理由を説明している。簡単に言えば、スカイライナーを過度に割安にするせいで、北総線の運賃が過度に高くなっている。だから、スカイライナーにも応分の負担をしてもらえばいい、という主張だ。
ただ、よく考えてみると、これによって下がる額は、たいしたことはない。上記項目では、次のようにシミュレーションした。
適正料金は、次のようになるだろう。「北総線は、現状の1割引。京成スカイライナーは、現状の3割高(北総線の部分のみ)」……つまり北総線は、下がるとしても、1割にすぎない。現状に比べて、大幅に下がるわけじゃない。
これは、本質的に解決とはならない。そのことは以下でわかる。
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そもそも、本質的に考えよう。
運賃が高いからと言って、料金を下げれば、赤字が拡大する。
一方、赤字を出すまいとして、料金を高めに設定すれば、住民が増えないので、乗客総数が増えないので、かえって赤字は拡大してしまう。
次の記事もある。
北総線の千葉ニュータウン中央駅から都営地下鉄浅草線の日本橋駅まで、半年間の通勤定期代が24万1660円。……通学定期の割引率も低く、同区間の半年間の定期代は10万5800円。……こうなると、家賃や住宅ローンの支払いが多少高くても、都心に住み替えたほうが良さそうだ。
( → なぜ北総線の運賃は高いのか “円満解決”の方法を考える )
あまりにも運賃が高額だから、住民は来ないし、むしろ、住民は逃げ出す。これでは「人が来ない」と「運賃が高い」ということが、「悪循環」の状態となってしまって、いつまでたっても抜け出せないことになる。
要するに、現状のままでは、まったく解決ができない状況だ。では、どうすればいいか?
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冒頭の朝日の記事には、次の記述もある。
北総鉄道は……運賃が割高だという声に対しては「有利子負債は800億円を超える。耐震補強や車両更新などの設備投資を考えると値下げをする状態ではない」と説明している。
北総鉄道は……千葉県が北西部で1960年代に開発を始めた千葉ニュータウンの計画人口14万3千人を都内に運ぶ路線として79年に開通した。だが、石油ショックやバブル崩壊の影響で事業は縮小。人口は9万3千人にとどまったうえ、建設時の有利子負債が経営を圧迫し、運賃の値上げが繰り返された。
(会社は)京成電鉄や千葉県、千葉県松戸市など沿線自治体が出資し、1972年に設立された。千葉県鎌ケ谷市に本社がある。資本金249億円。建設に伴う借入金の利払いによって長く赤字が続き、2000年度から黒字に転じたものの、累積赤字は216億2900万円(13年9月中間決算)にのぼる。
ここから明らかなのは、「計画そのものに無理があった」ということだ。上記の出資者が、あまりにも楽観的な見通しを立てて、過大な投資をした。そのせいで、巨額の赤字に悩んでしまっている。その後遺症が続いているわけだ。
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ここまで判明すれば、解決方法もわかる。通常の経済方針に則って処理すればいいのだ。つまり、こうだ。
「バスが通れば、北総鉄道は倒産するのが不可避である。また、常識的な適正運賃にしても、北総鉄道は倒産するのが不可避である。したがって、北総鉄道は、倒産させるべきだ。つまり、出資者や融資者には赤字負担(債務不払い)をしてもらう。その後に、会社更生法の下で、再建する。巨額の累積赤字については免除されて身軽になった状態で、電車の運行のために必要なコストだけを払う形で、適正運賃に設定し直す」
このようにすれば、運賃の引き下げとともに、沿線の人口が増える。すると、鉄道会社は黒字化して、利益を出す。利益を出せば、会社の資産価格は上昇する。株式総額も上昇する。そのことで、出資者には利益が入る。その利益で、当初の倒産のときの赤字負担の一部を埋める。
どうです。まるで手品みたいなうまい方法だ。これによって、すべては正常化する。
・ 運賃は適正水準まで大幅に下がる
・ 沿線の人口は上昇する
・ 出資者は、当初は赤字だが、あとで一部回収できる
・ 沿線人口の増加により、自治体には税収が入る
こうして、めでたしめでたし、となる。そして、そのために必要なのは、ただ一つ。「経済常識に従って、当然の処置を執る」ということだけだ。つまり、「倒産」と「会社更生法による再建」である。これだけのことで済むのだ。
【 関連サイト 】
私の方針とそっくりなアイデアを立てた人もいる。
本項の話を考えたあとで、ネットを検索したら、先に示したサイトが見つかった。
→ 杉山淳一の時事日想:なぜ北総線の運賃は高いのか “円満解決”の方法を考える
ここでは、「北総線の会社保有と電車運行を別会社に分割する」という方針が立てられている。これは、実質的には、私の述べた方針と同じである。ただし、赤字は顕在化せず、「赤字会社の維持」という形で赤字を潜在化したままとなる。
方式は異なるが、実質的な意味内容は、本項に主張と同様だ、と言えるだろう。ただ、これだと、「赤字路線の運賃を引き下げる」ということの道理が通りにくい。実質的には税金を投入することになるから、「なぜ北総線ばかりに巨額の資金を投入して値下げする必要があるのか」という批判に答えにくい。行政の裁量でやるには、道理が通らないのである。
そこで、道理を通すために、「倒産企業の出資者が損失負担をする」という形ではっきりと明示する方がいい。これならば道理が通る。恣意的な赤字負担とはならない。
その意味で、私としては、きちんと倒産処理をした方がいいと思う。
ただ、説明して納得してもらえるのであれば、「混乱をなくす」という意味では、赤字を潜在化したままの方がスムーズに行くだろう。
どちらがいいかは、一長一短となる。
( ※ 上記のサイトには、列車の編成を帰るというふうな形で、コストを削減する案も出ている。しかしまあ、それは細かな話だし、コスト的にもたいした影響が出ることはあるまい。根源的には、倒産か否かというような、ドラスティックな大規模な処置が必要だ、と思える。……そして、そのことで、先にも述べたように、劇的な改善が可能となる。蟻地獄状態による沿線の廃墟化を免れ、沿線の発展が可能となる。)
【 関連項目 】
この件については、前にも論じた。
→ 北総鉄道の運賃の謎
