2012年11月13日

◆ テレビの売上げが激減

 テレビの売上げが激減している。その理由は? また、そこからどんな教訓を得るか? ──
 
 地デジ移行後、テレビの売上げが激減している。そのことはすでに知られているが、具体的な数値が出た。
 《 テレビ需要激減、家電量販3社減収 9月中間 》
 大手3社の2012年9月中間期の業績が出そろった。
 「戦後、家電量販業界が生まれて以降かつてないほどの低迷だ」。ヤマダの岡本潤副社長は記者会見で語った。
 東日本大震災の被災3県をのぞく地デジ移行が完了した昨年7月まで、テレビは売れた。だが、ヤマダの12年9月中間期のテレビ売上高は前年同期の3割にとどまる554億円に激減。
 家電エコポイント制度による需要の先取りに、デジタル家電の価格下落も重なった。パナソニックやシャープら家電メーカーの苦境を裏付ける結果になった。
 テレビはこれまで売上高全体の2割近くを占めていたため、各社の業績を直撃。

( → 朝日新聞 2012/11/09
 《 家電量販3社中間決算、大幅減益 テレビ販売は7割減 》
 ヤマダの岡本潤副社長は「地デジ移行と家電エコポイント制度が昨年の同時期に行われ、大きな需要の先食いになった」と指摘。節電・省エネ性の高いエアコンなど「白物家電」は堅調だったが、テレビの不振を補えなかった。
( → 産経 2012/11/09
 ──

 記事にも示してあるように、「地デジ移行と家電エコポイント制度が需要の先食いになった」ことが理由だ。大きなデメリットをもたらしたわけだ。
 では、どうするべきだったか? 

 (1) 地デジ移行

 地デジ移行は、「完全移行」をやめるべきだった。地デジの放送開始時期は同時期であってもいいが、アナログ放送も併用するべきだった。といっても、併用にはコストがかかるから、「民放が任意でやる」という形にするべきだった。この場合、多くの民放は併用しないだろうが、1社ぐらいは併用しただろう。その場合、その1社は、残っているアナログ需要を独占できるから、視聴率を稼げる。わずかなコストによって、多くのCM売上げを得る。これは十分にペイする。この方式で、2〜3年ぐらいは併用が可能だ。
 また、NHKも、アナログを併用するべきだった。そのことで多くのアナログテレビがゴミにならずに利用できた。
 以上は、私が前に提案していたことだ。

 (2) エコポイント

 エコポイントは、もともとやるべきではなかった。すでに「地デジ移行」が前提とされて、大量の移行需要が出ていたのだから、需要喚起策を取る必要がなかった。需要が多いときに需要喚起策を取るというのは、経済的には正反対の方策だ。どちらかと言えば、需要を抑制する方針の方が好ましかった。
 どうせエコポイントみたいなものを取るのであれば、地デジ開始前でなく開始後に取るべきだった。そうすれば需要を平準化できていたはずだ。
 そして、そうしていれば、地デジ開始後にも、さみだれ的に少しずつ需要が生じていただろうから、今日のような極端な需要減少は生じなかっただろう。

 (3) 問題

 ところが現実には、それができなかった。なぜか? 「11年7月に強制的に地デジ移行する」という原則を取ったからだ。この原則のせいで、すべてが歪められてしまった。
 ではなぜ、この原則を取ったか? テレビ局のコスト抑制が理由だ。アナログ併用をすると、放送に莫大な金がかかるからだ、という理由。
 しかしながら、アナログ放送には新規の設備はかからず、旧来の設備を使うだけだ。また、新たに番組制作をする必要はなく、単に「デジアナ変換」によって、機械で自動コンバートするだけだ。実質的なコストはほとんどかからない。あったとしても数億円程度だろう。
 その一方で、上の (1) の方針を取れば、コストがかかるのは1社だけで、しかもCM売上げは数十億円から数百億円になる。となれば、大幅な黒字だ。つまり、コスト負担は実質的にはゼロまたはマイナスだったのである。コスト負担があるというのは嘘八百だったのだ。なのに、ありもしないコスト負担を恐れた。
 また、仮にコスト負担があったとしよう。それでも数億円程度で済む。一方で、需要の急激な変動に伴う損失は、莫大な額となった。冒頭の記事によれば、売上げは 1000億円程度の減少だ。前々年(2010年)は需要急増があったから、平年比での実質的な減収はもっと小さいだろうが、それでも需要変動に伴う減収の額は大きすぎる。

 だが、販売店は、まだいい。減収があったとしても、トータルでは損得がないからだ。朝三暮四みたいなもので、先に位パイ食べたとしても、全体では同じ量となる。
 一方、家電各社は、大損害だ。
  ・ 急増する需要にともなって大幅な設備投資をした
  ・ その後に需要激減で、設備が大量に遊休した
  ・ 設備が無駄となり、設備投資のコストがのしかかった

 これを一般家庭で比喩的に言えば、こうだ。
 「テレビが大安売りだというので、あわてて3台買った。ところが独身者なので、テレビは1台あれば十分だ。残りの2台は使われずに、箱に入ったままだ。結果的に2台はずっと遊休している。最終的にはその2台はゴミとなって捨てられる。2台のゴミを買うために3台分もの金を払ってしまった」 
 これと同じことが、家電各社に起こっている。そのせいで、家電各社は大赤字だ。シャープも、パナソニックも。この両者はすでに倒産寸前だ。

 ──

 結論。

 以上から、教訓を得られる。
 エコポイントという馬鹿げた補助金は、単に需要の変動を起こしただけだった。「補助金による需要急増で景気回復」と目論んだが、単に需要を先食いしただけだった。その時点では需要が増えて大喜びしたが、あとになって需要が激減して悲鳴を上げている。
 その意味は? 猿の朝三暮四。日本人は猿と同程度の知恵しかない、ということだ。

  → 朝三暮四の漫画
 
 いや、猿ならば、もらうだけだったから、まだいい。猿はちっとも損をしていない。
 日本は違う。朝三暮四のために、莫大な補助金を投じた。そのあげく、大損を招いた。つまり、莫大な補助金を、大損するために費やした。猿よりはるかに馬鹿ですね。自殺するようなもの。せっかくの知恵を、自らを傷つけるために使っている。何も考えないアホの方が、はるかにマシだ。
 

sakata.jpg
出典:吉本通販(タオル)






 [ 付記1 ]
 「補助金によって、大量生産をもたらして、コスト削減」
 というアイデアがある。しかし、それは成立しない。

 たとえば、価格だけを見ると、価格はどんどん下がっている。
  → REGZA 42Z2 [42インチ] 価格推移グラフ
 しかしこれは、大量生産にともなう価格下落ではない。なぜなら、需要激減で、現在の生産量は以前よりも大幅に減っているからだ。
 また、韓国製の製品の価格を見てもわかる。
  → LGエレクトロニクス(LG Electronics)の製品一覧
 韓国製の液晶テレビは、日本国内ではほとんど売れなかったから、エコピントによる増産効果は皆無に等しかった。一方、世界的な販売によって、大量生産によるコスト激減をもたらした。
 つまり、エコポイントがあろうがなかろうが、世界的にコストは低下していったのだ。エコポイントによる価格低下などは、ないも同然だったのだ。

 実は、エコポイント影響は、次のことだった。
 「エコポイントで 1.5万円ぐらいの補助金が出た。そのせいで需要が急増したので、市場価格が 1.5万円ぐらい上昇した。その 1.5万円ぐらいのうち、1万円ぐらいを販売店が受け取り、0.5万円ぐらいを家電各社が受け取った。つまり、エコポイントの金は、消費者には渡らず、販売店と家電各社の利益に消えただけだった」
 エコポイントの当時、販売店は空前の巨利を得た。当時は各社の決算の好調さが報道されたものだ。それほどにも儲けることができたのは、エコポイントの補助金をたっぷりといただいたからだ。政府の出した莫大な金は、販売店の懐に消えてしまった。
 そして、それから一年もたつと、兵どもや夢のあと。家電各社は倒産寸前となった。消費者は、「エコポイントのおかげで1.5万円も安く買える」と思って、13万円ぐらいの商品を買ったが、今や同様の製品が9万円ぐらいで買える。(上記の REGZA ) ……たったの2年程度で、これほどにも価格が下落する。だったら、補助金なんかは出さないで、ただ黙って指をくわえて待っていれば良かったのだ。
 壮大なる無駄。
 あったのは、メリットではなく、デメリットだけ。莫大な金を出して、「大損」を買ったわけだ。その莫大な金を出さなければ、「大損」を買わずに済んだのに。

 [ 付記2 ]
 同様のことをやっているのが、太陽光発電だ。政府はやたらとこの分野を推進したが、シャープは太陽光発電事業の大赤字のせいで倒産寸前になってしまった。
 莫大な金を出して、「大損」を買ったわけだ。その莫大な金を出さなければ、シャープの大赤字を出さずに済んだのに。
posted by 管理人 at 17:07 | Comment(1) | コンピュータ_03 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
インチキエコポイントによる現在のテレビ販売不振に続いてエコカーポイントによる自動車販売不振が予想されます。
世界レベルでの最多販売価格帯の上を行く日本での販売価格がエコポイントにより正当化されたことはテレビも自動車も共通しています。
メーカーとして世界レベルよりも日本価格に合わせての商品設定が失敗です、高品質高価格が日本で受け入れられても所得水準の異なる国では売れません。
エコカー・低公害車と来られたら正面から反対することはできません。
高コスト高価格が日本で歓迎されても世界では通用しないだろう、マスコミ論調では(コストを無視してまで)エコカーを絶対視することで日本がエコカー技術のトップであると慢心しすぐ隣にいる業績不振の魔女の影に気づきません。
Posted by tatu99 at 2012年11月12日 11:14
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