ストーカー殺人事件についての事情を記した記事がある。有料版なので、一部のみ転載する。
(被害者)は、約1年にわたり、ストーカー被害者を支援するカウンセラーに相談していた。男の影におびえ、警察への不満を何度も訴えていた。これを読んでわかることは? 「何度も警察にお願いしているのに逮捕されない」ということから、「警察は当てにならない」とわかる。
(カウンセラー)のもとに、再び電話があった。小堤容疑者から1千通を超えるメールが届いたという。「すぐ警察に逮捕してもらいなさい」と助言しても、「ストーカーじゃないと言われました」「もう駄目なんですよ」。それまでと違う取り乱し方だった。
「何度も警察にお願いしているのに逮捕されない」。焦ったような口ぶりだったという。「何度でもお願いすべきだ」と声をかけるのが精いっぱいだった。
声を聞いたのは、それが最後になった。
小早川さんは悔しそうに振り返る。「しっかりした女性だった。警察は『彼女なら身を守れるだろう』と油断したのではないか」
( → 朝日新聞・有料版 2012-11-14 )
にもかかわらず、専門家は、「何度でもお願いすべきだ」と声をかけるのが精いっぱいだったそうだ。としたら、専門家もまた当てにならない。
結局、警察も専門家も、当てにならない。当てにするべきは、もっと別のところだ。何か? それは、前に書いたとおり。
→ ストーカー対策
つまり、「ストーカーを有料で解決します」という「ストーカー解決」の専門家だ。
今回の被害者は、「カウンセラー」という「ストーカーの相談の専門家」に行った。それが根本的な間違いだった。ストーカーが自分の心理の問題ならば、カウンセラーに頼めばいい。しかしストーカーが現実世界の物理的な問題であるならば、心理の専門家に頼んでも何の意味もない。
その意味で、「ストーカーのカウンセラー」というのは、それ自体が有害な存在である。彼らは被害者を食い物にして金を得ているだけだ。新興宗教が金を巻き上げるのにも似ている。世の中の弱者の弱みにつけ込んで、気休めだけを言って、現実の解決を遅延させ、その一方で金を巻き上げる。そして最終的には、被害者の死をもたらす。
こういうのは「自分の利益のために金だけ取って、相手を死なせる」というのと同様だ。悪魔的な詐欺師。
そして、そういう詐欺師を立派な人のように扱う新聞記事も非倫理的だ。
カウンセラーがやるべきことは、ただ一つ。「私には解決できません」と言って、「解決するならこちら」というふうに、解決できる専門家を紹介することだけだ。
つまり、「解決の専門家の紹介」である。それ以外は、ほとんど口出しをするべきでない。また、「自分は解決の専門家ではない」と自覚することも大切だ。カウンセラーはあくまでカウンセラーなのである。
なお、上の記事には、次の話もある。
■専門家「嫌だと確実に伝える」「接触を完全に断つ」馬鹿げている。「嫌だと確実に伝える」のは、今回の被害者もやっている。「接触を完全に断つ」のも、被害者はできる限りやろうとしていた。ただしメールについては、「メールアドレスを変更すると仕事に支障が出る」という理由で、変更しないままだった。そのせいで、大量のメールが届くことになった。
小堤容疑者のストーカー行為は、メールを通してだった。メールアドレスや住所を知られている場合には、可能なら変更し、個人情報保護を徹底すべきだ、という。
この件については、カウンセラーがアドバイスできる。IT知識を使えば、メール対策ができるのだ。
具体的には、次の通り。
(1) ストーカーからのメールは、「着信拒否」する。「着信拒否」は、たいていのメールサービスで実現できる。(手間は少しかかる。)(単に「迷惑メール」のフォルダに分類するのとは違う。完全に着信拒否。見えることもない。何通届いたのかもわからない。)
(2) メールアドレスを徐々に移行する。移行する方法は「移行後に新アドレスを通知する」という方法は取らない。初心者はそうするべきだと思っているようだが、そうではない。そんなことをしたら、取引先などに迷惑がかかるので、無理だ。では、どうするか? 次のようにする。
・ 新たなアカウントを取得する。( Gmail など)
・ 現在のメールから、新メールへ、転送設定する。
・ 転送したとき、元のファイルは削除しない。
(つまり、転送先へはコピーするだけ。)
・ 返信はすべて、新メールからやる。
最後の点が重要だ。
たとえば、今は会社のアドレスを使っていたとしよう。今後は、Gmail を使うことにして、会社のアドレスに来たメールへの返信は(転送された) Gmail から返信する。また、こちらから新規の発信をするときも、 Gmail から発信する。こうすると、相手側が返信するときには、返信の宛先が自動的に Gmail になる。
今のメールの主流は、「アドレス帳を使って送信すること」じゃない。「相手のメールに返信すること」だ。だとしたら、こちらの発信アドレスを変えれば、自動的に相手の返信アドレスも変わるわけだ。こうして、無意識的に、アドレスの移行が完了する。数カ月もすれば、ほぼ完全に移行が完了する。
部分的には、従来のアドレスに届くメールもあるだろう。しかしその場合も、新アドレスに転送されてくるから、問題ない。
数カ月たったら、古いアドレスは廃止する。このことで、古いアドレスに宛てられたストーカーのメールは、「配信不能」の扱いとなり、
failure notice MAILER-DAEMON@*****
という英文メールがストーカーに戻ってくるだけとなる。
この状態を半月ぐらい続けたあとで、古いメールアドレスを復活すればいい。
( ※ 復活が困難であるようなら、あらかじめメールの会社に「一時停止」を頼むといい。ただし、古いアドレスを捨ててしまっても、あまり問題はなさそうだ。会社のアドレスはあくまで仕事用だから、古いのはいらない。個人用のアドレスは、別途用意しておけばいい。たとえば同窓会関係など。……そんなものに会社のアドレスを使うとしたら、それがもともと間違っている。)
なお、事例では、転送先の新アドレスを Gmail にしておいたが、常識的には、同じ会社のなかで、「旧アドレス」から「新アドレス」に移行することがよさそうだ。
例。
旧アドレス watasi@wagasha.co.jp
新アドレス kawaii@wagasha.co.jp
なお、「着信拒否」は、会社のメールシステムではできないとしても、Gmail ならばできる。旧アドレスと新アドレスのどちらで「着信拒否」をしてもいい。常識的には、旧アドレスでやる方が気楽だが、新アドレスでやれば、「旧アドレスにストーカーからのメールがいまだに届くか否か」を、適当にチェックすることもできる。(見なければ無視できる。気の向いたときだけチェックすればいい。)
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ともあれ、カウンセラーは、上記の手順を理解しておくべきだ。
役にも立たないアドバイスをするだけでは無意味だ。
