イノベーションの本質は何か? これについて、次の見解がある。
@ikedanob 著「イノベーションとは何か」を読み始める。イノベーションは個々の技術的な発明から生まれるというより、既存のものを新しい切り口で組み合わせることで生まれる。この著作も同様の発想(既存の諸知識を新しい統合法で見せる)をベースに書かれているように見える。これを池田信夫がリツイートしているので、池田信夫も認めて納得している、ということだろう。しかし、これが妥当ではないということは、すでに述べた私の話からわかると思う。
( → twitter:@misawakazu misawakazu )
→ ジョブズとシステムデザイン
ジョブズがなしたことは、「個々の技術的な発明を用いて、既存のものを新しい切り口で組み合わせることで生まれた」のではない。
そういう推測は、凡人の発想だ。凡人は「トライ・アンド・エラー」の形で、「組み合わせ」によって新しいものを産み出そうとする。数学の問題でしきりに「トライ・アンド・エラー」によって正解を得ようとするように。しかし、それでは時間がいくらあっても足りない。(組み合わせの数が天文学的になるからだ。)
天才は違う。目標(正解・真実)が見えている。だから、「既存のものを新しい切り口で組み合わせて画期的なものを産み出す」ようなことはしない。最初に「画期的なもの」が見えているので、それに合わせて既存のものを取る。その際には、「組み合わせる」かわりに、(目標に合致するものを)「拾い出す」のである。
比喩的に言うなら、ジグソーパズルだ。凡人はいくつものピースを次々と組み合わせて、正解にたどり着こうとする。そこには「トライ・アンド・エラー」がある。しかし天才は違う。「トライ・アンド・エラー」なんかしない。組み合わせなんかしない。全体を眺め渡したあとで、正解となる特定のピースをうまく拾い上げるのだ。凡人は多数のものを次々と組み合わせることで多大な時間を費やして多大な失敗を繰り返すが、天才はそういう過程を省略して、一挙に正解を拾い出すのだ。最終的な姿が見えているからだ。
→ 泉の波立ち 2004年8月27日
──
イノベーションとは何か、と考えるのはいい。だが、それを、「既存のものを新しい切り口で組み合わせることで生まれる」というふうに認識するのでは、ジョブズの業績をまったく理解できていない。
そういう認識をする人(誤解する人)は、「ジョブズは単に組み合わせただけだ、発明したわけじゃない」というふうに、彼を卑小化しようとしてるだけだ。その上で、「組み合わせることぐらいならば、凡人でもできる。だから自分にだって、ジョブズのようなことができる」と思いたがっているだけだ。
違う。天才は「組み合わせが上手だった」のではない。凡人の目にはそう見えるとしても、そうではない。
では、正しくは? 天才には「見えていた」のである。何を? 最終的なものを。つまり、真実を。── つまり、彼にあったのは、「組み合わせる力」ではなくて、「見通す力」だったのだ。そのことは、先に詳しく述べたとおりだ。
→ ジョブズとシステムデザイン
【 関連サイト 】
(1)
ジョブズ自身が語った言葉もある。引用しよう。
イノベーションというのは、1000の可能性に『ノー』ということだ。拾うべき可能性は、山のようにある。凡人はそれらを一つ一つ試そうとする。一方、天才はいちいち試したりしない。頭ごなしに「ノー」と言う。
なぜ? それは、本項を読めば、理解できるはずだ。(まだわからない人は、本項を読み直してほしい。)
(2)
ジョブズの方針を自分なりにまとめた人がいる。
→ 僕がスティーブ・ジョブズから学んだ12の教訓
12のポイントを列挙しているが、そのうちの一つが「商品化する力」だ。池田信夫の話の 12倍ぐらいは役立ちそうだ。
ここにある話は、ジョブズの本質を突いているわけではないが、それなりに興味深い点である。一読をお勧めする。
【 関連項目 】
→ ジョブズとシステムデザイン
※ ビジョンの話。
→ ジョブズが求めたものは?
※ 本項の続編。ビジョンの話。
→ 泉の波立ち 2004年8月27日
※ ジグソーパズルの話。

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