・ 超大進化
・ 突然変異が同時に成立する確率はきわめて低い。 ──
「小進化の蓄積で大進化」という説には、二つの難点がある。
このことを順に示そう。
超大進化
新しい種の誕生は、大進化で説明される。( → 小進化と大進化 )では、種レベルではなく、類(魚類/両生類/爬虫類/哺乳類)レベルの進化(つまり超大進化)は、どうか?
超大進化も、基本的には、大進化の理論を大規模に適用するだけでいい。(大きな大進化が続いて何度か起こる、と考えるだけ。)
一方、「小進化の蓄積で大進化が起こる」という説を、超大進化について適用しようとすると、完全に破綻する。なぜか? 莫大な年月がかかるはずのことが、かなり短期間に起こっているからだ。
「小進化の蓄積で大進化が起こる」という説を取るならば、(進化のペースは一定なのだから) 超大進化には非常に長い年月がかかったはずだ。ところが現実には、かなり短い年月でなし遂げられている。
類を越える超大進化のうちでも、最も大きなものは、
魚類 → 両生類
という進化だ。たとえば、単にヒレが足になっただけでなく、エラがなくなって肺ができるとか、体の表面が変わるとか、卵の状態が変わるとか、さまざまな変化が大幅に生じた。(遺伝子レベルでも、魚類と両生類では大幅に異なる。)
これほど大規模な進化は、非常に長い時間をかけて、少しずつ起こるのが当然だろう。ところが現実には、この超大規模な進化は、かなり短期間になし遂げられた。(大量の突然変異が、かなりの短期間に生じた。それも、種の根幹にかかわるような基本的な重要な部分の突然変異が。)
この件は、先に詳しく述べたので、そちらを参照。
→ 化石と進化(両生類の誕生)
突然変異が同時に成立する確率
「小進化の蓄積で大進化」という説には、次の難点もある。「新種の形質は、それ単独では、旧種にとっては不利である」
このことを例示しよう。たとえば、
「キリンの旧種の首が長くなる」
という形質があれば、それ単独では、旧種において不利である。なぜなら、首が長くても、足が長くなければ、アンバランスになって、生存競争で不利だからだ。同様に、
「キリンの旧種の足が長くなる」
という形質も、それ単独では、旧種において不利である。ただし、
「キリンの旧種の首と足が同時に長くなる」
というのであれば、その種はいくらか有利であるかもしれない。ただしその場合、血圧の関係で、頭に血が回らないので、不利になる。
さらに、血圧が高くなったならば、皮膚が丈夫でないと、高い血圧に耐えられない。ゆえに、血圧が高くても大丈夫なように、皮膚が丈夫である必要がある。かくて、
・ 首が長い
・ 足が長い
・ 血圧が高い
・ 皮膚が丈夫
という四つの形質が必要である。このうち、どれか一つだけがあっても、旧種においては不利であるから、劣者として淘汰されてしまう。(一つずつの小進化ではダメだ。)
とすれば、新種が誕生するためには、四つの形質が同時に成立しなくてはならない。しかし、四つの形質が同時に成立する突然変異というのは、確率があまりにも低すぎる。ゆえに、「小進化の蓄積で大進化」という説は、確率的に成立しない。つまり、「小進化の蓄積で大進化」という説は、成立しない。
──
一般に、新種が誕生するときには、新種はたくさんの形質を一挙にそろえておく必要がある。旧種が新種の形質をひとつひとつ獲得していく、ということはありえない。なぜなら、新種の形質は、旧種にとっては不利であるからだ。(必ずそうだとは限らないが、たいていがそうだ。)
たとえば、樹上で暮らす猿にとって、直立二足歩行をするための部分形質(遺伝子)がひとつだけ備わっても、その部分形質は不利である。具体的には、次のようなものだ。
・ 直立二足歩行をするための骨盤
・ 直立二足歩行をするための足指
・ 直立二足歩行をするための膝構造
・ 直立二足歩行をするための足筋肉
これらのような部分形質のためには、遺伝子が一つ一つ突然変異をする必要がある。しかし、そのうちのどのひとつも、旧種(樹上生活をする猿)にとっては不利である。それらの遺伝子は、新種にとっては有利だが、旧種にとっては不利である。
同様のことは、キリンの場合にも成立する。先のキリンの例では、四つの形質を示したが、その四つが備わって初めて、「キリンの首が長くなる」という形質になる。(同時に他の形質も備わる。)
以上からわかるように、新種が誕生するときには、新種はたくさんの形質を一挙にそろえておく必要がある。ところが、そのようにたくさんの形質が同時に備わるように、複数の遺伝子が同時に突然変異をするということは、ありえない。かといって、一つ一つの新しい遺伝子が順々に蓄積していくということはありえない。(すぐ上に述べたとおり。旧種にとっては不利だから蓄積しない。)
「小進化の蓄積」という発想には、こういう問題がある。
《 参考 》
なお、この問題については、下記でも述べた。キリンの例を示している。
→ クラス進化論 Q&A 2
[ 付記 ]
「じゃ、どうすれば解決するのか?」
という疑問には、次のページで答えてある。
超大進化の問題には、「ネオテニー」という概念で。
→ クラス進化論「第2部 概要」
複数の形質の同時成立については、「交配」「クラス交差」という概念で。
→ 小進化と大進化
→ クラス進化論「概要」
【 関連項目 】
実は、前にも同じ話題を扱った。
→ 小進化の蓄積
ここでも、「小進化の蓄積で大進化は起こらない」ということを述べている。
論拠はいくつかある。本項の1番目の論拠はないが、2番目の論拠はある。また、他に、次の論拠も述べている。
・ 小進化の蓄積ならば、進化は可逆的であるはずだが、実際はそうでない。
・ 新種と旧種とでは、同じ時間を経ても、突然変異の蓄積量が異なる。
後者について説明しよう。たとえば、ホモ・エレクトスから新種が誕生したあと、新種の突然変異量は多大だが、ホモ・エレクトスは突然変異量が少ない。特に、有意義な遺伝子は、ほとんど変わっていない。
一般に、「小進化の蓄積で大進化が起こる」のであれば、ホモ・エレクトスの場合のように、旧種もどんどん変化していくはずなのだが、旧種の方はほとんど変わらない。この点は、断続進化説に従う。
