2006年11月03日

◆ 燃料電池車の休眠


 燃料電池車の実現はなかなか見込みが立たない、と前に述べた。
 → http://openblog.meblog.biz/article/42533.html 電気自動車
 → http://openblog.meblog.biz/article/43255.html 燃料電池

 その際は、「コストダウンの見込みが立たないから」と理由を述べた。
 しかし、仮にコストダウンの見込みが立ったとしても、それでも実用化は無理である可能性が高い。というのは、燃料の水素の供給に、大問題があるからだ。 ──

 普通、燃料電池の問題を扱うときには、燃料電池の技術だけを論じる。燃料の水素については、「別途考慮する」というふうに、ほったらかす。ここでは「水素の供給なんて、大した問題じゃないから、いちいち考慮するに値しない」という、燃料電池技術者の驕りがある。(「技術的に簡単だから」と馬鹿にしているわけだ。)

 たしかにまあ、圧縮ボンベでも何とかなるし、水素貯蔵合金でもやがて何とかなるかもしれない。しかし、である。そのまた根源である水素という資源そのものは、どこから来るのか? それが問題だ。
 水素という資源は、どこから来るか? うまく行けば、原発や太陽熱発電や風力発電から来るかもしれない。しかし、そういうのは、ちょっと考えが甘すぎる。これらはいずれも、容易に増やせるものではないからだ。

 一番見込みが高いのは、石油や石炭や天然ガスだ。これらを改質することで、水素を取り出せる。しかし、そういう形で水素を取り出しても、しょせんは炭酸ガスが出てしまう。現状のガソリンや軽油に比べると、少しは効率が良くなるが、たいして差があるわけではない。重たい燃料電池やガスボンベなどを搭載すると、燃費がすごく悪くなるかもしれず、そうなったら、効率アップの分は帳消しだ。

 結局、燃料電池は、石油や石炭や天然ガスを使うことを前提とする限り、たいして改善効果はない。確かに排気ガスはきれいだが、現状のガソリンエンジン車だって、触媒のおかげで、「吸った空気より排ガスの方がきれいになる」というふうになる。たいして差があるわけではない。

 ──

 その一方で、バイオディーゼル車には、劇的な改善効果がある。実質的には、炭酸ガスの排出がゼロだ。燃料電池車の比ではない。
 なるほど、バイオディーゼル車には、排ガスが少し汚いという問題があるが、これだって、触媒を使うことで、実用上は問題ないレベルに落ちるはずだ。それどころか、既存の軽油をバイオディーゼルに変更することで、環境改善でも劇的な効果がある。
 というわけで、効果の面を見る限り、燃料電池車は、とうてい勝ち目はない。完敗だ。となると、勝負をすれば、あっさり敗退する。
 かくて、燃料電池車は、お蔵入りすることになるだろう。

 ──

 では、燃料電池車は、永遠に息を吹き返すことなく、死んでしまうのだろうか? 
 そうとも言えない。次の道があるからだ。
 「バイオ燃料を使った燃料電池車」

 しかしながら、これがいきなり出てくるはずがない。バイオ燃料と燃料電池が同時に生じるはずがない。どちらかが先だ。では、どちらが? もちろん、技術的な容易さから、バイオ燃料である。こちらはすでに技術的にも価格的にも確立しているからだ。

 そこで、結論的には、次のようなスケジュールが見込める。
 (1) 現時点〜20年後ぐらい
   …… バイオディーゼルの普及
 (2) 20年後以降
   …… バイオディーゼルの天下。燃料電池車は開発中。
 (3) 40年後(?)
   …… ようやく燃料電池車が実用レベルになる。 
      既存のバイオディーゼルのバイオ燃料を改質して、水素供給。

 ──

 まとめ。
 石油・石炭系の水素を使う燃料電池車には、意味がない。
 バイオ燃料を使う燃料電池車ならば、意味がある。ただし、それが実用化するのは、バイオディーゼルが広く普及したあとのことである。
 したがって、このあと少なくとも 20年ぐらいは、バイオディーゼルの普及だけをめざせばいい。
 燃料電池車は、白金を使わないで済むような画期的な技術開発が出るまで、何十年か待つしかない。あまりにも先のことなので、当面の課題とはならない。

( ※ 本項の話は、翌日分に続く。)

 [ 付記 ]
 本項の話とは別に、「家庭用燃料電池を使った電気自動車」というのもある。先日に述べたとおり。
 排ガスの問題だけなら、これでも解決がつく。自動車搭載用の燃料電池というのは、ひょっとしたら永遠に無用の産物となる可能性もある。
 ま、ウルトラ・ハイパワーの充電池が出現したら、自動車搭載用の燃料電池はあっさり負ける。そうなる可能性は、結構ある。また、キャパシタという道もあるし。
 燃料電池というのは、ずいぶん昔から知られていた原理の技術なので、たいして目新しくもない。20年後に生き残っている可能性は、たいして大きくない。

 → http://www005.upp.so-net.ne.jp/greentree/koizumi/99k_news.htm#07
posted by 管理人 at 22:23 | Comment(3) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
燃料電池関連で水素そのものの供給で気になったので書かせていただきますが
理論的には既に枯れてしまっている技術ですが
高速増殖炉はどうでしょうか?


太陽光発電では理論的最大値で現状の消費の20%が当面の限界値
風力発電では理論的最大値で現状10%未満
将来性を入れて20〜30%が当面の限界値

つまり理論どおり最大限風力・太陽光発電が出来たとして設置が全て一瞬で完了して
基本的に30%確保が現実的な限界
将来性を入れても50%が限界
(現実的には20%も確保するのにどれだけの費用と時間が必要かは南堂さんもご存知の通りです。)
正直、場所を考慮することでミクロ的にみて役に立つ技術ですが
量を考えるとマクロ的に見て話しにならない。

残り最低でも50%以上をどう確保するのか?
バイオ燃料も将来性があります。
毎年油も砂糖も取れる点も大きい。
しかし、弱点としては
既に砂糖は南米のバイオ燃料使用で高騰していることもご存知だと思います。
よって後進国の人口増加に対応する食糧確保の問題があります。
(人口の増加速度と食料の増産速度の差の問題)
中期で見て有望な技術ですが
長期で見て世界的マクロ的視点から次のエネルギーの考慮が望ましい。


日本の人口を考えた量と質を同時確保しつつ
日本国内だけで確保し続けられる物であり
かつ世界的・長期的に見て有望なものが次世代の燃料に求められています。
(古典的なミクロ視点でなく現代の状況を踏まえたマクロ的視点)

高速増殖炉は使う以上の燃料を作れるという面が取り上げられがちですが
基本的にエネルギーの使用効率が非常によいため
これを使用した場合燃料効率は50〜100倍程度以上にはなります。
量的・質的には現状のエネルギー水準の維持に十分
時間的には半永久的な発電が可能です。
これを使用した場合理論的に車だけなら余裕で
時間的に半永久の水素供給が国内だけで可能です。
化石燃料は飛行機・プラスティックにまわすが可能になります。

弱点は
日本と同じくエネルギー資源に乏しく原子力発電と再処理によるリサイクルの盛んなフランスなどと違い
石油資本やアメリカを代表する石油資本に支えられている国家の安全性啓蒙活動もあり
日本国民の原子力への抵抗や知らされてない事が多いこと。
放射能・放射線ともに漏洩の「無い」事故(世界的基準では軽微)がおきたため
研究がストップしていること
その原因となった金属ナトリウムの扱いの(技術的に解決できるレベルと思われる)難しさがあります。

しかし、燃料電池は長期・マクロ視点では活躍の場があるのではと思います。
僭越ながら、南堂さんのマクロ的視点という考えに共感しているため
技術的・理論的にマクロな視点の提案をしてしまいました。
駄文お許しください。
Posted by 九尾狐 at 2006年11月04日 12:03
なるほど。高速増殖炉というのは、研究課題として、なかなかいい点を突いていますね。核融合ばかりやるよりはよほど賢明です。

「これが絶対」というのがない現状では、あれこれ考察するべき研究対象のうちの一つに、高速増殖炉も是非とも入れるべきでしょう。

実用化する実験はまだ無理だと思いますし、試験運転も無理だとは思いますが、基礎研究だけは続けるべきでしょう。

このご提案は、とてもいい点を突いていると思いました。
Posted by 管理人 at 2006年11月04日 12:17
高速増殖炉の問題ですが、どうしてこれをちゃんと解決しないんでしょうね? 

この問題は、金属ナトリウムの細管が、固有振動数状態で金属疲労を起こすことに起因します。

だったら、音響技術者が参加することで、固有振動状態の問題を解決することが可能であるはずです。

異業種交流をすれば、容易に解決が済むはずなんですけど。……やはり、技術者の縦割りが、問題の根源なのかも。基礎研究にそこそこのお金を投入すれば、簡単に解決がつきそうなんですけどね。
Posted by 管理人 at 2006年11月04日 12:31
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