2006年10月22日

◆ 燃料電池

 雑誌「ニュートン」の最新号に、燃料電池の話がある。
 これを読むと、燃料電池車の見込みというのは、やはり「口先だけ」であるようだ。人々はだまされている。実用化の可能性があるのは、先日(電気自動車)に述べたように、「電気自動車 + 家庭用燃料電池」という組み合わせであるようだ。 ──

 ニュートンの記事によると、燃料電池には、二種類がある。

 (1) 高温型
 白金を使わないタイプ。大型・高温。家庭用の燃料電池になる。コジェネ・タイプ。技術的にはすでに実用段階だが、コストが高価なので、コストダウンが進んで実用化の段階になるのは 2020年ごろだろう、という見込み。また、水素を配給するインフラも必要。

 (2) 低温型
 白金を使うタイプ。小型・低温。自動車や電気機器の燃料電池になる。白金を使うタイプは実験的には成功しているが、1台1億円。
 白金を百グラムも使う。世界の自動車8億台のうち、2億台に使った時点で、白金の埋蔵量のすべてが枯渇する。現状の技術では、数量的に普及は不可能。白金使用量を減らす技術開発も進んでいるが、それも限度がある。白金を使わない方法が必要となるが、それを開発できたらノーベル賞。(高温超伝導の技術開発のようなものですね。)……ただし、普及の予測時点は、なぜか、2020年

 ──

 評価しよう。
 (1) の方式は、十分に見込みがある。先日に述べたように、家庭用の燃料電池と電気自動車を組み合わせればよい。あとはコストダウンとインフラだけが問題だ。インフラはたいして問題ではない。ガスと同様だ。最初はプロパンみたいにボンベで普及させ、次に都市ガスのように基盤整備すればいい。 2020年に普及する見込みは十分にある。……したがって、先日に述べたように、家庭用の燃料電池と電気自動車を組み合わせを、メーカーは開発すればよい。

 (2) の方式は、まったく見込みがない。高温超伝導のような画期的な新技術を前提とするなんて、馬鹿げている。それは、可能かもしれないが、海のものとも山のものともつかない。これを前提とするのは、「タナボタ」を期待するのと同じ。科学ではなくて、ただの「夢」である。
 ところが、この「夢」を実現済みの「現実」と思い込んでいる阿呆がいる。こういう阿呆が「 2020年に普及する」と予想するのだろう。( → [ 付記 ])

 正確に言おう。燃料電池車が普及するためには、次のことが条件となる。
  ・ 白金を使わない小型燃料電池の技術開発 (高温超伝導並み:ノーベル賞級)
  ・ 技術開発後の、実用化の開発期間 (高温超伝導やハイブリッドなら15年ぐらい) 
  ・ 実用化技術後のコストダウン期間 (ハイブリッドなら15年ぐらい)
 
 要するに、今現在においてノーベル賞級の技術開発があったとしても、現実に普及するのは、30年( = 15年 + 15年 )も後である。それが2036年。つまり、2020年なんて、とんでもないことだ。

 最短でも、30年後。現実には、40年以上あとのことだ、と思った方がいいだろう。下手をすると、今世紀中には、無理かも。
 似た例に、核融合発電や、ドーナツ形の回転する大型宇宙ステーションがある。1970年のころには、「 2000年にはきっと実現しているだろう」と予想されたが、まったく実現の見込みが立っていない。「はるか先」としか予想できないありさまだ。宇宙開発なんて、人類が月面に立ったあと、停滞どころか後退しているようなありさまだ。NEC の PC9800 と同程度のコンピュータを使って月に人間を送り込んだが、その後にコンピュータがいくら発達しても今では月に人間を送り込めない。(かわりに地上で戦争ばかりしている。)

 結論。
 「燃料電池の実用化はいつか?」と予想するよりは、「地上で戦争が起こるのはいつか?」と予想する方がマシである。核爆弾の心配でもしている方がマシ。下手をすると、2年後に死の灰が降りそそぐ。燃料電池の実用化より、ずっと可能性が高い。

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 [ 付記 ]
 「 2020年に普及する」と予想する人が多いが、それは誰か? 
 第一に、経産省である。雑誌ニュートンにも、そう書いてある。ただし、これは、経産省が自力で予想したというよりは、民間から聴取した結果だろう。
 第二に、民間の自動車会社。トヨタ・ホンダ・GMなど。これらはいずれも、「 2020年に普及する」と予想する。ただし日産だけは、そう予測しない。なぜ? 技術開発が圧倒的に遅れているからです。というのは、先行開発費を大幅に削減したから。そのせいで、他社に大幅にリードされてしまった。哀れ。  (^^);
 ただし、今にしてみると、日産のこの方針が正しい、ということになりかねない。自動車に搭載する燃料電池なんて、上記の理由で、実現しそうにないからだ。むしろ、前回記述にある三菱自動車(電気自動車)とか、そのコメントにあるスズキの方式(私の示した方式と同じ)とか、そっちの方が、勝ち目がありそうだ。日産がその方針を取ると、大逆転、ということもありうる。(といっても、ただの電気自動車ですけどね。)
 なお、マツダとBMWは、水素自動車を研究している。これもまあ、悪くはない。というのは、燃料電池車というのは、それ単独で動くのではなくて、燃料として(ボンベなどに入れた)水素を使って発電するからだ。そんな面倒臭いことをするよりは、水素を(発電システムなしで)内燃機関で燃やす方が手っ取り早い。
 ま、水素自動車さえまともに実用化されていない状態では、燃料電池のことを言うなんて、「来年のことを言うと鬼が笑う」どころか、「来世紀のことを言うと鬼が笑う」となりそうだ。ひょっとしたら、「来世のことを言うと鬼が笑う」となりかねない。

  【 追記 】
 過去の各社の記述を覗いてみると、面白い話が見つかる。

 (1) トヨタ
 「トヨタは1997年の東京モーターショーに燃料電池自動車の試作車を発表し、2005年までに量産化することを宣言した。」
 ( Wikipedia 。あとは、たいしたことは書いていない。)

 (2) 三菱
 「三菱自動車は工業用燃料電池で実績のある三菱重工業の技術を全面活用,2005年の商用化を目指している。」
 ( 2000年07月29日のニュース

 (3) 経産省のレポート
実用化・普及に向けたシナリオ
2005〜2010年頃
導入目標2010年:自動車用約5万台、定置用約210万kW

2010年以降
導入目標2020年:自動車用約500万台、定置用約1000万kW
  (pdf  2002.2.20 )

 ※ 2010年から2020年の十年間で百倍というハイペース。
posted by 管理人 at 00:00 | Comment(2) | エネルギー・環境1 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トヨタのハイブリッドの普及はどのくらい急速に進んでいるか? 

初代プリウスが出たあと、今のは二代目で、だいたい6年目ぐらいだろう。二台目プリウスも、けっこう売れているとはいえ、初代の百倍ぐらい売れているわけではない。

ハイブリッドのRV車は出たが、ハイブリッドの普及型乗用車はいまだにプリウスだけであるようだ。カムリやレクサスGSやレクサスLSのハイブリッドが出るという噂だが、まだ出ていないようだ。
結局、初代プリウスに比べて、爆発的に数量が増えているわけではない。

それなのに燃料電池車の予想は、超楽観主義。そんなに急激には増えるはずがないのに。
Posted by 管理人 at 2006年10月24日 00:33
いやそれは
初代の百倍って
たった一車種の販売台数がそんなに
増えるわけないでしょ
同クラスの他車種に比べてどうかを見ないと
で調べたらトヨタの同クラスのプレミオの
3倍は売れていますね
その他は販売台数減らしていますし
十分普及していると考えて良いんじゃないですか
Posted by ふーちゃん at 2006年10月30日 19:21
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