2006年04月20日
◆ Winny 対策
前項( Winny の悪とは )の続き。
高木浩光氏のサイトがコメント欄で紹介されていた。
http://takagi-hiromitsu.jp/diary/20060416.html
これを読んで考えると、 Winny 対策のあるべき姿がわかる。──
このサイトで述べている話題は、 Winny の犯罪性ではなくて、 Winny による被害だ。その被害は、ウィルスによる。で、どうして被害が大きくなるかというと、キャッシュ機能があるからだ。つまり、いったんウィルスで流出したファイルは、あとで取り返しが付かない。消そうと思っても消せない。あちこちのパソコンに広く蓄積(キャッシュ)されてしまっているからだ。
このことからわかるように、 Winny が大きな被害を生む理由は、P2P と IPアドレス隠しのほかに、キャッシュ機能もあるわけだ。
で、その意味を考えると? 次のようになる。
流出したファイルが統制不可能になるというのは、流出先のIPアドレスがわからないことによる。また、たとえわかったとしても、どうしようもない。
これはどういうことかというと、 Winny というのは分散処理をすることで、なかばサーバーの機能をもっているのだが、サーバーとしての管理能力が不足しているので、ファイルを送り出すことだけはできても、送り出したあとはまともに制御できないのである。いわば「こわれたサーバー」のようなものだ。
すると、どうなるか? 比喩的に言えば、「頭のない肉体」である。通常は、頭が肉体を制御する。しかし、頭のない肉体は、頭だけを切り離されて、肉体だけがわけもわからないまま暴走する。本来ならば、肉体は、頭が制御するべきものなのだが、頭が欠落しているので、統御機能を欠いたまま、肉体だけが勝手にあちこち暴走する。そのせいで、とんでもない被害が生じるわけだ。特に、肉体が巨大である場合には。
となると、解決策もわかる。「頭のない肉体を禁じること」である。ここで、肉体とは P2P システムのことであり、頭とはファイル管理機能のことだ。
通常のサーバーは、この双方を備えている。ファイルの送信も、ファイルの蓄積も、ファイルの管理も、サーバーが行なう。しかしながら、 Winny の場合には、いったんファイルの送信をやったあとは、ファイルの蓄積はシステムに分散し、ファイルの管理はほとんどどこにも存在しない。(ファイルのありかは調査はするが、ファイル削除などの管理はできない。)
この意味で、 Winny の構築するシステムは、「壊れたサーバー」であり、「頭のない肉体」である。
そしてまた、ここまで来ると、 Winny のどこが悪いのかも、はっきりする。 Winny というソフト単体が悪いのではない。 Winny の構築するシステム(頭のない巨人の肉体)が悪いのだ。
仮に、 Winny が単体で一つだけ存在するならば、それは何の悪もなさない。ところが、 Winny の利用者が合体して、巨大なシステムを作ると、それは、「頭のない巨大な肉体」となるので、危険な怪獣のような被害をもたらす。
この意味で、 Winny 自体には罪はないが、 Winny を使ってシステムを構築する人( Winny 利用者)は、全人に罪がある。どちらかと言えば、 Winny の開発者よりも、 Winny の利用者の方が、ずっと罪が重い。それは「巨大な怪獣の一部品を構成する」という罪だ。
比喩的に言えば、「社会を破壊するアルカイーダというテロ組織の一員として働く」というのに似ている。
以上のことから、なすべき対策もわかる。「首のない肉体に、首を付けること」である。同義だが、「首のない肉体を禁じること」と言ってもいい。──それが具体的に何を意味するかは、ま、細かな話となるので、あとは技術者がいろいろと考えればいいだろう。
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p.s.
なお、高木浩光氏が Winny 批判をしてくれたことは、私としてはとてもありがたい。2年前に私が Winny 批判をしたときは、「コンピュータのこともろくに知らないくせに勝手なことを言うな」という半素人批判がわんさと来て、閉口したものだが、高木浩光氏が言えば、さすがに半素人たちは口を閉じるようだ。
やっぱり、権威というのは、威力があるのかもしれませんね。 (^^);
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【 追記1 】
上記で述べた対策(頭と肉体をつなげること)というのは、歴史的には、もともとなされていた。実は、最初は、こういうタイプができていたのだ。(当り前のことをやったわけ。)
ところが、そのタイプだと、ファイルを管理する側が、著作権法違反に問われることになった。(知っている人も多いはず。)
で、そういうタイプが消滅したあとで、ファイルを管理する能力をなくした Winny が登場したわけだ。
とすれば、 Winny は、その成り立ちからして、一種の奇形なのである。
正常なシステムだと、社会において正常に対処されて、社会に組み込まれて、ズルをするというための存続が不可能になる。
そこで、「著作権の対価を払わないで済む」というズル(犯罪行為)のために、社会に組み込まれないような奇形のソフトとして出現した。
いわば、エイズのようなものだ。普通のタイプの細菌やウィルスだと、あっけなく消滅してしまうので、エイズは特別な工夫で、対策を免れて生き延びる工夫をしている。
要するに、Winny というのは、もともとが「摘発逃れ」を目的とした、犯罪装置なのである。単なる P2P ならば、歴史的に最初に生じたような P2P システムを使えばよい。そこではファイル管理がなされている。しかし、それでは当然、違法行為ができない。というわけで、違法行為をするために、摘発逃れを目的として、ファイル管理能力を削除した Winny が出現したわけだ。
というわけで、 Winny はもともとの成り立ちからして、奇形の怪物なのだ。この手のものは、あっさりと社会的に抹消した方がいい。そのかわりに、ファイル管理能力をもつ P2P システムを構築すればよい。──これが結論となる。
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【 追記2 】
Winny 対策は、ファイル管理システムを徹底することで解決できる。次の手順で。
・ ファイルの流通状況を完全に監視する。(IPアドレスも。)
・ A氏がファイルを公開して、他の千人がダウンロードしたら、それを監視する。
・ そのファイルが著作権法に抵触するものであれば、著作権者に連絡する。
・ 著作権者は、A氏に対して、ファイル千本分の売上げを請求する。
・ 非正規販売の価格が1本十万円ならば、A氏は千本分の1億円を払う。
これで問題は根源的に解決する。著作権者は、この P2P システムを歓迎するだろう。違法行為をした人は、1億円ぐらいの金を次々と払うハメになるので、むしろカモになるのだ。
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【 追記3 】
本項の趣旨は、「匿名のファイル配布」を否定するものではない。たとえば、現状では、ブログのサービスを使って、「匿名のファイル配布」が可能となる。これを「やめてしまえ」とか「規制せよ」とか主張することはない。
ブログのサービスを使って、「匿名のファイル配布」をすることは、ほぼ無害である。仮に、著作物を勝手に無償配布したら、その人はアカウントを取り消されてしまう。同時に、「アカウントの再取得」もIPアドレス特定によって、消滅してしまう。かくて、犯罪の有効性は消えてしまう。
というわけで、先進国では、ブログのサービスを使って、「匿名のファイル配布」をすることができるのだから、ファイル管理機能のない P2P を使ってまで「匿名のファイル配布」をする必要はないし、また、有害である。
では、北朝鮮やイラクのような国では、どうか? ブログのサービスでは当局に検閲されるから、ファイル管理機能のない P2P を使った方がいいのではないか? まさしく、その通り。独裁国では、そういうことをした方がいい(だろう)。
これはつまりは、「独裁国では、テロをした方がいい」ということだ。国が戦車を使うなら、こちらもライフルや地雷を使って、戦った方がいい(だろう)。ただし、その際、普通の市民に多大が犠牲者が出るが。
Winny というのは、危険な武器なのである。壊れた国家である独裁国では、壊れた巨人を使うことで、政府に対抗する力を持てる。だが、先進国では、壊れた巨人を使えば、普通の市民に被害が出てしまう。
「何でも自由がいい」と思うのは、妄想だ。そんなことを認めれば、犯罪が野放しになる。銃規制のほとんどない米国と、銃規制のある日欧とで、どちらの市民が安全に暮らせるか? 「規制がない国が天国だ」と思うのは、早計である。
というわけで、「犯罪があれば摘発する」ということは必要であるし、そのためには、「ファイル管理機能」(ファイル削除機能)が必要となる。その意味は、「善意の行為を取り締まる」ということではなくて、「悪意の行為を取り締まる」ということだ。
だから、問題は、「悪意の行為を許容するか否か」だけである。ブログのサービスならば、「悪意の行為を許容する」というブログは、そのブログ会社自体が、犯罪に加担していることになる。だから、ブログ会社は、ユーザーによる犯罪行為を認めない。一方、管理者がいなければ、ユーザーによる犯罪行為が野放しになる。それを許容するかどうかだけが、問題となる。
善意のファイル配布は、ブログ会社のようなまともな管理者がいる限り、何も問題はない。実際、私だって、現にこのブログを使って、善意のファイル配布をやっている。何も問題はない。
というわけで、「善か悪か」は、「管理者がいるか否か」と同義である。そして、その前提は、「独裁国家でないこと」(国家が壊れていないこと)である。
「壊れた国家(独裁国)では、イカレたソフトが有効だ」ということは、「まともな国家(先進国)でも、イカレたソフトが有効だ」ということを、正当化しない。そんな言い分は、「テロの正当化」にすぎない。テロリストの勝手な言い分。
( ※ とにかく、「P2P も有益だし、匿名性も有益だが、両者の組み合わせは駄目」ということが肝心だ。これは、前出の項目で述べたとおり。……ここを勘違いして、「P2P は有益だ」とか、「匿名性は有益だ」とか、個別に論じている人が多い。その勘違いを、先の項目で説明した。)
( ※ また、「両者の組み合わせも、有益な武器になるから、便利だ」なんていうテロリスリストの主張も、すぐ上で排除しておいた。)
過去ログ

分散ファイルシステムについて調べてからコメントした方が恥かかずにすみますよ?
FreeNetは匿名性の確保という命題に挑んだもの、といってもおかしくない代物で、イスラム圏や北朝鮮のようなところの内部事情を流したとしても流した人物を特定されないようにすることが目的のひとつとして存在したものですし。
あと、winMXの代わりに開発されたのはwinnyで現在出回っているものはWinny2であることも留意しておかないと致命的ですよ?
今のIPアドレス付与形態では固定のアドレスを付与するとIPアドレスが枯渇するため、プロバイダごとに割り振られたアドレスが接続ごとに降られるDHCPを使うのが一般的なんですが、ふーん。
P2Pの有益性と匿名性を掛け合わせるとだめですか、ふーん。
ならば差出人不明郵便も届けちゃ駄目ですね。
匿名でかつ、不特定多数の人間に情報を発信する場合、特定のサーバーが存在することは危険なのは理解されているようですが、今の日本に情報発信者の保護が存在するとお思いですか。凄いね。うん。
先日の永田議員の偽メールの際も多くの人がこういいましたね
「情報提供者は誰?」
あれは偽だったですが、真実の場合、情報発信者を守ることは出来ましたか?
匿名での情報発信技術のひとつとしての匿名性の確保のため、FreeNetは生まれてきたのですが。
さらに言えばInterNetのWWWは元々学術共有のものであり(さらに前は軍事情報の分散化のためのもの。拠点がひとつ破壊されても全体としての保持を目的に分散技術がつくられました。)発信された文書の(その真偽を問わず)保存目的もあるんですが、それすら否定されているようで。
あと、これが一番「はぁ?」と思ったものですが
>「善か悪か」は、「管理者がいるか否か」と同義
とはつまり、管理者により、善悪を決める、と読めます。
そんな社会を容認されるような方でしたか。ふーん。
善、悪、といわれていますが、何を持って善悪を定めているのですか?
貴方は神ですか?
> やっぱり、権威というのは、威力があるのかもしれませんね。 (^^);
あの、“権威”が重要では無く“内容”が重要なんですが……。
Winnyを批判すると言っても、高木さんと南堂さんの批判理由は完全に別物ですよね。
郄木さんはソフト自体と構築されるネットワークの欠陥を批判をしてるのであり、
南堂さんは使用用途が犯罪であることを批判していたはずですよね?
“内容”が別物ならば、反応が違って当たり前なんですけども……。
単に同じ“批判”というだけで、ご自身と郄木さんの意見が同じかの様に思われるのはどうかと思いますよ。
すみませんがご自身の「二次元真偽値」を読みなおしていただけますか?
それはともかく、批判派の論点は、どっちもほとんど同じですよ。「包丁がどうのこうの」だの、「リテラシーがどうのこうの」だの、「匿名性が大事」だの。
その意味では、批判派の難点は同じだし、高木さんが「トンチキ」というふうに批判したことは、やはり同様に当てはまります。
別に、私と高木さんの意見が同じだといっているわけではなくて、批判者が同じだ、といっているわけ。
ま、批判者のうちにも、難点に気づいた人もいますけどね。
ついでに言うと、高木さんは、問題点を指摘してはいますが、対策を示してはいません。「Winny 対策の基準が必要だ」とは述べていますが、基準をまだ出してはいません。そこが私と違うところ。
の件ですが、議論のレベルが低すぎるので、いちいち反論しません。
これは技術の情報ではなく、社会常識の問題です。社会常識の欠落した人には、何を言っても無駄だし、水掛け論になるだけなので。
どこかの汚い掲示板みたいな論争はしません。