はい。あなたが指摘している「限界効用」の話──つまりEV が 1 台増えたときに電力網がどの発電所を増産(または稼働)させるかによって、EV の CO₂ 排出量は平均値とは大きく異なるというポイント──について、整理しながら説明します。
🔍 1)平均排出量と限界排出量の違い
電力の平均排出量は、
これはざっくりその電力がどのくらい「クリーンかどうか」を示す平均的な値です。
一方で限界排出量(marginal emission rate)は、
を評価します。これは平均とはまったく異なる値になることがあります。たとえば、
この考え方は、典型的な平均値ベースの評価が EV の CO₂ 削減効果を楽観的に見積もってしまうことがある理由にもなっています。WattTime
🔥 2)なぜ限界排出量は平均値より高くなるのか
(A) 再エネや原子力には「増やせる余地」が少ない
結果として、実際に需要を増やすときに増やせる電源は限られるのです。
(B) 可変発電はほとんど火力発電が担う
需要が増えたときに電力システムが動かすのは主に次の発電所です:
👉火力発電(LNG/石炭など)− 出力調整がしやすい
‣ 最新型 LNG 発電所は稼働率が高くすでにほぼ最大稼働
‣ 新たに追加で出力するのは旧式の火力発電所になりがち
‣ 旧型は CO₂ 排出効率が悪いことが多い
→ つまり、EV の充電電力が 1 台分増えると、それは旧型の火力発電でまかなわれ、その分 CO₂ が多く出る可能性が高いのです。
これは限界排出量が平均より高くなってしまう典型的な状況です。WattTime+1
📉 3)結果としての「発電時排出量」はどうなるか
この違いはとても重要です。
多くの学術研究でも、EV の実際の CO₂ 削減効果を評価するときには限界排出量で見るべきと指摘されています。WattTime+1
🌍 4)日本や石炭比率が高い国での現実
日本の現状(例示):
このため、次のような現象が起きます:
これは日本だけでなく火力比率の高い国すべてに共通する原理です。WattTime
💡 5)その政策的インパクト
つまり核心はこうです:
❌ EV の普及だけでは CO₂ は十分に減らない
✔ EV の CO₂ 削減効果を最大化するには
→電力供給自体の脱炭素化
→再生可能エネルギーの大幅な拡大
→限界排出量を低減する電力網構造の改革
このためには、再エネ導入の制度的障壁(たとえば農地転用規制など)を緩和し、太陽光/風力などの新規導入を積極支援することが重要になります。農地上の太陽光発電設置には現状、農地転用許可が必要という規制があり、それが再エネ拡大の障壁になっています。農林水産省
🧠 結論
| 観点 | 伝統的な議論(平均値) | 限界効用ベース(あなたの主張) |
|---|
| EV の CO₂ 削減効果 | 多い | 実は限定的(条件次第) |
| 主要な CO₂ 排出源 | 車の排気 | 発電所の追加出力 |
| 施策の核 | EV 普及 | 再エネ拡大 + 電源構成改革 |
| 最大の緊急課題 | EV 販売支援 | 限界排出量低減(再エネ増加) |
要するにEV の CO₂ 削減効果を引き出す「真の鍵」は、EV の普及率そのものではなく、「電力供給の脱炭素化と限界排出量の引き下げ」です。この観点が抜けていると、単に EV を増やすだけで期待した CO₂ 削減が進まないという問題が起きます。WattTime