2025年11月14日

◆ 26年目の逮捕:その理由

 殺人事件の犯人を 26年目に逮捕した、という事件がある。不思議である。どうしてそういうことになったのか? 

 ──

 この事件の裏を探る報道がある。下記だ。
  → 「今夜、逮捕します」26年経て動き出した時間 名古屋女性殺害事件:朝日新聞

 これによると、最大の理由は、警察の担当者が切れ者に変わったからだ。新たな担当者は誰か? 「特命捜査係」の警部である。名前は「杉下右京」である……かと思ったが、そうではないらしい。

 この人物が何をしたかについては、記事にあるので、抜粋しよう。
 「この事件ではビラ配りからは犯人は挙がらないと思う。必ず犯人は、集めた関係者のリストの中にいる。1件、1件つぶしていきます」
 昨年春、事件の担当になった「特命捜査係」の警部は悟さんにこう言い切った。
 県警は関係者5千人以上から聞き取りを続けてきた。昨年、捜査を見直し、容疑者の候補として数百人をリストアップ。十分に事情を聞けていない人やDNA型鑑定のための資料が入手できていない人を整理した。
 順次当たっていく中で、今年8月、県警は安福容疑者から話を聞いたが、容疑者はDNAの提供を拒否した。「拒否されるなら、何とか提供してもらわないといけないとなる」(捜査幹部)
 その後、改めてDNAの提供を求めたが、2回目も拒否。
 ところが、10月30日、事態は急転する。捜査員が自宅を訪問すると、3回目にして初めて提供に応じた。県警は口の中のDNAの提供を受けた。

 特命捜査係の警部が重要だった。彼には信念があった。「必ず犯人は、集めた関係者のリストの中にいる」と。ここで、彼は本質を見抜いたのだ。
 これまでの失敗はなぜだったか? 急いで解決しようとして、範囲を絞ったことだ。そこでは、「金銭狙いではない」ということから、動機を怨恨に絞った。容疑者は被害者の関係者だと思い込んだ。ゆえに被害者の周辺ばかりを探した。そのせいで、夫の周辺を探さなかったので、犯人のいる範囲は捜査対象からすっぽり抜け落ちた。
 結局、急いで解決しようとして、範囲を絞ったせいで、犯人は網からすり抜けたのだ。これが大失敗の理由である。
 
 これを言い換えると、「探しやすいところを探した」のが、失敗の理由だ。この件は、前にも論じたことがある。
 笑い話がある。
 男が落とし物をした。「しまった。探さなくちゃ」
 そう言って、彼は道を引き返して、さっそく路上で探し始めた。ところがどういうわけか、彼は夜道の中で、街灯の下だけを探している。明るいところだけを探していて、まわりの暗いところを探そうとしない。
 それを不思議に思った人が質問した。
 「いったいどうして、街灯の下だけを探すんです? まわりの暗いところも探した方がいいでしょう? ありもしないところだけを何度も何度も探しても、落とし物は見つかりませんよ」
 「でも街頭の下の方が、よく見えて、探しやすいんだ。探しやすいところを探す方が、利口だろう?」

 ※ この男は、どこを間違えたのか? 「探すこと」が目的となっていて、「見つけること」が目的となっていないのだ。だから、「探しやすいところ」ばかりを探して、「見つかりやすいところ」を探さないのだ。
( → 大量の PCR検査の是非: Open ブログ

 こういう笑い話ほどではないにせよ、警察には思い込みがあった。そういう思い込みを排除することで、真犯人に到達できる。





 ただし、以上とは別に、新たに思いついたことがある。こうだ。
 「今回の犯人は、DNA鑑定を拒否していた。その後、鑑定が実施されたが、鑑定が判明する前に、自分から出頭した。 → ならば、いちいち鑑定しなくても、DNA鑑定を通告するだけで、犯人を自動的に見つけることができたはずだ」

 現実はどうだったか? 先の話を再掲しよう。
 昨年、捜査を見直し、容疑者の候補として数百人をリストアップ。十分に事情を聞けていない人やDNA型鑑定のための資料が入手できていない人を整理した。順次当たっていく中で、今年8月、 〜

 昨年に数百人をリストアップしたあとで、順次当たっていくのに一年がかりで、ようやく犯人にたどりついたようだ。しかし、その手間は無駄だった、というのが私の判断だ。
 むしろ、こうすればよかった。
 「容疑者の候補として数百人をリストアップなら、その全員に、DNA鑑定を要求すればいい。それに対して、素直に応じた人は、怪しくないので、リストからはずす。素直に応じなかった人は、犯人の可能性が高いので、重点的に捜査する」
 
 この方法を取れば、昨年に数百人をリストアップしたあとで、すぐに真犯人にたどりつけたはずだ。
 それどころか、26年前の段階で、上の方法を取れば、すぐに真犯人にたどりつけたはずだ。

 警察 「DNA鑑定をさせてください。全員にお願いしています。あなたが犯人でないなら、潔白を証明するために、検査をお願いします」
 相手 「やだよ。私は絶対に検査に応じません。そんな検査は人権侵害だ!」

 こういうことを言うやつこそ、犯人の可能性が高い。こうして、数百人の容疑者から、あっという間に犯人にたどりつける。この方法で、26年前に解決できたはずなのだ。
 これぞ名案というものだ。杉下右京なら、思いついたかもね。



 [ 付記 ]
 数百人の対象から検体を採取したあとで、実際に検査をする必要はない。単に検体を冷凍保存するだけでもいい。その後に、犯人が判明したら、保存した検体(他人分)はすべて廃棄できる。

 数百人の対象から検体を採取したあとで、実際に検査をしてもいい。ただし、コストの問題があるから、うまくコストを下げる必要がある。その方法は、下記で示した。
  → https://gemini.google.com/share/fdfa0a68f13d

 こうすれば、大量の検体を高速に低コストで検査できる。うまくやるには、頭を使えばいいのだ。
 


 【 関連サイト 】
 犯行の動機について、犯人が供述したそうだ。
  → 逮捕の女「被害者の夫の女性や子育ての考え方が嫌いだった」趣旨の供述 名古屋・西区主婦殺害事件 (25/11/14 11:44) - YouTube

 理屈にならない理屈で、「夫のことを嫌いだったからだ」と述べている。要するに、「過去に告白してから振られたことの恨み」であろう。

 ──

 実は、そのことは夫の方も十分に自覚していた。冒頭の朝日新聞記事には、こうある。
 「今夜、逮捕します」
 警部の目は潤んでいた。
 「悟さんが知っている人です」
 「えっ」。だが、口をついて出た。「高校の同級生?」
 「当たりです」と警部。
 悟さんは、高校時代の運動部が一緒だった1人の女性を思い出した。「山口久美子?」
 「当たりです。何でわかったんですか」

 何でわかったか? それはかつて彼女が、夫に振られたからだ。そのことを、夫は警察に告げていなかった。警察は夫から聞き出すこともできなかった。もともと、夫の周辺は捜査の対象外だったからだ。なぜなら、犯人は被害者の周辺にいると信じたからだ。

 警察は、街灯の下だけを探したのである。なぜなら、街灯の下は明るくて捜査しやすいからだ。捜査しやすいところだけを捜査したのである。犯人のいるところではなくて。
 
 仮に警察が本気で捜したなら、夫に質問するだけで、犯人は1日で見つかったはずだ。
 「あなたを恨んでいる可能性のある人は?」
 「そんな人はいません。思い当たる人はいません」
 「いないとしても、しいて一人いるとしたら、誰になりますか?」
 「うーん。しいて言うなら、山口久美子だね。彼女以外には、思い当たらない」
 こういう答えを得たあとで、1日で解決していただろう。……警察に杉下右京がいれば。
 やっぱり、特命捜査係がやらないと、ダメだね。
 
posted by 管理人 at 20:00 | Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
この事件は鑑識関連の初動捜査にも問題がありました。逃走経路に血痕が残っている可能性が高かったのですが、これを追い損ねたのです。当時のマスコミの調査・報道姿勢に原因があった可能性があります。

[Yahoo!ニュース/集英社オンラインより引用](2025.11.11)
https://news.yahoo.co.jp/articles/02977863d034b89760097a691d64c5835f961a40?page=1
「事件翌々日の11月15日に雨が降ったんです。降り止んだ後にルミ検が行なわれたようですが、結局血痕は見つけられなかった。」
「事件から2日間もルミ検を行なわなかったのは、捜査の手のうちを記者に知られたくない捜査幹部が遅らせたからではないかとの見方までありました。」

[東海テレビの記事より引用](2019.07.20)
https://www.tokai-tv.com/newsone/corner/20190720.html
「当時を知る複数の捜査関係者によると、実は奈美子さんが殺害された日の夜、愛知県警は警察犬を使い、血痕を追っていました。その後、この血痕を一部の報道機関も追い始めたため、当時の捜査幹部が一時中断を指示。
するとその夜、現場には雨が…。血痕が消え、追うことができなくなったといいます。あの時血痕を調べていれば、あるいは犯人にたどりつけていたかもしれません。」
Posted by ジョー at 2025年11月19日 16:54
15の春の初恋 一途に思い続けたが受け入れられず 別の男とそれなりの生活をし子供も授かった20余年後40過ぎのごく普通のおばさんとなったのちに  娘時代の過剰なリピドーを伴う感情に行動が支配されたんだろか?
 そんなことは考えられないな 動機が恋愛に絡む憎悪なのか 女は忘れる事がないのだろか?  片思いの思い出なんて誰でもあるはずだ 子供がいる様な女なら恋の思い出なんか些細な事だと思う 決して憎悪になんかならないよ  
 何か不可解な事件だな 村上春樹のねじまき鳥クロニクルを思い出す
Posted by k at 2025年11月25日 12:52
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