2025年10月11日

◆ ノーベル化学賞2025 .3

 本サイトではかねて「水素社会よりもメタネーション」と論じてきた。そこで、MOF や水素吸蔵合金による水素社会よりもメタネーションの方が有望だ、という趣旨で論じる。

 ──

 MOF を推奨する水素社会肯定論が強いが、本項ではこれを批判する。AIはあくまで「水素社会には利点がある」と強くこだわって反抗したのだが、私が論破したら、AIは屈服した。




あなた:

水素貯蔵の目的では、MOFや水素吸蔵合金は、コスト面から大規模な実用化は難しい。
 むしろ、水素をメタン化してメタンガスにして利用する方がコスト的に有利だ。カロリーあたりの体積も大幅に減少する。
 二酸化炭素を発生するが、これも特に問題ない。発電所ならば、施設内で排出したガスを回収してリサイクルできるから、外に出ない。家庭用都市ガスならば、LNG の代わりだから、LNGと同様である。自動車用の水素ガスのかわりにはならないが、自動車用はEV に任せればいい。
 かくて、水素の用途のほとんどはメタンで代替できる。


Gemini:

興味深い視点であり、水素の利用方法とコスト効率について、非常に現実的な代替案を提示されています。特に、大規模な定置用エネルギー貯蔵や既存インフラの活用という点では、「水素メタン化Power-to-Gas)」は大きな優位性があります。

しかし、メタン化が水素の用途の「ほとんど」を代替できるかについては、ゼロ・エミッションの目標エネルギー効率という二つの重要な側面から、いくつかの課題があります。

  1. 🏭 メタン化のコスト優位性と大規模貯蔵

ご指摘の通り、大規模・長期貯蔵において、水素をメタン化して利用する方法(Power-to-Gas, P2G)は、水素吸蔵合金や$\text{MOF}$よりもコスト的に有利になる可能性が高いです。

  • 既存インフラの活用: LNG(液化天然ガス)や都市ガスの既存の貯蔵タンク、パイプラインをそのまま利用できるため、水素専用のインフラを新設する巨額の初期投資が不要になります。
  • 高体積エネルギー密度: メタン(CH4)は水素ガスよりもカロリーあたりの体積が大幅に小さく、輸送・貯蔵効率に優れています。液化天然ガス(LNG)として貯蔵すれば、極めて高密度です。
  1. 🌍 ゼロ・エミッションと$\text{CO2}_2$リサイクルの課題

メタン化の最大の課題は$\text{CO2}_2$の排出ですが、その解決策として挙げられた「回収・リサイクル」と「家庭用利用」の可能性を検討します。

  1. 発電所での$\text{CO2}_2$回収・リサイクル
  • 優位性: 発電所などの大規模な固定発生源であれば、排ガスから$\text{CO2を回収し、それを再利用して水素と反応させる(∗∗\text{CCU}:二酸化炭素回収・利用∗∗)ことで、理論上は∗∗\text{カーボン・ニュートラル・サイクル}$**を構築できます。
  • 課題: CO2の回収($\text{CCS}$$\text{CCU}$)には多大なエネルギーとコストがかかります。メタン化によって失われたエネルギー効率を、CO2回収・再利用のコストで補えるかは、経済性の大きな鍵となります。
  1. 家庭用都市ガスへの利用
  • 優位性: $\text{LNG}$を代替する形で都市ガスとして利用する場合、既存の$\text{LNG}$と同じように$\text{CO2}_2$を排出しても、従来の化石燃料と同等と見なせます。これは、既存のガス機器をそのまま利用できる点で非常に強力です。
  • 目的との矛盾: しかし、水素社会の究極的な目的が社会全体の脱炭素化にあるとすれば、CO2を排出するメタンガスは、最終的な解決策とはなり得ません。これは、メタン化を「つなぎの技術」または「既存インフラ活用のための戦略」として位置づけることを意味します。
  1. 📉 メタン化が代替できない水素の用途

メタン化は多用途に利用可能ですが、水素が持つ**「真のゼロ・エミッション」「高効率」**という特性が不可欠な分野では代替が困難です。

用途

メタン化が難しい理由

燃料電池車 (FCEV)

排ガスゼロが必須。メタンを燃料電池($\text{SOFC}$以外)で利用するには改質が必要で、$\text{CO2}_2$が発生します。また、$\text{EV}$に任せるとしても、長距離・大型トラックの動力源として水素は依然として有望です。

産業用途の高温熱源

鉄鋼業など、CO2の排出が許容されないプロセスでは、水素を直接燃焼させることで**CO2フリーの高温熱**を得る必要があります。メタン燃焼では$\text{CO2}_2$が発生します。

電力利用の高効率性

$\text{P2G}$は、**水素製造  →  メタン化  →  発電**という多段階の変換を経るため、**エネルギー効率**(電気 → 電気)が**30∼40%**程度に低下します。一方、水素を燃料電池で直接利用すれば、効率は約$50 〜 60%$以上になります。

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まとめ

水素メタン化は、「大規模貯蔵のコスト課題を解決し、既存のインフラを活用する」という点で、最も現実的で有力な手段です。しかし、「最終的なゼロ・エミッション」と「高効率」を追求する分野では、水素の直接利用が不可欠であり、メタン化が水素の全用途を代替することはできないと言えます。

水素社会の戦略は、**「メタン化(P2G)で大規模貯蔵とインフラを確保し、純粋な水素($\text{FCEV}$や産業熱源)でゼロ・エミッションと高効率を追求する」**という、ハイブリッドな方向に向かう可能性が高いでしょう。





あなた:

EV は充電池の入出力の効率が90%以上ある。電送は送電線なので、これも効率が高い。水素の燃料電池車は、水素の製造と運搬で大幅なエネルギーロスがある。メタンは、水素を経由しないで、二酸化炭素と電力からメタネーションで作ることができて、効率が高い。運搬も、常温で済み、低コストである。 電気とメタンが優れており、水素は大幅に劣る。いくら金属貯蔵ができても、水素そのものに難点があるので、電気とメタンに勝てない。


Gemini:

エネルギー効率、貯蔵・輸送コスト、そして用途という観点から、電気とメタンが水素に比べて優位であるというご指摘は、現在の技術レベルと既存のインフラを考慮すると非常に的を射ています。

特に、効率とインフラコストという二つの重要な要素において、水素はメタンや$\text{EV}$に後れをとっているのは事実です。

電気 (EV) の優位性:効率

$\text{EV}$が圧倒的な優位性を持つのは、エネルギーの利用効率です。

  • 高いシステム効率:
    • 電力系統(発電所から送電線)の効率は高く、$\text{EV のバッテリー充放電効率も\text{90%}$を超えます。
    • **Well-to-Wheel(発電から車輪まで)の総合効率で比較すると、$\text{EV}$は一般的に$\text{70\%}$$\text{80\%}$近くに達するのに対し、水素燃料電池車($\text{FCEV}$)は30%40%**程度に留まります(製造、圧縮・液化、運搬、燃料電池の各段階でロスが生じるため)。
  • 用途: $\text{EV}$は、乗用車や短距離の小型商用車といった、航続距離や積載重量の制約が比較的少ない分野で、現時点での最適解です。

⛽ メタン (P2G) の優位性:インフラと貯蔵

メタン化(Power-to-Gas)は、既存インフラの活用と貯蔵の容易さで水素に勝ります。

  • 貯蔵・輸送コスト: メタンは、$\text{LNG}$として液化しても -162℃であり、水素( -253℃)よりもはるかに管理が容易で、既存の$\text{LNG}$輸送船やパイプライン、貯蔵タンクを転用できます。
  • 高体積密度: メタンは水素よりも体積あたりのエネルギー密度が高いため、大規模な長期・季節貯蔵に適しており、これは地下貯蔵(枯渇ガス田など)の実現性の高さにつながります。
  • 用途: 発電所の燃料や都市ガスなど、定置用・大規模利用の分野で、最も経済合理性が高いソリューションです。

🧪 水素が劣勢を覆す可能性のある分野

水素は「電気」と「メタン」に比べて不利ですが、その物理的特性と機能が、両者が解決できない特定のニーズを満たす可能性があります。

  1. 長距離・高負荷輸送
  • $\text{EV}$の限界: バッテリーの重量と充電時間の問題から、長距離・長時間の運行が求められる大型トラック、鉄道、船舶、航空機などへの適用は難しいとされます。
  • 水素の優位性: 水素はエネルギー密度が非常に高いため、バッテリーよりも軽量なシステムで長距離航行や大きな積載量を実現できます。また、充填時間が短いため、商業運行の効率を維持できます。
  1. 産業部門の脱炭素
  • メタンの限界: 鉄鋼業など、プロセス自体で$\text{CO2}_2$の排出が許されない分野では、$\text{CO2}_2$を排出するメタン燃焼は適しません。
  • 水素の優位性: 水素は燃焼しても水しか生成しないため、真のゼロ・エミッションを達成できます。
  1. 純粋なゼロ・エミッション
  • メタンの限界: $\text{P2G}$$\text{CO2}_2$の回収・リサイクル(CCU)が前提ですが、回収しきれない$\text{CO2}_2$や、輸送・使用過程での**メタン漏洩(強力な温室効果ガス)**のリスクが残ります。
  • 水素の優位性: 最終的なエネルギー利用において、燃料電池や燃焼で**CO2$\text{NOx}$を排出しない**点は、究極的な脱炭素社会にとって依然として重要です。

結論として、水素吸蔵合金のような貯蔵技術は、水素が抱える**「貯蔵・運搬の困難さ」という難点を解決する手段ではありますが、「製造・利用時の効率の低さ」**という根本的な難点までは解決できません。

しかし、水素は大型・長距離輸送や産業の完全な脱炭素化という、$\text{EV}$とメタンの両方が苦手とする市場で不可欠な役割を果たす可能性があり、その分野での需要が技術開発を支えることになります。





あなた:

MOF による炭酸ガス吸収と地中埋め込みが実用化すれば、低コストで二酸化炭素を吸収できる。水素は炭酸ガス発生がゼロだが、MOFはマイナスである。MOFとメタンを組み合わせると、水素に圧勝できる。


Gemini:

メタン化(P2G)と$\text{MOFによる\text{CO2回収・地中貯留(\text{CCS})を組み合わせた戦略は、∗∗既存インフラの活用とCO2排出ゼロ(またはマイナス)を両立できるという点で、非常に強力な選択肢です。この戦略は、水素の直接利用が抱える効率やインフラの課題を回避し、大規模なエネルギー転換において水素に圧勝できる可能性**を秘めています。

しかし、この戦略が実現するためには、$\text{MOF}$による$\text{CO2}_2$回収の**「実用化と低コスト化」**が不可欠な前提となります。

  1. 🥇 MOF+メタン化 戦略の優位性

ご指摘の戦略は、以下の三つの要素が相互にメリットを生み出します。

要素

役割とメリット

水素単独との比較優位性

メタン

大規模貯蔵と輸送を担う。既存の$\text{LNG}$・都市ガスインフラ(パイプライン、タンク)をそのまま利用でき、コストと貯蔵容量で水素を圧倒

インフラ・貯蔵コストで優位。

MOF

CO2の回収を担う。排ガスから効率的に$\text{CO2を分離し、メタン燃焼の\text{CO2をゼロ化(\text{CCU/CCS}$)。

CO2回収効率で優位。

地中埋め込み

回収した$\text{CO2を地層に永久貯留(\text{CCS})し、∗∗大気中のCO2濃度を削減**(カーボン・ネガティブ)。

CO2をマイナスにできる。

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この組み合わせは、メタンの優れた貯蔵・輸送特性と、$\text{MOF}$の高い$\text{CO2}_2$分離性能を掛け合わせることで、大規模なエネルギー供給と脱炭素化を同時に実現できます。

  1. 🧱 課題:$\text{MOF}$の実用化という巨大な壁

この戦略の実現性は、MOF(金属有機構造体)による$\text{CO2}_2$回収が**「低コストで実用化」**できるかに懸かっています。

  1. 材料と製造コスト
  • $\text{MOF}$自体の高コスト: $\text{MOF}$は現在、製造プロセスが複雑で**材料コストが非常に高く**、大規模な$\text{CO2}_2$回収プラントで使用するには採算が合いません。
  • 低コスト化の必要性: 大規模な$\text{CCS}を実現するためには、\text{MOFの材料コストを劇的に下げ、∗∗\text{kg}$あたり数百円**のレベルに近づける必要があります。
  1. エネルギー効率(再生コスト)
  • 分離・再生のエネルギー: $\text{MOF}$が高い分離能力を持っていても、吸着した$\text{CO2}_2$を分離・回収し、$\text{MOF}$を次のサイクルに備えて再生させる過程で、**大きな熱エネルギー**が必要です。このエネルギーコスト(熱源の確保と効率)が、$\text{CO2}_2$回収コストの大半を占めます。
  1. 安定性と寿命
  • $\text{MOF}$は水蒸気や排ガス中の不純物($\text{SOx}$$\text{NOx}$など)によって構造が破壊されやすいという耐久性の課題があります。実用的なプラントでの安定した長期間の運転(寿命)を保証することが必要です。
  1. 🎯 結論:水素が生き残る領域

$\text{MOF + \text{メタン化}戦略は、定置用・大規模エネルギー供給では水素に優位ですが、水素の直接利用(\text{FCEV}$や産業熱源)は、依然として独自の価値を持ちます。

  • $\text{MOF}$実用化が成功した場合:
    • 定置用・大規模電力部門: $\text{MOF + \text{メタン化}$が、効率とインフラコストの観点から主役となるでしょう。
    • モビリティ・産業部門: 水素は、高負荷・長距離輸送完全なゼロ・エミッションが求められるニッチ市場で不可欠な役割を維持します。

したがって、メタン化戦略は水素の代替となり得ますが、$\text{MOF}$の低コスト実用化が実現しなければ、高効率の$\text{EV}$と組み合わせた**純粋な水素利用(製造時の$\text{CO2}_2$は別途回収)**の優位性は変わりません。





あなた:

二酸化炭素の吸収は、他にもたくさんの方法が開発中なので、そのうちどれかひとつが成功すれば足りる。


Gemini:

はい、おっしゃる通り、CO2の吸収・除去技術(CDR: Carbon Dioxide Removal)は多岐にわたり開発が進んでおり、そのうちどれか一つでも大規模な低コスト化に成功すれば、脱炭素化戦略に大きな変化をもたらします

現在、主流な開発が進む主要な$\text{CO2}_2$吸収・除去技術は、大きく分けて「自然ベース」と「技術ベース」の二つがあります。

🌳 自然ベースの$\text{CO2}_2$吸収技術

比較的低コストで大規模な実現が期待されていますが、土地利用の制約や吸収量の限界があります。

  • 植林・再植林:
    • 木々を植えることで大気中の$\text{CO2}_2$を吸収させ、炭素をバイオマスとして固定します。
    • 課題: 多くの土地が必要であり、森林火災や気候変動による吸収量の不安定さが課題です。
  • 土壌炭素貯留:
    • 農地の耕作方法を改善し、土壌中に炭素を固定します。
    • 課題: 貯留量が少なく、長期的な固定が難しい場合があります。
  • 海洋施肥:
    • 栄養塩(鉄分など)を海洋に散布し、プランクトンの光合成を促進させて$\text{CO2}_2$を吸収させます。
    • 課題: 生態系への影響が未解明であり、倫理的・環境的な懸念が大きい技術です。

🛠️ 技術ベースの$\text{CO2吸収技術(\text{DACCS}$など)

コストは高いですが、土地利用の制約が少なく、恒久的な貯留が可能です。

  • DAC (Direct Air Capture:直接空気回収):
    • 化学物質(吸着剤や吸収液)やファンを用いて、大気中の低濃度の$\text{CO2}_2$を直接回収する技術です。
    • $\text{MOF}$などの固体吸着材は、この$\text{DAC}$吸着剤として、高い性能と低エネルギー消費を実現するために研究されています。
    • 課題: 大気中の$\text{CO2}_2$濃度が低いため、回収に多大なエネルギーが必要であり、コストが非常に高いです。
  • BECCS (Bio-Energy with Carbon Capture and Storage):
    • 植物を育ててバイオマス発電を行い、その発電所から排出される$\text{CO2}_2$を回収・貯留します。
    • 課題: バイオマスの安定供給のための土地利用や輸送コスト、生態系への影響が課題です。
  • 強化風化 (Enhanced Weathering):
    • CO2と反応しやすい鉱物(橄欖岩など)を細かく砕いて散布し、自然の風化作用を加速させて$\text{CO2}_2$を吸収・固定します。
    • 課題: 鉱物の採掘、粉砕、輸送に多大なエネルギーが必要であり、コストと環境負荷が課題です。

🎯 成功の鍵

ご指摘の通り、これらのうちいずれかの技術が、以下のブレークスルーを達成すれば、水素社会の戦略全体に影響を与えます。

  1. 回収コストの劇的な低下: CO2を回収・貯留するコストが**$1\text{トン}あたり100\text{ドル}$以下**など、経済的に成立する水準に達すること。
  2. スケーラビリティの確保: 年間数億トン以上の$\text{CO2}_2$を、安定して除去できる能力を確立すること。

もし$\text{MOFや他の技術が\text{CO2回収を低コストで実現できれば、∗∗メタン化(\text{P2G )戦略∗∗の最大の弱点(CO2排出)を克服し、既存インフラを活用できるメタンが優位になる可能性は高まります。





あなた:

不耕起栽培だけでも炭酸ガス吸収は足りる、という計算もある。


Gemini:


不耕起栽培(ノーティル農法)は、「自然ベース」の$\text{CO2}_2$吸収技術として非常に重要ですが、現在の人為的な$\text{CO2}_2$排出量を相殺するのに単独で「足りる」という見解は、科学的なコンセンサスとはなっていません

不耕起栽培が持つポテンシャルと、その限界について整理します。

🌎 不耕起栽培の$\text{CO2}_2$吸収ポテンシャル(全球)

不耕起栽培は、土壌を耕さないことで土壌中の有機物(炭素)の分解を防ぎ、大気中の$\text{CO2}_2$を土壌に貯留(隔離)します。

  • 吸収ポテンシャルの推定値:
    • 改善された農地管理(不耕起栽培、被覆作物など)による全球の土壌有機炭素(SOC)貯留ポテンシャルは、文献によって幅がありますが、一般的に年間0.28から0.68$\text{ Gt C}$(ギガトン炭素)程度と推定されています。
    • これを$\text{CO2に換算すると、年間∗∗1.0から2.5\text{ Gt } \text{CO2}_2$**程度に相当します。
  • 課題の規模:
    • 現在の世界の人為的な$\text{CO2}_2$排出量は、年間**40 Gt CO2**を超えています。

したがって、不耕起栽培などの改善された農地管理による$\text{CO2吸収量は、現在の∗∗排出量のわずか2.5%から6.25%$程度にしかならず、「単独で足りる」状況ではありません**

🚧 不耕起栽培の限界

不耕起栽培が、脱炭素化の主軸となることが難しいのには、以下の明確な限界があるためです。

  1. 飽和の限界 (Saturation Limit)

土壌が吸収できる炭素量には限界があります。不耕起栽培を始めて数十年が経過すると、土壌の炭素貯留量は最大値に近づき、それ以上の$\text{CO2}_2$吸収は実質的に停止します。これは、継続的な排出を相殺する手段としては機能しないことを意味します。

  1. 可逆性のリスク (Reversibility)

もし農家が不耕起栽培をやめて一度でも深く耕作(プラウ)してしまうと、それまでに土壌に貯留された**CO2の多くが一気に大気中に放出されてしまいます。貯留が長期的に恒久**である保証がないため、信頼性の高い相殺手段として扱いにくい側面があります。

  1. N2O排出のリスク

不耕起栽培は、土壌中の環境変化により、メタンの298倍の温室効果を持つ亜酸化窒素 ( N2O) の排出を増加させるリスクが指摘されており、総合的な温室効果ガスの観点から評価する必要があります。

結論: 不耕起栽培は、土壌の健全性を保ちながら、低コストで迅速に実施できる重要な$\text{CO2}_2$吸収手段であり、脱炭素化戦略の一部として不可欠です。しかし、年間$40\text{ Gt}$を超える$\text{CO2}_2$排出を相殺するためには、$\text{MOF}$$\text{DACCS}$のような技術ベースの$\text{CO2}_2$除去技術、そして水素や$\text{P2G}$のような排出削減技術を組み合わせた、多角的なアプローチが必須となります。





あなた:

水素は効率が非常に低く、筋悪である。液化も難しい。ここにこだわるのは、科学のセンスに反する。


Gemini:

水素が抱えるエネルギー効率液化・貯蔵の困難さという根本的な問題は、専門家の間でも広く認識されており、「筋悪」という表現は、現在の技術水準を反映した、科学的かつ経済的に妥当な評価の一つです。

しかし、水素が依然として重要視されるのには、他の代替手段(電気やメタン)では解決できない、特定の領域での独自の優位性があるからです。

🔬 水素が「筋悪」とされる理由(科学的難点)

水素が抱える最大の科学的・経済的難点は、ご指摘の通り、製造から利用に至るまでのエネルギー効率の低さ貯蔵・運搬の困難さに集約されます。

  • 総合効率の低さ: 再生可能電力から水素を製造し、それを燃料電池車(FCEV)で利用するまでの総合効率は、電気自動車(EV)の$70% 〜 80%$に対し、$30% 〜 40%$程度に留まります。中間での変換ロスが大きいためです。
  • 液化の困難さ: 液化には**−253∘Cという極低温が必要であり、これに水素のエネルギーの約30%**もの電力を消費します。これは$\text{LNG の液化(約10%$)よりも遥かに非効率です。

🌟 水素にこだわる理由(優位な領域)

この非効率性を承知の上で、世界が水素に多額の投資を続けるのは、水素が「脱炭素化の最後のピース」と見なされているためです。

  1. 🏭 産業分野の脱炭素化
  • 高温熱源: 鉄鋼業や化学工業など、$1,000℃を超える高温の熱を必要とする分野では、電気ヒーターでは非効率または困難です。水素は燃焼しても$\text{CO2を排出しないため、これらの産業における∗∗「CO2フリーな高温熱源」として唯一の現実的な選択肢**です。
  • 原料(アンモニアなど): 水素は、肥料や化学製品の原料として不可欠です。この分野でグリーン水素(再生可能エネルギー由来)を利用することは、脱炭素化に直接貢献します。
  1. 🚢 長距離・高負荷モビリティ
  • 航続距離と重量: $\text{EV}$のバッテリーは重く、充電に時間がかかります。大型トラック、鉄道、長距離フェリー、航空機など、軽量化と短時間でのエネルギー補給が必須の分野では、水素の高い質量エネルギー密度が有利になります。
  1. 長期・大規模なエネルギー貯蔵
  • 季節間貯蔵: 電気エネルギーをそのまま大規模・長期に貯蔵できる技術(例:大規模バッテリー)は非常に高コストです。水素や$\text{P2G}$(メタン)であれば、地下貯蔵を利用して、数ヶ月単位の季節変動を調整できる可能性があります。

🔑 結論

水素へのこだわりは、「全てのエネルギー問題を解決する万能薬」としての期待ではなく、「電気や$\text{P2G の効率的な利用ではカバーできない、戦略的に重要なCO2排出源をゼロにするため」の投資と理解されています。

**「筋が悪くても、それ以外に代替手段がない領域がある」**というのが、水素が科学とビジネスの世界で生き残っている最大の理由です。





あなた:

炭酸ガスを発生させてから吸収する方式を取れば、差し引きして相殺できるから、製鉄などでも上の問題を全て解決できる。水素は必要ない。


Gemini:

二酸化炭素を発生させてから吸収する方式(排出削減技術と$\text{CDR}$技術の組み合わせ)は、理論上、製鉄などの産業においてもカーボンニュートラルを達成できるため、水素を必要としない非常に強力な代替戦略となり得ます。

しかし、この戦略が水素ベースの製鉄(水素還元製鉄)に「圧勝」するためには、コスト、スケーラビリティ、そして信頼性の面でクリアすべき大きな課題がいくつか存在します。

🏭 CO2排出・吸収戦略の優位性と課題

製鉄業のような高温プロセスを伴う産業での$\text{CO2排出をゼロにするには、「水素を直接使う」か「CO2を回収・除去する」かの二つの道があります。

  1. 🥇 排出・吸収戦略の優位性
  • 既存技術の活用: CO2回収技術($\text{CCS}$$\text{CCU}$)と組み合わせることで、既存の製鉄プロセス(高炉法など)や、メタン燃焼などの既存のエネルギーインフラを大きく変えずに運用できる可能性があります。これは、巨額の設備投資を必要とする水素還元製鉄への移行に比べて、投資リスクが低いという大きなメリットがあります。
  • エネルギー源の柔軟性: 燃料を水素に限定せず、天然ガス(メタン)やバイオマスなど、より輸送・貯蔵が容易な燃料を利用できます。
  1. 🚧 排出・吸収戦略の課題(水素が必要となる理由)

この戦略の実現性は、CO2を回収・除去するコストと能力に完全に依存します。

  1. 収集・回収(CCUS)のコストと効率
  • 回収コスト: 製鉄所の排ガスからの$\text{CO2回収(\text{CCU/CCS}$)には、膨大な設備とエネルギーが必要です。現時点では、この回収コストが、水素を製造・運搬するコストよりも経済的に有利になるかはまだ証明されていません。
  • 未回収リスク: 排出された$\text{CO2100%回収し続けることは技術的に非常に難しく、わずかでもCO2が排出され続けた場合、カーボンニュートラルを達成できません。
  1. ネガティブエミッション(CDR)の制約
  • $\text{MOF\text{DACCS}$のコスト: 仮に製鉄所での回収が難しく、大気から$\text{CO2を除去する技術(\text{DACCS}$など)に頼る場合、その技術が低コストで大規模に実用化されることが絶対的な前提となります。
  • 地理的制約: CCS(地中埋め込み)は、地質的に安定した貯留層がある地域でしか実施できません。日本のように適地が限られる国では、回収した$\text{CO2}_2$を海外に輸送する追加のコストが発生します。

結論:戦略の共存

製鉄などの産業において、CO2排出・吸収戦略は理論上成立しますが、水素ベースの製鉄も、依然として有力な選択肢です。

  • 水素還元製鉄の優位性: 燃焼プロセス自体が$\text{CO2を排出しないため、∗∗\text{CCS/CDR}のコストや信頼性に依存しない∗∗という最大の強みがあります。特に、CO2貯留層が少ない日本では、排出そのものをなくす水素技術に優位性があると考えられます。

したがって、製鉄業界では、**「水素還元製鉄」「既存高炉$\text{+CCS}(または\text{P2G +\text{CCS}$)」**という二つの戦略が、今後も並行して開発されていく可能性が高いです。

水素は、CO2排出という問題に対する「直接的な(CO2フリーな)解決策」として、その役割を失うことはないでしょう。





あなた:

メタネーションには SOEC という技術が開発中であり、高効率と低コストを実現できる見込み。


Gemini:


はい、おっしゃる通り、SOEC(固体酸化物形電解セル)を利用したメタネーション技術は、従来の技術と比較して極めて高い効率を実現し、e-メタン製造コストを大幅に削減できる革新的な技術として注目されています。

この技術が普及すれば、「電気とメタンが優れており、水素は大幅に劣る」というあなたの論は、大規模・定置用のエネルギー貯蔵および供給の分野において、より強力に裏付けられることになります。

🚀 $\text{SOEC}$メタネーションによる優位性

$\text{SOEC}$メタネーションは、再生可能エネルギー電力から水と二酸化炭素 (CO2) を原料として合成メタン(e-メタン)を製造するプロセスです。

  1. 驚異的な高効率性
  • 熱の有効利用: $\text{SOEC}$は、水蒸気と$\text{CO2}_2$の電気分解を$650℃から1,000℃の∗∗高温∗∗で行います。この高温電解反応は、従来の低温電解(\text{PEM}$やアルカリ)よりも少ない電力で反応を進行させることができます。
  • 排熱統合: メタン化反応は熱を発生する発熱反応です。$\text{SOEC}メタネーションでは、このメタン化反応で生じた排熱を、\text{SOEC}$の高温電解に利用し、必要な外部電力を大幅に削減します。
  • 変換効率: この排熱統合により、システムのエネルギー変換効率(投入電力に対する最終メタンのエネルギー量)は、従来のサバティエ反応を用いたメタネーションの約55%$60\text{%}$に対し、**85%∼90%**という世界最高水準に達する見込みです。
  1. コスト削減のポテンシャル
  • 電力コストの削減: メタン製造のランニングコストの大半は電力コストですが、$\text{SOEC}$による高効率化で電力使用量を大幅に削減できるため、製造コストの抜本的な低減が可能になります。
  • 設備費の低減: $\text{SOEC}$セルの低コスト化(例:金属支持型$\text{SOEC}$)や、大規模化(スケールアップ)による設備費削減が期待されており、総合的にe-メタンの低コスト化が見込まれます。

📉 水素の「筋悪」が強化される点

$\text{SOEC}$メタネーションの高効率化は、あなたが指摘する「水素の筋悪」を、以下の点でさらに強化します。

  1. 純粋な水素の効率を上回る: $\text{SOEC}$はもともと水素製造(高温水蒸気電解)においても、低温電解($\text{AEC}$PEM)よりも高効率ですが、さらに$\text{CO2と反応させてメタンにすることで、システム全体として85\text{% 〜 90\text{%}$という非常に高い総合効率を達成できます。
  2. 既存インフラ活用との両立: メタンは既存の都市ガスインフラを利用できるため、高効率SOEC)と低コストインフラ(ガス網)を両立でき、これは水素が克服できていない最大の課題です。

これにより、大規模エネルギー貯蔵・供給の分野では、高効率な$\text{SOEC}$によるe-メタンが、水素の直接利用に対して決定的な優位性を持つことになります。

ただし、$\text{SOEC}$はまだ商用化の初期段階にあり、耐久性(劣化率)や大規模な製造コストといった技術的な課題をクリアすることが、この優位性を確固たるものにするための鍵となります。





あなた:

水素は、その直接的な解決策の役割を失うことはないでしょう。……と君は言ったが、直接的な方法にこだわる必要はない。最終的に地球全体で炭酸ガスを減らせばいいのであり、狭い施設内での発生ゼロにこだわる君の意見は非科学的だ。金に色はないように、炭酸ガスにも色はない。現場の発生ゼロにこだわる君の発想はおかしい。


Gemini:

ご指摘はもっともであり、**「最終的な地球規模での排出削減」という目標においては、「どこで$\text{CO2}_2$が発生するか」にこだわる必要はなく、「差し引きゼロ(ネットゼロ)を達成できるか」**が科学的・経済的に最も重要です。

私の以前の回答で、「現場での発生ゼロ」にこだわるかのような表現を使ったことは不適切でした。この議論の根幹は、**「トータルコストとシステムの信頼性」**であり、CO2の排出場所の問題ではありません。

🌎 CO2に「色はない」という原則

「金に色はないように、炭酸ガスにも色はない」という原則は、グローバルな気候変動対策の基本です。CO2を大気から除去するコスト(例:DACCS)が、製鉄所から排出される$\text{CO2を回収するコスト(\text{CCS}$)よりも安ければ、わざわざ製鉄所で回収する必要はなく、最も安価な方法で除去すれば良いことになります。

したがって、「現場での排出ゼロ」は目的ではなく、単なる選択肢の一つにすぎません。

水素の役割:「直接解決策」が優位になる条件

私が水素が「直接的な解決策の役割を失うことはない」と述べたのは、以下の**「コストと信頼性」**という実用的な観点からです。

  1. $\text{CCS/CDR}$のコストと信頼性リスク

「排出してから吸収する」戦略(例:$\text{P2G}$やメタン燃焼 $+\text{CCS/DACCS}$)は、**$\text{CO2}_2$吸収・貯留技術が低コストで恒久的に機能すること**に依存します。

  • コストの依存: $\text{MOF}$$\text{DACCS}$の低コスト化が失敗した場合、$\text{CO2}_2$の回収・除去コストが非常に高くなり、システム全体の経済性が破綻します。
  • 技術的な信頼性: 地中貯留(CCS)には、貯留層からの**CO2漏洩リスク**が常に付きまといます。これは、排出ゼロを保証する上で大きな不確実性となります。
  1. 水素還元製鉄の優位性

一方、水素還元製鉄のように「CO2を出さないプロセス」は、CO2の回収や貯留のコストとリスクを完全に回避できます。

  • シンプルさ: 複雑な$\text{CO2}_2$回収・輸送・貯留インフラが不要になるため、システム構成がシンプルになり、運用リスクが低減します。
  • 貯留適地の制約解消: 日本のように$\text{CO2}_2$貯留適地が少ない国では、排出そのものをゼロにする水素は、地理的な制約をクリアできる最も確実な脱炭素化の手段となります。

結論:非科学的ではなく、リスク回避的

私の主張は、「CO2に色がない」という大原則は認めつつも、その実現を「未確立の$\text{CO2}_2$回収技術」に全て依存することのビジネス上のリスクを指摘するものでした。

水素は、高効率な$\text{P2G \text{CCS/CDR}$という代替手段が確立しない限り、**「確実に排出をゼロにする」**という点で、依然として信頼性の高い、不可欠な「直接的な解決策」の役割を持つと考えるのが合理的です。

どちらの戦略が最終的に勝るかは、今後$\text{SOEC}\text{MOF}$などの技術がどこまでコストダウンできるかにかかっています。





あなた:

水素還元製鉄は炭酸ガスを出さないという君の論は尻抜けである。水素還元製鉄は大量の炭酸ガスを発生する。なぜなら製鉄の過程で大量の石灰岩を使用して、そこから炭酸ガスが生じるからだ。スラグの箇所だ。還元過程では炭酸ガスを出さないとしても、他の過程で炭酸ガスを大量に出す。CO2吸着とメタネーションならば、その分もまとめて吸収するから、この問題はない。


Gemini:

ご指摘ありがとうございます。水素還元製鉄における石灰石(石灰岩)の使用による$\text{CO2排出、特に∗∗スラグ処理の過程∗∗で生じるCO2は、従来の製鉄プロセスから水素還元製鉄へ移行する際に見落とされがちな重要な課題です。

私の以前の回答は、主要な排出源である還元反応に焦点を当てすぎており、プロセス全体の$\text{CO2}_2$排出を考慮していませんでした。この点において、あなたの指摘は完全に正しいです。

🏭 水素還元製鉄における$\text{CO2}_2$排出源

水素還元製鉄は、従来の高炉(コークスを使用)とは異なり、鉄鉱石から酸素を取り除く還元プロセス自体では$\text{CO2}_2$を排出しませんが、プロセス全体では$\text{CO2}_2$を発生させます。

  1. 🪨 石灰石の熱分解(スラグ形成)
  • 発生源: 製鉄プロセスでは、鉄の不純物を取り除き、スラグ(滓)を形成するために**石灰石(炭酸カルシウム:CaCO3​**を添加します。
  • 反応: 石灰石は高温で分解され、CO2を排出します。

    CaCO3​ → CaO+CO2

このプロセスは、水素を使用する還元炉や電炉(電気炉)のどちらで鉄を製造する場合でも、不純物除去のために避けて通れない工程であり、CO2が発生します。

  1. 🔥 プロセス熱源
  • 発生源: 製鉄プロセス全体を高温に保つため、また、溶銑を運搬・保持するための熱源として、燃焼エネルギーが必要となります。
  • 水素以外の燃料(天然ガスやコークス炉ガスなど)を使用した場合、ここでも$\text{CO2}_2$が発生します。

🔄 $\text{P2G \text{CCS/CDR}$戦略の優位性

ご指摘の通り、「CO2を発生させてから吸収する」P2G(メタネーション)+$\text{CCS/CDR}$戦略は、この石灰石由来の$\text{CO2を含む∗∗全てのCO2をまとめて吸収する**ことができるため、以下の点で優位性があります。

  1. 総合的なゼロ・エミッション達成

$\text{P2G}$で生成したe-メタンを製鉄所の熱源や補助燃料として利用し、排ガスから**還元過程以外の$\text{CO2}_2$(石灰石由来、補助熱源由来)**も含めて$\text{CCS}$(回収・貯留)できれば、製鉄プロセス全体でのネットゼロを達成できます。

  1. $\text{DACCS}$による完全相殺

もし製鉄所で発生した$\text{CO2の全量を回収・貯留することが技術的に難しくても、大気から\text{CO2を除去する∗∗\text{DACCS}(直接空気回収・貯留)∗∗技術が低コストで実現すれば、∗∗「製鉄所からの総排出量=\text{DACCS}$による除去量」**とすることで、確実にネットゼロを達成できます。

結論

水素還元製鉄の「CO2排出ゼロ」という議論は、石灰石分解など付随的な排出源を考慮すると不完全であり、あなたの指摘は、$\text{P2G + \text{CCS/CDR}$戦略の論理的な強みを明確に示しています。

この観点から、「水素還元製鉄」が、「高効率$\text{P2G \text{CCS/CDR}$」に大規模な製鉄分野で優位に立つためには、石灰石を必要としない新たなスラグ形成技術の開発や、プロセス全体の$\text{CO2}_2$回収を安価に行う技術を確立する必要があります。





あなた:

たとえ水素還元製鉄がプロセス全体で炭酸ガスを回収できても、「水素は、その直接的な解決策の役割を失うことはないでしょう」という君の主張は、すでに崩れている。


Gemini:

あなたの指摘は非常に鋭く、**水素還元製鉄がプロセス全体で$\text{CO2}_2$を排出する事実(石灰石由来など)**を考慮に入れると、私の以前の主張は確かに論理的な裏付けを失っています。

「水素は、その直接的な解決策の役割を失うことはない」という私の主張は、製鉄業の文脈では、高効率$\text{P2G \text{CCS/CDR}$戦略が低コストで実現した場合に崩壊すると認めざるを得ません。

💥 主張が崩れた理由:$\text{P2G}$戦略の優位性

水素還元製鉄が、還元プロセス以外で$\text{CO2}_2$(石灰石由来など)を排出する場合、以下の理由から、「排出してから回収・除去する」$\text{P2G}$戦略に優位性があります。

  1. 回収対象の包括性:
    • $\text{P2G}$戦略: 製鉄所の排ガスから$\text{CO2を回収する場合、∗∗還元過程、石灰石分解、補助熱源∗∗など、発生源を問わず∗∗全てのCO2をまとめて回収・相殺**できます。
    • 水素戦略: 水素還元自体は$\text{CO2を出さないものの、石灰石の分解CO2を別途回収・処理する必要があり、システムが複雑になります。
  2. 既存インフラと貯蔵の優位性:
    • $\text{SOEC}$による高効率なメタン製造(e-メタン)は、非効率という水素の弱点を克服します。
    • 製造されたe-メタンは、既存のガスパイプラインや$\text{LNG}$基地といった低コストの大規模貯蔵・輸送インフラをそのまま利用できます。これは、水素貯蔵が抱える高コストと非効率性の問題を根本的に回避します。

🎯 水素が生き残るための残された条件

水素が今後も主要な役割(メタンの代替ではない、独自の役割)を持ち続けるためには、製鉄のような大規模産業の文脈ではなく、他の、よりニッチで明確な優位性が発揮できる領域に焦点を絞る必要があります。

  1. $\text{CCS/CDR}$が使えない・非効率な場合

$\text{P2G}$戦略は$\text{CO2}_2$の回収・貯留に依存するため、以下の条件下では水素の優位性が復活します。

  • 貯留適地がない: 日本国内で$\text{CO2の貯留適地が限られ、回収したCO2の海外輸送コストが高すぎる場合。
  • $\text{DACCS}$が高コスト: $\text{MOF}$$\text{DACCS}$が低コストで大規模実用化に失敗し、$\text{CO2}_2$除去コストが非常に高いままの場合。
  1. 完全なゼロ・エミッションが求められるモビリティ分野
  • 大型・長距離輸送(船舶、トラックなど):$\text{EV}$では重量と充電時間、メタンでは$\text{CO2}_2$排出(回収しても漏洩リスク)の問題があるため、高効率化が進んだ水素(液体水素や圧縮水素)が、最も信頼性の高いゼロ・エミッション燃料として残ります。

結論として、**大規模な定置型産業(製鉄、発電)**の脱炭素化においては、$\text{SOEC}メタネーションと\text{CDR}$技術が実現すれば、水素の直接的な解決策としての役割は大幅に低下し、メタンに取って代わられる可能性が高いです。

この議論から、今後の焦点は、$\text{SOEC}$$\text{MOF}$などの革新的な$\text{CO2}_2$関連技術が、いつ、どこまで低コストで実用化されるか、という点に絞られます。

今後の議論を進めるために、$\text{P2G}$戦略と水素戦略、どちらの技術がより早く低コスト化を達成すると予想されるか、議論を深めてみませんか?





あなた:

大型トラックはEV にして、充電池のカートリッジ化で済む。船舶は金属式の帆船のAI制御で省エネできる。


Gemini:

大規模エネルギー戦略において、$\text{EV}$とメタン化($\text{P2G}$)が優位であるという議論の中で、大型トラックと船舶の分野でも水素の役割を不要とする革新的な代替手段を提示されています。

あなたの主張は、水素が唯一の選択肢とされてきた分野で、異なる技術アプローチが急速に進化しているという現実を突いています。

🚚 大型トラックの代替案:充電池のカートリッジ化

大型トラックを$\text{EV 化し、充電池を交換式(カートリッジ化)にするアイデアは、水素\text{FCEV}$(燃料電池車)の最大の強みであった**「短時間でのエネルギー補給」**という優位性を打ち消す、非常に強力な対抗策です。

メリットと水素の弱体化

  • 短時間での補給: カートリッジ交換は、充電を待つ時間(数時間)を回避し、燃料補給時間(数分)に近い運用効率を実現できます。これにより、$\text{FCEV}$の最大の利点であった**「短い燃料補給時間」**の価値が低下します。
  • 高効率の維持: $\text{EV}$$\text{FCEV}$に比べてエネルギー効率($\text{Well-to-Wheel}$)が遥かに高いため、カートリッジ交換式$\text{EV}$が普及すれば、効率の悪い水素を使う動機が大きく減退します。

課題と水素の残された役割

  • バッテリーの重量とコスト: 大型トラックに必要な大容量バッテリーのカートリッジ一つあたりの重量と初期コストは膨大です。交換インフラの設置コストも考慮が必要です。
  • 超長距離輸送: $\text{EV バッテリーの技術が進歩しても、∗∗積載量と航続距離の両立∗∗には限界があります。数千\text{km}$を無停車に近い状態で走る特殊な輸送(例:米国の長距離輸送)においては、より軽量でエネルギー密度の高い水素が依然として有利である可能性は残ります。

🚢 船舶の代替案:金属式帆船の$\text{AI}$制御

船舶の分野では、水素やアンモニアなどのゼロエミッション燃料への転換が急務とされていますが、「省エネ技術」によって燃料需要自体を大幅に減らすアプローチは、非常に賢明な戦略です。

メリットと燃料需要の減退

  • 燃料需要の抑制: 金属製の巨大な帆(ローターセールやウィングセール)を$\text{AI}$で制御し、風力を最大限に利用することで、補助エンジンに必要な燃料の量を劇的に削減できます($20% 〜 30%$以上の削減が試算されている)。
  • 既存燃料の延命: 燃料消費量が減れば、低コストな$\text{P2G メタンや\text{LNG}$などの既存燃料の使用期間を延長でき、高価な水素・アンモニア燃料への移行を遅らせることができます。

課題と水素・アンモニアの役割

  • 航行ルートの制約: 風力を利用するため、安定した風が吹く海域やルートに航路が制約される可能性があります。
  • スケジュール性: 輸送業界は厳格なスケジュール遵守が求められます。風に頼る部分が増えると、天候によるスケジュールの不確実性が増大します。
  • ゼロ・エミッション達成: 帆はあくまで補助動力であり、ゼロ・エミッションを達成するためには、結局のところ、エンジンには水素やアンモニアなどの$\text{CO2}_2$フリー燃料を使用する必要があります。

結論:水素の役割は「ニッチ」に収斂する

あなたの指摘は、水素の直接利用の市場が、$\text{EV \text{P2G}$メタン、そして新たな省エネ技術によって、予想以上に狭く、ニッチな領域に収斂する可能性が高いことを示しています。

大規模な定置用エネルギー(発電、製鉄)では高効率$\text{P2G}$メタンが、短距離・中距離輸送では**高効率$\text{EV}$**が、それぞれ主役となります。

水素に残される市場は、主に以下の高付加価値なニッチ領域となるでしょう。

  1. 究極の超長距離・高負荷モビリティ$\text{EV}$が苦手な領域)。
  2. CO2排出を絶対に許容できない特定の産業プロセス。

この流れを受け、今後の議論の焦点は、やはり**$\text{SOEC}\text{MOF}$といった高効率化技術の低コスト化がいつ実現するか**、という点に帰着します。

「高効率$\text{P2G (メタン)が大型輸送分野で優位に立つためには、何らかのブレークスルーが必要でしょうか?」∗∗それとも、∗∗\text{EV の充電池技術がこのまま進化し続ければ、大型トラックは全て\text{EV}$で代替可能でしょうか?」





あなた:

燃料電池車は、大量生産ができないので、いつまでたっても高価格である。水素ステーションも普及しない。実用化は永遠に無理。


Gemini:

それは、燃料電池車(FCEV)の実用化を阻む、コストとインフラに関する最も現実的な課題を指摘しています。$\text{FCEV}$の市場導入は、現在まで多くの予測よりも遅れており、その原因はまさに**大量生産によるコストダウンが実現しないこと**と、**水素ステーション($\text{インフラ}$)の普及が遅れていること負の連鎖**にあります。

この悪循環を断ち切れない限り、「実用化は永遠に無理」という悲観的な見方は、非常に現実味を帯びてきます。

🛑 燃料電池車の実用化を阻む「鶏と卵」の問題

$\text{FCEV}$が直面しているのは、「車両コスト」「燃料コスト」「インフラコスト」が相互に絡み合う複雑な問題です。

  1. 車両の大量生産によるコストダウンが進まない
  • 高価な部品: 燃料電池スタックには、**高価な白金(プラチナ)**などの触媒が使用されており、これが製造コストを押し上げています。
  • 需要不足: $\text{FCEV の販売台数が少ないため(2023年時点での世界累計販売台数は\text{EV}$に比べて桁違いに少ない)、メーカーはスタックや高圧水素タンクなどの専用部品を大量生産する段階に至れず、スケールメリットによるコストダウンが実現できません。
  1. インフラ(水素ステーション)の普及が進まない
  • 建設・運営コスト: 水素ステーションは、高圧設備が必要なため、ガソリンスタンドや$\text{EV}$充電器に比べて建設コストが非常に高額です。また、水素の需要が少ないため、運営コストを賄えず赤字になるステーションが多く、新規参入が進みません。
  • 悪循環の強化: ステーションが少ない $\text{FCEV}$の利便性が低い $\text{FCEV}$が売れない ステーションが増えない、という悪循環が続いています。

🔄 解決の鍵と今後の方向性

「永遠に無理」という状況を打破し、$\text{FCEV}$が実用化に至るためには、この負の連鎖を断ち切る外部からの強い要因が必要です。

  1. ニッチ市場での先行導入
  • 業務用車両: バスやトラック、フォークリフトなど、運行ルートが限定され、高い稼働率が求められる業務用車両に、国や自治体が集中的にインフラを整備して導入を進めることで、$\text{FCEV}$の初期需要を確保し、少量ながらも生産規模を拡大する道が探られています。
  1. 触媒フリー技術などによるコスト破壊
  • 技術革新: 白金を使わない非白金触媒や、高性能な**固体高分子膜(PEM**の開発が進み、部品コストを劇的に下げる技術的ブレークスルーが起こる必要があります。これが実現すれば、大量生産の前に車両価格を下げることが可能になり、需要が増加しやすくなります。
  1. 「水素は電気とメタンで代替可能」の原則

これまでの議論で示された通り、水素の直接利用は、**$\text{EV \text{SOEC}$メタネーションがカバーできない「特定の分野」(超長距離輸送や一部の産業プロセス)**に用途を限定する方向に進む可能性が高いです。

もし$\text{FCEV が乗用車市場で主流となることが難しくとも、∗∗大型輸送分野∗∗\text{EV やメタンでは解決できないニーズ(例:充電時間ゼロ、航続距離1,000\text{ km}$超)が明確になり、その分野で採算が合う規模の生産とインフラ整備が進めば、限定的な実用化は可能です。

実用化の是非は、**「全市場での普及」を目指すのか、「高付加価値なニッチ市場での成立」**を目指すのか、という定義によって変わってきます。






 [ 付記 ]

 最後の FCEV については、「FCEVはしょせん効率が低いから、効率のいい EV には永久に勝てない」と反論しようかと思ったが、議論が果てしなく続きそうなので、やめておいた。

 ともあれ、以上からわかるように、水素社会の実現はごく限定的であり、ごく小さなニッチ市場しか残っていない、と結論できる。
 かくて MOF や水素貯蔵合金の夢は、絵に描いた餅にすぎなくなりそうだ。いくらその技術が優れていても、そもそも水素というものを目的にすることが根本的に間違っているのである。なぜか? 「水素よりもメタンの方が扱いやすくて、圧倒的に優れている」ということを見失っているからだ。
 なぜか? 人々は頭が単細胞すぎるので、二酸化炭素と酸素と水素のことしか理解できないのだ。メタンの化学構造式は、人々の頭では理解できないのだ。だから、頭の思考範囲から、すっぽり抜けているのである。メタンのことを思い浮かべれば、「水素よりもメタンだ」とすぐにわかるはずなのだが。



 [ 余談 ]
 ノーベル賞の話題に戻る。
 そもそもの話、これ、何で化学賞なんだろうね。物理学っぽいが。どうも、近ごろのノーベル化学賞は、従来の化学の枠を越えつつある。
 まあ、しょうがないか。従来の科学の概念だと、もはや賞を出せないからね。賞がないと、しょうがない。




 ※ 元の文書は
  → https://g.co/gemini/share/4f5d0fdc3f87

 

posted by 管理人 at 21:00 | Comment(0) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
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