2025年05月06日

◆ メタン燃料電池 .3

 メタン燃料電池の将来について、私の見通しを述べる。

 ──

 前項では、メタン燃料電池について、ChatGPT の見解を示した。そこでは最後にこう結論していた。
  ・ 今すぐ据え置き型燃料電池を導入するなら、メタンタイプ(都市ガス改質型)が圧倒的に有利。
  ・ 脱炭素・水素社会の将来を見据えると、水素燃料電池も有望だが、インフラとコストの課題が大きい。

 これはこれでいいのだが、ここでは抜け落ちていることがある。次のことだ。
 「メタン燃料電池では、CO2 の回収によって排出分を相殺している。だが、そのためには、CO2 の回収をする CO2 の発生源が前提とされている。たとえば、火力発電所。だが、この手の CO2 発生源は、将来的には消滅する。そうなると、メタネーションによる CO2 の回収という発想そのものが成立しなくなる」

 つまり、メタネーションによるメタン燃料電池という発想は、火力発電所などの CO2 発生源がたくさんあるときには成立するが、 CO2 発生源がなくなると、メタネーションそのものができなくなり、メタン燃料電池もできなくなるのだ。
 では、どうなる?

 「将来的には、水素燃料電池が主流になる」
 というのが、トヨタなどの発想だ。政府も「水素社会」という発想を推進しているし、NHK の「サイエンスZero」も「水素燃料電池によるクリーンな電車」というのを推奨している。
  → 鉄道技術の最前線、JR東日本「HYBARI。も! 4/14『サイエンスZERO』

 しかし私はすでにこれを否定した。「水素は配送・運搬の問題があるので、水素社会は実現しない」と。
 これまでは、その対案として、「メタネーション」を推奨してきた。しかるに、メタネーションには、長期的には減少・消滅する。(上記)
 では、長期的にはどうなるのか? 

 ──

 私の見解は、こうだ。(長期的)
 (1) 一般家庭へのエネルギー供給は、水素でもメタンでもなく、電力を基本とする。燃料電池は使わない。燃料電池車も使わない。EV を前提として、あくまで電力の配電を主体とする。(自宅の太陽光発電を併用する。)
 (2) 一般家庭への都市ガスについては、長期的には少しずつ水素ガスに移行してもいいが、百年がかりとなる。
 (3) 企業への水素エネルギー供給は、水素の供給が直接的に可能となるような、水素ガスタンクをもつ場所(水素発電所)など、ごく限定的な場所でのみ行う。電車の燃料電池車も使わない。トラックやバスでは、(水素)燃料電池車を使ってもいい。EV では重たくなりすぎるからだ。
 (4) 水素製鉄は、水素の供給が可能となる場合には、やってもいい。しかし、メタンを排出しないクローズドなメタン製鉄が可能であれば、そちらの方が実現性は高い。
 (5) 電力の長期保存 は、メタネーションで足りる。余剰電力でメタンを作成したあとで、メタンで発電して、そこで排出された CO2 をメタネーションでメタン化すれば、クローズドなシステムができる。これなら、メタンを使っても CO2 の排出はない。

 以上を私の見解とする。 ( ただし後述の (6) で、(5) は否定される。)

  ※ 製鉄所や発電所は CO2 の回収が容易だ、という点がポイントだ。

  ※ 電力を貯蔵するには、蓄電池に電力貯蔵する必要があり、それには 200兆円もかかる、と九州電力社長が述べている。( → 蓄電池を買うと200兆円
   馬鹿丸出しだね。電力を貯蔵する方法は、蓄電池じゃない。メタネーションだ。200兆円に比べて、格安でエネルギー保存が実現できる。(なお、数日間の短期貯蔵なら、EV が最安だ。EV の蓄電池を使えば、タダで充電できる。)

  ※ 冬夏の発電後に生じた炭酸ガスの貯蔵タンクが必要だ。春秋にメタネーションをするのだから、炭酸ガスは冬夏から春秋まで大量に貯蔵する必要がある。その量はメタネーションのメタンの総量と同量であり、きわめて大量である。となると、炭酸ガスを地中埋め込みして、あとで取り出すしかなさそうだ。それができる場所に、発電所の所在地も限定されることになる。

 ──

  ※ なお、本項の話は、あくまで長期の話である。中・短期的には、メタン燃料電池も「あり」だ。というか、中・短期的には、メタネーションの方が主流だ。



 【 追記 】
 あとで考え直したが、「炭酸ガスの地中埋め込み」というのは、面倒臭い。そんなことをするくらいなら、最初から水素ガスを発生する方が簡単だ。
 ゆえに、(5) の「メタネーションによる長期蓄電」よりは、次のことの方が有望だ。

 (6) 春秋の余剰電力で水素を発生させて、その水素を貯蔵してから、夏冬に水素発電をする。この場合は、LNGタンクを水素タンクに転用すればいい。( LNGタンクは使われなくなるので。)

 これを修正項目としたい。

 ※ 結局、燃料電池による「水素社会」というのは成立しないのだが、水素発電による「水素社会」ならば、部分的な形では成立するわけだ。「水素社会」というよりは、ただの「水素発電・水素蓄電」だね。運輸業界には、水素は進出しない。都市ガスの代替は、超長期的には少しずつ進展するかも。



 [ 付記 ]
 本文の見解の裏付けとなる資料。
  ※ あくまで他の出典となる資料である。私の見解ではない。


 [1]火力発電

 メタネーションの原料となる CO2 の発生は、将来的にはどうなるか? 日本と欧州では異なる。

 第1に、日本では、2040年になっても、いまだに高い火力発電を維持する見通しだ。およそ3〜4割を火力発電でまかなう予定だという。
  → 2040年に再エネ4?5割、原発も最大限活用――政府が第7次エネルギー基本計画案示す
 目を疑ったね。あまりにも遅すぎる。

 第2に、ドイツでは、火力発電の比率を大幅に引き下げる。2035年の脱炭素化を掲げており、この時点で火力発電はゼロになっているはずだ。(予定)
  → ドイツに見る原子力発電フェーズアウトの効果 | 自然エネルギー財団

 これは荒唐無稽(絵空事)というわけでもない。現実にすでに太陽光発電が大量に普及して、余ってしまうほどだ。(日本よりもずっと高緯度なのに太陽光発電。)
  → ドイツ「再エネ比率58%」の光と影 熊谷徹のヨーロッパSDGリポート【26】:朝日新聞

 ただしその陰では、電力の不安定さなどの問題も生じているという。
  → ドイツの再エネを襲った「暗い凪(なぎ)」の威力と世界が進める「柔軟性」によるソリューション

 ※ ともあれ、ドイツでは 2035年にはメタネーションは利用できなくなりそうだ。日本は少なくとも 2050年ごろまでメタネーションが可能だ。(火力発電所が稼働する。)……ただし、火力発電所以外にも、CO2 の発生源はある。たとえば、サーマルリサイクルの発電所。


 [2]都市ガス

Q 都市ガスを水素にすることは可能か? 

Feloの回答
 都市ガスに水素を使用することについて、調理用に十分な火力を得られるかどうかは、いくつかの要因に依存します。

水素の燃焼特性
 水素は燃焼時に高温を発生させる特性があります。具体的には、水素を燃焼させると、非常に高い温度(約1,200℃から2,100℃)に達することができ、これにより調理に必要な火力を十分に提供することが可能です。水素を燃料とする調理器具は、プロパンガスと同様に高い火力を発揮し、食材を効率的に調理することができます。

実際の使用例
 実際に水素を利用した調理が行われている例もあり、特に水素ガスを使用したレストランでは、二酸化炭素の排出が少なく、食材の風味を保ちながら調理できるとされています。また、調理用の水素ガスは、従来の都市ガスと比べて火力が約30%高いとされており、効率的な調理が可能です。
 ただし、水素を家庭で使用する際には、いくつかの課題も存在します。例えば、現在のガス器具は水素に対応していないため、専用の器具が必要です。


Q 水素を都市ガスの代替として使用する際の技術的な課題は何か?

Feloの回答
1. 既存インフラの適応
現在の都市ガスインフラは主に天然ガス用に設計されており、水素を使用するためには大規模な改修が必要です。水素は天然ガスよりも小さな分子であり、既存のパイプラインや貯蔵システムから漏れやすいため、これらの設備を水素に適応させることが求められます。

2. 家庭用機器の互換性
多くの家庭用ガス機器は天然ガス専用に設計されているため、水素を使用するには新しい機器の導入が必要です。現在の機器は最大で20%の水素混合ガスに対応できるとされていますが、それ以上の割合では性能が低下し、安全性の問題が生じる可能性があります。

3.〜5. (略)

 いろいろと問題があるので、かなり長期の時間が必要となるようだ。ここでも水素社会への転換は、容易ではないようだ。

posted by 管理人 at 23:02 | Comment(1) | エネルギー・環境2 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
  【 追記 】 を加筆しました。 (6) の項目で、(5) を修正・否定しました。
Posted by 管理人 at 2025年05月07日 09:39
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