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前項では、メタン燃料電池について、ChatGPT の見解を示した。そこでは最後にこう結論していた。
・ 今すぐ据え置き型燃料電池を導入するなら、メタンタイプ(都市ガス改質型)が圧倒的に有利。
・ 脱炭素・水素社会の将来を見据えると、水素燃料電池も有望だが、インフラとコストの課題が大きい。
これはこれでいいのだが、ここでは抜け落ちていることがある。次のことだ。
「メタン燃料電池では、CO2 の回収によって排出分を相殺している。だが、そのためには、CO2 の回収をする CO2 の発生源が前提とされている。たとえば、火力発電所。だが、この手の CO2 発生源は、将来的には消滅する。そうなると、メタネーションによる CO2 の回収という発想そのものが成立しなくなる」
つまり、メタネーションによるメタン燃料電池という発想は、火力発電所などの CO2 発生源がたくさんあるときには成立するが、 CO2 発生源がなくなると、メタネーションそのものができなくなり、メタン燃料電池もできなくなるのだ。
では、どうなる?
「将来的には、水素燃料電池が主流になる」
というのが、トヨタなどの発想だ。政府も「水素社会」という発想を推進しているし、NHK の「サイエンスZero」も「水素燃料電池によるクリーンな電車」というのを推奨している。
→ 鉄道技術の最前線、JR東日本「HYBARI。も! 4/14『サイエンスZERO』
しかし私はすでにこれを否定した。「水素は配送・運搬の問題があるので、水素社会は実現しない」と。
これまでは、その対案として、「メタネーション」を推奨してきた。しかるに、メタネーションには、長期的には減少・消滅する。(上記)
では、長期的にはどうなるのか?
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私の見解は、こうだ。(長期的)
(1) 一般家庭へのエネルギー供給は、水素でもメタンでもなく、電力を基本とする。燃料電池は使わない。燃料電池車も使わない。EV を前提として、あくまで電力の配電を主体とする。(自宅の太陽光発電を併用する。)
(2) 一般家庭への都市ガスについては、長期的には少しずつ水素ガスに移行してもいいが、百年がかりとなる。
(3) 企業への水素エネルギー供給は、水素の供給が直接的に可能となるような、水素ガスタンクをもつ場所(水素発電所)など、ごく限定的な場所でのみ行う。電車の燃料電池車も使わない。トラックやバスでは、(水素)燃料電池車を使ってもいい。EV では重たくなりすぎるからだ。
(4) 水素製鉄は、水素の供給が可能となる場合には、やってもいい。しかし、メタンを排出しないクローズドなメタン製鉄が可能であれば、そちらの方が実現性は高い。
(5) 電力の長期保存 は、メタネーションで足りる。余剰電力でメタンを作成したあとで、メタンで発電して、そこで排出された CO2 をメタネーションでメタン化すれば、クローズドなシステムができる。これなら、メタンを使っても CO2 の排出はない。
以上を私の見解とする。 ( ただし後述の (6) で、(5) は否定される。)
※ 製鉄所や発電所は CO2 の回収が容易だ、という点がポイントだ。
※ 電力を貯蔵するには、蓄電池に電力貯蔵する必要があり、それには 200兆円もかかる、と九州電力社長が述べている。( → 蓄電池を買うと200兆円 )
馬鹿丸出しだね。電力を貯蔵する方法は、蓄電池じゃない。メタネーションだ。200兆円に比べて、格安でエネルギー保存が実現できる。(なお、数日間の短期貯蔵なら、EV が最安だ。EV の蓄電池を使えば、タダで充電できる。)
※ 冬夏の発電後に生じた炭酸ガスの貯蔵タンクが必要だ。春秋にメタネーションをするのだから、炭酸ガスは冬夏から春秋まで大量に貯蔵する必要がある。その量はメタネーションのメタンの総量と同量であり、きわめて大量である。となると、炭酸ガスを地中埋め込みして、あとで取り出すしかなさそうだ。それができる場所に、発電所の所在地も限定されることになる。
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※ なお、本項の話は、あくまで長期の話である。中・短期的には、メタン燃料電池も「あり」だ。というか、中・短期的には、メタネーションの方が主流だ。
【 追記 】
あとで考え直したが、「炭酸ガスの地中埋め込み」というのは、面倒臭い。そんなことをするくらいなら、最初から水素ガスを発生する方が簡単だ。
ゆえに、(5) の「メタネーションによる長期蓄電」よりは、次のことの方が有望だ。
(6) 春秋の余剰電力で水素を発生させて、その水素を貯蔵してから、夏冬に水素発電をする。この場合は、LNGタンクを水素タンクに転用すればいい。( LNGタンクは使われなくなるので。)
これを修正項目としたい。
※ 結局、燃料電池による「水素社会」というのは成立しないのだが、水素発電による「水素社会」ならば、部分的な形では成立するわけだ。「水素社会」というよりは、ただの「水素発電・水素蓄電」だね。運輸業界には、水素は進出しない。都市ガスの代替は、超長期的には少しずつ進展するかも。
[ 付記 ]
本文の見解の裏付けとなる資料。
※ あくまで他の出典となる資料である。私の見解ではない。
[1]火力発電
メタネーションの原料となる CO2 の発生は、将来的にはどうなるか? 日本と欧州では異なる。
第1に、日本では、2040年になっても、いまだに高い火力発電を維持する見通しだ。およそ3〜4割を火力発電でまかなう予定だという。
→ 2040年に再エネ4?5割、原発も最大限活用――政府が第7次エネルギー基本計画案示す
目を疑ったね。あまりにも遅すぎる。
第2に、ドイツでは、火力発電の比率を大幅に引き下げる。2035年の脱炭素化を掲げており、この時点で火力発電はゼロになっているはずだ。(予定)
→ ドイツに見る原子力発電フェーズアウトの効果 | 自然エネルギー財団
これは荒唐無稽(絵空事)というわけでもない。現実にすでに太陽光発電が大量に普及して、余ってしまうほどだ。(日本よりもずっと高緯度なのに太陽光発電。)
→ ドイツ「再エネ比率58%」の光と影 熊谷徹のヨーロッパSDGリポート【26】:朝日新聞
ただしその陰では、電力の不安定さなどの問題も生じているという。
→ ドイツの再エネを襲った「暗い凪(なぎ)」の威力と世界が進める「柔軟性」によるソリューション
※ ともあれ、ドイツでは 2035年にはメタネーションは利用できなくなりそうだ。日本は少なくとも 2050年ごろまでメタネーションが可能だ。(火力発電所が稼働する。)……ただし、火力発電所以外にも、CO2 の発生源はある。たとえば、サーマルリサイクルの発電所。
[2]都市ガス
Q 都市ガスを水素にすることは可能か?
Feloの回答
都市ガスに水素を使用することについて、調理用に十分な火力を得られるかどうかは、いくつかの要因に依存します。
水素の燃焼特性
水素は燃焼時に高温を発生させる特性があります。具体的には、水素を燃焼させると、非常に高い温度(約1,200℃から2,100℃)に達することができ、これにより調理に必要な火力を十分に提供することが可能です。水素を燃料とする調理器具は、プロパンガスと同様に高い火力を発揮し、食材を効率的に調理することができます。
実際の使用例
実際に水素を利用した調理が行われている例もあり、特に水素ガスを使用したレストランでは、二酸化炭素の排出が少なく、食材の風味を保ちながら調理できるとされています。また、調理用の水素ガスは、従来の都市ガスと比べて火力が約30%高いとされており、効率的な調理が可能です。
ただし、水素を家庭で使用する際には、いくつかの課題も存在します。例えば、現在のガス器具は水素に対応していないため、専用の器具が必要です。
Q 水素を都市ガスの代替として使用する際の技術的な課題は何か?
Feloの回答
1. 既存インフラの適応
現在の都市ガスインフラは主に天然ガス用に設計されており、水素を使用するためには大規模な改修が必要です。水素は天然ガスよりも小さな分子であり、既存のパイプラインや貯蔵システムから漏れやすいため、これらの設備を水素に適応させることが求められます。
2. 家庭用機器の互換性
多くの家庭用ガス機器は天然ガス専用に設計されているため、水素を使用するには新しい機器の導入が必要です。現在の機器は最大で20%の水素混合ガスに対応できるとされていますが、それ以上の割合では性能が低下し、安全性の問題が生じる可能性があります。
3.〜5. (略)
いろいろと問題があるので、かなり長期の時間が必要となるようだ。ここでも水素社会への転換は、容易ではないようだ。