所得格差の是正のための減税策は、どうすればいいか?
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この件については、すでに前々項で回答を与えた。
→ もっと良い減税案: Open ブログ
一方、人々は虚偽(消費税は逆進的だという説)を信じている、とも示した。
→ 消費税の逆進性という虚偽: Open ブログ
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さて。この件に関して、同じテーマで論じている記事を二つ見つけた。朝日新聞の投書欄だ。どちらも「所得格差の是正のために、高所得者向けに累進課税するべきだ」という趣旨。一部抜粋しよう。( ※ 無料版はリンク不可。)
《 (声)格差解消、累進課税強化を考えて 》
大企業と中小企業の賃金格差は、さらに広がるのではないか。……国民民主党が主張する所得税の課税最低ラインの引き上げも、高所得層に有利な施策であろう。……このままでは経済格差がさらに広がるのではないかと危惧する。是正するには累進課税率を上げるしか方法が思いつかない。
《 (声)消費減税と同時に高級品課税を 》
生活必需品の税率を見直すべきだという意見に真っ向から反対するつもりはない。しかし不思議なのは、それならば減らした分を補うべく、「加重税率」も導入すべきだという発想がなぜ芽生えないのかということだ。総じて豊かになった日本の消費実態に即し、高級品やぜいたく品にはもっと高い税率をかけるなど、きめ細かな工夫が必要だと思うのだ。
いずれにしても、「金持ち増税をすることで、所得格差を縮小せよ」という趣旨だ。「減税を」とばかり唱える野党に比べると、よほどまともだと言える。
とはいえ、ここのある提案は、あまり名案だとは言えない。
(1) 所得税率は、最高税率がすでに高いので、これ以上に高めても、あまり意味がない。もともとたくさん納税している人から、さらに金を搾り取るのは、真面目な納税者ばかりを虐待することになり、理不尽だ。
どうせなら、まともに税を払わない人(税逃れをする人)から、税を取るべきだろう。
・ 利子配当分離課税( 15%だけ)
・ ふるさと納税という脱税推奨策
・ 宗教法人への非課税制度
・ 大企業向けの特別減税制度
これらの免税制度を厳しくすることで、まともに徴税することができる。たとえば、京都の寺社に入る観光客は、ただの観光であり、宗教活動とは何の関係もないのに、現行制度では非課税になっている。ただの観光事業が宗教活動と見なされるわけで、合法的な脱税となっている。こういう脱税・免税を廃止するべきだ。
大企業向けの「研究開発減税」というのも、言語道断だ。ただの事業活動なのに、それについて免税にするというのは、国民が税金を寄付するのに相当する。どうして貧しい国民が、日本一の金持ち会社であるトヨタの事業経費を払わなくちゃならないんだ。馬鹿げている。
(2) 特別な高級品に限って税率を上げるというのは、昔の物品税の発想だが、これは「高級品」の区別をするのが困難であるということからして、事務的に不可能と言っていい。また、やたらと手間ばかりがかかって、効果が少ない。
もっとずっと単純で、はるかに効果的な方法があるのだから、その方法を採用すればいい。「高級品だけ高率課税」というのは、あまりにも愚策なのである。
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では、どうすればいいか? それは、前々項で述べた通り。こうだ。
「所得でなく支出に応じて、税率を可変的にする、可変税率。こう支出者には高い税率を課して、低所得者には低い税率を課する」
具体的には、次のモデルだ。
現行税率 新税率
低所得者 10% 3%
中所得者 10% 5%
高所得者 10% 8%
このように税率を可変化する。
それには、複雑な税制度が必要に思えそうだが、そんなことはない。ごく単純な方法で解決する。それは「一律の還付(給付)」である。
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たとえば、次のモデルで考える。(一律還付 10万円で)
・ 年収 200万円 消費税 12万円 還付 10万円 差額 2万円
・ 年収 2000万円 消費税 120万円 還付 10万円 差額 110万円
前者は年収 200万円で、還付後の納税額が 2万円。(従来は 12万円)
後者は年収 2000万円で、還付後の納税額が110万円。(従来は 120万円)
とすれば、一律還付 10万円があると、格差は大幅に是正されることになる。これが「可変税率」だ。そして、そのためには、複雑な税制度は必要なく、単に「一律還付 10万円」を実施するだけで済むのだ。
これが、賢明な人間のやることだ。
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なお、食料品の軽減減税率も廃止するといい。モデル的に考えよう。
「軽減税率は 10%に対して 8% だから、2% の軽減。国民の食材費(外食費を除く)を、毎月 2.5万円と見なすと、年間 30万円。それに対する軽減分は 2% の6000円。したがって、食料品の軽減税率を廃止して、かわりに 6000円の一律還付を実施すれば、ほぼ同等の効果が得られる」
食品への軽減税率という面倒臭い制度は廃止して、10%に統一すればいいのだ。かわりに、 6000円の一律還付を実施すれば、国民にとっては同等の結果となる。
いや、むしろ、「貧富の格差の是正」という効果が得られる。貧乏人の食費は少なくて、金持ちの食費は多いから、貧乏人の食費の増税分は 6000円以下で済むし、金持ちの食費の増税分は 6000円を超える。だから、貧乏人は得をして、金持ちは損をするのだ。
※ たとえば、貧しい家庭で、子供が多ければ、子供1人あたり 6000円だから、夫婦と子供二人で 24000円の給付を得られる。消費税の納税を上回る給付を得られる。
現実には、6000円のかわりに 8000〜 10000円ぐらいを給付すれば、いっそう効果的になるだろう。
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現行制度では、軽減税率のせいで、店内飲食(イートイン)の設備が廃止されたりした。こういう馬鹿げた不便な改悪もなされてきた。
軽減税率をいう変な制度を廃止すれば、こういう馬鹿げたこともなくなるのだ。