2025年04月27日

◆ 消費税の逆進性という虚偽

 消費税には逆進性があるので不公正である、という俗説がある。だが、これは論理ペテンである。だまされるな。

 ──

 消費税は基本的には「支出比例税」である。支出に比例して税額が決まる。一部に軽減税率や非課税品があるので、総額では「支出総額にきっちり比例」というわけではないのだが、通常の商品には「 10% の課税」(食品は8%の課税)という税率が一様に定まる。その意味で、庶民も金持ちも同様である。
 モデル的に言えば、こうだ。
  ・ 消費額 200万円 → 消費税 20万円
  ・ 消費額 2000万円 → 消費税 200万円

 どちらにしても 10%の消費税がかかるので、どちらにとっても公平である。(支出額を基準にして。)

 ──

 では、「逆進性」とは、何のことか? これは、支出額を基準にしないで、所得を基準にする。たとえば、所得が 300万円の人と所得が 3000万円の人を比べて、「後者は前者に比べて、所得は 10倍なのに、消費税は 10倍でなく5倍ぐらいで済む。これでは不公平だ」というふうに主張する。
 この批判はもっともらしいが、実は論理ペテンである。たいていの人は数字のトリックにだまされている。ここまで私が述べたのだから、頭のいい人なら、どこが問題か、すぐに気づくだろう。
 以下の説明を読む前に、自分の頭で考えてほしい。


    ↓

  正解は ……

    ↓

 ──

 正解:


 逆進性を主張する人は、名目所得と(税引き後の)手取り所得を混同しているのだ。名目所得を基準に逆進性を主張しているが、本来は(税引き後の)手取り所得を基準にするべきだ。

 たとえば、次の例がある。
  ・ 年収 300万円(税引き後 220万円)…… 支出 200万円、消費税 10万円(5%)
  ・ 年収 3000万円(税引き後 1800万円)…… 支出 1400万円、消費税 70万円(5%)


 この両者を比較すると、どちらも「支出の5%」の消費税を支払っている。手取り所得に対しては、前者は 4.5%、後者は 3.9% だ。その意味で、ほぼ同等の負担をしていることになる。特に大きな有利・不利はない。

 ところが、批判者は、これを見て批判する。
 「前者は 300万円の所得に対して 10万円の消費税だから、負担率は 3.3%だ。後者は 3000万円の所得に対して 70万円の消費税だから、負担率は 2.3%だ。後者の方が負担率が低い。つまり、高所得者の方が消費税の負担率が低い。これは逆進的だ」

 これは勘違いだ。どうしてこういう勘違いが起こるのか? それは、次の原理による。
 「高所得者ほど、高率の所得税がかかるせいで、手取り所得は減る。手取り所得が減るので、支出額も減る。なのに、手取り所得でなく、税引き前の名目所得で比較するから、話がおかしなことになる」

 批判者の理屈に従うなら、こうなる。
 「所得税の累進税率が高いせいで、高所得者の手取りが減って、消費税の累進制が高くなる。これはけしからん。ゆえに、所得税の累進税率を下げるべきだ。逆に、低所得者には、累進税率をかけるべきだ。できれば、低所得者に対しては、所得税率を 99%にして、所得のほぼ全額を没収すればいい。逆に、高所得者に対しては、所得税をほぼゼロ%にいて、所得税をほぼ免除すればいい」
 こういうメチャクチャな結論になる。なるほど、そうすれば、低所得者は所得がゼロ同然になるので、消費税の支払いはゼロ同然となり、消費税の支払額は最小になる。逆に、高所得者は、消費税の支払額が最大化する。こうして、「高所得者ほど消費税の負担額が増える」というふうになって、逆進性は解消する。
 しかしこれだと、税制度全体としては、圧倒的に逆進的になる。(低所得者は 99%の課税率となり、高所得者は 0%の課税率となるからだ。消費税でなく所得税のせいで。)

 ──

 消費税の逆進性を主張するときに、所得税の課税前の名目所得を基準に評価しても、ナンセンスなのである。こんな方針だと、「所得税で累進課税をすればするほど、逆進性が高まるので、けしからん」という馬鹿げた結論になる。あげく、「累進制とは逆に、金持ち優遇にすればいい」という馬鹿げた結論にたどり着く。

 消費税の逆進性を主張するときに、所得税の課税後の手取り所得を基準に評価するべきだ。そして、そうすれば、「手取り所得に対する消費税の負担率は、低所得者も高所得者も、あまり変わらないので、負担率はほぼ同程度だ」とわかる。

 現実には、「ほぼ同程度」というよりは、「完全に同程度」と言ってもいい。なぜなら、高所得者は、貯蓄率が高いので、その分、消費が先送りされるからだ。その分、現時点での支出額が減って、消費税の負担額も減る。しかし最終的には、老後に支出する。そのときには支出に比例する消費税を払う。だから、支出が先送りされるだけで、最終的には納税はなされるのだ。支出の時期が先送りされるので、見かけ上、(現時点の)消費税の支払額が減ったように見えるが、最終的には、少しも不公平にはなっていないのだ。

 結局、「支出比例税」という消費税の性格からして、低所得者と高所得者で、特に不公平は生じていない。どちらもほぼ同等の負担率で負担している。
 なのに、「消費税は逆進的である」というふうに主張するのは、数学の計算ができない、ただの阿呆の錯覚であるにすぎない。論理ペテンだと言える。阿呆のペテンに、だまされないようにしよう。

 ──

 なお、図で見ると、わかりやすい。


hutanritu.jpg
出典:Twitter


 年収 5000万円クラスだと、所得税・住民税などの合計で 35% ぐらいを徴収されるので、手取りは 65% ぐらいに減ってしまう。もともと税金をいっぱい取られるのだから、手取りが少なくなる。そのせいで、支出できる金額も減る。だから、消費税の支払額も減る。
 これを見て、「金持ちは消費税の支払額が少ないので不公平だ」というのは、「金持ちに高率課税をするのは不公平だ。ゆえに金持ちには減税せよ」というのと同じことだ。愚の骨頂。



 [ 付記1 ]
 Perplexity の回答:
 消費税の「逆進性」とは、主に名目所得(税引き前の所得)に対する消費税負担率が、所得が低いほど高くなる現象を指します。
 具体的には、低所得者ほど所得に占める消費の割合が高いため、消費に一律課税される消費税は、所得に対する税負担率が低所得者ほど高くなるという形で逆進性が現れます。このため、消費税の逆進性を議論する際は「名目所得に対する負担割合」で測るのが一般的です。
 一方で、「税引き後の手取り所得(可処分所得)」に対する逆進性で説明されることもありますが、政策や学術的な議論の中心は名目所得基準です。
 まとめると、消費税の逆進性は「名目所得に対する負担率が低所得層で高い」という意味で使われるのが標準的な定義です。


 [ 付記2 ]
 消費税には、非課税品目がある。
 「家賃、医療費、教育費」
 などだ。このうち、家賃への非課税が非常に大きい。賃貸住宅に住む低所得の人は、消費税が大幅に課税免除されることになる。自宅を購入して居住する金持ちは、その恩恵を受けられない。その意味で、低所得者の払う消費税は、大幅に減免されている。逆進性どころではない。

Perplexityの回答
 消費税における家賃の非課税ルールは、「居住用物件の貸付け」に限定されます。

歴史的経緯
  ・ 1989年:消費税導入時は住宅賃料も課税対象
  ・ 1991年:社会政策的配慮から非課税化
  ・ 現行制度:非課税扱いが継続(2024年現在)


 [ 付記3 ]
 立憲民主党は、「消費税は逆進的だ」と信じて、「消費税ゼロ」を主張した。( → 前項 )
 だが、そんなことをすれば、得をするのは金持ちばかりである。馬鹿丸出しというしかない。この点は、あちこちで指摘されている。たとえば、下記。
  → 消費税逆進性対策 ― なぜ軽減税率ではなく給付付き税額控除なのか | 研究プログラム | 東京財団

 他にも多くの指摘がある。
  → https://x.gd/s9h3J
  → https://x.gd/auKhA
 
 [ 付記4 ]
 消費税は逆進的ではない。ではなぜ、「消費税は逆進的だ」という主張が出るのか?
 それは、「消費税は逆進的だ」という説が広まると、消費税が減税されて、金持ちが得をするからである。「金持ちが得をする制度はけしからん」という嘘をついて、貧乏人をだまして、制度改革をして、最終的には金持ちが得をするように誘い込む。愚かな貧乏人をだまして、金持ちが得をするように仕向ける。……トランプやヒトラーと同じで、愚かな民衆をだますのだ。「あなたたちが得をしますよ」という口車でだまして、彼らに大損をさせるのだ。悪魔のように。
 「日本にはトランプやヒトラーはいないぞ」
 という声もありそうだが、さにあらず。次の例がある。
  ・ 立憲、公明党 …… 消費税減税で金持ちに奉仕する
  ・ 国民民主党  …… 所得税減税で金持ちに奉仕する

 いずれも、金持ちの奉仕して、貧乏人に大損させる。悪魔のように、たぶらかす。こいつらが悪魔的な詐欺師なんだよ。

 国民はその手口に、あっさりだまされる。なぜか? 「一次関数」という数学概念を理解できないからだ。中学生並みの知恵を持たないからだ。
  → 軽減税率の後悔(今ごろ): Open ブログ

  ※ ここで、一次関数という概念で、消費税の逆進性解消の方法を示している。(低所得者を優遇するには、一律還付すればいい、という手法。それによって、可変税率を導入して、低所得者ほど消費税率を下げることができる。次項を参照。)
 
posted by 管理人 at 22:41 | Comment(4) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
議論の途中に出てくる貧乏人への課税を99%にするあたりはついていけません。でもお説の大筋には賛成です。金持ちは貯蓄に回す分が多いので消費税の負担率は少ないのですが、貯蓄はいつかは消費に回るか相続税で回収されます。
 もう1点言わせてもらえば、サラリーマンは100%所得を把握されていて必要経費がほとんど認められていません。自営業者の必要経費は大甘です。その意味では20%くらいの消費税だけにしてしまった方が公平ではないかと思います。
 基本的に日本は税金が安すぎます。30万人の犠牲者が予想されている地震への対策がほとんどされていないのはどういうわけでしょうか。オリンピックや万博をしている状況ではないのです。いい加減に日本人は「わびさび負け犬思想」から抜け出さなくてはなりません。
Posted by ひまなので at 2025年04月28日 10:21
 最後に [ 付記4 ] を加筆しました。
 詐欺師の手口、という話。
Posted by 管理人 at 2025年04月28日 10:40
消費税納付の先延ばしが富裕層にはできて、貧困層にはできない、とするなら結局逆進性があるのでは?
Posted by 貧困層 at 2025年04月30日 12:29
 先延ばし(先送り)は、有利ではあっても、金銭的には1円も得しません。逆進性というのは金銭的な損得をいうので、先延ばしは関係ありません。
 消費税の先送りが可能なのは、消費自体が先送りされるからです。「今すぐ消費して、納税は先送りする」というのなら不公平ですが、「消費を先送りして、納税も先送りする」のは、不公平ではありません。
 実際に金を使ったときに税金がかかるのは、とても公平です。
 むしろ、金を使いもしないのに税金だけをかけるのは、ただの金持ち虐待です。

 ただし、(共産主義的な立場からは)金持ち虐待の方法はあります。物価上昇によるインフレ税です。これだと、物価上昇の分だけ、金持ちの資産が減るので、金持ち虐待ができます。
 だけど、金持ちの損より、庶民の損の方が大きい。金持ちをいじめて、自分がいっそう損をする。逆効果。当てはずれ。
 金持ち虐待を狙ったせいで、自分自身が大損するというのは、共産主義にはよくある例だ。
Posted by 管理人 at 2025年04月30日 14:08
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