2025年04月06日

◆ 報復関税をするべきか?

 トランプの相互関税には報復関税をするべきか?

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 トランプの相互関税には報復関税をするべきか? この問いには、先に答えた。
「報復関税をするべきだ。それはゲーム理論からも明らかだ。しっぺ返し戦略である。その意図は、win-lose という現状を固定化することを避けるために、lose-lose で双方が大損をすることである。これによって相手は音を上げる。その結果、lose-lose を避けようとして、win-lose を放棄するようになる」
  → トランプ戦略への対抗策: Open ブログ



                  win-win
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win-lose           .


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 一方、日本政府の方針はどうか? 
 先に述べたように、当初は報復関税に気乗り薄だった。

 ところが 4月4日には、「報復関税を考慮する」というふうに述べた。
  → 石破茂首相、報復関税含め対応検討 米相互関税措置で - 日本経済新聞

 こう述べたとしても、「どうせ腰砕けだろう。遠からず撤回するだろう」と予想していたら、その舌の根も乾かないうちに、翌日には撤回した。
  → 石破首相、報復関税には否定的「売り言葉に買い言葉のようなことはやるつもりない」 : 読売新聞

 これは予想を越えていたね。撤回するだろうという予想は当たったが、それが翌日になるとは予想していなかった。ここまで逃げ足が速いとは思わなかった。恫喝されたら、逃げることしかできないらしい。情けない。(米国と「一蓮托生」のつもりなんだろうが。)

 ──

 とはいえ、石破首相の方針は、必ずしも「悪い」とは言えない。なぜなら、報復関税をすると、「双方がひどく傷つく」ことになるからだ。「双方がひどく傷つく」段階を経由した後に、「双方が傷つかない」という安定状況に到達する。しかるに、その途中には「双方が傷つく」という段階を経由するから、その段階を経由する勇気のない臆病者は、そこを経由できないのだ。

 上の図で言えば、遠回りをすると、遠回りをするための出費がかかる。その出費をすれば最終目的地に到達できるが、その出費をするだけの金を惜しむケチ根性に駆られる。だからどうしても、遠回りができない。そのせいで、最短距離だけを望む。「最短距離ならば経費が安上がりで済む」というケチ根性に従う。しかしその最短距離の経路は、途中が行き止まりなので、最終目的地には到達できない。かくて、途中で足踏みしたまま、挫折するしかない。


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 というわけで、愚かな日本は、「迂回経路」という正解を取る勇気がないまま、一方的敗北(win-lose)という現状に甘んじるしかないわけだ。勇なき者は戦わずして負けるしかないのだ。

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 そこで読者は問うだろう。
 「みんなが困っているんだから、Open ブログが何とかしろ。困ったときの Openブログと言っているんだから、うまい案を出せ」
 と。なるほど。それもそうだ。

 そこで考えよう。
 そもそも、日本が報復関税をやらないのは、なぜか? もちろん、勝算がないからだ。強い米国と弱い日本が正面切って戦えば、多勢に無勢。ジャイアンにのび太。とても勝ち目がない。こういう状況では、日本が正面切って戦わないのは、当然である。
 では、どうすればいいのか? 戦えば勝算があるようにすればいい。つまり、強い米国と戦うからには、米国以上に強くなればいい。その方法はあるか? ある。こうだ。
 
 「米国に対抗して、同盟を結成する。同盟の各国がいっせいに米国に報復関税を実施する。自国に課せられたのと同じ関税率で、米国に報復関税を実行する」


 これを「報復関税同盟」と呼ぼう。
 これは「包囲攻撃」と同様である。(飽和攻撃にも似ている。)
 米国に対して、個別に各国が1国ずつ対抗していては、各国は撃破される。そこで、各国がいっせいに米国を包囲攻撃する。全世界がまとまって米国を攻撃する。このことで、米国は音を上げるしかない。

 「米国が関税率を上げれば、米国は輸出で有利になり、他国は輸出で不利になるから、米国だけが得をするはずだ」
 というトランプの思惑(妄想・錯覚)が現実には不成立となり、
 「米国が関税率を上げれば、他国も米国に関税率を上げるので、米国も他国もともに輸出で不利になるから、米国だけが得をすることはない」(ともに貧しくなるだけだ)
 ということが成立する。
 これが「報復関税同盟」の効果だ。(包囲攻撃と同様だ。)

 ──

 なお、報復関税同盟を有効にするには、コツがある。こうだ。
 「報復関税同盟を実行する際に、抜け駆けをする卑怯者が出ないようにする必要がある。そこで、抜け駆けをする国には、懲罰的に、米国と同様の報復関税を課する」

 具体的には、日本だ。世界中の国が「報復関税をかける」と言っているのに、日本だけは抜け駆けをして、「報復関税をかけない」と述べて、米国におもねっている。三助野郎だ。こういう腰巾着みたいな国には、それなりに懲罰を課する必要がある。
 「日本が報復関税をイヤがって、報復関税同盟に参加しないのであれば、日本には報復関税を課する。全世界が米国に高い報復関税をかけるように、日本にも(米国と同率で)高い報復関税をかける」
 たとえば、中国は米国から 54%の相互関税を課されるので、中国は米国に 54%の報復関税を課する。一方、日本は報復関税同盟に加入しないので、中国は日本に対しても 54% の関税をかける。
 もちろん、中国だけでなく、世界中の国から、日本は高い関税をかけられる。日本はあくまで米国と「一蓮托生」の道を選んだのだから、そうなるのが当然なのだ。米国とともに沈没するしかない。

 ※ 首相が石破なら、日本は米国と一蓮托生で沈没するしかない。一方、まともな首相なら、報復関税同盟に加盟して、日本もまた報復関税を実施するようになる。この場合には、米国だけが沈没するので、日本は助かる。

 ※ 別に「報復関税」と声高に唱えなくても、「日米貿易協定の無効化を宣言する」だけでも効果はある。
   → 自動車関税 25%への対応: Open ブログ



 [ 付記1 ]
 石破首相は「売り言葉に買い言葉のようなことはやるつもりはない」と語った。冷静な判断をしているように見えるが、実は、「報復関税とは何を意味するか」をまったく理解できていないことを白状しているだけだ。
 報復関税とは、口喧嘩ではないし、売り言葉に買い言葉のようなことでもない。ゲーム理論に従った戦略である。「 lose-lose を経由することで、 win-lose を脱する」という戦略だ。
 なのに、そのことを理解できないから、「トランプ大統領には win-win を訴える」という馬鹿げたことを言い張るのだ。「トランプ大統領は win-win の概念を理解できないから、教えて上げる」というつもりなのだろう。だが、ゲーム理論を理解できていないのは、おまえの方だよ。
 ※ 先に詳しく説明したとおり。
  → トランプ戦略への対抗策: Open ブログ

[ 付記2 ]
 日本の報復関税について、「報復関税を実施すると、米国からの輸入品が高額になる」と心配する人もいる。だが、問題ない。
 なぜなら、輸入品全般でなく米国品に限定した関税だからだ。米国から輸入できなくても、別の国から輸入が可能だ。
 たとえば牛肉は、オーストラリアから輸入できる。そのせいで、米国の畜産業が大幅に不利になるだけだ。日本はさして困らない。米国産の牛肉がなくてもやっていけるのだ。(安いオーストラリア産牛があれば足りる。)

 同様に、小麦や綿花も、米国産の輸入を大幅に減らせる。
 なお、Google や Amazon にも大幅課税できる。

  ※ 話が面倒になるので、ここには記さないが、関税の代わりに、Google や Amazon にも大幅課税する方法は、ある。現状では、Google や Amazon は、日本で莫大な利益を上げているのに、ほとんど納税していない。納税逃れをしている。
  ※ 実は、Google や Amazon は、米国でも納税逃れをしていて、タックスヘイブンに少額の税金を収めることで済ませている。そうして莫大な利益を貯め込んだあとで、その金を資本家(株主)に送金する。Google や Amazon の創業者は、米国で納税する代わりに、タックスヘイブンで節税してから、儲けた金を米国に送金する。すると、送金した分、米国には金が流れ込むから、ドル高となって、貿易赤字がかさむようになる。……つまり、米国の貿易赤字がかさむ理由は、Google や Amazon が米国で納税しないで、タックスヘイブンで節税するからだ。……巨大企業の実質的な脱税を容認するから、米国は貿易赤字になるのだ、と言ってもいい。

 [ 付記3 ]
 Google や Amazon は、米国で払う税額を大幅に減らしているが、テスラ社の場合は違う。納税額がほぼゼロである。徹底的に節税(実質脱税)を駆使しているらしい。

Feloの回答
 テスラは、2024年に23億ドルの米国の収入を報告しながら、連邦所得税をゼロに抑えたことが注目されています。この状況は、テスラが合法的な税の抜け道を利用していることを示唆しています。特に、テスラは過去3年間で108億ドルの米国の収入に対して、わずか4800万ドルの連邦税を支払ったことが報告されており、これは平均的な税率が0.4%に過ぎないことを意味します。
 また、テスラの利益の大部分は、電気自動車や太陽光パネルの販売からではなく、政府のEV促進策や規制クレジットの販売から得られていることも指摘されています。これにより、テスラは税金を大幅に削減することが可能になっています。 

 テスラは、米国の複雑な税法を巧みに利用しており、特に「加速減価償却」や「税額控除」を活用しています。これにより、実際の課税所得を大幅に減少させることが可能になっています。具体的には、テスラは加速減価償却によって約5億ドルの税金を節約し、役員の株式オプションに関する控除で2億5000万ドル、その他の税額控除で3億ドルを得ています。
 2017年に施行された「税制改革法」は、企業に対する税率を大幅に引き下げ、さまざまな控除を拡大しました。この法律により、テスラのような大企業が税金をほとんど支払わずに済む環境が整いました。
 これらの要因が組み合わさることで、テスラは2024年に23億ドルの収入を上げながら、連邦所得税をゼロに抑えることができたのです。

 2017年に施行された「税制改革法」というのは、トランプ大統領が推進したものだ。そのせいで、テスラは納税をしなくなり、米国政府は赤字が増えて、米国は外国から借金をするようになり、だから貿易赤字が増えるわけだ。
 米国の貿易赤字の主因は、トランプ大統領の多額の減税のせいだったのである。

 トランプ 「犯人は誰だ? 外国だろ」
 名探偵  「犯人はおまえだ!」(トランプを指差す)
 
 
posted by 管理人 at 23:22 | Comment(1) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
仰せの通りなんですが報復関税をすると東証株価はさらに下がるでしょうね。今10%以上下がっているのですがニューヨークではどれだけ下がるでしょうか。
 1ドルが144円になっているそうです。160円から比べると10%高くなりました。24%のかなりの部分をカバーしています。私のドル預金は少なくなりましたが。
 でも私は反関税同盟に賛成です。韓国、それと中国も巻き込みたいですね。TPPに中国を入れればよいと思います。
Posted by ひまなので at 2025年04月07日 10:37
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