2025年03月17日

◆ JDI とラピダス

 JDI (ジャパンディスプレイ)の損失が確定した。1500億円余り。
 これで懲りたか? 実は、ラピダスでその何倍もの巨額の損失を出す予定。

 ──

 JDI では、莫大な公的資金を投入したあげく、すべては泡と消えた。その金額が 1500億円余り。
 INCJ(旧産業革新機構)は14日、液晶パネル大手のジャパンディスプレイ(JDI)の保有株をすべて売却したと発表した。INCJはこれまで4620億円の投融資をしており、1547億円の損失が確定した。
 JDIはINCJが主導し、東芝と日立製作所、ソニー(現ソニーグループ)の液晶パネル事業を統合して12年4月に発足した。
 JDI株の14日終値は17円だった。
( → INCJ(旧産業革新機構)、ジャパンディスプレイの全株売却 1547億円損失確定 - 日本経済新聞


 前に何度か論じてきた。
  → JDI の再建問題: Open ブログ     ( 2016年08月08日 )
  → JDI を倒産させよ: Open ブログ    ( 2017年08月10日 )
  → JDI の存続(公金投入): Open ブログ ( 2018年05月17日 )
  → JDI が身売り: Open ブログ      ( 2019年04月04日 )
  → 日本企業はなぜ敗北したか: Open ブログ( 2023年12月12日 )

 私の方針は、最初から明示されている。
 「JDI も同様だ。銀行が融資をしてくれないとしたら、もはや事業成功の見込みはないということになる。だったら、さっさと会社を解体して、倒産させるべきだ」(2016年)
 「液晶メーカーの JDI(ジャパンディスプレイ)は、再建を狙っているが、むしろ倒産させるべきだ」(2017年)

 2016〜2017年の時点で、「倒産させよ」と提言していた。これに従っていれば、損切りできたので、無駄な出費を避けられた。
 ところが現実には、2018年に公金投入が決まった。(上記)
 その後、早くも 2019年には、事業が成り立たず、身売りが決まった。身売りが決まっても、なかなか身売り先が決まらず、タダ同然で売ろうとしたあげく、ようやく 2025年に処理が決まった……というのが、現状だ。

 ──

 さて。これで懲りればいいのだが、経産省は懲りることなく、恥の上塗りふうで、より大きな大失敗を狙っている。ラピダスの計画だ。
 これについても私は「失敗確実」と判断した。
  → ラピダスで 10兆円の無駄: Open ブログ
 ここには、こういう報道を引用した。
 政府はラピダスに最大9200億円の支援を決めたが、2027年に予定する2ナノ(ナノは10億分の1)世代半導体の量産開始にはさらに4兆円が必要とされる。

 最終的には 10兆円ぐらいを投入するらしい。しかもその大部分は無駄になる。JDI のように。

 上の記事を書いたのは 2024年11月27日 だが、その後、新たにいっそう明白な報道が出た。識者(専門家)による批判。
 機械振興協会の井上弘基特任研究員は危うさを感じている。最先端の微細化半導体を作ること自体を井上氏は「古い発想」と見る。戦術は変わってきているのに大艦巨砲に固執する発想というのだ。
 いざ生産を始めると、億単位の出荷量になるのに、それを購入するお客さんを十分見込めていない。
 普通は大口のお客さんをあらかじめ見込み、そこから購買金額と購買量を逆算し、それに必要な設備投資や研究開発の資金を算出しますが、ラピダスはそうなっていないのです。
 これまでの半導体の歴史はより小さいものを追い求める微細化の追求の歩みでしたが、これからも微細化が進むと想定すること自体、考えが古い。あと4〜5年後には、どんなに工夫しても電子が漏れたり発熱したりして微細化の限界に達すると言われています。微細化を進めた半導体を作れるか作れないかではなくて、仮に作れてもさほど性能が上がらないという問題です。
 私は、経産省はICチップを高密度化する集積化技術など後工程の分野に重点を置くべきだった、と思っています。この分野は製造装置や材料など日本メーカーが強いので産業政策上、産業育成の効果が見込めます。ラピダスの前工程より一けたも二けたも少ない資金で、日本の半導体産業の将来展望が開けた、と考えます。
 IBMはすでに半導体の製造も販売もやっておらず、研究したことを対外的に発表することしか目立つ業績がない。逆に言えば、そうした研究発表で世界中の半導体関連産業をひきつけ、IBMの技術を使わせることでライセンシング料を得ている、と思います。
( → 巨費投入のラピダス、微細化は古びた発想? 識者「プランB検討を」:朝日新聞

 IBM は自社で技術を開発したが、儲からないとわかっているから、自分では事業化しないで、技術だけを日本に売りつけて、失敗確実というリスクを避けた。日本は IBM の(使い物にならない)技術を「最先端技術だ」と大喜びで高値で購入して、失敗確実の事業をやって、10兆円を無駄にする。
 この話は先に示したとおりだ。
 IBM はどうか? 
 なぜ、自社開発の技術の生産事業に出資しないのか? 
 それは、IBM が賢明だからである。
  ・ どうせ成功するはずのないハイリスクな事業には投資しない。
  ・ かわりに、自社開発した技術を、知財として高額で日本に売りつける。

 こうして IBM は、ノーリスクで、巨額の知財収入を得ることができた。生産というハイリスクな事業には1ドルも出さずに、知財を日本に売るだけで巨額の売却収入を得た。
 これが、利口な人間のやることだ。(その逆が日本政府だ。数兆円の国税をギャンブルに投入して、スッテンテンになる。馬鹿丸出しである。)
( → 日本企業の技術軽視 .1: Open ブログ


 IBM にとっては、日本は「ゴミ技術を高値で買ってくれるカモネギ」である。その後、日本が 10兆円を落とし穴に捨てるとしても、IBM としては気にしない。愚か者が損をするのは、IBM の知ったことではない。IBM は技術料を莫大な金額で売りつければ、それでいいのだ。

 結局、それで損するのは、日本国民である。JDI では 1500億円を損したが、ラピダスでは 10兆円を損することになるのだ。


money-hole.jpg


 なぜそうするのか? 経産省が馬鹿だからだ、というのが、その理由だ。だが、より根本的には、自民党が政治を執っているからだ。その自民党は、政治献金によって、大企業に買収されている。だから、国民の金を 10兆円も無駄にするのだ。

 そのために、10万円の商品券を仲間内で配るのである。(石破首相)
 
posted by 管理人 at 22:23 | Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
日本では技術を評価できる人が育っていません。広い視野で市技術を評価するのはとても難しいことですが、理系の人でもそれができる人はほとんどいません。その理由はやはり理系の大学院教育にあると思います。学部4年生から研究室に入り、博士課程に進んでも同じ研究室の最先端ではあるがごく狭い領域の研究をさせられて学位を取ります。つまり科学全体を見渡せるような教育は全くされていません。
 欧米の後を追っていた時代はそれで成功したのですが、現在ではこの教育方針は完全には間違っています。大学研究室を茶道や華道のような閉鎖的な環境にしてきたつけが来ていると思います。
まあ理系は医学系に比べると少しはましなんですが。
Posted by ひまなので at 2025年03月18日 17:07
ついこの前のホンダ、日産、三菱の合わせ技がこれに見えた。携帯電話の時も、プリンターの時もなぜこのような合わせ技、ドラゴンボールでいうFusion が好きなんだろうか
昔遊んだゲームの女神転生の影響が、日本人の奥底に存在してるのだろうか?
Posted by 会社 at 2025年03月23日 08:53
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