トランプ大統領のやっていることは、いかにも愚かだと見えるが、そのわけは……
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トランプは愚かか?
トランプの方針を見ると、いかにも愚かにも見える。しかし、単に知能指数が低いのとは違う。知能指数だけなら、平均点をかなり上回るはずだ。では、愚かさが理由ではないとしたら、何なのか? 性格的なものが理由だとも思える。
(1) 目先の損得にこだわる
あまりにも損得にこだわる。そのせいで、目先の損得にこだわって、長期的な損得にまで頭が回らない。朝三暮四の猿と同じで、目先のことしか考えられない。
前項で述べたことが、この例だ。「日本を守ってやる」と考えるときは、米国と日本の防衛費のことばかりを考えている。日本を守らなければ、日本を失い、そのせいで米国が「中国・日本」に敗北するということにまで、考えが及ばない。今年のことを考えることはできても、10年後にどうなるかということまで考えられない。
つまり、思考のキャパシティがとても小さい。これは、比喩的にパソコンで言えば、DRAM の容量が小さすぎて、思考力に制限がかかっている状況である。あるいは、グラボの性能が劣っているせいで、ゲームの処理能力が大幅に低下している状況である。マシンの部品が大昔のポンコツ部品なのだから、仕方ないが。
(2) 共同利益を嫌う
世界の外交の基本は「共同利益を求める」ことである。なぜなら、1国が「自国だけの利益」を求めると、対立・戦争になることが歴史的な教訓として判明しているからだ。第二次大戦後、戦争の教訓として、世界は「共同利益」を基調として外交が進んできた。
ところがトランプはこれに真っ向から異を立てる。「共同利益」を忌み嫌い、「自国だけの利益」「我欲」を最優先とする。その基本方針が「アメリカ・ファースト」だ。「MAGA」ともいう。( Make America Great Again )
また、その方針を「ディール」ともいう。これまでの世界外交における「多国間協調」を全面否定して、「2国間交渉」に導いてから、「米国だけが一方的に得する状況」に誘い込む。その代表例が「TPP脱退」であり、代替策としての2国間交渉である。(日米貿易協定がその一例だ。日本は全面屈服して、屈辱的な協定を強いられた。)
ともあれ、これまでのように「共同利益」を嫌うという方針が、トランプの基本方針だ。
さて。これまでは経済の分野でそのことが顕著だった。メキシコやカナダとの関税設定もそうだ。世界各国向けの関税設定もそうだ。たとえ報復関税を招いてもいい、ということからして、「共同利益」という概念からは懸け離れた、およそ正反対の方針を取っているとわかる。
ところが、これまでは経済の分野でそうだったが、最近では軍事分野でもそういう方針を取りつつある。欧州や日本に対して、「欧州や日本を守らない」と言い出している。これはトランプ1期目にはなかった方針だ。それほどにも非協調的・孤立主義的になっている。
では、どうしてこうなったか? それはやはり、「共同利益」を嫌うという方針がもともとあった上で、いっそう昂じてきたからだろう。年を取るとますます頑固になるというのと同様で、いっそう融通が利かなくなってくる。もともと頑固じじいだったのが、いっそうひどい頑固じじいとなる。もともと聞き分けがなかったのが、いっそう聞き分けがなくなる。
NATO であれ、日米安保条約であれ、そこでは「win-win」という共同利益の発想で条約が結ばれた。それを理解している時代には、トランプも異を立てなかった。しかるに、年を取って、頭が石頭になると、自分の信念である「自国利益の最優先」「アメリカ・ファースト」という目的から離れられなくなった。共同利益という概念を踏みにじりたくて仕方ない。かくて、欧州や日本の利益を踏みにじることで、米国の利益が最大化すると思い込む。こうして同盟関係の破壊にまっしぐらで進んでいく。
そのせいで得をするのは中国やロシアであり、それで損するのは(中国やロシアに敗北する)米国である、ということには頭が及ばない。
猿と同じで、目先のことが何よりも大切であり、遠い先のことには頭が及ばないのだ。なぜなら、そこまで考えるには、DRAM の容量が必要だが、彼の頭には DRAM が足りないからである。
