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安保に不満
安保条約に不満を唱えている。
《 トランプ大統領 日米安全保障条約の内容に不満「日本はわれわれを守る必要ない」 》
「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない。直接は関係しないが、日本はアメリカとの間で経済的に富を築いた。しかし、いかなる環境においても日本はわれわれを守らなくてよいのだ。いったい誰がこんなディールを結んだのか」と述べて、日米安全保障条約の内容が不公平だという認識を示し、不満をにじませました。
( → NHK | トランプ大統領 )
「安保条約は、米国が日本を守るが、日本は米国を守らないので、片務的だ」
という主張は、しばしば見られる。しかしこれは軍事常識を理解していない素人判断にすぎない。正しくは次の通り。
(1) 戦時と平時
仮定では戦争になった場合の話をしているが、現実には戦争は起こっていないのだから、損得計算をしても意味がない。(起こってもいない仮定の話をしても意味がない。)
平時には、日本は米国に(在日米軍費用の部分負担として)毎年1兆円を払っているのだから、双方帳尻は取れているはずだ。決して米国が一方的に負担しているのではない。むしろ平時には日本が一方的に負担していて、米国が一方的に受け取っているだけだ。米国は「守ってやっている」というつもりかもしれないが、別に戦争をしているわけじゃないのだから、日本は守ってもらっているわけじゃない。
ちなみにこんなに巨額を払っているのは世界で日本だけだ。他の国はこんなに払っていない。それどころか逆に、米国が「米軍基地を置かせてもらっている金」を払っていることも多い。(相手が途上国の場合にはそうだ。)
トランプが「日本も対等に米国を守れ」というのなら、そういうふうに条約を改定すればいい。
・ 日本は米国を守る。
・ 米国は日本に、在米自衛隊基地を無償提供する。
・ 米国は日本に、在米自衛隊基地の維持費として毎年1兆円を払う。
こうすれば対等になる。この方法高で改定すればいい。(どうせ金を払いたくないので一蹴するだろうが。ケチ野郎。)
(2) 軍事常識
トランプは軍事常識を理解できていない。
仮定では「中国やロシアが日本に攻め込んだ場合」を想定している。だが、現実にはそんなことはありえない。中国やロシアが日本に攻め込めば、(トランプ大統領以外なら)断じてそれを許さないので、米国も同時に引きずり込まれる。日米が共同して戦うことになる。
その場合、中国やロシアは、米国本土を攻撃しようとする。しかし米国はそれを阻止したい。そこで、米国は日本を前線として、中国やロシアを封じ込めようとする。その場合、日本は「中国やロシアを封じ込めるための不沈空母」と化す。
すると、日本は不沈空母として爆撃を受けて、焦土と化すこともあるだろう。それでも、日本が前線で焦土と化してくれたおかげで、米国本土は守られる。
仮に、日米安保条約がなければ、中国やロシアは日本の頭越しに、直接米国と戦うことになる。日本は我関せずで、頭上をミサイルや戦闘機が飛んでいくのを見上げるだけだ。その間、米国は本土やハワイやグアムから飛行機を飛ばす必要があるので、大変である。安保条約がなければ、在日米軍基地を使いたくても、在日米軍基地を使えないのだ。
現実には、安保条約がある。だから米国は安心して、在日米軍を利用して、中国やロシアを攻撃できる。反撃されるとしても、在日米軍が反撃されるだけだから、焦土になるのは日本だけであって、米国本土は守られる。
つまり、日本は米国本土を守るための盾となる。これが日米安保条約の意義だ。
日米安保条約というのは、米国が日本を一方的に守るための条約ではない。それどころか、日本が米国本土を守るために盾となるという犠牲的な条約なのだ。
※ 日本が一方的に守られているだけだというのは、自民党が安保条約導入のときに使った宣伝文句にすぎない。そんな宣伝文句を丸ごと信じるのは、企業の CM をまるごと信じるのと同様で、愚かすぎる。詐欺師にだまされるのも同然だ。
※ 本当は、日本が一方的に米国を守ってあげているのだ。日本は敵国を攻撃する能力はない。だが、敵国の砲弾を身に受けて、身を盾にすることで、自分を弾よけとして、米国本土を守ってあげているのだ。身を投げ出して、身を挺しているのだ。(淑女を守る騎士のような自己犠牲。)

出典:時事通信
※ ウクライナで言えば、ロシアとの国境に近い東部地域だけが、激しい爆撃を受けて焦土と化した。他地域を守るための犠牲となった。……これが(米国を守るための前線である)日本の役割だ。
※ これが真相なのだが、これを日本政府は口にできない。「自分は米国のポチである」と告白することになるからだ。「自分はご主人様を守る忠犬である」と告白することで、「ご主人様が一方的に守ってくれる」という建前を否定することになるからだ。かくて真実は隠蔽される。そのせいでトランプが(勘違いして)デカい顔をするようになる。 (★)
欧州を守らない
同じ記事では、こうも言っている。
トランプ大統領は6日、ホワイトハウスで記者団に対し、ヨーロッパのNATO加盟国の国防費の支出について「全く不十分だ」という認識を示すとともに「彼らが払わないのであれば私は彼らを守らない」と述べました。
これは別項で引用した話と符合する。
→ トランプ大統領の暴走: Open ブログ
トランプ前大統領は10日、在任中に北大西洋条約機構(NATO)の加盟国に対し、その国の「軍事費負担」が不十分ならばアメリカはその国を守らず、ロシアに「好きにするよう促す」と発言したのだと、支持者集会で明らかにした。
「払ってない? ちゃんと払ってない? だったらうちはおたくを守らない。むしろ、(ロシアに)好きにするよう促す。払わないとだめだ」
ここでも軍事費の支出増を要求している。
実は、欧州の軍事費の支出はすでに GDP の 2% を上回る水準になっている。
Feloの回答
欧州のNATO加盟国における軍事費の支出は、2024年時点で多くの国が国内総生産(GDP)の2%を上回る水準に達しています。具体的には、NATOの報告によると、2024年には32カ国中23カ国がこの目標を達成する見込みです。
ちなみに日本はこうだ。
2024年度の日本の防衛予算は、約7.7兆円(約57億ドル)に達し、前年からの増加が見込まれています。この予算は、GDPの約1.6%に相当し、2027年度までに2%に引き上げる計画が立てられています。
日本は欧州よりもずっと少ない軍事費なのだから、トランプは「日本を守らない」と言ってもよさそうだが、そうは言っていない。「片務的なのがダメだ」と言うだけだ。欧州向けのように厳しいことを言わない。
これは日本が毎年1兆円も貢いでいるからだろう。(欧州はろくに貢いでいない。)
では、だからといって、米国は本当に欧州を見捨てるか? もちろん、見捨てるはずがない。見捨てるというのは、ただのブラフだろう。現実には実行しないわけだ。(なぜなら、もし欧州をロシアに渡せば、米国は致命的な経済的・軍事的損失が起こるからだ。日本を渡さないのも、同様である。)
しかし、このようなブラフを出すことで、欧州との信頼関係を損ねる。これでは lose-lose だ。愚行だと言える。
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ついでだが、次の情報もある。
Feloの回答
2025年度の防衛予算は約8.7兆円に達し、これは自衛隊の防衛力強化に向けたもので、在日米軍の経費はこの中には含まれません。
2024年度の在日米軍に関する経費は、約8601億円に達し、過去最大を更新しました。
さらに、2024年度の補正予算には、沖縄県名護市の米軍新基地建設費など3307億円が計上されており、実際の支出は1兆円を大きく超える見通しです。
在日米軍の経費の分は含まれていないが、この分も含めれば、日本の軍事支出は GDP比で 2%に達しているようだ。
そんな甘ったれたことを言っているから、舐められて、論争で負けるんです。
論争というものは勝利しなくては意味がない。勝利するには? 簡単だ。素人の屁理屈や勘違い(トランプ)に勝つには、専門家が正論(軍事常識)を教えてあげるだけでいい。
次項で示す。