2025年03月08日

◆ トランプと日本 .1

 トランプ大統領は日本についても文句を言っている。

 ──

 安保に不満


 安保条約に不満を唱えている。
 《 トランプ大統領 日米安全保障条約の内容に不満「日本はわれわれを守る必要ない」 》
 「われわれは日本を守らなければならないが、日本はわれわれを守る必要がない。直接は関係しないが、日本はアメリカとの間で経済的に富を築いた。しかし、いかなる環境においても日本はわれわれを守らなくてよいのだ。いったい誰がこんなディールを結んだのか」と述べて、日米安全保障条約の内容が不公平だという認識を示し、不満をにじませました。
( →  NHK | トランプ大統領

 「安保条約は、米国が日本を守るが、日本は米国を守らないので、片務的だ」
 という主張は、しばしば見られる。しかしこれは軍事常識を理解していない素人判断にすぎない。正しくは次の通り。

 (1) 戦時と平時

 仮定では戦争になった場合の話をしているが、現実には戦争は起こっていないのだから、損得計算をしても意味がない。(起こってもいない仮定の話をしても意味がない。)
 平時には、日本は米国に(在日米軍費用の部分負担として)毎年1兆円を払っているのだから、双方帳尻は取れているはずだ。決して米国が一方的に負担しているのではない。むしろ平時には日本が一方的に負担していて、米国が一方的に受け取っているだけだ。米国は「守ってやっている」というつもりかもしれないが、別に戦争をしているわけじゃないのだから、日本は守ってもらっているわけじゃない。
 ちなみにこんなに巨額を払っているのは世界で日本だけだ。他の国はこんなに払っていない。それどころか逆に、米国が「米軍基地を置かせてもらっている金」を払っていることも多い。(相手が途上国の場合にはそうだ。)
 トランプが「日本も対等に米国を守れ」というのなら、そういうふうに条約を改定すればいい。
  ・ 日本は米国を守る。
  ・ 米国は日本に、在米自衛隊基地を無償提供する。
  ・ 米国は日本に、在米自衛隊基地の維持費として毎年1兆円を払う。

 こうすれば対等になる。この方法高で改定すればいい。(どうせ金を払いたくないので一蹴するだろうが。ケチ野郎。)

 (2) 軍事常識

 トランプは軍事常識を理解できていない。
 仮定では「中国やロシアが日本に攻め込んだ場合」を想定している。だが、現実にはそんなことはありえない。中国やロシアが日本に攻め込めば、(トランプ大統領以外なら)断じてそれを許さないので、米国も同時に引きずり込まれる。日米が共同して戦うことになる。
 その場合、中国やロシアは、米国本土を攻撃しようとする。しかし米国はそれを阻止したい。そこで、米国は日本を前線として、中国やロシアを封じ込めようとする。その場合、日本は「中国やロシアを封じ込めるための不沈空母」と化す。
 すると、日本は不沈空母として爆撃を受けて、焦土と化すこともあるだろう。それでも、日本が前線で焦土と化してくれたおかげで、米国本土は守られる。

 仮に、日米安保条約がなければ、中国やロシアは日本の頭越しに、直接米国と戦うことになる。日本は我関せずで、頭上をミサイルや戦闘機が飛んでいくのを見上げるだけだ。その間、米国は本土やハワイやグアムから飛行機を飛ばす必要があるので、大変である。安保条約がなければ、在日米軍基地を使いたくても、在日米軍基地を使えないのだ。

 現実には、安保条約がある。だから米国は安心して、在日米軍を利用して、中国やロシアを攻撃できる。反撃されるとしても、在日米軍が反撃されるだけだから、焦土になるのは日本だけであって、米国本土は守られる。
 つまり、日本は米国本土を守るための盾となる。これが日米安保条約の意義だ。
 日米安保条約というのは、米国が日本を一方的に守るための条約ではない。それどころか、日本が米国本土を守るために盾となるという犠牲的な条約なのだ。

 ※ 日本が一方的に守られているだけだというのは、自民党が安保条約導入のときに使った宣伝文句にすぎない。そんな宣伝文句を丸ごと信じるのは、企業の CM をまるごと信じるのと同様で、愚かすぎる。詐欺師にだまされるのも同然だ。

 ※ 本当は、日本が一方的に米国を守ってあげているのだ。日本は敵国を攻撃する能力はない。だが、敵国の砲弾を身に受けて、身を盾にすることで、自分を弾よけとして、米国本土を守ってあげているのだ。身を投げ出して、身を挺しているのだ。(淑女を守る騎士のような自己犠牲。)


ukraine-jiji.jpg
出典:時事通信


 ※ ウクライナで言えば、ロシアとの国境に近い東部地域だけが、激しい爆撃を受けて焦土と化した。他地域を守るための犠牲となった。……これが(米国を守るための前線である)日本の役割だ。

 ※ これが真相なのだが、これを日本政府は口にできない。「自分は米国のポチである」と告白することになるからだ。「自分はご主人様を守る忠犬である」と告白することで、「ご主人様が一方的に守ってくれる」という建前を否定することになるからだ。かくて真実は隠蔽される。そのせいでトランプが(勘違いして)デカい顔をするようになる。 (★)


 欧州を守らない


 同じ記事では、こうも言っている。
 トランプ大統領は6日、ホワイトハウスで記者団に対し、ヨーロッパのNATO加盟国の国防費の支出について「全く不十分だ」という認識を示すとともに「彼らが払わないのであれば私は彼らを守らない」と述べました。

 これは別項で引用した話と符合する。
  → トランプ大統領の暴走: Open ブログ
 トランプ前大統領は10日、在任中に北大西洋条約機構(NATO)の加盟国に対し、その国の「軍事費負担」が不十分ならばアメリカはその国を守らず、ロシアに「好きにするよう促す」と発言したのだと、支持者集会で明らかにした。
 「払ってない? ちゃんと払ってない? だったらうちはおたくを守らない。むしろ、(ロシアに)好きにするよう促す。払わないとだめだ」

 ここでも軍事費の支出増を要求している。
 実は、欧州の軍事費の支出はすでに GDP の 2% を上回る水準になっている。

Feloの回答
 欧州のNATO加盟国における軍事費の支出は、2024年時点で多くの国が国内総生産(GDP)の2%を上回る水準に達しています。具体的には、NATOの報告によると、2024年には32カ国中23カ国がこの目標を達成する見込みです。

 ちなみに日本はこうだ。
 2024年度の日本の防衛予算は、約7.7兆円(約57億ドル)に達し、前年からの増加が見込まれています。この予算は、GDPの約1.6%に相当し、2027年度までに2%に引き上げる計画が立てられています。

 日本は欧州よりもずっと少ない軍事費なのだから、トランプは「日本を守らない」と言ってもよさそうだが、そうは言っていない。「片務的なのがダメだ」と言うだけだ。欧州向けのように厳しいことを言わない。
 これは日本が毎年1兆円も貢いでいるからだろう。(欧州はろくに貢いでいない。)

 では、だからといって、米国は本当に欧州を見捨てるか? もちろん、見捨てるはずがない。見捨てるというのは、ただのブラフだろう。現実には実行しないわけだ。(なぜなら、もし欧州をロシアに渡せば、米国は致命的な経済的・軍事的損失が起こるからだ。日本を渡さないのも、同様である。)
 しかし、このようなブラフを出すことで、欧州との信頼関係を損ねる。これでは lose-lose だ。愚行だと言える。
 
 ──

 ついでだが、次の情報もある。

Feloの回答
 2025年度の防衛予算は約8.7兆円に達し、これは自衛隊の防衛力強化に向けたもので、在日米軍の経費はこの中には含まれません。

 2024年度の在日米軍に関する経費は、約8601億円に達し、過去最大を更新しました。
 さらに、2024年度の補正予算には、沖縄県名護市の米軍新基地建設費など3307億円が計上されており、実際の支出は1兆円を大きく超える見通しです。

 在日米軍の経費の分は含まれていないが、この分も含めれば、日本の軍事支出は GDP比で 2%に達しているようだ。
 
posted by 管理人 at 23:29 | Comment(3) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
トランプはまだ日本を大国として認めてくれているのですが、この先どうなるかわかりません。台湾が香港のようになり、韓国の消滅が見えてくると東アジアで孤立した日本は危ういです。沖縄から米軍が撤退することがないようにお願いするしかないでしょうね。
Posted by ひまなので at 2025年03月09日 09:34
> お願いするしかない

 そんな甘ったれたことを言っているから、舐められて、論争で負けるんです。
 論争というものは勝利しなくては意味がない。勝利するには? 簡単だ。素人の屁理屈や勘違い(トランプ)に勝つには、専門家が正論(軍事常識)を教えてあげるだけでいい。
 次項で示す。
Posted by 管理人 at 2025年03月09日 09:47
 真ん中へんに (★) の段落を書き足しました。
Posted by 管理人 at 2025年03月09日 16:57
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