トランプ大統領とウクライナの問題を続ける。
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(4) トランプの激怒
前項で述べたように、トランプ大統領はウクライナ軍事支援の一時停止を決めた。
これはなぜか? 次のように分析できる。
「その前に会談で決裂した。このことで怒り狂ったからだ。怒りのあまり、喧嘩の相手を何としても攻撃したくなった。いじめたくなった。だから、ウクライナをいじめるために、軍事支援の一時停止を決めたのだ」
こういうふうに「怒り」という概念で説明できる。「ウクライナ軍事支援の一時停止」という暴走は、怒りという感情ゆえに起こったものだと説明される。
決裂の翌日にそう決めたことも、大非難をしていることも、(ロシアよりも)ウクライナを攻撃すること目的としていることからも、こうした感情論の説明で納得できる。(合理的な政策論による説明ではない。)
さて。トランプが激怒したのはなぜか? 侮辱されたと感じたからか? そう思っている人が多いようだが、違う。
トランプが激怒したのは、自分の目論見が破綻したからだ。では、目論見とは何か? こうだ。
「ディールによって一方的に利益を得る。こちらから何にも与えずに、相手のものだけを奪う。ギブ・アンド・テーク(交渉)ではなく、テーク・アンド・テーク(ディール)をする。そのために、口先だけで、うまく相手をまるめこんで、一方的に利益を得る」
具体的には、こうだ。
「ウクライナの鉱物資源を供与してもらうが、米国からは武器支援の約束を何も与えない。テークだけして、ギブをしない」
これがトランプの目論見だった。
ところがゼレンスキーはこの方針を一蹴した。「鉱物資源を与えるが、それは武器支援の約束が条件だ」と厳重に釘を刺した。
これはつまり、トランプの目論見が破綻したことを意味する。「テークだけして、ギブをしない」という目論見が明確に否定されたことになる。つまり、自分の予定を完全に覆されたわけだ。だからこそ、トランプは顔を真っ赤にして、激怒したのだ。
そして、この激怒のせいで、翌日には「ウクライナ軍事支援の一時停止」という暴走をしたのだ。(前項で示したとおり。)
(5) トランプの転換
以上の話は、前日に判明していた。だから、それを受け継いで、本日にはそう書くつもりだった。実際、そう書いた。(上記の通り。)
ところが、である。一夜明けると、トランプは態度を一変させていた。ウクライナを非難する態度をやめて、ウクライナと協調する方針を示した。その理由は、ウクライナが鉱物資源を与えるという方針を示したからだ。
→ トランプ大統領 ウクライナとの鉱物資源協議 継続に前向き | トランプ大統領
こうして、「代償なしで鉱物資源だけを得る」という目論見が成立しそうだとわかったので、トランプはふたたびニコニコ顔で協調路線を取るようになった。
「今泣いたカラスがもう笑った」
というようなものだ。
このように態度を豹変させることは、常人の頭では理解しがたいかもしれない。「どうしてそんなに態度を急変させるのか?」と。
しかし、前項の話を理解していれば、わけはわかるだろう。トランプはあくまで強欲なのである。鉱物資源というお宝を、得られないとわかれば激怒する。得られるとわかれば大喜びする。
この点では、お菓子を取り上げられて泣いた子供が、お菓子を与えられて喜ぶのと、同様である。
ただ、それにしても、コロコロと変わりすぎだろう。
(6) 対処策
さて。トランプの方針はわかったが、このような大統領にどう対処するべきか? それが問題だ。それがわからないと困る。では、どうすればいい?
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。ただし、いきなり案を出すわけではない。
その前に、まずは、トランプの主張を理解しよう。トランプの主張は、こうだ。
「米国人が鉱物資源の開発のために、ウクライナ領に入れば、ロシアはもはやウクライナを攻めてこなくなる。だから自動的に停戦が実現する。そのために、ウクライナは鉱物資源を米国に無償で与えるべきだ」
「ロシアが攻撃しなくなるように、ロシアにはクリミア半島の領有を認めてやればいい。そうすれば、それで満足して、ウクライナ東部からは撤退するだろう。特に、米国人が入れば、もはやロシアが攻めてくることはなくなるだろう」
これがトランプの認識だ。あまりにも甘い認識と言える。楽観的すぎるとも言える。勝手に妄想しているだけだとも言える。
だが、その甘い認識を逆手に取ればいいのだ。つまり、こうだ。
「トランプの主張に乗って、トランプの言いなりになればいい。鉱物資源を与えて、米国人を招けばいい。トランプは権益の 50% をもらうことを予定しているようだが、50%でなく 100% の権益を与えてもいい。ただし、期間は限定する。20年間ぐらいにする。その期間だけは、鉱物資源が無料で取り放題だ。その期間を過ぎれば、もはや取れなくなる。だから、急いで掘ればいい。そのために、すぐにウクライナに来ればいい。ウクライナに来て、鉱物資源を掘ればいい」
こういう協定を結べばいいのだ。つまり、トランプの思惑通りに、「武器支援の約束なしに一方的に鉱物資源を与える」という協定を結べばいいのだ。
すると、どうなるか? 米国人が採掘のためにウクライナに来れば、ロシアは攻撃をやめてウクライナから出ていくか? それでウクライナに停戦が実現するか?
トランプは「それで停戦が実現する」と信じる。
しかし現実には、そんなことはありえない。
・ ロシアはウクライナ領から出ていかない。
・ 相も変わらず爆弾を落とす。
・ ゆえに米国人は(死にたくないので)ウクライナに入らない。
・ 米国人が入って停戦になる、というトランプの目論見は外れる。
・ 地下資源も開発されず、米国は何も得られないままだ。
結局、ウクライナは「鉱物資源を与える」という協定を結ぶが、現実には鉱物資源は1トンも採掘されない。採掘するための米国人は1人も来ない。ロシアの攻撃はまったく止まらない。トランプの主張は完全に外れる。
かくて、トランプだけが赤っ恥を掻く結果となる。これが最終結果だ。
結局、「トランプの提案に乗って、トランプの提案に従う」というのは、そういうことが狙いだ。
トランプの提案は、実現性がない。だからこそ、その提案に乗ればいい。そのあと、実現性のなさゆえに、自滅に至らせる。つまり、相手の手に乗じて、相手を自滅させるわけだ。自己破滅に誘導する、とも言える。罠にかけるようなものだ。
(7) 鉱物資源の価値
それでも心配症の人は、懸念するかもしれない。
「もしトランプの狙い通りになったらどうする? ロシアが撤退して、米国がウクライナの鉱物資源をすべて取得したらどうなる? これではウクライナが米国に侵略されるようなものではないか?」
だが、その心配は不要だ。たとえその懸念が現実化しても、特に問題ない。そのことは、鉱物資源の価値を知ればわかる。米国がこれまでウクライナに与えた援助額は、トランプの主張によると 5000億ドル。一方、鉱物資源の価値は、はるかに小さい。
5000億ドルの要求額を返済しようとしても、ウクライナの2024年の鉱物輸出額は11億ドルに過ぎず、その全額を基金に分配したとしても、完済には利息抜きの元本だけで455年ほどかかる計算になる。
( → 狙いは「戦争終結」でも「鉱物資源」でもない…トランプ大統領がウクライナを見捨て、プーチンを選んだ本当の理由 | PRESIDENT )
11億の50年分でも 550億ドルにすぎない。これはウクライナがもらっている軍事援助額よりもはるかに小さい。これっぽっちの額など、いくらでもくれてやれるのだ。鉱物資源なんて、「レアアース」という言葉からは黄金のように貴重なお宝だと見えるかもしれないが、経済的な価値は無視できるほど小さいのだ。
そんなものにこだわるトランプには、まさしくそのお宝を与えればいい。それに食いつくように仕向ければいいのだ。
これはいわば、「海老でタイを釣る」ような作戦だ。あるいは「エサにダボハゼを食いつかせる」というような作戦だ。……トランプのような、知能が低くて貪欲な相手には、こういう罠のような対策が有効なのである。
[ 付記 ]
なお、無償で地下資源を供与しても、採掘企業が利益を上げれば、その利益には課税が生じる。利益の一定部分はウクライナ政府に吸い上げられる。だから、いくら無償で地下資源をもらっても、その富のすべてが米国のものになるわけではない。
ここにも罠がある。
【 追記 】
上記記事の数字の想定は甘すぎるので、私が独自に調べると、こうだ。
Feloの回答
2020年のウクライナの鉱物産業の経済規模は、約70億ドルでした。
全土でなく東部に限れば 30億ドルか。これが 10年間で 300億ドル(45兆円)となる。米国のこれまでの軍事供与の4分の1に相当する。このくらいなら与えても問題ない。
それ以上の分は、トランプのあとの大統領が決めるが、ほとんどが免除されるだろう。
そこからゼレンスキー大統領は最初からこの会談をぶち壊すつもりで臨んだという見方が出てくる。元々ゼレンスキー大統領はトランプ大統領に反感を持っていた。選挙応援でバイデン大統領の味方をしたと会談で示唆された。でも現在は折れて頭を下げてきた。トランプ大統領は甘くない。1度折れれば安全保障を餌にして次から次へとカサにかかる。資源はウクライナ東部にある。プーチン大統領と山分けの話がすでについているとの見方がある。
ウクライナがロシアに無条件に全面降伏することです。
全てがロシア領になる。
ロシア側は即座に承諾する。
ゼレンスキーはどこかに亡命する。
全ての欧米製武器もロシアに提供する。
これなら2週間もあればできる。
ウクライナ国民は欧州の国々に亡命する。
トランプはどう反応するか?
慌てて武器供与と継続戦を依頼するか?
ここで初めてゼレンスキーとトランプの交渉が再開できる。
しかしトランプの事だからプライドが邪魔して今更態度を変えられないだろう。
かくしてロシアによるウクライナの併合という形で世界は平和となる。
その場合、当然ながら、ロシアはポーランドにもチェコにも侵攻するし、それにもやはり降伏するしかない。ロシアは東側の全部を侵略する。その後にはドイツの東側(東独)も頂戴する。それでもやはり西側諸国は降伏する。
日本も当然、北海道を侵略されるが、降伏するしかない。降伏だけが平和になる方法だからだ。
戦う意欲をなくした国は、侵略されて蹂躙されるしかない。それは歴史の示すとおり。