2025年03月02日

◆ 米作をどうするべきか

 日本の米作は将来的にはどうするべきか? 

 ──

 短期的には需給を均衡させることで、米不足を解消したい。そのために最も有効なのは備蓄による調整だ。需給は年ごとに変動するが、年ごとの変動は備蓄の出し入れで吸収できる。

 一方で、長期的にはどうするべきか、という問題がある。
 農水省は、食糧自給にこだわるので、輸入自由化の阻止を至上目標とする。そのために、異常に高い関税率を設定する。
 しかしながら、昨今の米価低迷と円安のせいで、米価は海外価格と大差ない水準になってきた。こうなると、異常に高い関税率は必要なくなる。低い関税率で輸入自由化を実施しても、日本の米作は諸外国と十分に太刀打ちできるようになる。
 とすれば、輸入自由化をして、若干の外国米の流入を招いたとしても、問題はなさそうだ。そうすれば、いちいち備蓄する必要もなくなり、備蓄のために莫大な金を投じる必要もなくなる。
( ※ 現状では備蓄米を廃棄するので、毎年 20万トンずつの米を捨てるのも同然だ。無駄の極みである。米も金も もったいない。)

 ──

 そこで、将来のあるべき農政を考えよう。
 私の考えはこうだ。
  ・ 現状の日本の農業は非効率である。特に米作は時給 10円ほどで、ひどい。
  ・ このような低賃金は、労働生産性の低下を意味する。
  ・ そのせいで、日本人の一人あたり所得が低下する。
  ・ 高い農産物を買わされる消費者も、物価上昇で大損する。
  ・ 日本は物価が高いので、実質所得は韓国よりも低い。
  ・ その理由は農産物が関税によって馬鹿高いからである。
  ・ 関税を下げれば、物価低下で、実質所得が増える。
  ・ 農産物自由化と関税低下こそ、日本の農政のあるべき姿だ。
  ・ そのためには、非効率な零細農家は切り捨てていい。


 こうして最後の結論が出る。つまり、こうだ。
 「非効率な零細農家は切り捨てていい」


 では、零細農家は、土地をどうするか? 次のいずれかだ。
  ・ 他人に農地を貸して、大規模農業をさせる
  ・ 農地を転用して、太陽光発電で収益を得る


 そのどちらにするかは、土地の形状によるだろう。
  ・ まとめれば大規模化が可能な土地ならば、大規模化する。
  ・ まとめても大規模化が不可能な土地ならば、太陽光発電にする。


 後者の例は、次のような場合だ。
  ・ 起伏や傾斜があるので、機械化ができない。
  ・ 狭い小区画なので、機械化ができない。
  ・ まとめても総面積が小さすぎて、規模が足りない。


 大規模化のためには最低でも 10ヘクタールぐらいは必要だが、それだけの農地がまとまっている地域は少ない。大きな平野部ならばいいが、山間僻地や谷間の川沿いなどでは、土地があまりにも狭すぎる。なのに、日本には、そういう狭小な農地がたくさんあるのだ。
 そこで、これらの零細農家については、すべて「撤退するべし」と結論しよう。その上で、太陽光パネルの設置に誘導するべきだ。
 たとえば、能登で言えば、次のような山間の田んぼが該当する。





 このような田んぼは、無理に維持するより、太陽光パネルの設置に転じるべきなのだ。



  【 補説 】
 山間僻地は非効率なので、農業には適さない。なのになぜ、それらの狭隘な土地では、米作が盛んになされてきたのか? そのわけを考えよう。

 広大な平地といえば、関東平野や濃尾平野がある。そこには米作のできる広大な平地がある。だから、そこで米作をすればよさそうに思える。
 しかしこれらの土地は、火山灰地なので、土地が痩せている。特に、リンが足りない。だから、米作には不適なのだ。(江戸時代には人糞を振りまいていたが、今は人糞を振りまく時代ではない。昔の田畑には人糞の臭いが漂っていたが、今はそんな時代ではない。)
 一方、東北や北陸の盆地や扇状地は、山間部から流れてきた腐葉土が堆積したので、土地が肥沃である。農業には適している。こういう場所で、水の利水が良いところが、米どころになった。平野を流れる川のそばが有力だったが、山間部の谷川のそばも利水が良いので(狭いながらも)有力となった。
 こうして東北や北陸の盆地や扇状地は、おいしい米の取れる米どころとなって、繁栄した。江戸時代には、会津藩や加賀藩が非常に繁栄したが、これらの藩は、東北や北陸の米どころとして、大量の石高(こくだか)があったからなのである。
  ※ 幕末から維新の歴史では、会津藩が大きく登場するが、それというのも、会津藩が米どころとして巨額の財政力を備えていたからだ。

 なお、裏日本側や盆地は、米どころとして繁栄したが、東北の太平洋側はあまり繁栄しなかった。そのわけは二つある。平地の不足と、冷たい風である。

Feloの回答
Q 東北の太平洋側が米どころにならなかったのは、平地が足りないせいか

A 東北地方の太平洋側は、山脈や丘陵が多く、平地が限られています。米作りには広い平野が必要ですが、太平洋側ではそのような広大な水田を確保するのが難しいため、米の生産量が制約されることになります
 
 特に太平洋側では、冷害が発生しやすい気候条件が存在します。冷害は、稲の受粉や生育に影響を与え、結果として収穫量が減少する要因となります。これに対して、日本海側は冷害の影響を受けにくい地域が多く、米作りが盛んです。

 太平洋側は、リアス式海岸などがあり、漁業は盛んだが、農業は盛んでなかった。
 裏日本の側では、冬は大雪は降るので暮らしにくいが、夏は米作に適していたので、米作が盛んになされた。だから、上の画像のような山間僻地の狭い場所でも、米作が成立した。
 これが質問への回答となる。

 ただしそれは、日本が貧しい時代の話だ。今となってはその能率の低さから、米作には適さなくなっている。特に、農業に機械が使われる時代には、山間僻地は時代遅れとなってしまったのだ。
( ※ 人力作業の時には、いくらか段差があっても克服できるが、大型のトラクターやコンバインは、平地でないと使えない。)

 なお、上の画像の場所は、段々畑(棚田)である。わかりにくいかもしれないので、横から見た画像を示す。




posted by 管理人 at 23:32 | Comment(2) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
たしかに日本ではアメリカや中国のような大規模機械化農業は無理です。ただ今はAIの時代です。変形農地や棚田でも機械化はできると思います。今まで需要がなかっただけのような気がします。
 食料自給のために零細農業を保護した結果、ほかの産業と比べて合理化が大きく遅れています。
Posted by ひまなので at 2025年03月03日 11:27
 アメリカの農地は平均 約180ヘクタール だが、そんなに大規模にする必要はなく、10ヘクタールでも十分。日本の現実は平均1ヘクタールなので、それは小さ過ぎる、と言っている。

> 変形農地や棚田でも機械化はできると思います。

 機械化技術はあります。しかし土地の面積が 100分の1なら、コストは 100倍です。コストの問題。
Posted by 管理人 at 2025年03月03日 12:20
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