2025年02月17日

◆ ホンダはどうなる? .3

 ホンダの経営陣の判断について問題点を指摘しよう。

 ──

 (1) 経営統合の断念

 そもそも本来ならば、経営統合によって、ホンダは日産自動車を実質的に子会社にできたはずだ。なぜなら、株式の時価総額に大差があるからである。ホンダの時価総額は日産の4倍もある。すると、こうなる。
 「統括会社(親会社)の持株比率は、ホンダが8割、日産が2割」
 したがって親会社の方針はホンダの意向に従うことになる。親会社の下に子会社の日産がぶらさがるが、そこでは経営の自立性は保たれるとしても、人事は親会社に全面的に従うので、日産の経営者の人事はすべてホンダの意向に従うことになる。たとえば、「社長を関潤にする」と親会社が決めたら、日産はそれに従うしかない。人事面では日産はホンダに完全服従するしかない。
 本来は、こうなるはずだった。

 ところが、ホンダはそれを拒んだ。つまり、経営統合の形で日産を手に入れることを拒んだ。なぜか? 日産をどう扱ったらいいのか、わからなかったからである。……ここまでは、前々項で述べた通り。


 (2) 日産への経営介入

 では、ホンダはできなかったが、ホンダはどうするべきだったのか? ホンダの取るべき正解は何だったのか? ホンダには見出し得なかった正解とは何だったのか? それを示そう。

● 工場閉鎖はしない
 ホンダは日産に「リストラしろ」という方針を示して、「工場閉鎖しろ」「人員解雇しろ」と指南した。しかし、これはただのコストカットであり、やるべきこととは逆だ。
 日産は生産減少しているのが問題なのだから、生産は今後、増やすべきなのだ。したがって「事業縮小」というホンダの方針は、正反対である。
 ダメ会社を立て直すのが仕事であるコンサルならば、「リストラしろ」という方針は正しい。しかし日産を吸収する親会社になるつもりなら、むしろ「日産を拡大する」という方針を取るべきなのだ。その意味で、ホンダのやろうとしたことは、正解とは逆だ。
 ※ どうせやるなら、「解雇」「早期退職」ではなく、「時短」や「休日増」による、一時的な労働時間短縮に留めるべきだ。つまり、将来的な「増産」の余地を残しておくべきだ。狙いは「倒産回避」ではなく、「将来の復活・増産」であるからだ。ホンダの経営者は、そこを理解できない。まるでコンサルだ。毎度毎度、「コストカット」と口にするだけだ。(まともな技術知識がないからだ。)

● ガソリン車の販売
 日産の販売量を急激に増やすには、どうすればいいか? あっという間に急激に増やす方法はあるか? ある。ガソリン車を販売することだ。
 現状では、愚かなことに、ガソリン車の販売をやめている。ノートもセレナもエクストレイルもキックスも、ガソリン車が存在しない。いずれも e-POWER 車だけだ。これでは販売量が半減するのも当然だ。
 したがって、ガソリン車の販売を開始すれば、あっという間に販売量が倍増する。少なくとも、国内ではそうだろう。
 ちなみに、欧州ではガソリン車と e-POWER 車が併売されているが、ガソリン車の方が多く売れているようだ。米国ではガソリン車だけが売られて、 e-POWER 車は売られていない。
 そこで、国内ではガソリン車を販売し米国では e-POWER 車を販売すれば、あっという間に販売量を急増させることができるだろう。

● CVT の変更
 日産の CVT は非常に評判が悪い。そこで、これを変更するべきだ。次のいずれかにする。
  ・ ホンダの CVT に変更する
  ・ アイシンの AT に変更する


 当面はそうするが、その後は、次のようにする。
 「日産の子会社であるジヤトコを、ホンダまたはアイシンに売却する。ジヤトコでは、ホンダまたはアイシンの設計図に従って、それらの会社の製品を生産する。その商品を日産が購入する。日産は購入保証をすることで、ジヤトコを他社に売却する」

 こうしてジヤトコを他社の傘下に入れてしまえばいいのだ。これで日産の CVT の技術問題は解決する。かくて日産はガソリン車を販売できるようになり、販売台数を大幅に増やせる。当然、リストラの必要もない。

● ルノー車のノックダウン
 ルノー・キャプチャーという魅力的な小型 SUV があるので、これをノックダウン生産すればいい。





 「ノックダウン? そんなのは大変だぞ」と思う人もいるだろうが、実は、ルノー・キャプチャーとエクストレイルやキャシュカイは、兄弟車の関係にあるので、製造は難しくない。ノックダウンは容易だろう。これで、工場の稼働率を上げることができる。

 ※ さらに、できることなら、小型ワゴンを生産したいところだが、そのための車種をうまく見出せなかった。NV200 みたいなポンコツしか思い浮かばない。あるいはノートの改造版か。いずれにしても実現性は薄いので、ボツだ。

 ※ 米国版の新型キックスの幅狭タイプを作るという案も考えたが、無理っぽいね。現行版(全幅 1800mm)のまま出すしかあるまい。この全幅だと、あまり売れそうにないが。……なお、キックスは現状では CVT だけなので、 e-POWER の設定はない。そのせいで、日本国内では販売予定がない。






 (3) 経営統合の是非

 ホンダは日産との経営統合を拒否した。(日産を振った。)……このこと自体の是非は、どうか? 
 実は、この判断は間違っていない。ホンダは、日産を経営統合したあとで、日産をどうするかのビジョンがなかった。つまり、上記で記した各点のようなビジョンを持たなかった。逆に、日産に「リストラしろ」というふうに、間違った方針を強いた。こんなことでは、日産はダメになるし、日産を入手したホンダもダメになる。win-win とは逆の lose-lose になる。それではダメだ。
 だから、ホンダが日産を袖にしたこと自体は、間違っていないのだ。

 とはいえ、それでハッピーかというと、そうでもない。ホンダは日産を袖にしたことで、日産の赤字を背負うことはなくなったが、日産の宝を手に入れることもできなくなった。 lose-lose を避けたが、win-win にもなれなかった。
 結局、ホンダとしては、日産との経営統合については、「諾」と答えても「否」と答えても、どっちにしても失敗に至るしかなかったのだ。そのまま経営統合に突っ走っても失敗したし、経営統合を避けて独自路線を進んでも失敗した。どっちにしても失敗するしかなかったのだ。


 (4) ホンダの取るべき正解

 では、ホンダの取るべき正解は、何だったのか? それを教えよう。
 それは、ホンダが独自路線を取ることでもなく、ホンダが日産を吸収することでもない。逆に、ホンダが日産に吸収されることだ。
 もう少し正確に言うと、こうだ。

  ・ ガソリン車は、それぞれが独立して存続する。統括会社の下にぶら下がる。
  ・ EV 車は、双方が EV 部門を拠出して、統合された新会社を設立する。その新会社が統括会社にぶら下がる。
  ・ EV の新会社は、日産主導とする。ホンダはバラバラに解体されて、吸収される。
  ・ EV の新会社の社長は 関潤とする。


 これがホンダの取るべき道だった。しかし、プライドの高いホンダには、このような道を取ることはできないだろう。ゆえに、ホンダに残る道は、タイタニックのように沈むことだけなのだ。それは前項で述べたとおりだ。

 ※ 日産は社長も辞任するし、自社の誤りに気づいている。一方、ホンダは違う。自己の無能さに気づかないまま、勝手に自惚れている。そのせいで、危機感が皆無である。傲岸不遜。自分を利口だと思っている馬鹿ほど、始末に負えないものはない。

 ※ どうしてホンダが日産に吸収されなくてはならないのか? それはホンダが埼玉企業だからである。詳しい話は次項で。

posted by 管理人 at 23:57 | Comment(0) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
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