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この問題を考えるには、「日産はどうして経営悪化したか」を考えればいい。前に「経営者が愚かだからだ」と指摘したが、どこがどう愚かだったのか? 具体的にはどういうふうに経営を間違えたのか? 正しくはどう経営すれば良かったのか? ……それを考えよう。
この問題は、改めて考えるまでもない。すでに何度か記してきた。下記の通り。
「日産の経営悪化の理由は、自動車の販売価格が低下して、大幅に販売奨励金を出さざるを得なくなったからだ。つまり、大幅値引きである。ではなぜ、そうなったか? 日産の CVT車が悪評だからだ。うるさくて、操作しにくくて、やたらと故障する。故障したあとの修理費は 100万円ぐらいかかる。こんな車はゴミも同然だ。新車で買うなら最初から 50万円引きぐらいで買うしかない。しかしそんなに値引きしたら、日産は大赤字になる。それが現状だ。かくて、現状を放置する限り、日産は大赤字で倒産せざるを得ない」
では、どうすればいいのか? こうだ。
「一つは、CVT をやめて、AT に変えることだ。もう一つは、自社製の CVT をやめて、他社(ホンダ)製の CVT に変えることだ。……しかし、大量の AT や CVT の供給を受けることは、容易ではない。従って、これらの案は現実的でない」
「かわりに、うまい方法がある。日産には e-POWER という技術がある。これを使えば、ハイブリッド技術を導入するだけでなく、変速機を省略できる。AT や CVT を使わずに済む。だから、 e-POWER を導入すればいい」
ところが、 e-POWER には難点がある。高速運転をすると、燃費が悪化してしまうのだ。日本のように、高速運転をする機械が少ない国ならいいが、欧州や米国など、高速道路で遠距離移動をする国では、 e-POWER は適さない。
これを解決するには、 e-POWER に「エンジン直結モード」を搭載するしかない。だから、そうしろ、と私はずっと前から言ってきた。しかし、日産はそうしなかった。これからも、そのつもりはない。
ゆえに日産は、今も今後も、生き延びる道がない。となれば、あとは倒産するしかない。……これが論理的必然となる。
要するに、自ら死ぬことを選んだ会社は、死ぬしかないのだ。それが振られた日産の運命なのである。
千早ぶる神代もきかず龍田川 からくれないに水くくるとは
ホンダ振る
いさめもきかず

からくれないに
水くくるとは
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さて。それはさておき。さらに考えることがある。
日産は、どうしてもエンジン直結モードを採用しない。いったい、どうしてだろう? やるべきことをやらないのは、どうしてだろう? いかにも不思議である。
そこで私は推測した。こうだ。
「日産がこれほどにもエンジン直結モードをいやがるのは、コストダウンのためである。エンジン直結モードを採用すると、コストが 20万円前後、高くなりそうだ。このようなコストアップを、何が何でもイヤがる」
これは常識的には考えられないことだ。日産ではオプションパックのような形で、さまざまなファッション的なオマケ用品を強制的に購入させる。特に、プロパイロットを購入する人には、いっしょにオマケ用品を抱き合わせ販売する。そのことで 20万円ぐらい余計に金を取る。……こんな不要なオマケ用品を抱き合わせ販売するぐらいなら、必要不可欠なエンジン直結モードを採用するべきだろう。そうすれば、ガソリン代を節約できて、(1年ごとに)何万円か何十万円も得するからだ。
だから、まともな頭があれば、「コストダウンを理由にエンジン直結モードを不採用にすることなど、ありえない」とわかる。
ではなぜ、日産は、そうしなかったのか? それは、明らかだ。まともな頭がなかったからである。(¶)
要するに、こうだ。
「エンジン直結モードを採用すると、コストが 20万円も上がる。そんなにコストが上がったら、会社の利益がすっ飛んでしまう。コストダウンこそが最上の命題であり、そのためにはエンジン直結モードを採用することはまかりならぬ」
常識的に考えれば、コストが 20万円上がっても、商品価格を 25万円アップすれば、それでもないないはずだ。それだけの価値があれば、ユーザーは喜んで金を払う。しかし日産の経営者は、そうは考えなかった。「コストが 20万円上がれば、それは会社の丸損になるから、断じてコストアップは許せない」と考えた。
そのあげく、どうしたか? エンジン直結モードを採用しないと決めた。ゆえに、エンジン直結モードなしでは e-POWER を販売することもできなくなった。すると、残るのは、CVT 車を売ることだけだ。しかしCVT 車は不人気なので、大幅値引きをするしかない。ゆえに、莫大な赤字を出すしかない。……かくて日産には、倒産以外の道は残らなくなった。(馬鹿丸出しである。)
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さて。上では、「まともな頭がなかったからである」と述べた。(→ ¶ )
これはいったい、どういうことだろう。どうしてまともな頭がなかったのだろう。これについては、私もよく理解できなかった。漠然と「社長が神学部卒だからだろう」と考えていた。
だが、今はAIというものがある。そこで、AIに質問してみたら、意外な真相がわかった。
Perplexity の回答
Q 日産の e-POWER がエンジン直結モードを備えないのはなぜか?
A 日産のe-POWERがエンジン直結モードを備えていない理由は以下の通りです:
1. コスト削減: e-POWERシステムは、直結モードを採用せずにコストを抑えることができます。
2. 社内の意思決定: 日産社内にe-POWER信奉者がおり、直結モードの採用を許可していないとされています。
おやおや。「日産社内にe-POWER信奉者がおり、直結モードの採用を許可していないとされています」だってさ。これはまた大変なことだ。
そこで典拠となる出典を見ると、こうある。
日産の中にe-POWER信奉者がいるらしく、直結モードを許さないという。
もう少し詳しく書くと、日産社内にも直結モード推進派はいるけれど、負けている。なぜe-POWERを支持するかとなれば、安いからだ。
e-POWERの直結モード付きを作らなかったのは日産経営陣最大級の失策だと思う。
( → [e-POWER]だけじゃ限界!! 高速燃費の悪さが超厳しい!! 解決策はあるのか? - 自動車情報誌「ベストカー」 )
書いている人は、国沢光宏という人なので、そこを疑問に思う人もいるだろうが、事実関係で嘘をつくことはなさそうだ。社内事情でそういう情報があるのだろう。社内事情については、私はまったく知らないのだが、国沢光宏ならば伝え聞くこともあるだろう。
だから、日産にはまさしく「直結モードを許さない」という方針の一大勢力があって、それが断固として、直結モードを排しているのだ。そして、その理由は、「コストダウン最優先」という方針なのだ。……私が推測したとおりに。
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私は前に、「社長が神学部卒だから」と述べた。しかし、より核心的には、次の事情があるようだ。
「コストダウン最優先の方針があり、そのせいで、必要な技術を搭載しないから」
これが日産の没落(そして倒産)の、本質的な理由であるようだ。
[ 付記1 ]
実は、このこと(コストカット至上主義)については、前にも述べたことがある。
やたらとコストカットばかりを狙うので、技術的には劣ったものを選択してしまう。「安かろう、悪かろう」ということだ。それが日産の方針だ。
コストカットを最優先にして、技術を軽視する。
部品の品質を見ても、「日産車はコストダウンばかりを優先して、品質がひどく悪い」と言える。
( → 日産が駄目になったわけ: Open ブログ )
「CVT はコストカットで5万円ぐらいコストカットできる」と思ったのだろうが、性能が悪いので、30〜50万円ぐらい値引きしないと売れない。コストカットの 10倍ぐらいの価値低下が起こった。ひとことで言えば、「安かろう悪かろう」である。韓国車よりも、はるかに低品質だ。
かくて、大幅値引きを強いられて、大赤字になった。これが真相である。
( → 日産没落と CVT: Open ブログ )
[ 付記2 ]
では、コストカットを唱えるのは誰か? AIに質問してみた。
Feloの回答
日産自動車の社内でコストカットを強力に唱える重役として、内田誠社長が挙げられます。彼は最近、全従業員の約7%にあたる9000人の人員削減を発表し、同時に生産能力を20%縮小する方針を示しました。
内田社長は、業績の大幅な悪化を受けてこのような厳しいリストラ策を実施しており、コスト削減を進めることが経営再建の重要な要素であると強調しています。
彼のリーダーシップの下、日産はコスト削減を進める一方で、競争力向上のための施策も模索しています。
ChatGPTの回答
日産自動車において、コスト削減を強力に推進している重役として、社長兼CEOの内田誠氏が挙げられます。内田氏は、2024年11月に発表された大規模なリストラ計画を主導し、グローバルでの生産能力を20%削減し、約9,000人の人員削減を実施する方針を示しました。
おやおや。巡り巡って、元の起点(社長)に戻ってしまったようだ。
無能な経営者ほどコストカットに邁進する、という見本かな。経営を帳簿で解決したがる。だから会社を崩壊させる。

コストもろとも、NISSAN を ぶった斬る。
そのあとに残るのは……

日産の残骸
[ 付記3 ]
ホンダは日産に「さらなるコストカット」を要求した。それでは内田社長と同じ穴のムジナだろ。
日産がカットするべきものは、コストじゃない。内田社長そのものをカットするべきだ。なのに、カットするべきものをカットせず、カットしてはならないものをカットしようとする。……それが内田社長の方針であり、ホンダの方針である(であった)。
同病相憐れむ。死なばもろとも。類は友を呼ぶ。似た者同士。
※ コストカット主義に良く似たものがある。癌細胞だ。自分がどんどん増殖するのと引き替えに、正常な細胞をどんどん食い潰していく。最終的には、正常な細胞が損なわれすぎて、生命そのものが死んでしまう。……これが今の日産の状態だ。(治療の方法はただ一つ。癌細胞を剔出することだ。それができなければ、日産は死ぬしかない。)
【 関連項目 】
→ 日産とホンダの破談: Open ブログ(前々項)
※ 本項は、上記項目の続編です。先にそちらをお読みください。
→ http://openblog.seesaa.net/article/505984464.html
これも参考になる。
※ 技術者を大切にしろ、という趣旨。
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一方、現状の社長は、COST も NISSAN も、ともにぶった切る。切り捨てる。
キリスト教 ならぬ 切り捨て教だね。