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日産とホンダの経営統合については、前にも論じた。
→ 日産とホンダの経営統合: Open ブログ
このときは、この経営統合がホンダにとっても有意義だ、と述べた。
日産とホンダが経営統合することは、日産に有意義であるだけでなく、ホンダにも有意義だ。特に、EV 技術の点で有意義だ。なぜなら、ホンダの EV技術はとても貧弱だからだ。
そこへ日産から提案があった。「鴻海に買収されるくらいなら、ホンダと手を結びたい」と。
ホンダにとっては、「渡りに船」だった。EV 技術が手に入らなくて困っていたと思っていたところへ、日産が丸ごと身売りしてくれるのだ。まるでカモがネギしょって来るようなものだ。大喜びで、日産買収という策に飛びついた。
( → 日産とホンダの将来 .2: Open ブログ )
ホンダにとっては、日産の株価が暴落した(4分の1になった)時点で経営統合すれば、日産という会社を4分の1の価格で買収するのも同然である。タダで入手するようなものだ。技術も丸ごと頂戴できる。こんなにありがたいことはない。
なのに、それをやめた。これではまるで、宝の山を捨てるようなものだ。いったいどうして、そんなことになったのか?
まったく不思議である。
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そこで、困ったときの Openブログ。どういうことか、わけがわからない人たちのために、解説しよう。
日産には宝の山があるが、その宝の山を手に入れるには、「日産を生かす」ということが必要だ。ところが日産は瀕死のありさまである。青息吐息で、息も絶え絶えだ。
ここでホンダはビビった。
「このままでは日産は死んでしまうかもしれない。もし死んでしまったら、せっかくの宝の山も、ただのゴミの山となってしまう。宝を生かすこともできないまま、すべてはゴミと化してしまうかもしれない。そうなったら、丸損だ!」
こうしてビビったホンダは、手を引くことにしたのだ。
では、その本質は何か? こうだ。
「ホンダは日産を生かすことができない。瀕死の日産を、治療して回復させるだけの経営指南の能力をもたない」
つまり、病気の患者を治す医者としての能力がない。瀕死の日産に対しては、「自力でリストラをして解決してください」と促すだけで、何もしない。あまりにも能力不足なのだ。
日産は無能な経営者のせいで経営が悪化したが、ホンダもまた同じく無能な経営者のせいで日産を救う方策を見出せずにいるのだ。だから、ホンダは手を引こうとした。
「こんなに症状の悪化した患者には、手を付けることができない。三流の医者である私の手には余る。下手に手を付けて、患者を死なせたら、ヤブヘビである。ならば、触らぬ鬼に祟りなし。三十六計、逃げるにしかず。さっさと逃げ出そう」
こうしてホンダは日産の惨状に恐れをなして、尻尾を巻いて、さっさと逃げ出すことにしたのだ。
それはどういうことか? 簡単に言えば、こうだ。
「ルノーにはゴーンがいたが、ホンダにはゴーンがいない」
ルノーにはゴーンがいたので、ルノーはゴーンを派遣して、日産を立て直した。
ホンダにはゴーンがいないので、ホンダはゴーンみたいな人物を派遣することができず、日産を立て直すことができない。……つまり、タマがないのである。タマがなければ銃を撃てない。だからホンダは手を引くことにしたのだ。
簡単に言えば、「ホンダは無能だったから」と言える。(経営面で)治療する医者としての能力もない。派遣するべきゴーンみたいな人もいない。また、日産のどこが問題で、どこを直すべきかも、皆目見当が付かない。あまりにも無能なのである。
とはいえ、ホンダにも美点はあった。それは「おのれの無能を理解できた」ということだ。つまり、無知の知である。「自分は日産を治せない」「自分は患者を治せない」「自分には能力がない」ということを、おぼろげに理解できた。正解が何であるかを理解することはできなかったが、自分が正解を知っていないということだけは理解できた。
なかなか賢明である。だからこそホンダは撤退を決めたのだ。みすみす宝の山を手に入れるチャンスを失うとしても、その宝の山を生かす能力がないのだから仕方ない。そういうふうに自分の無能さを自覚していたから、撤退を決めたのだ。
これが今回の破談の理由である。
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ここで読者は疑問に思うだろう。
「ホンダは正解を理解できないというが、正解とは何か?」と。
そこで教えよう。正解とはこうだ。
「日産の経営悪化の理由は、経営者が無能な人材ばかりだったことである。その最大の理由は、社内の英語公用語化だ。このせいで、技術のわかる人材は一掃されて、英語ペラペラの神学部卒みたいな無能な人材ばかりが経営者になった」
このことは、前にも述べたとおりだ。
日産は技術力のある副社長級(関潤)を追放して、かわりに英語力のある神学部の人物を社長にした。技術力よりも英語力で社長を決めた。結果的に、日産の経営は最悪の状態となった。生産量とシェアは激減し、利潤は赤字化し、ほとんど倒産寸前となった。そのすべては、技術音痴の社長のせいだが、それというのも英語力で社長を決めたからだ。
彼にとっては最良だったが、日産自動車にとっては最悪だった。英語力だけがあって技術力のない人材が社長になったからだ。
そのすべては「英語の社内公用語化」による。
※ バベルの塔の神話では、人類が天に届く塔を建設しようとした。だが、その傲慢さを見て、神が人々の言葉を混乱させ、互いに理解できないようにしたそうだ。言葉が異なれば、たがいに理解できなくなるからだ。……日産で起こった混乱は、そういうことなのだ。
( → 日産とホンダの将来 .2: Open ブログ )
ちなみに、日本人は英語ができないことは、次の記事でも指摘されている。
→ どこまでも「英語ができない」日本人に仏紙記者「英語を『死語』にする気?」 | クーリエ・ジャポン
「英語の社内公用語化」をすれば、日産の社員はみんな英語がペラペラになる……というのが狙いだったが、現実にはそうはならなかった。英語をしゃべれない大多数の技術者は発言権を奪われ、英語を口先だけでペラペラとしゃべる神学部卒の愚者ばかりが発言するようになった。こうして日産は愚者の口先によって経営されることになった。まるで神の託言で運営されるように。
その結果が、日産という会社の没落だ。
以上が真相だ。だから、この真相を知った上で、「英語の社内公用語化をやめる」というのが正解である。もしそうすれば、英語はできなくとも技術力のある人材が経営者になって、日産を立て直すことができただろう。
この正解を、ホンダは理解したか? 理解しなかった。だから、どう是正すればいいかもわからなかった。かくて、すべてを投げ出したのである。こうして経営統合は破談となった。
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実は、今回の破談を、私は前に予想したことがある。
関潤を招くしかなさそうだ。それ以外では、たぶん失敗する。
( → 日産とホンダを事前予想: Open ブログ:コメント欄 )
ホンダは関潤を招くことはなかった。だから、案の定、この経営統合は失敗に至った。上で予想したとおりに。
ただし、「実行してから失敗する」というふうにはならず、「実行に至る前にホンダが手を引いた」という形になった。この点では、ホンダは「自分の無能さを理解していただけ賢明だった」と言えるだろう。致命的な深手を負うことを避けられたからだ。
とはいえ、「宝の山を生かす」ということもできなくなった。日産の技術を手に入れられないホンダの前途は、真っ暗である。ホンダの選択は、最悪を回避しただけであり、最善だとはとても言えない。
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さて。ここで意外なニュースが飛び込んできた。
→ 鴻海会長、元日産・関潤氏に仏ルノーと接触指示 台湾報道 - 日本経済新聞
→ 台湾鴻海の幹部、日産に接触 協力を模索と報道:中日新聞Web
鴻海が関潤を取り込んだ上で、関潤経由で日産を呑み込もうとしているらしい。
仮にこれが実現すると、先の私の提案が生きることになる。
「鴻海の主導で、日産は関潤の経営に委ねられる」
すると、どうなるか?
・ 資本の点で鴻海の参加になることには不安になる。
・ 経営の点では関潤に委ねられることを大歓迎する。
おそらく、経営者は「追放される」と感じて不安になるだろうが、社員は「カリスマ経営者が戻る。落日の日産は一挙に復活する。日はまた昇る!」と大喜びするだろう。
これで状況は一挙に改善することになりそうだ。
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とはいえ、それはベストのシナリオではない。日産が復活するという点ではいいのだが、他の面では問題が生じるからだ。
・ 日本有数の企業が、台湾の鴻海の子会社になる。
・ ホンダが置いてきぼりになって、ホンダがつぶれかねない。
というわけで、美点はあっても、難点もあるわけだ。困った。どうする?
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「鴻海とホンダの共同出資にする。日産には鴻海とホンダが共同で出資して、この二社が親会社みたいな位置づけになる。ただし、圧倒的な出資者ではないから、純然たる親会社になるわけではない。日産はこの二社の影響を受ける系列会社となる。
一方で、日産の経営者として、関潤を迎える。これによって日産の経営を立て直す」
これなら、出資の面でも、人材の面でも、あらゆる問題が解決する。うまい案だ。
こうして日産の経営が改善すれば、日産の株価はやがて元の水準に戻る。そのときに株を売れば、鴻海やホンダは株価が4倍になって、大儲けできる。さらには日産の株が上昇して、8倍ぐらいに上がるかもしれない。
となると、それを見込むことで、鴻海やホンダは出資をためらわないだろう。
( ※ 日産とホンダは、相互に出資し合う関係になれば、ホンダは現金を出す必要もない。ただの株式交換だけで済む。)
これですべては、めでたしめでたしとなる。困ったときの Openブログ。
※ ただし現実には実現しそうにない。日産もホンダも馬鹿ぞろいだからだ。最善の選択をすることは、まず無理だ。彼らはたとえ正解を教えられても、それを理解するだけの知性がないのだ。(その点では、読者諸氏よりも、はるかに愚かである。)( MRJ の失敗を理解できなかった、三菱重工の経営者に似ている。)
[ 付記 ]
関潤が日産の後継社長になれなかったのはなぜか? 最有力候補だったのに、なぜそうならなかったのか? ルノーの反対があったからだ。
Feloの回答
関潤が日産の社長に就任することに反対したルノーの重役は、当時のルノー会長であるジャン・ドミニク・スナール氏です。スナール氏は、関潤氏よりもアシュワニ・グプタ氏を支持しており、最終的には内田誠氏が社長に選ばれる結果となりました。この選考プロセスでは、スナール氏の意向が強く反映されていたとされています。
ジャン・ドミニク・スナール氏が関潤の社長就任に反対した理由は、主にルノーの影響力と日産の経営独立性に関する懸念から来ています。
スナール氏は関潤氏が社長に決まりかけた際、指名委員会のメンバーの中で過半数を取れなかったことを理由に反対しました。結果として、ルノー側の推挙により、当初誰も推薦していなかった内田誠氏が社長に選ばれることになりました。この過程で、スナール氏は「能力が低い内田氏の方がルノーは御しやすいと判断した」との見方もあることから、スナール氏の意向が強く影響したとされています。
最後の推測は、妥当ではない。私が真相を教えよう。
関潤が反対されたのは、彼が正解を知っていたからである。「日産の病巣は、英語の社内公用語化だ。これを廃止する必要がある」と。
馬鹿には理解できなくとも、関潤は理解できた。技術者がまともに日本語で相談することもできなくなって開発が停滞している、と理解できた。だから彼は、「英語の社内公用語化をやめるべきだ」と判断した。
しかしこれはルノーにとっては絶対に認められないことだった。「英語の社内公用語化をやめる」というのは、「日産社内にいるルノーの技術者がすべて日産から追い出される」ということを意味するからだ。「これではルノーの技術者が日産の技術を盗む機会がなくなるので、ルノーが弱体化してしまう。それは絶対に認められない。ゆえに関潤を社長にしない!」と決断した。
結局、ルノーの支配体制の下では、「正解を知っている賢者が追放される」という運命になるのだ。かわりに「愚者が社長になる」ということになるのだ。そして、愚者の指導の下で、日産は愚者たる船頭もろとも沈没する。……それが日産の運命である。
ルノーに経営権を握られたとき、日産の運命もまた、嵐のなかの木の葉のようになってしまったのだ。
特許の壁はあるでしょうが技術は入手できます。
そうすればホンダは生き残り、日産は駄目になっても問題ない。
別に日産本体をホンダが抱え込む必要はない。
日産のコア技術を担当する技術者達を引き抜けばいい。
日産が激安で売られているのだから、日産を丸ごと買う方がずっとお買い得だ。
そもそも、ホンダには経営能力がない。金の卵を産むガチョウを飼っても、死なせてしまうのが関の山だ。
成功の可否は、まともな経営者(関潤)がいるか否かで決まる。いなければ、失敗する。
というのは日本企業では給与テーブルが決まっており、転職組がそれを破ることは許されないからです。
たとえそれが会社に数千億以上の利益を生み出すとしてもです。
それが日本企業でありホンダは純粋な日本企業だからです。
引き抜きはしたとしても給与はホンダ社内の給与テーブルに則った金額になります。
よって引き抜きは失敗する可能性が高くなります。
日本企業では転職組は出世しないので給与も転職時が最高額になります。
日産がよほど給与が低くならない限り難しいでしょうね。
そのタイミングが唯一のチャンスでしょうが、その時点ではホンダも足元を見て低い給与条件を出してくるでしょうから、結局日産の技術者は給与の高い外資系に移るでしょう。
愚かな日本企業の末路がこれから見れそうですね。
そうです。私もそう思ったけど、いちいち書くまでもないな、と思い直して、書かなかった。
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日産は2月、日産の子会社化を提案したホンダとの統合協議の打ち切りを決めた。だが、厳しい経営状況を打破するために態度を一転。日産関係者は、「完全子会社か分からないが、ホンダの出資を受け入れる方向で協議が進むだろう」と話す。さらに台湾電機大手の鴻海(ホンハイ)精密工業や日産が筆頭株主の三菱自動車を加え、4社での協業も視野に入れている。
https://business.nikkei.com/atcl/gen/19/00109/030300317/
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これは本項の提案に合致する。本文中では、こう述べた。
> 「鴻海とホンダの共同出資にする。日産には鴻海とホンダが共同で出資して、この二社が親会社みたいな位置づけになる。ただし、圧倒的な出資者ではないから、純然たる親会社になるわけではない。日産はこの二社の影響を受ける系列会社となる。
私の提案通りに、事は運んでいると言えるだろう。これが実現すれば、日産は立ち直せる。それよりもっと重要なのは、日産を取り込むことで、ホンダ自体を立て直せることだ。
朝日新聞の連載記事。
https://x.gd/ZzgUIJ