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外国人でも中長期の在住者には、マイナンバーが付与される。これは、健康保険証や年金料の納付のためにも必要だし、納税のためにも必要だから、当然だと言える。この点はすでに実現済みなので、問題とならない。
問題となるのは、外国人旅行者だ。数日から数週間の一時的滞在の間だけ、一時的にマイナンバーを与える、という案が考えられる。これはどうか?
(1) 外国人にとって
外国人自身にとって、新たに大きなメリットが生じる。次のことだ。
「現状では、外国人は、長期であれ短期であれ、常にパスポートの保持を義務づけられる。パスポートを保持しないで歩くと、逮捕されてしまう。これは文明的でない。ひどすぎる。そこで、小さなマイナンバーカードが交付されたあとで、これを保持することでパスポート保持のかわりとする。容易に保持が可能なので、利便性が高まる」
パスポートのサイズは 125mm × 88mm × 2.5mm ぐらいだが、マイナカードならば 85.6 mm x 54 mm なので、二回りほど小さくて、はるかに薄い。常時保有は簡単だ。そういうメリットがある。(本人にとって。)

(2) 国にとって
このようにマイナンバーを与えると、管理が容易だ、というメリットがある。外国人がどこで何をしているかを、マイナンバーで容易に把握できる。するとそのことで、外国人自身にもメリットが来る。たとえば、次のような例だ。
・ 宿泊時 (パスポートのかわりに提示する)
・ JRレールパスの購入 (同上)
・ 免税店で買い物 (手続きが容易)
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最後の「免税店でマイナンバーを使う」というのは、新たにメリットが生じる。なぜなら、現状では、次の問題が生じているからだ。
「中国から大量の観光客が来て、免税店で商品を買ってから、すぐに売却することで、消費税を免れる。こういうふうに消費税を免れることで、日本への旅費をまかなうことができる」
「中国人の観光客から免税品を購入することで、高額な商品(iPhoneやノートパソコンやカメラ)の消費税を免れる転売屋が多い」
こうして実質的に「消費税の脱税」が蔓延している。中国人の観光客と日本の転売屋がグルになって、各地で「免税」という名の脱税が横行しているわけだ。
他にも似た事例がある。
→ 東武百貨店、転売疑い客に不適切免税で消費税9000万円追徴…東京国税局 : 読売新聞
→ 免税品のたばこ販売で消費税を不正還付、コンビニ店舗の経営会社と代表告発…東京国税局 : 読売新聞
この問題(転売脱税)を回避するには、二つの方法がある。
・ 少額の免税額を設定して、その枠内で免税を維持する。
・ 免税を一切廃止する。
前者の場合には、免税店の利用を管理する必要が生じる。そのために、本項のマイナンバーが役立つ。(ただし、マイナンバーは必須ではない。クレカを1種類だけ使うことでも管理は可能だ。たとえば、銀聯カードで免税枠を設定して、その免罪枠の範囲内でのみ免税とする。)……なお、免税率は 100%でなく 50% ぐらいにしてもいい。
後者の場合には、免税が一切廃止となるので、脱税の余地はなくなるが、「買物を目的に日本に来る」というインバウンドの観光客数が減ってしまうという弊害があるかもしれない。……とはいえ、その心配をする必要はなさそうだ。現行では観光客が多すぎるという問題があるから、特に観光客を優遇する動機は減っているからだ。
実は、立憲民主党の議員が、この案を提言している。
立憲民主党の大西健介議員は、訪日外国人旅行客向けに消費税を免税する制度を廃止すべきだと政府に迫った。
「今、物価高に苦しんでいる国民から税金を搾り取るのではなく、日本に来て旅行を楽しめる余裕のある外国人の方に、本来払うべき税金をちゃんと払ってもらったらいいではないか」と指摘し、免税措置の廃止を求めた。
( → 【速報】立憲議員が外国人旅行客向け消費税免税措置の廃止を要求 石破首相は否定的|FNNプライムオンライン )
この案を聞いたときは、「ずいぶん過激だな」と感じたのだが、意外にも、評判はいいようだ。はてなブックマークは、賛同する声が多い。
→ はてなブックマーク
いろいろ考えると、過激そうに見えても、「免税枠を一切廃止する」というのが簡便で良いかもしれないね。
ただ、免税の件はそれで済むとしても、それとは別の理由で、外国人にもマイナンバーを付与した方がよさそうだ。
[ 付記1 ]
外国人にマイナンバーを付与するとして、いちいちカードを発行するのが大変だ、という心配をする人もいるだろう。
だが、大丈夫。カードの発行は簡単に済む。こうだ。
・ あらかじめ番号つきのカードを大量に用意しておく。
・ 発行時には、カード番号とパスポートを紐付けるだけでいい。
具体的には、次の処理を取るだけだ。
・ カードを一つ取って、そのカードのQRコードを読み込む。
・ パスポートの顔写真と番号を撮影して、画像化する。
あとは、「OK」をクリックして、両者の紐付けを完了する。発行完了。(そしてカードを旅行者に渡す。)
その後、路上で外国人を見かけた警官は、「パスポートを提示してください」と求めるかわりに、「旅行者用のマイナカードを提示してください」と求める。そこで提示された旅行者用のマイナカードを見て、QRコードを読み取ると、自動的にパスポートの画像が表示される。これでパスポートの確認が完了する。
カード自体には顔写真は印刷されていないのだが、QRコードによって顔写真の画像を呼び出せるから、顔写真は印刷されていなくてもいいのだ。
※ なお、その意味では、このQRコードの利用は、公開とするべきだ。つまり、警察官などの公権力者だけが利用できるのでなく、旅館関係者なども自由に利用できるようにするべきだ。(ただし他人の情報を無闇に公開するのは違法となる。個人情報保護法違反。)
[ 付記2 ]
本文中では「マイナンバーカードをパスポートのかわりの身分証明書として使用する」という方式を推奨した。
しかし Feloの回答 によると、このことは公認されていないそうだ。外国人は常にパスポートを保持していることが義務づけられており、これに違反すると逮捕される。
警察官 「パスポートを提示してください」
外国人 「パスポートは手にないので、マイナカードを示します。はい」
警察官 「いや。マイナカードではダメです」
外国人 「日本政府が発行した身分証明書だよ。それでもダメなの?」
警察官 「ダメです」
外国人 「日本政府が発行した身分証明書を、日本政府自身が認めないということ?」
警察官 「そうです」
外国人 「じゃ、日本政府が日本政府自身を信用しないということ?」
警察官 「そうです」
外国人 「自分で自分を馬鹿にするとはね。さすがに日本人だ。謙虚さも、度が過ぎるね」
警察官 「褒めてくれて、ありがとう」
外国人 「どういたしまして」
警察官 「だから、あなたを逮捕します」
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※ この問題の本質は何か? マイナカードそのものに欠陥があるということか? 違う。マイナカード自体が悪いのではなく、使う人の方に問題があるということだ。人がマイナカードをうまく使いこなせないのだ。……それも、カードを持つ本人が使いこなせないのでなく、政府の方が使いこなせない。上記の話もそうだし、デジタル庁の話もそうだ。いずれにせよ、政府自身が、マイナカード(もしくはマイナンバー)をうまく使いこなせない。