2025年01月22日

◆ 救急車の音が聞こえにくい

 救急車の音が聞こえにくいので困る……という声が上がっている。

 ──

 これは先月に話題になった。
  → マジで救急車音量上げてくんねえかな。交差点とか近づくまで存在気づかないしどの方向から来てるのかわからなくて困る→共感の声集まる - Togetter [トゥギャッター]
  → 救急車サイレン 昔より聞こえない?:中日新聞しずおかWeb

 昔の救急車は「ウーウーウー」だったが、今の救急車は「ピーポー」または「ティーフォー」に変わった。パトカーの「ウーウーウー」と区別するためだという。だが、一般車の対応が変わるわけでもないので、両者を区別する必要があるとは思えないのだが。
 その一方で、救急車の音は「聞こえない」という根源的な問題をかかえるようになった。「音を区別してもらうこと」が優先されて、「音が聞こえること」が二の次になった。これぞ、本末転倒の見本だろう。

 呆れた話だが、呆れているばかりではいられない。何とかしたいが、どうしたらいいのやら。……困った。どうする?





 そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。
 この問題は、科学的に考えれば、簡単に解決がつく。「科学の力で解決できる」と沢口靖子も言っている。

 解決の方法は? 次の2つだ。

 (1) 指向性

 音が聞こえるべき場所は、救急車の正面だけだ。前方の車にいる人が聞こえればいいのであって、それ以外の人は聞こえなくていい。(聞いてもうるさいだけだ。)
 なぜ前方だけかというと、前方に救急車が来るからだ。救急車が来る場所にいる車だけが対処すればいい。それ以外の場所にいる車は、何も対処しなくていい。だから、それらに音が聞こえる必要はない。
 では、「前方にいる車だけに聞こえる」ようにするには、どうすればいいか? そのための概念がある。「指向性」だ。この目的のためにあるのが「指向性スピーカー」だ。
 スピーカーが指向性を持つための方法は2つある。1つはホーン型スピーカーみたいに指向性のある形状をもつ方法だ。もう1つは、小さな発信体を平面状に並べる方式(フェーズドアレイ方式)だ。
 ともあれ、「指向性」という概念を導入することで、音の進む方向を限定できるので、聞こえる範囲を限定することができる。かくて、無駄に音量を高めすぎることもなく、聞こえる範囲でのみ十分に聞こえるようにすることができる。

 (2) 高周波と低周波

 もっとも重要なことは、周波数だ。なぜか?
 高周波の音は、ガラスを貫通しないで、ガラスに跳ね返されてしまう。だから、車の内部にいる人には聞こえにくい。そういう傾向がある。かくて、
 「救急車の音を聞く必要のある運転者は、車の内部にいるので聞こえにくいが、救急車の音を聞く必要のない歩行者には、うるさいほどにも大きな音が聞こえる」
 というのが、今の救急車の音だ。聞いて欲しい人には聞こえず、聞きたくない人にばかり聞こえる。本末転倒と言える。

 では、どうすればいいか? 高周波の音をやめればいい。中〜低周波の音にすればいい。このことは、次のページで解説されている。
 低〜中音域の音は、透過力が強いため……透過してきます。
( → 窓の種類と防音性能 / 防音の方法-アン・ノイズ

 だから、高周波の音をやめて、低〜中音域の音にすれば、ガラスを透過して、音が車室内にも聞こえるようになるのだ。
 「これが科学の力です」
 と沢口靖子ならば言うだろう。

 ──

 なお、パトカーの音と区別したいのであれば、パトカーの音よりも高くするのでなく、パトカーの音よりも低くすればいい。
 どんな音がいいかと言うと、「ボンバボンボン」というような音がよさそうだ。たとえば、こんなふうに。





 コストはどうか? 高音用スピーカーよりも、低音用スピーカーの方が高価格になる。スピーカーのサイズが大きくなるからだ。しかしその価格差は、救急車本体に比べれば、圧倒的に小さい。

 ※ 救急車本体は、約1,200万円から1,500万円だ。(特に高いと 2,900万円になる。) 一方、ベース車両となるハイエースだと、250万円〜420万円だから、およそ4分の1である。
 


 【 追記 】
 コメント欄で教わったが、新たに「コンフォートサイレン」というものができているそうだ。
  → 救急車に新サイレン音導入 不快感を軽減する“コンフォートサイレン”とは?【Nスタ解説】 | TBS

 特徴は
  ・ 音が低い
  ・ 和音で構成される
  ・ 使うのは夜間と住宅街で


 まあ、今よりはマシらしいが、これじゃ物足りないね。抜本対策になっていない。

posted by 管理人 at 22:54 | Comment(5) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
前方20mで90dB以上と、音圧の規定があるそうで。
対策として、コンフォートサイレンの救急車も徐々に増やされているようです。
高齢になると高音域が聞き取りにくくなる方もいて、低音ユニゾンが加わることで効果が高まるとか。

車の防音性が高く、車内で音楽をガンガンかけていたりするので、サイレンを爆音で鳴らしても聞こえない場合も少なくないかも。
Posted by けろ at 2025年01月22日 23:35
 情報ありがとうございました。
 これにしたがって、 【 追記 】 を加筆しました。
Posted by 管理人 at 2025年01月22日 23:57
外国の救急車は音量がもっと大きいです。
それと比べたら日本の救急車は音量が小さい。
なので日本の救急車ももっと爆音立てても良いかと。
Posted by 反財務省 at 2025年01月23日 13:12
 いちおう確認ですが、コンフォートサイレンは「モード」です。ですから、従来のモードと切り換えられます(実際、隊員が手動で切り換えているのを耳にします)。そもそも、救急車のサイレンは、昔みたいな(モーター)回転式ではなく電子式ですから、安価に何種類も搭載できるはず(本稿記載どおりにスピーカー特性を変えるのにはお金がかかりますが)。
 ですから、筆者ご推奨の「中〜低周波が高ゲイン」であるモードをあらたに追加することは、そんなに大変ではないでしょう。ついでにいうと、ナビの情報とサイレンとを自動で連動させるといいかもしれません。交差点の手前では従来モードで音量も大きく、住宅地ではコンフォートモードで、さらに夜間は音量も小さく、など。
Posted by かわっこだっこ at 2025年01月23日 13:18
あまり指向性を強くすると、丁字路を右から左に走る救急車に気づかない車が下から上の交差点に進入して衝突といったことが起こりやすくなるような気がします。

低音をブーストするのには賛成ですが、今でも「車は救急車に気づいて止まっているのに歩行者が我関せずで横断している」場合もあるので、高音を下げる必要はないと思います。
Posted by のび at 2025年01月23日 15:09
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