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近年の温暖化による気象異常で、ひどい豪雨による水害が多発している。その原因となる線状降水帯を、事前に予報できればいい。そこで半日前の予報を実現したい、という気象庁の努力があるが、難航している。
すでにスパコンを使って予報をしているのだが、あまりにも精度が低すぎて、まったくの役立たずだ。オオカミ少年ふうの、嘘つき予報となっているそうだ。
球磨川などが氾濫(はんらん)した、2020年7月の熊本豪雨などをきっかけに、気象庁は22年、線状降水帯の「半日前予測」を始めた。深夜や未明の豪雨のおそれを早めに知らせ、「自分ごと」として明るいうちの避難に役立ててもらうためだ。当時、「産学官連携で世界最高レベルの技術を用いた予測を開始する」としていた。
気象観測船などを使って、発生のカギとなる海上の水蒸気量を把握し、スーパーコンピューター2台で予測する。
ただ、現状は厳しい。昨年5〜11月に発生した19の線状降水帯のうち、予測通りの「的中」は81回中8回(約10%)と、当初の想定(25%)に及ばず、ブロック単位の発表時(的中は20〜40%台)も下回る。また、予測できないまま発生する「見逃し」も21回中13回(約62%)と、想定(50%)よりも悪い。
局所的な豪雨の予測は難しく、メカニズムの解明や海上の水蒸気観測も道半ばとされる。
( → (取材考記)線状降水帯発生 豪雨予測、信頼できる精度に 力丸祥子:朝日新聞 )
現状がひどいだけでなく、将来的にも解決の見込みが立たないようだ。これはどうしてかというと、「複雑性の科学」で説明されるとおりだ。つまり、「初期値の微小な違いが、最終的には大きな差をもたらす」という構造がある。その典型的な例は、いわゆる「バタフライ効果」だ。
「初期値の違いに応じて、結果も比例的に差が付く」
というのは、普通にありがちなことだが、気象の場合には、そうはならないことが多い。台風の進路でさえ、おおまかには予想通りになることが多いが、変に迷走する進路となることもある。なかなか予想通りにはならないのだ。
台風のような巨大現象でさえそうなのだから、線状降水帯という局所的な現象だと、なおさら予想は難しい。モデル的に示すと、こんな感じだ。
「暖気団と寒気団がぶつかって、前線を形成して、積乱雲を発生させる。やがて、特定の箇所で均衡が破れて、特に大量の積乱雲が次々と発生する。そのせいで、ここでは線状降水帯が発生する。
しかしながら、いつどこで均衡が破れるかは、事前に予想がつかない。長い前線のどこかがそうなるだろうとはわかるし、いつかの時点でそうなりそうだともわかるが、場所も時刻も予想がつかない。均衡が破れる箇所は予想がつかないのだ。
また、均衡が破れるかどうかも予想がつかない。たいていの場合は、ただの前線に留まるので、均衡が破れることもなく、普通の前線となっているだけだ。しかるに、特別な場合には、均衡が破れて、特に大量の積乱雲が次々と発生する。そうなるかどうかは、なかなか判定がしづらい」
なお、上の説明は、私の独自の説明だ。「均衡が破れる」という概念で、不確定性を説明している。
一方、既存の説明では、不確定性を説明していない。
そこで新たに、次の質問をした。
「線状降水帯の場所や時間に不確定性があるのは、なぜか?」
これへの回答は、Felo、Perplexity、Gemini では、似た回答であった。「状況の複雑さや、研究の未発達」を理由としている。
ChatGPT(無料版)では、もうちょっと詳しい回答が与えられた。
・ 上昇気流の発生場所が予測しづらい
・ 大気の不安定性が動的に変化するため
などが理由として指摘されている。
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ともあれ、現状では、線状降水帯の予報は精度が低いし、また、将来的にも精度が急激に急上昇する見通しもない。気象衛星を使うことで、いくらかは精度が上がりそうだが、データがいくらか増えたからといって、気象予報の精度が急激に大幅にアップするとも思えない。
要するに、現象があまりにも複雑すぎるので、精度の高い予報は、今も将来もずっと無理っぽいのだ。科学で予報の精度を上げたいのだが、現実にはそれは無理っぽいのだ。困った。どうする?
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そこで、困ったときの Openブログ。何とかしよう。何とかするとは、どういうことか? それはこうだ。
「線状降水帯について、予報はできなくてもいい。予報をするかわりに、被害を最小化すればいい。特に、死者を出さなければいい」
では、それにはどうすればいいか? その方法は? こうだ。
「大雨になったら、建物に入る。建物から出ない。特に、夜に自宅にいる場合には、自宅から出ない」
今回の山形の事例では、13時に大雨特別警報が発表されたが、この時点ではすでに線状降水帯が発生しており、大雨が降っていた。その後、夜にかけて、豪雨がずっと持続した。ただし、当初は豪雨のなかでも人は動けたので、夕方には人々は自宅に戻ったようだ。
ところが夜になって、自宅を離れた人がいた。自動車に乗って、氾濫した川にぶつかって、動けなくなった人が「助けて」と 110番をかけた。そこに向かったパトカーの警官2名が氾濫に巻き込まれて死亡した。
→ 救助する警察官が死亡: Open ブログ
また、豪雨のなかであえて戸外に出向いた人がいて、1名死亡、1名行方不明、という結果になった。
結局、建物の中にいた人は被害がなかったのに、建物の外に出た人に被害が生じた。
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台風のときにはよくあることだが、「大雨で田畑はどうなったかな?」と見に行って、大雨で流されて死んでしまう、という老人の例がある。
若者ならば足腰が強いので、足を取られるということはないようだが、無謀にも車で出かけて、立ち往生する、という愚行をする人もいる。(上記)
老人も若者も、豪雨のときに自宅から離れるから、水害に巻き込まれて死んでしまうのだ。
だから、大切なことは、線状降水帯を予報することではない。線状降水帯であろうがなかろうが、「豪雨のなかで建物から離れる」「わざわざ豪雨のなかに出向く」という愚行を、やめればいいのだ。それだけのことで命を救われるのだ。
では、それを啓蒙するには、どうすればいいか? 簡単だ。こう語ればいい。
「豪雨のなかの被災者には、救助活動はしません。警察も自衛隊も救援部隊も、出向きません。水に流された人は、自業自得だ。勝手に死になさい。死ぬのがイヤなら、建物から出ないでください。建物から出たら、死ぬと思ってください」
そう語ればいいのだ。
ひるがえって、豪雨のなかで救援に出向いたパトカーの警官は、正しい処置とは正反対のことをしていたことになる。……とはいえ、出向いたのは業務命令だった。だから、当の警察官には責任はない。業務命令を出した管理官にこそ、責任があると言える。あるいは、このような業務体制を構築していた上層部にこそ、責任があると言える。( → ¶ )
さらに言えば、「予報ばかりにとらわれている気象庁にこそ、最大の責任がある」と言える。
気象庁は「予報しよう」と努力するべきではなかったのだ。むしろ、「予報はできません。予報しても当たりません」と告げるべきだった。それこそが真に科学的な方針だった。そして、その上で、「予報は当てにならないのだから、各人が自己責任で安全策をとってください。外出しないでください」と告げるべきだった。
これが正解だったのだ。……困ったときの Openブログが、そう教える。
- ¶ 危険な状況では、救助よりも、二次災害を防ぐことが優先される。これは救助の鉄則だ。救助隊員において最優先の課題は、自分の命を守ることなのだ。……これができない組織は、自壊する。( → 別項 )
【 関連サイト 】
線状降水帯の発生メカニズムの解説(現行水準で)
→ 線状降水帯とは?定義や特徴、メカニズム、予報システムについて解説 | 地球の未来を宇宙から考えるメディア Beyond Our Planet

【 追記 】
田を見に行くのは、田の状況を見て介入・調整する必要があるからだ……という話。Perplexityによる。
→ https://x.gd/FpDIl
複数人でいっしょに行くことで安全を確保する、という案が示されていた。だが、私としては、別の案を推奨する。それは「あらかじめ救命胴衣を着衣して、溺れることを防ぐ」ということだ。これは有効だろう。
また、靴と衣服が一体化して完全防水になった用品(つなぎ みたいなもの)がある。ウェーダーと呼ばれるものだ。これを着用するのも手だ。
→ 80300 PVCウェダー | ワークマン
ただし、空気がある分、浮き輪みたいな効果が生じて、転びやすくなる効果もある。水深が深いときには、流されやすい。流速のある場所では、使うべきではあるまい。
なお、被害を放置しても、たいしたことにはならない。なぜなら、田んぼの水害には、「水害保険」が降りるからだ。損失の大部分を補填してもらえるので、たいした損害にはならない。死ぬよりはマシだ。
【 関連項目 】
別の地点(特に海上)で、人工降雨を起こす……というアイデアもある。
→ 豪雨対策: Open ブログ
《 加筆 》
名案を示す。
線状降水帯については、「発生する前に事前予報する」という手法よりも、「発生したあとに事後対策する」という手法の方がいいだろう。
事後対策とは、人工降雨のことだ。これによって、次のようにする。
「線状降水帯の発生が確認されたら、すぐに飛行機を飛ばして、人工降雨を起こす。特に、市街地を避けて、山岳地と海上で実施する」
すると、どうなるか? 豪雨のうち、初期の1時間ぐらいは、飛行機が間に合わないので、避けがたい。しかし、その後(1時間先よりも後)では、豪雨が激減する。このことで、積算降水量を激減させることができる。
ここでは、積算降水量を激減させることが重要なのだ。線状降水帯の被害は、瞬間的な豪雨によって生じるのではなく、それまでに降り続けた雨量の合計量によって生じるからだ。だから、発生を皆無にする必要はない。発生を途中で止めるだけで十分に間に合うのだ。
そのことを理解できずに、「発生の前に完全回避しよう」と狙う気象庁は、目的を間違えている。また、「予報すれば被害をなくせる」と思い込むのも、目的を間違えている。
被害をなくすには、真実を知ればいいのではない。降雨そのものを止めることが必要なのだ。大自然をつかさどる神のように。……そんなことは、通常は不可能だが、人工降雨に限っては、簡単に可能なのだ。なぜなら、初期値をわずかに変動させるだけで、状況を一変させて、大量の水蒸気を雨に転じることが可能だからだ。(それが人工降雨の原理である。)
複雑性の科学を手玉に取ることで、うまく対処できるのだ。うまい手はあるのだ。
これにて問題は完全解決する。(困ったときの Openブログ。)
( ※ 山形の事例では、線状降水帯の発生を発表したのが 13時で、パトカーが出動したのが 23時過ぎになってからだ。 10時間ある。この間に 豪雨の継続を止めれば、十分に間に合うことになる。)
大量の湿気を含んだ雲が局所的かつわずかなな気温低下で雨粒になると、それが引き金となってさらに広範囲、かつ大量の雨を引き起こすのではないでしょうか。最初の局所的でわずかな変化を予想することはスパコンでも不可能と思います。
一方、大量の湿気を含む雲がどこにどれだけあるかは観測、予想できるでしょう。それなら解決策は最初の引き金を人工的に起こしてやることです。昔ヨウ素剤?を飛行機から散布して雨を降らす実験が行われていました。これをやればあらかじめ予想された地域と時間に大雨を降らすことができると思います。スパコンより安上がりと思います。
この件、最後の 【 関連項目 】 の箇所を加筆しておきました。
見張ってないとやられます。
飛行機代はかかりますが、水害の多い日本ではどんどん実験すればよいのではないでしょうか。市街地やそれにつながる山地でなければ失敗しても雨が降らないだけです。
災害から逃げることも必要ですが積極的に立ち向かいたいです。
ヨウ素剤 => ヨウ化銀でした。
田を見に行くのは……という話。
名案を示す……という話。これで完全解決。
> 豪雨のなかの被災者には、救助活動はしません。
はっきり表明すると声の大きいクレーマーが殺到するので、公務員としては言い難いのでしょうね。クマ駆除クレームの対処さえ苦労しているようで。
多少の強権発動をしても、隣国のように内乱罪容疑で逮捕されるなんていうことはないので、言ってくれたらよいのですが。近い将来の防災庁長官とか。