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USスチールの買収禁止命令が出たことに、日本製鉄は反対声明を出した。
→ 米国政府による不適法なUSスチール買収禁止命令に反対する共同声明 〜日本製鉄とUSスチールは法的権利を守るためのあらゆる措置を検討中〜
日本製鉄は徹底抗戦する方針だ。だが、これは最悪の方針だと言える。やればやるほど、目標から遠ざかるからだ。
なぜか? 米国人はこう考えるからだ。
「日本製鉄はどうしても買収したがっている。ということは、それですごく儲けるつもりなんだ。ならばUSスチールは、買収されることで、儲けのタネを安く奪われてしまうことになる。日本製鉄が儲けるということは、USスチールが(買いたたかれて)損するということだ。日本製鉄が怒り狂うえば怒り狂うほど、買収禁止は正しかったことになる。日本製鉄は、もっと怒り狂え。ざまあみろ。けっ」
こう思って、腹を抱えて笑っているだろう。

だから、日本製鉄が怒り狂うえば怒り狂うほど、彼らは買収禁止を維持したがる。決して方針撤回はしないだろう。
上記リンクでは、「あらゆる措置を検討中」という方針を示したが、そんなことをすればするほど、かえって目的達成から遠ざかるのだ。日本製鉄のやっていることは、馬鹿丸出しと言える。
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日本製鉄は交渉術というものを理解できていないようだ。ポーカーでは、思っていることと表情とを、逆にする必要がある。
・ 手持ちの札に自信がないときには、自信たっぷりである表情をする。
・ 手持ちの札に自信があるときには、自信がちっともない表情をする。
つまり、弱いときには強いフリをして、強いときには弱いフリをする。こうして相手をだますことで、大きな利益を得る。
交渉術では、こういうふうにだますことが必要なのだ。
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USスチールの買収でも同様だ。日本製鉄が「ほしい、ほしい」という態度を見せれば見せるほど、米国民は「安値で買い取られる」と感じて、「これじゃ損する」と思い込む。だから結果的に、買い取りに失敗する。
では、どうすればいいか? 逆の態度を取ればいい。「ほしくない」という態度を見せればいいのだ。つまり、こうだ。
「買収禁止ですか。わかりました。受け入れます。違約金(890億円)も支払います。これは手切れ金です。これでもう関係はなくなります。USスチールは、あとはもう勝手にやってください」
こう発表すればいいのだ。これを受けて、米国民は「勝利した!」と大喜びするだろう。そのまま放っておけばいいのだ。
そして1週間後に、USスチールが発表する。
「日本製鉄への売却に失敗したので、事業が成立しない。ゆえに、工場をいくつか閉鎖する。同時に、人員も大量に解雇する。また、既存の人員は一律で3割の賃金ダウンとする。これに交渉の余地はない。もし労組がこれに反対する場合には、あらゆる工場を事業停止にする。跡地を他社に売却して、当社は事業を停止する」
「なお、手切れ金は払うぜ。日本製鉄からもらった 890億円を、退職金として払う。あの 890億円は、従業員の解雇のために、有効に使わせてもらう」
これに対して、当然、労組は大反対する。それに対して、USスチールはこう答える。
「買収禁止を求めたのは、労組よ、きみたち自身だろう。きみたち自身の言う通りにしたから、こういう結果になったんだ。君たちが反対するなら、反対しても構わない。わかった。当社は事業を停止する。跡地は他社に売却する。では、さらば」
このあと、米国内の鉄鋼の顧客が大声を上げる。
「USスチールが製鉄生産をやめたら、中国から大量の鉄を輸入するしかない。それでいいのか? 米国内の製鉄ができなくなっていいのか? 中国製品が大量に輸入されてもいいのか?」
ここに至って、USスチールの労組と米国政府は青ざめる。「どうしたらいいんだ?」とてんやわんやになる。そのまま時間切れとなり、バイデン大統領は退陣する。
その後にトランプ大統領が就任する。そしてこう声明する。
「愚かなバイデン大統領の方針を撤回する。日本製鉄による買収を認める。これですべては解決する」
これを受けて労組は圧倒的な支持を与える。
「トランプは偉い。製鉄業の労組の雇用を守った。バイデンは労働者の雇用を危機にさらしたが、トランプはその危機から労働者を守った。今後は、製鉄業の労働組合は、民主党支持をやめて、共和党支持に転じる!」
こうしてすべては解決する。そこで最後に、誰かが質問する。
「素晴らしい解決方法ですね」
「まあ、そうだね」
「こんなにうまい方法を、どうやって思いついたんですか?」
「それはね。えへへ。……困ったときの Openブログを見たからさ」(^^)v
[ 付記1 ]
買収に当たっては、名前の問題もある。「USスチールが、日本製鉄に買収される」となると、いかにも侵略される感じがある。印象が悪い。
買収後の名前を別の名前にすることを考慮するべきだね。たとえば、「USJスチール」とする。
※ 現行案は、USスチールの名前はそのまま残すが、子会社となるので、日本製鉄の傘下に入ることになる。この形はそれでもいいが、同時に、日本製鉄は名前を「USJスチール」、「パシフィック・スチール」、「スター・スチール」みたいな名前にするべきだ。
そうしない点で、デリカシーがないんだよ。要するに、コミュ障なんだ。だから、コミュ障のせいで、買収に失敗した。おのれの性格の悪さを自覚するべきなんだ。
[ 付記2 ]
相手の気持ちを考えるなら、USスチールのある都市であるピッツバークのことも考えるべきだ。特に、ピッツバーク・パイレーツを支援する方針を示すべきだ。
そうしない点で、デリカシーがないんだよ。要するに、コミュ障なんだ。だから、コミュ障のせいで、買収に失敗した。おのれの性格の悪さを自覚するべきなんだ。
まあね。日本製鉄の人々は、「おまえは人の心がないのか」と言われても仕方ない。それほどにも交渉術が下手すぎる。馬鹿丸出しとも言える。
[ 付記3 ]
ピッツバーグ・パイレーツのチームカラーは、イエローだ。
だったら、うまい手がある。ピカチュウを派遣するのだ。ピカチュウのマスコットを街中に大量に繰り出させて、「ジャパンと仲良くしよう。中国に対抗して、雇用を守ろう」と宣伝すればいい。これで問題は大幅に改善する。
人の心があるというのは、そういうことだ。
※ 任天堂には、適正な使用料を払えばいい。
[ 付記4 ]
この2社を、「ロミオとジュリエットみたいだ」と評した人がいる。親に反対されると、かえって恋が燃え上がる……という物語。そして最後は、暴走して、破滅する。
なるほど。この2社の運命を暗示しているね。たしかに現状のままでは、破滅に至るだろう。馬鹿丸出しとは、そういうことだ。
【 追記 】
本質を解説しよう。
今回の米国政府の決定は、米国および地元労働者の利害の観点からなされた。
一方、日本製鉄の主張(提訴)は、法的な権利の観点からなされた。そこで目的となるのは、自己の利害である。とすれば、日本製鉄が主張をすればするほど、「自己の利益のため」と見なされる。米国および地元労働者は、「あいつらが損すれば、おれたちが得する」と思って、「ざまあみろ」と思うようになる。日本製鉄が主張をすればするほど、逆効果になる。
これを正すには、どうすればいいか? 米国および地元労働者が、「買収は自分たちにも得になる」というふうに思わせればいい。逆に言えば、「買収しなければ自分たち破損する」というふうに思わせればいい。つまり、「現行ならば、工場閉鎖と大量解雇だ」という方針を出せばいい。
これが論理的帰結というものだ。利害の観点から言えば、これ以外に方法はない。
なのに、日本製鉄はそうしない。やるべきことをやれない。単に法的提訴をするだけだ。
簡単に言えば、日本製鉄は米国の法律事務所のカモになっているだけだ。何に目的も達せないまま、巨額の法的手数料だけを取られる。莫大な金を取られて、効果はゼロ。詐欺師のカモになっているのも同然だと言える。馬鹿丸出しだ。
やるべきことは、法律事務所に法的交渉を委ねることではない。自分たちが正しい経営判断をすることだ。なのに、自分たちが無能すぎるから、法律詐欺のカモになって、食い物にされるだけとなる。あまりにも愚かだ。
日本製鉄のやっていることは、バードストライクにあって墜落する飛行機みたいなものだ。正しい判断をすれば助かるのに、間違った場所に着陸するせいで、壁にぶつかって全員が死ぬ。愚かな経営者(パイロット)のせいで。ひどいものだ。
本質を示す。
トランプさんが買収阻止のために高い関税をかけて米国の鉄鋼価格を2倍くらいにしたらよいとUSS社員は思っているでしょうが、そうすると自動車などのほかの産業が打撃を受けるでしょうね。まあ米国は工業製品の輸出で儲ける国ではなくなっているのでそれでよいのかもしれません。
間違っていますか?
> アメリカの製造業全体の平均年収は約$68,585であり、USスチールの労働者の賃金はこの平均よりもやや低い水準にあります。
とのことだ。
下げる余地はないね。
※ 日本と比較するのでなく、国内で比較する。
平均でこれならすごい額です。米国の工業製品に競争力がないはずです。関税を上げてバランスをとれば米国民が貧しくなるだけという気もします。日本人の給料が安すぎるのでしょうね。
友人に米国からの年金で暮らしている人がいますが、円安と米国のインフレで10年前の2倍以上になったと喜んでいました。わが年金は実質減る一方なのに。
大統領権限による打ち切りの場合は契約履行は不可能になり契約交渉は法的に続行できません
その場合契約上日本製鐵側がUSスチール側に対して違約金支払義務が生じますので
今回日本製鐵は主訴として大統領令が連邦憲法に反するとして無効を請求し
予備的に主訴が認められない場合の損害賠償を請求しているのです
それはわかっています。だから本項では、法的手続きについては言及していません。それをやめろとも言っていません。
本項の内容は、理屈・言い分・交渉術の話です。法的手続きの話ではありません。
あなたは完全に誤読しています。
自分の言い分ばかりを書かずに、相手の話をまず理解しましょう。
「日本製鉄が怒り狂うえば怒り狂うほど、彼らは買収禁止を維持したがる。決して方針撤回はしないだろう」
ではブログから上記文言は削除すべきでしょう。
そもそも論として、交渉が不可能になった事態にもかかわらず交渉について論じようとする無知ぶりを私は問題視しているのです。
交渉は既に「終了」しているのです。
大統領令という形で命令を発した以上、米政府の方針撤回は法律上不可能なのです。
だからこそ日本製鐵は提訴に至ったのです。
あなた程度が考える交渉術などとっくの昔に経産省と外務省の協力のもと日本製鐵は試みています。
あなたの場合は誤読どころかご自身が何をお書きになっているのか、その内容自体を理解できる知性すら持ち合わせていらっしゃらないのだということだけはこのブログから読み取れました。
ちゃんと文章を読みましょう。
> 大統領令という形で命令を発した以上、米政府の方針撤回は法律上不可能なのです。
その大統領をクビにしてしまえば、方針撤回は可能です。それが現状でしょ。
繰り返しになりますが不可能です。
であるからこそ日本製鐵は提訴に至っています。
連邦憲法上既発の大統領令は大統領では撤回できず上下院の議決と連邦最高裁の承認が必要になります。
しかし連邦最高裁による違憲判決に持ち込めば、直で大統領令が無効になるのです。
新たに再申請してから、それを新大統領が承認すればいい。