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羽田空港で海保機の事故が起こったのは1年前の1月2日だ。そのときも論じた。
→ 羽田で航空機炎上: Open ブログ
→ 羽田の事故の原因: Open ブログ
能登向けの救援物資を積んだ海保機が JAL機に追突された。
その根本原因は、羽田の過密状態だ。もともと超過密なところに、さらに突発的にイレギュラーな海保機を割り込ませたから、てんやわんやとなったすえに、事故が起こった。起こるべくして起こった事故だと言える。
こんな馬鹿げたことはやめるべきだ、というのが、そのときの結論だった。
→ 災害時は救援物資を止めよ .1: Open ブログ
→ 災害時は救援物資を止めよ .2: Open ブログ
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さて。それから1年たった現時点で、朝日新聞が検証記事を書いている。その趣旨は、本サイトと同様で、「過密状態が根源だ」というもの。本サイトと同じ視点をとっているので、物事の本質を見抜いていると言える。さらに新聞社の取材力を発揮して、現状を詳細に報じている。
360度ガラス張りの管制室では、管制官11〜15人が交代制で24時間業務にあたっている。
羽田はピーク時は1分間に1.5機が離着陸する世界有数の過密ダイヤだ。敷地の制約から4本の滑走路が井桁状に配置され、離着陸機が複雑に交差する。風向きや時間帯で使用する滑走路も変わるため、離着陸を担当するタワー管制官は最大で10機を同時に調整することもある。「複雑なパズルを解き続けるような世界」だ。
極度の集中力が必要なため、滑走路を監視しながら航空機も監視する。「ピーク時はあらゆる情報から瞬時の判断が求められ、常に頭をフル回転させている」と話す。
夕方の混雑時となれば、パイロットとの交信や管制官同士のやり取りが常に飛び交う。
交信の内容、声色、気象情報などのわずかな変化に注意を払い、自分が担当する滑走路の離着陸順や間隔の想定をするという。
( → 「複雑なパズル解くよう」10機同時調整も 羽田事故1年、管制官は [日航機・海保機事故]:朝日新聞 )
ものすごく大変な世界だ、とわかる。できればAIによる管理を望みたいところだが、それも難しそうだ。
となれば、現実的な解決策はただ一つ。こうだ。
「イレギュラーな運航を極力排除する。スケジュールを(定型的な)ルーティンに落とし込んで、突発的な運航を挿入しない」
こういうふうにすれば、事故の危険性は著しく低下するはずだ。これが最も現実的な対策だろう。「海保機を調布飛行場へ」という提案も、この一環となる。
→ 海保を調布飛行場へ: Open ブログ
※ ただしこれを実現するには、調布飛行場の滑走路の延長工事が必要だ。それは、あまり難しくはないが、ある程度の費用と時間がかかる。即時的にはできない。
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羽田空港でイレギュラーな運航が多いのは、政府の「規制緩和」が原因だ。
小型機の運用枠は、原則として昼間のみだったが、2016年から夜間飛行も可能になった。便数は倍増して1日 16機となった。
→ 羽田空港におけるビジネスジェットの発着制限緩和
政府の公用機や、報道用の飛行機も、ここに含まれる。
ともあれ、「規制緩和」という方針で、金のことばかりが優先されて、安全性は軽視された。どれほど危険が増しても、「儲かればいいさ」という理屈で、イレギュラーな運航をどんどん突っ込むようになった。もともとは危険な夜間には飛ばせないはずが、危険な夜間にも飛ばせるようにした。何から何まで、徹底的に安全無視だ。
だから事故が起こった。
ここをきちんと理解するべきだ。羽田空港の危険な過密状態は、たまたまそうなっているのではなく、意図的にそうなっているのだ。あえて事故を起こしやすいようなシステムになっているのだ。目先の金儲けのために。
羽田の事故は、運や偶然や勘違いが理由で起こったのではなく、悪魔的な我欲ゆえに起こったことなのだ。人々が「金がほしい、金がほしい」と望んだから起こったことなのだ。
その結果、人々はまさしく金を得たが、かわりに命が危険にさらされた。JAL 機の乗客は死者ゼロで済んだが、海保機の乗員は死者5人となった。大量ではなかったが、やや多数の人命が失われた。その理由は、人々が「金がほしい、金がほしい」と望んだからなのだ。
規制緩和というのは、そういうものなのだ。それを人々があえて望んだ。だから、事故は起こった。
韓国の事故は愚かな無知ゆえに起こった。日本の事故は悪魔的な我欲ゆえに起こった。「規制緩和」という名で。
[ 付記1 ]
長期的な対策としては、「横田飛行場の返還」という案が考えられる。これだと、羽田空港の混雑度は大幅に減る。特に海外便は、横田空港が主力になりそうだ。抜本的対策となりそうだ。
横田空港は、武蔵小杉からは交通の便がいいので、東京南部や神奈川の人には、成田空港よりも使いやすい。
[ 付記2 ]
横田基地をそのまま返還させると、米軍が文句を言う。「一方的譲歩はできない!」と。
そこで、代償として、宮古島の基地建設をして、そこに飛行場と空域を与えればいい。宮古島に航空基地ができると、台湾有事に対応できるので、米軍にはありがたい。
日本としても、沖縄の米軍基地を、辺野古でなく宮古島に移転させることができれば、辺野古移転問題が一挙に解決する。
交通の便、ホントに良いですか???
まさか、武蔵小杉から南武線利用で立川→青梅線で拝島方面に行く経路ですか?
そうです。ただし制度改革が前提。
現状では、武蔵小杉から福生駅まで、快速で乗車 50分、乗り換え待ち 13分。660円。これを直通の特急にすると、40分、1200円ぐらいにできる。
武蔵小杉から羽田までは、直通のリムジンバスで 50分。鉄道は 35分だが、乗り換え1回が必要で、面倒臭い。距離は短いが、時間と手間が長いので、横田よりも不便だ。
成田はメチャクチャに金額が高い。
羽田は過密なので、早朝にしか国際便の便を取れないこともある。また、過密なので航空便料金がとても高い。横田発ならば、昼間や夕方や夜に出発できて、料金も2割安になりそうだ。例。15万円が 12万円に。
p.s.
横田基地駅は新駅を設置するが、最新のIT技術を使うことができる。駅に着いたら、ほとんど歩くこともなく、そのまま飛行機に乗車できる、というシステムを構築できそうだ。乗機の所要時間を1時間ぐらい短縮できそうだ。うまくやれば。
横田基地は少なくとも滑走路は十分長いですね。日本返還の可能性はあるのでしょうか。軍事的に見ても東京に近すぎるし、外国からの攻撃目標になるので怖いのは確かです。木更津沖に関空のような海上空港を作ればよいとも思います。