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羽田の海保機の事故について、経過報告書が出た。
羽田空港の航空機衝突事故をめぐり、国の運輸安全委員会が経過報告書を公表した。海上保安庁機、管制官、日本航空(JAL)機の3者に何があったのか。報告書からは、様々な要因が重なった状況が浮かび上がる。
運輸安全委は
(1)海保機が管制官から許可が出たと考えて滑走路に進入した
(2)管制官が海保機の進入に気づかなかった
(3)JAL機が海保機に気づかずに着陸した、
という3者の要因が重なって事故が起きたと考え、調査を進めている。
JAL機が滑走路上の海保機に気づけなかったのもいくつかの要因が重なったとみられる。
事故当時は日没後で月も出ておらず暗い状況で、こうした状況から視認できなかった可能性がある。
( → (時時刻刻)衝突・脱出、重なった要因 羽田事故、運輸安全委が経過報告:朝日新聞 )
読売新聞の「要旨」もある。
→ 羽田空港衝突事故、運輸安全委員会による経過報告書の要旨 : 読売新聞
報告書は下記だ。
→ 羽田事故、経過報告書( PDF、18MB )
気象状況はこうだ。
2024年1月2日の羽田空港の日没時刻:午後4時38分50秒
事故の発生時刻:午後5時47分
日没後、1時間以上を経過している。このことから、地上はかなり暗かったとわかる。
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さて。報告書では、いろいろと原因を解明している。私もこの件で、前に考察したことがある。
→ 羽田の事故の原因: Open ブログ
その後、こうした原因解明はすべてナンセンスだ、と結論した。
→ 災害時は救援物資を止めよ .1: Open ブログ
直接の原因としては、何らかの人為ミスがいろいろと考えられる。だが、それらの人為ミスを探っても、意味がないのだ。
いずれにせよ、何らかの勘違いや聞き違いなどの人為ミスがあったことになる。
ただし、こういう人為ミスが起こったことの直接の原因は個人に帰するとしても、こういう人為ミスが起こりやすくなった状況こそ、本当の原因であるはずだ。
(i) 超過密の羽田空港
(ii) イレギュラーな臨時便の追加
この二点が真の原因であると言える。(前項で述べたとおり。)
前項というのは、こうだ。
「あり得ない事故だ」。日航機と海上保安庁の航空機が衝突、炎上した事故を受けて、専門家らは一様に衝撃を受けた様子だった。
「ありえない」なんて言っているが、現実には起こったのだから、「ありえない」ことはない。
むしろこれは「起こるべくして起こった」というのが、私の評価だ。専門家とは正反対の評価を下す。理由は、こうだ。
「羽田はただでさえ超過密だ。なのに、イレギュラーな臨時便を突っ込めば、事故の確率が上がるのは自明だ」
( → 羽田で航空機炎上: Open ブログ )
要するに、この事故の根本原因は、現場におけるパイロットや管制官の不注意・勘違いという人為ミスではなくて、「羽田から救援物資を送る」という上層部の判断ミスにあったのだ。
能登に羽田から救援物資を送る必要はまったくなかった。なのに、過密状態の羽田において、あえて夜間に臨時便を突っ込むという、イレギュラーな対応をした。災害への対策をするためという名分で、あえて災害を起こすような危険な対応をした。……このような上層部の判断ミスが決定的な理由だった。
それはいわば、「八甲田山 死の彷徨」と同様である。ノモンハン、インパール、といった失敗と同様である。上層部が決定的に判断ミスをしたせいで、大量の犠牲者が生じた。それと同様なのだ。
※ 最近でも、「那須の雪崩事故」という事例があった。ここでも上層部の責任で事故が起こった。
→ 雪崩事故の責任は?: Open ブログ
とにかく、羽田の事故の原因は、現場の人為ミスなんかではなく、「飛ばさなくてもいい救援機を無意味に飛ばした」という上層部の判断ミスのせいなのだ。災害が起こって大変なときに、あえて災害を起こすような真似をして、どうする。
災害が起こったときには、これ以上の災害が起こらないように、安全策をとる必要がある。なのに、無謀に危険な行為をしたから、事故が起こったのだ。二次災害みたいなものである。
これを教訓として、災害時には無駄な救援活動をしないよう、厳に戒める必要がある。
→ 災害時は救援物資を止めよ .2: Open ブログ
→ 海保を調布飛行場へ: Open ブログ
本件では、改めて調べたところ、海保機が向かう先は(小松空港でなく)新潟空港だった。呆れる。能登からの直線距離で言えば、新潟空港も羽田空港も大差ない。また、新潟空港から能登に向かうには、延々と長大な距離をたどる必要があるので、航空機を飛ばす意味はほとんどない。どうせなら、小松空港に向かうなら、まだわからなくもない。また、小松空港からヘリを飛ばすのなら、まだわからなくもない。一方で、東京から新潟空港に救援物資を送るなんて、ほとんど意味のないことだ。やるだけ無駄。単に事故の危険を増やすだけだ。
羽田から飛行機を飛ばすのは馬鹿げている。富山市と金沢市から、簡単に陸路で送れるのに、なんで羽田から飛行機で送るんだ。馬鹿馬鹿しい。
( → 災害時は救援物資を止めよ .2: Open ブログ )
救援物資を届けるために、最も重要なことは何だったか? 陸路で物資を運ぶことだった。
ところが、現実には、それができなかった。なぜか? 陸路では道路が渋滞で通行不能になったからである。ではなぜ渋滞になったか? 大量の乗用車が押し寄せたからだ。近場の子供たちが、能登にいる老いた親を救おうとして、大量に押し寄せた。そのせいで、道路は渋滞して、救援物資を運ぶことはできなくなった。
当然だが、羽田から新潟に救援物資を運んでも、陸路が渋滞していたので、救援物資が届くことはない。むしろ、渋滞がひどくなっただけだろう。
このとき、政府は何をするべきだったか? こうだ。
・ 交通規制をする。乗用車を通行禁止にする。
・ 救援のトラックや緊急車両だけを通行可能とする。
・ トラックの帰途では、荷台に避難者を乗せて、域外避難させる。
・ 荷台に人を乗せるのは違法なので、緊急措置で許可する。
このようにするべきだった。そうすれば、渋滞もなく、無事に陸路で救援物資を届けることができただろう。
しかし現実には違った。
・ 羽田から飛行機を飛ばそうとして事故を起こした。
・ 陸路では乗用車を規制せずに、渋滞を招いた。
・ 陸路ではトラックも緊急車両も届きにくかった。
・ 救援物資も医者もなかなか届かなかった。
・ 全体を統率する司令部もなく、混乱の極みだった。
これが、その当時に起こったことだ。
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当時の渋滞状況については、本サイトも言及した。
この「写真情報」を見ると、こうわかる。
「ものすごい渋滞が生じているが、往路の車線だけであり、帰路の車線はガラガラである。また、一般車両(乗用車・軽自動車)が大半を占めており、緊急用の物資トラックは少ない」
自称ボランティアみたいな人が わんさと押しよせるせいで、肝心の食料や水を積んだ物資トラックは、現地に届きにくくなっているようだ。
→ 道路渋滞が救助・救援の遅れに直結 馳浩知事「緊急車両が最優先と理解を」:東京新聞
( → 人命よりもペットが大事?: Open ブログ )
渋滞が続いていることについては、下記記事もある。
→ 道路通行の状況(能登) .2: Open ブログ
地震から1カ月ほどたった1月末ごろになっても、能登では渋滞が解消しない。この時点でも政府はいまだに交通規制をしていないからだ。そのせいで、道路は一般車両の乗用車(特に軽自動車)がわんさと押し寄せて、延々と渋滞が続いている。当然ながら、災害救助のために必要なトラックはまともに通れないし、電気や水道を復旧する人もなかなか現場に到達できない。現場で作業する時間は短く、渋滞で道路上を亀のように動いている時間ばかりが長いようだ。無駄の極み。
事故は起こすし、作業は低能率。阿呆の極みと言える。……そのすべては、司令部たる防災庁が存在しないからだ。かくて日本は、頭のない巨人のようになった。(海保機の事故は、その結果だ。)
人的なミスは完全には避けられないので、駅のゲートのようなものを設置すべきだと思います。費用は知れているはずです。
飛行機がどうしてあんなに燃えるのかわからなかったのですが、炭素繊維でできているのですね。自動車はどうして炭素繊維を使わないのでしょうか。コストの問題かな。
通行止めにする停止灯がもともと設置されていたが、老朽化のせいで工事中で、このときは運用停止されていたそうだ。
> 駅のゲートのようなものを設置すべき
停止灯が設置されていたので、運用停止されていなければ、大丈夫だったでしょう。
安全装置が働かない状態で使っている、というデタラメさがひどいね。