技術的な話の続き。
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セダン撤退をやめる?
日産は北米市場でセダンの販売から撤退する見込みである。
→ 日産が北米市場から撤退: Open ブログ
これはやむを得ないとも言える。
・ CVT 車は悪評で売れない。
・ e-POWER はエンジン直結がないので売れない。
・ 売れる車がないから販売停止。
・ 小型車用のエンジンも、直四のまともなエンジンがない。
こういう理由で、北米のセダン市場から撤退する見込みである。
ところが、ホンダと経営統合する。すると、上の問題は解決しそうだ。
・ CVT はホンダの CVT に変更できる。(ATもあるようだ。)
・ e-POWER にはホンダのエンジン直結方式を採用できる。
・ 直四のエンジンもホンダから供給してもらえる。
・ エンジンとCVT のユニットを供給してもらうこともできる。
このようにすれば、セダン市場から撤退しなくても済みそうだ。
なお、V6 の上級車は、ジヤトコの9速AT を使えばいいだろう。
セダンと中国市場
日産は北米ではセダンから撤退する見込みだ。(上記)
しかし、北米はそれでいいとしても、中国はそれだとまずい。というのは、日産の中国市場の主力は、セダンだからだ。特に、シルフィとアルティマ(旧称ティアナ)だ。北米のセントラとアルティマがなくなると、中国のシルフィとアルティマもなくなり、中国市場から撤退することになる。それはまずいんじゃないの?
日産は電気自動車で生き残るつもりらしいが、アリアもろくに生産できていないくせに、どうするつもりなんだ。
あ、わかった。日産には売れ線の EV がある。それは…… サクラだ。(日産はこれだけに頼って生き残るつもりかもね。インドのタタ・モーターズみたいに。)
EV 技術
日産とホンダが経営統合することは、日産に有意義であるだけでなく、ホンダにも有意義だ。特に、EV 技術の点で有意義だ。なぜなら、ホンダの EV技術はとても貧弱だからだ。
前にも述べたが、ホンダは燃料電池車に社運を賭けて開発したが、その賭けには失敗した。一方で、EV 開発には注力しなかった。結果的に、EV の技術がないのだ。下記で詳しく説明したとおり。
→ トヨタ・ホンダの大失敗 (EV): Open ブログ(2017年04月20日)
→ ホンダの EV 戦略失敗(教訓): Open ブログ(2023年12月17日)
後者の項目では、こうも記している。
※ 仕方ないので、GM と協力して、GM の EV 技術を与えてもらう予定だったが、その GM の EV もひどい状況だと判明したので、アテがすっかりハズレてしまった。もはやどうにもならない。どん詰まりというありさまだ。哀れ。
ホンダはどこにも頼るすべがなくなったので、仕方なく、日産に泣きついた。そこで日産と EV 開発で業務提携したのが、今年の8月だ。
これでやっとホンダも一息ついた……と思えたが、どうやら日産が技術の出し惜しみをしたらしい。ホンダは EV 技術をもらえなかったようだ。まあ、そりゃ、そうだよね。ライバル会社に虎の子の技術を開示するはずがない。いくら業務提携したからといって、大事な技術を出すはずがない。ホンダは、当てはずれ。がっかり。「日産が EV 技術を出してくれない。困った。どうする?」
そこへ飛び込んだのが、「日産が鴻海に買収されそうだ」というニュースだ。これは寝耳に水だ。こうなったら日産の EV 技術はすべて鴻海のものになる。ホンダは蚊帳の外になる。そいつはまずい!
そこへ日産から提案があった。「鴻海に買収されるくらいなら、ホンダと手を結びたい」と。
ホンダにとっては、「渡りに船」だった。EV 技術が手に入らなくて困っていたと思っていたところへ、日産が丸ごと身売りしてくれるのだ。まるでカモがネギしょって来るようなものだ。大喜びで、日産買収という策に飛びついた。(ただし実質は買収だとしても、相手のプライドを傷つけないために、持株会社方式で対等合併の形を取ることにした。その持株会社はホンダのものなのだから、実質的にはホンダによる買収なのだが、そこをうまく誤魔化しているわけだ。)
ただ、日産にとっても、これは悪い話ではない。今のままでは金がまるきりないので、研究開発費も大幅に削らなくてはならない。そうなると、EV 開発もできないし、全固体電池の開発もできない。じり貧になって、会社が将来的につぶれかねない。
ホンダと経営統合すれば、そういう問題が一挙に解決するわけだ。( EV 技術を売却すれば、技術売却費も得られそうだ。)
ルノーとの関係
日産がホンダに買収されるとしたら、ルノーとの関係はどうなるか?
目先の報道では、「鴻海がルノーのもつ日産株を買い上げようとしている」と報じられているが、これは意味がない。ルノーが売却するには、日産の許可が必要だという条項があるからだ。当然、日産は拒否するので、ルノーは鴻海に売却できない。たぶん、日産かホンダか、どちらかがルノーのもつ日産株を買うことになるだろう。
ルノーと日産は2023年、資本関係の対等化に合意。ルノーは日産株の約43%を保有していたが、信託会社を通じて段階的に売却して15%まで下げることになっており、今年10月末時点では約17%をルノーが直接保有する。約19%は信託会社がまだ管理しており、ホンハイが取得を目指しているとみられる。ただ、合意では売却にあたって日産が「優先的な地位を有する」とされている。
( → 日産出身の鴻海幹部、渡仏 ルノーの日産株買い取り交渉か:朝日新聞 )
という朝日の記事もある。
さて。ルノー本体の将来はどうか? Feloの回答 では、こうある。
ルノーのガソリン車事業は、中国の自動車メーカーである吉利(Geely)に売却される計画が進行中です。2023年7月11日、ルノーと吉利は、ガソリンエンジンおよびハイブリッド技術を開発するための合弁会社を設立することを発表しました。
ルノーのガソリン事業は中国に買収される。とすれば、ガソリン車の分野では、ルノーと提携を解消するべきだ。ルノーとはもはや「手を切るべし」と言える。社内にルノーの技術者を駐在させるなんて、もってのほかだ。その技術者はもはやルノーの社員ではなく、ルノーと中国会社の社員なのだ。
社内英語公用語化
日産の社内からルノーの社員を追放すれば、「社内の英語公用語化」という策も、もはや必要なくなる。これが最も重要だ。なぜなら、このことゆえに日産は崩壊したと言えるからだ。
日産の「社内の英語公用語化」については、前にも言及した。
日産は、社内の英語公用語化を推進した。それで社員は英語をぺらぺらと話している……というふうに聞いていたが、実はそうではなかった。
英語の社内公用語化を推進したら、社員は英語がペラペラになったのではなく、英語ができないまま口を噤んでしまったのだ。
日産で活性化したのは、上級職に当たる経営会議の外国人だけだった。日本人社員は口を閉じてしまったし、それ以下の専門技術者も蚊帳の外になってしまった。
そもそも大切なのは、英語力じゃなくて、技術開発力だ。英語力なんて、二の次だ。そんなこともわからないバカ社長だから、英語でゴーン CEO と会話することばかりに熱中して、日本人の優秀な技術者と会話することができない。そのせいで、日産の技術開発力は大幅に低下してしまった。ホンダやマツダが素晴らしい技術開発力を発揮しているのに比べて、最近の日産は目を覆いたくなるほどひどい。それというのも、技術開発より、英語力アップなんかに熱中しているからだ。
日産の社長に進言しよう。それほど英語力が大切ならば、文学部・英文科か、外国語学部・英語学科から、社員を採用すればいいのだ。そして、技術力なんかは無視すればいいのだ。日産で出世するために必要なのは、技術開発力ではなくて、英語力なのだから、英語力の高い社員ばかりを採用すればいいのだ。そうすれば、企業はどんどんグローバル化する。
最終的には? 日産は、倒産して、外国企業に買収される。
( → 英語の社内公用語化は?: Open ブログ )
最後に述べたことは皮肉だったが、この皮肉はほとんど現実と化しつつあった。日産は技術力のある副社長級(関潤)を追放して、かわりに英語力のある神学部の人物を社長にした。技術力よりも英語力で社長を決めた。結果的に、日産の経営は最悪の状態となった。生産量とシェアは激減し、利潤は赤字化し、ほとんど倒産寸前となった。そのすべては、技術音痴の社長のせいだが、それというのも英語力で社長を決めたからだ。
Feloの回答
質問:
日産自動車の内田社長は、学生時代に、英語力を高める経験があったか?
回答:
日産自動車の内田誠社長は、学生時代に英語力を高める経験がありました。彼は幼少期にエジプトで過ごし、その後中高時代をマレーシアで過ごしました。このような国際的な環境での生活が、彼の英語力を大いに向上させる要因となったとされています。
特に、マレーシアではインターナショナルスクールに通っていたため、英語を日常的に使用する機会が多く、流暢な英語を身につけることができました。また、エジプトでの生活も異文化理解を深める貴重な経験となり、これらの経験が彼の国際的な視野や多文化への適応能力を育む基盤となったと述べています。
内田社長は、こうした背景を持つことで、後のキャリアにおいても英語を駆使し、国際的なビジネス環境でのコミュニケーション能力を発揮しています。
立派なものだ。英語力の関する限り、(ネイティブではないが)満点に近い英語力があったと言えるだろう。だからこそ彼は、日産自動車の社長になれた。人間の出世物語としては最良だと言える。
しかし彼にとっては最良だったが、日産自動車にとっては最悪だった。英語力だけがあって技術力のない人材が社長になったからだ。
そのすべては「英語の社内公用語化」による。ゴーンの置き土産だ。
虎は死して皮を残す。ゴーンは逃げてクソを残す。そのクソを拭おうともしないで、クソをありがたがって、いつまでも身にまとっている。かくて日産はいつまでもクソまみれなのだ。……それがつまりは、「英語の社内公用語化」だ。
ホンダが来れば、このクソを除いてくれるだろうか?
それとも、ホンダも気持ち悪がって、このクソには手を付けまいとするだろうか? (クソには近づきたがらないものだ。)
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なお、「英語の社内公用語化」が日産の問題だ、という件については、つい先日も言及したことがある。12月6日のことだ。(日産とホンダの経営統合が話題になったのは 12月18日だから、その 12日前だ。)
日産の場合は、この会社に独自の致命的な難点があった。それは、「英語の社内公用語化」だ。これは、要するに、「日産をルノーという進駐軍の傘下に置く」ということだ。
ここで、ルノーが日産よりも技術的に優れているのならば、まだマシだった。現実には、その逆だった。日産よりも技術的に劣っているルノーが、日産に入って、進駐軍のようにふるまって、英語を社内公用語化した。そのせいで、日本人の技術者は、たがいに意思疎通をすることもままならなくなった。
要するに、日産はルノーによって植民地化された。結果的に、「技術に通じた人材を経営者に選ぶ」ということもできなくなった。なぜなら、指名委員会の人材が、文系の人ばかりだからである。そして、その制度を構築したのが、宗主国のようなルノーだった。
日産は植民地化されたがゆえに、没落したのである。
( → 日本企業の技術軽視 .3: Open ブログ )
日産没落の原因については、ここで述べたことが核心的だ、と言えるだろう。
※ バベルの塔の神話では、人類が天に届く塔を建設しようとした。だが、その傲慢さを見て、神が人々の言葉を混乱させ、互いに理解できないようにしたそうだ。言葉が異なれば、たがいに理解できなくなるからだ。……日産で起こった混乱は、そういうことなのだ。

この日産の人事制度を聞いて今起きてる不幸も納得した
https://youtu.be/AuvPtY3z6rg?si=87UI3e8ORu6R6lp7
自己否定なんかしなくていい。普通にやるだけでいい。他の会社と同じ。
だからこそファーウェイではなく、安心なホンダを選んだのでは?と思います
EVはテスラやBYDの新参者でもすぐにできそうということはわかります。トランスミッションなんかいらないしね。どうして日産やホンダはできないのでょうか。わけわかりません。
輸出企業に英語が必修というのはわかります。でもどうして社長まで英語だけ?の人がなるのでしょうか。
工学部機械系は教授でも英語は全くダメですね。研究発表も日本機械学会だけだったですね。これは今でも変わっていないと思います。物理、化学、生物は総説以外日本語の論文発表は原則やりません。日本語だけで発表していると世界から遅れていることすらわかりません。
この二社ができたのは、他社の2倍の高給を払って、特別優秀な人を集めたからです。他の会社ではそんなことはできません。中国ではそういう会社がいっぱいできたが、ほとんどがつぶれかけている。
EV は、作ること自体は難しくないが、普通に作ると、大赤字となります。ホンダもそう。1台あたり 100万円以上の赤字を出していたから、生産中止にした。
社長が英語になるのは、本文の最後で説明した。ルノーの進駐軍に支配されたからだ。日本でも GHQ に占領された時期があったでしょ。似たようなものだ。いや、もっとひどい。
関潤は、技術者だから、日産では正論を吐いた。すると、それがルノーにとって不利になるので、ルノーの重役の逆鱗に触れた。「関潤だけは絶対に社長にしない!」と怒り狂った。だから、ルノーに阿諛追従する無能な凡人が社長になった。