2024年12月18日

◆ 日産とホンダの経営統合

 日産とホンダが経営統合する方向だ。これをどう受け止めるか? 

 ──

 稀に見る大型の事件なので、世間では大いに話題になっている。ただ、原因や結果や影響について、解釈が錯綜しているようなので、評価が定まらないようだ。どう受け止めていいか、わからずに戸惑っている人が多いようだ。そこで、私がきちんと整理して解説しよう。

 根源 


 根源となるのは、日産の経営悪化だ。日産は経営悪化がひどく、どうにもならないところまで追い詰められている。このままでは倒産しかねない状況だ。かつて倒産しそうになって、ルノーに助けてもらったことがあったが、それと似た状況にある。かくも経営状況が悪化している。しかも、そこから脱することできない。この件については、先に解説した。
  → 日産自動車の業績悪化: Open ブログ(2024年11月23日)
  → 日産の経営のひどさ: Open ブログ(2024年08月08日)

 その趣旨は、こうだ。
 日産は経営が迷走している。やるべきことをまったくできておらず、単にコストカットで経費を切り詰めることしかしていない。そのせいで、必要な経費を出すこともできず、栄養失調状態のように、どんどん状況が悪化していく。これはタコが自分の足を食って、衰弱して、自殺していくのも同様の状況である。
 どうしてこういう愚かなことをするのか? それは経営者が無能だからである。神学部卒の技術音痴の経営者が、神にすがりながら、非科学的な経営をする。もともと自動車の知識のない経営者が経営するのだから、迷走するのは当然だ。
 これを改めるには、経営者を一掃するしかない。そのためには、経営者を変えるための組織が正常に機能する必要がある。しかし日産には、経営者の指名委員会というものがあって、そこの指名委員が文系の技術音痴ばかりである。だから有能な技術者を指名できない。経営者を変えるための組織がまともに機能していないから、経営者を変えることもできないのだ。
 どうしてこういうひどいことになったか? それはルノーがそういう組織を構築したからである。ルノーが自社に好都合になるようにと、日産をルノーの意のままになるようにしようと思って、そういう組織を構築した。日産をルノーの植民地にしようとした。こうしてルノーの植民地となった日産は、まともな経営者を選ぶこともできなくなって、自己崩壊するしかなくなった。
 日産がルノーの植民地である限りは、現状を変えようがない。(現状では日産の株式の 36%はルノーの所有であり、ルノーが圧倒的な筆頭株主だから、ルノーの植民地状態から脱せない。)
 こうして日産は自縄自縛状態となり、倒産に向かうコースから脱することができなくなっている。

 ……以上が、先に示した解説だった。(本項では同趣旨ながら、いっそう強意的・誇張的に表現している。)

  ̄ ̄
 なお、前回分の結論部は、こうだった。
 日産としては、ウンコを押しつけられたあとで、それを取り払うこともできずに、四苦八苦しているわけだ。

 ※ 指名委員会というウンコ組織をつぶすか、委員を理系の人に総取っ替えするか。そのどちらかにすればいいのだが、どちらもできない。かくて地獄の底から抜け出せない。

 このままウンコまみれから脱出不可能かと思えていた。

 新展開


 日産はこのままでは倒産するしかないと思えた。資本構成を変えるしか日産が助かる道はないのだが、日産の資本構成を変えることは無理そうだったからだ。
 ところが、ここに来て、驚天動地の新提案が飛び込んだ。ホンダによる経営統合の案である。これが実現すれば、日産の資本構成が変わるので、上記の問題が一挙に解決する。
  ・ 直前の日産の株価は 338円まで落ちた。(最高時の4分の1だ。)
  ・ 日産とホンダの株式時価総額の比率は、1:4.4 と開いた。
  ・ この比率で合併すれば、ルノーの持ち分は 36% から 6.7% へ下がる。
  ・ ルノーはもはや日産の経営に口出しできなくなる。
  ・ 日産はルノーの植民地状態を脱せる。
  ・ 日産は新たにまともな経営者が選任される。


 こうして日産の大問題が一挙に一掃される。日産という会社は、技術者も社員も優秀なのだが、経営者だけがどうしようもない無能だった。「兵は一流、将は三流」だった。その「将は三流」という問題が一挙に解決するのだ。
 かくて日産の癌となっていた問題が一掃されることになる。めでたし、めでたし、と言える。

 ※ 日産の株主にとっては、ホンダの 4.4分の1という状況になるのは残念かもしれない。だが、そこまで落ちたのは、これまでの経営が悪かったからだ。今回の経営統合のせいで落ちたわけではない。むしろ、経営統合の方針が明示されたことで、日産の株価は急騰している。ストップ高だ。株価の大幅アップ。日産の株主は、この方針で、大喜びだろう。めでたし、めでたし、と言える。

 ※ 逆に、ホンダの株主にとっては、お荷物の日産を背負い込むことで、不利になる……と思った人が多いらしくて、ホンダの株価は下がり気味だ。しかし、日産はお荷物にはならない。もともと株価が暴落しているからだ。日産の株式総額は暴落しているので、ホンダにとっては経営への影響は少ないのだ。

 評価


 ホンダの株式総額は日産の 4.4倍だ。経営統合後は、ホンダの株主の資本構成が圧倒的に強くなり、日産の筆頭株主だったルノーの意向はほとんど無視される。ホンダの意見が圧倒的に強くなり、日産の意見はとても弱くなる。
 このことからして、今回の経営統合は、「ホンダによる吸収合併」というのに近い。経営統合後は、日産は、経営的には、ホンダの子会社という扱いになる。
 なるほど、組織の上では、持株会社にぶら下がる別会社だ。だが、経営面・人事面で見る限りは、日産はホンダの子会社も同然になるだろう。(ルノーの植民地だったのが、ホンダの植民地になるわけだ。)

 だが、これは、日産にとっては好ましいことだ。愚かなルノーに従って、愚かな経営者を選任していた状況が改められて、賢いホンダに従って、賢い経営者を選任する状況になるからだ。
 今回の方針で、日産は倒産を免れ、再生される道をたどることになるだろう。めでたし、めでたし。

 鴻海の影響


 さて。ここで疑問がある。
 「どうして今になって、ホンダと日産の経営統合が実現するようになったのか? ホンダと日産は、これまでは EV開発で業務提携をするぐらいで済ませるはずだった。また、ホンダは長らく独立路線を取っており、トヨタや日産と協業するのを拒んでいたはずだ。なのにどうして、このたび話が急展開することになったのか?」
 このような急激な変化が起こったのは謎である。

 この謎に対する回答が、次の報道で示唆されている。
  → ホンダ・日産が経営統合へ 鴻海による買収回避へ決断 - 日本経済新聞
 
 ホンダが日産を(事実上の)買収をする前に、鴻海が日産を買収しようとしていたのだ。そして、その買収は、実質的には可能である。なぜなら日産の時価総額は暴落しているからだ。日産を買収するのは容易なので、鴻海は日産を買収しようとしたのだ。(鴻海の時価総額は 8.8兆円。日産の時価総額は 1.5兆円)
 しかし、そうなると一大事。日産が台湾企業に買収されたら、大変だ。ホンダと日産の業務提携も解消となる。それはまずい。……そう思って、ホンダが顔色を変えて、日産との経営統合に向かったのだ。しかも、折良く、日産の株価は暴落している。昔ならば対等合併が必要だったかもしれないが、今ならホンダによる吸収合併(買収)をするのも同然となる。

 というわけで、鴻海の買収提案にせっつかれる形で、今回の経営統合の話が一挙に進んだわけだ。鴻海こそが、影の主役(もしくは仲人役)だったことになる。意図せざる形ではあったが。(逆効果となった。薮をつついて蛇を出すような。)
 ただ、鴻海としては残念だっただろうが、日産にとっては思わぬ救世主を得たことになる。ヒョウタンから駒みたいではあるが。


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 ※ 日産とホンダが一体化して、一つの会社になったなら、どんな名前が適しているか? それぞれ頭の一字を拝借して、「日産」の「日」と、「本田」の「本」をあわせて、「日本」が適しているだろう。日本自動車だ。(ネタです。  (^^); )






 ※ 次項に続きます。

posted by 管理人 at 23:07 | Comment(5) | 自動車・交通 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
しかしフォックスコン関に買収された方が日産にとっては良いのでは?と思うところありです。シャープの今日のように合理化が一気にすすみ、烏合の衆のジャパンディスプレイよりはマシに見えます。
このままホンダと日産の統合がスムーズにいくとも思えず、お家騒動に発展するのでは?

松下の三洋救済、NECカシオ、エルピーダとなぜ日本企業同士の統合は成功しないのか?考察を聞きたいです
Posted by 愛甲石田 at 2024年12月19日 01:09
ホンダもちょっと前までエンジンやめてEV全振りと言ってましたよね。
未来に向けた洞察力の点で、こいつらも大丈夫かという気がしますが・・・
Posted by 名古屋上空 at 2024年12月19日 08:22
> フォックスコン関に買収された方が日産にとっては良いのでは?

 価格が4分の1に暴落した時点で売却するということは、タダでくれてやるのも同然だ。日産という会社をタダでくれてやるなんて、馬鹿げているでしょう。
 日産にとって良いから、日本企業をタダでくれてやるべきだ、という説が成立するなら、日本の会社をすべて台湾か中国の企業にくれてやればいい。そうすれば会社は健全化するし、従業員も搾取されなくなる。
 しかし資本家は大損する。何より、日本全体が植民地になったも同然だ。ルノーの植民地になるかわりに、台湾の植民地になる。それも、タダでくれてやる。
 
 自分にとって良いかかどうかを考えているだけではダメです。もっと広い目を持ちましょう。
 関に支配されたがるより、逆に、関を取り込んでしまうようがいい。その方がはるかに安上がりです。

> お家騒動に発展するのでは?

 資本主義の原理。持株比率。株式時価総額。説明済み。
 今回はホンダによる吸収合併・買収と同様であり、日産の意見は今後は通らなくなります。ルノーの意見も通らなくなる。騒動は同等の関係でしか発生しない。一方的な上下関係・主従関係の下では、騒動は起こり得ない。
Posted by 管理人 at 2024年12月19日 10:11
 日産がイカレているのは経営者だけだが、ホンダは会社全体の技術力が大幅に欠落している。生き残るだけの技術がない。
 日産の技術をもらえれば、ホンダは生き残れる。
Posted by 管理人 at 2024年12月19日 10:13
Posted by hidari_uma at 2024年12月25日 14:25
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