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稀に見る大型の事件なので、世間では大いに話題になっている。ただ、原因や結果や影響について、解釈が錯綜しているようなので、評価が定まらないようだ。どう受け止めていいか、わからずに戸惑っている人が多いようだ。そこで、私がきちんと整理して解説しよう。
根源
根源となるのは、日産の経営悪化だ。日産は経営悪化がひどく、どうにもならないところまで追い詰められている。このままでは倒産しかねない状況だ。かつて倒産しそうになって、ルノーに助けてもらったことがあったが、それと似た状況にある。かくも経営状況が悪化している。しかも、そこから脱することできない。この件については、先に解説した。
→ 日産自動車の業績悪化: Open ブログ(2024年11月23日)
→ 日産の経営のひどさ: Open ブログ(2024年08月08日)
その趣旨は、こうだ。
日産は経営が迷走している。やるべきことをまったくできておらず、単にコストカットで経費を切り詰めることしかしていない。そのせいで、必要な経費を出すこともできず、栄養失調状態のように、どんどん状況が悪化していく。これはタコが自分の足を食って、衰弱して、自殺していくのも同様の状況である。
どうしてこういう愚かなことをするのか? それは経営者が無能だからである。神学部卒の技術音痴の経営者が、神にすがりながら、非科学的な経営をする。もともと自動車の知識のない経営者が経営するのだから、迷走するのは当然だ。
これを改めるには、経営者を一掃するしかない。そのためには、経営者を変えるための組織が正常に機能する必要がある。しかし日産には、経営者の指名委員会というものがあって、そこの指名委員が文系の技術音痴ばかりである。だから有能な技術者を指名できない。経営者を変えるための組織がまともに機能していないから、経営者を変えることもできないのだ。
どうしてこういうひどいことになったか? それはルノーがそういう組織を構築したからである。ルノーが自社に好都合になるようにと、日産をルノーの意のままになるようにしようと思って、そういう組織を構築した。日産をルノーの植民地にしようとした。こうしてルノーの植民地となった日産は、まともな経営者を選ぶこともできなくなって、自己崩壊するしかなくなった。
日産がルノーの植民地である限りは、現状を変えようがない。(現状では日産の株式の 36%はルノーの所有であり、ルノーが圧倒的な筆頭株主だから、ルノーの植民地状態から脱せない。)
こうして日産は自縄自縛状態となり、倒産に向かうコースから脱することができなくなっている。
……以上が、先に示した解説だった。(本項では同趣旨ながら、いっそう強意的・誇張的に表現している。)
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なお、前回分の結論部は、こうだった。
日産としては、ウンコを押しつけられたあとで、それを取り払うこともできずに、四苦八苦しているわけだ。
※ 指名委員会というウンコ組織をつぶすか、委員を理系の人に総取っ替えするか。そのどちらかにすればいいのだが、どちらもできない。かくて地獄の底から抜け出せない。
このままウンコまみれから脱出不可能かと思えていた。
新展開
日産はこのままでは倒産するしかないと思えた。資本構成を変えるしか日産が助かる道はないのだが、日産の資本構成を変えることは無理そうだったからだ。
ところが、ここに来て、驚天動地の新提案が飛び込んだ。ホンダによる経営統合の案である。これが実現すれば、日産の資本構成が変わるので、上記の問題が一挙に解決する。
・ 直前の日産の株価は 338円まで落ちた。(最高時の4分の1だ。)
・ 日産とホンダの株式時価総額の比率は、1:4.4 と開いた。
・ この比率で合併すれば、ルノーの持ち分は 36% から 6.7% へ下がる。
・ ルノーはもはや日産の経営に口出しできなくなる。
・ 日産はルノーの植民地状態を脱せる。
・ 日産は新たにまともな経営者が選任される。
こうして日産の大問題が一挙に一掃される。日産という会社は、技術者も社員も優秀なのだが、経営者だけがどうしようもない無能だった。「兵は一流、将は三流」だった。その「将は三流」という問題が一挙に解決するのだ。
かくて日産の癌となっていた問題が一掃されることになる。めでたし、めでたし、と言える。
※ 日産の株主にとっては、ホンダの 4.4分の1という状況になるのは残念かもしれない。だが、そこまで落ちたのは、これまでの経営が悪かったからだ。今回の経営統合のせいで落ちたわけではない。むしろ、経営統合の方針が明示されたことで、日産の株価は急騰している。ストップ高だ。株価の大幅アップ。日産の株主は、この方針で、大喜びだろう。めでたし、めでたし、と言える。
※ 逆に、ホンダの株主にとっては、お荷物の日産を背負い込むことで、不利になる……と思った人が多いらしくて、ホンダの株価は下がり気味だ。しかし、日産はお荷物にはならない。もともと株価が暴落しているからだ。日産の株式総額は暴落しているので、ホンダにとっては経営への影響は少ないのだ。
評価
ホンダの株式総額は日産の 4.4倍だ。経営統合後は、ホンダの株主の資本構成が圧倒的に強くなり、日産の筆頭株主だったルノーの意向はほとんど無視される。ホンダの意見が圧倒的に強くなり、日産の意見はとても弱くなる。
このことからして、今回の経営統合は、「ホンダによる吸収合併」というのに近い。経営統合後は、日産は、経営的には、ホンダの子会社という扱いになる。
なるほど、組織の上では、持株会社にぶら下がる別会社だ。だが、経営面・人事面で見る限りは、日産はホンダの子会社も同然になるだろう。(ルノーの植民地だったのが、ホンダの植民地になるわけだ。)
だが、これは、日産にとっては好ましいことだ。愚かなルノーに従って、愚かな経営者を選任していた状況が改められて、賢いホンダに従って、賢い経営者を選任する状況になるからだ。
今回の方針で、日産は倒産を免れ、再生される道をたどることになるだろう。めでたし、めでたし。
鴻海の影響
さて。ここで疑問がある。
「どうして今になって、ホンダと日産の経営統合が実現するようになったのか? ホンダと日産は、これまでは EV開発で業務提携をするぐらいで済ませるはずだった。また、ホンダは長らく独立路線を取っており、トヨタや日産と協業するのを拒んでいたはずだ。なのにどうして、このたび話が急展開することになったのか?」
このような急激な変化が起こったのは謎である。
この謎に対する回答が、次の報道で示唆されている。
→ ホンダ・日産が経営統合へ 鴻海による買収回避へ決断 - 日本経済新聞
ホンダが日産を(事実上の)買収をする前に、鴻海が日産を買収しようとしていたのだ。そして、その買収は、実質的には可能である。なぜなら日産の時価総額は暴落しているからだ。日産を買収するのは容易なので、鴻海は日産を買収しようとしたのだ。(鴻海の時価総額は 8.8兆円。日産の時価総額は 1.5兆円)
しかし、そうなると一大事。日産が台湾企業に買収されたら、大変だ。ホンダと日産の業務提携も解消となる。それはまずい。……そう思って、ホンダが顔色を変えて、日産との経営統合に向かったのだ。しかも、折良く、日産の株価は暴落している。昔ならば対等合併が必要だったかもしれないが、今ならホンダによる吸収合併(買収)をするのも同然となる。
というわけで、鴻海の買収提案にせっつかれる形で、今回の経営統合の話が一挙に進んだわけだ。鴻海こそが、影の主役(もしくは仲人役)だったことになる。意図せざる形ではあったが。(逆効果となった。薮をつついて蛇を出すような。)
ただ、鴻海としては残念だっただろうが、日産にとっては思わぬ救世主を得たことになる。ヒョウタンから駒みたいではあるが。

※ 日産とホンダが一体化して、一つの会社になったなら、どんな名前が適しているか? それぞれ頭の一字を拝借して、「日産」の「日」と、「本田」の「本」をあわせて、「日本」が適しているだろう。日本自動車だ。(ネタです。 (^^); )
※ 次項に続きます。
このままホンダと日産の統合がスムーズにいくとも思えず、お家騒動に発展するのでは?
松下の三洋救済、NECカシオ、エルピーダとなぜ日本企業同士の統合は成功しないのか?考察を聞きたいです
未来に向けた洞察力の点で、こいつらも大丈夫かという気がしますが・・・
価格が4分の1に暴落した時点で売却するということは、タダでくれてやるのも同然だ。日産という会社をタダでくれてやるなんて、馬鹿げているでしょう。
日産にとって良いから、日本企業をタダでくれてやるべきだ、という説が成立するなら、日本の会社をすべて台湾か中国の企業にくれてやればいい。そうすれば会社は健全化するし、従業員も搾取されなくなる。
しかし資本家は大損する。何より、日本全体が植民地になったも同然だ。ルノーの植民地になるかわりに、台湾の植民地になる。それも、タダでくれてやる。
自分にとって良いかかどうかを考えているだけではダメです。もっと広い目を持ちましょう。
関に支配されたがるより、逆に、関を取り込んでしまうようがいい。その方がはるかに安上がりです。
> お家騒動に発展するのでは?
資本主義の原理。持株比率。株式時価総額。説明済み。
今回はホンダによる吸収合併・買収と同様であり、日産の意見は今後は通らなくなります。ルノーの意見も通らなくなる。騒動は同等の関係でしか発生しない。一方的な上下関係・主従関係の下では、騒動は起こり得ない。
日産の技術をもらえれば、ホンダは生き残れる。
周庭さんもNIHONって言うてる!