2024年12月17日

◆ 政治資金規制の対案

 政治資金規制の顛末は、羊頭狗肉に終わった。では、どうするべきか?

 ──

 政治資金規制の改革については、与野党が攻防を繰り広げた。立憲が規制案を出して、国民民主がより強い規制案を出したが、最終的には国民民主が裏切って、無効な結論に終わった。つまり、「形だけの第三者機関を設置するが、すべてを先送りにする」ということで、結局は何もしないも同然となった。羊頭狗肉と言える。ひどいものだ。

 すると、読者は要望するだろう。
 「他人の批判ばかりしていないで、おまえが自分で対案を出せ。文句ばかり言っていないで、建設的な案を出せ。困ったときの Openブログといつも言っているだろ。うまい案を出せ」
 と。それも、ごもっとも。そこで、私の案を出そう。次の通り。

 理想と現実


 政治資金規制については、理想と現実が乖離する。
 「政治資金を規制する」というのは、理想だ。野党はみんな規制を主張する。これは、きれいごとを言うだけではない。規制をした方が、自党に有利で、自民に不利になる。だから野党は、規制を主張をして、自党に有利になるようにしたいのだ。
 一方、自民は逆だ。規制をすればするほど損をする。だから、規制をしたくない。自民だけが企業献金で圧倒的な政治資金を得ているのだから、政治資金を規制すると、自民ばかりが損をすることになる。そんなふうに、自分で自分の手足を縛るようなことをするわけがない。

 要するに、「企業から賄賂をもらうようなことはするべきではない」という理想論に対して、「そんなことをすれば自民だけが得をする現状を否定するので、自民だけが損をする」というふうになるから、自民が賛成するわけがないのだ。
 立憲は「企業献金を廃止せよ」と口にするが、そんなことが実現するわけがないということは自分でもわかっているはずだ。実現しないとわかっていて、「われわれは正しいことを言っているんですよ。自民は汚いんですよ」と宣伝しているわけだ。
 国民民主は「立憲の案には欠陥があるから、もっと厳しくしろ」と口にするが、そんなことが実現するわけがないということは自分でもわかっているはずだ。実現しないとわかっていて、「われわれは正しいことを言っているんですよ。立憲よりももっときれいなんですよ。立憲はきれいさが不足しているんですよ」と宣伝しているわけだ。そこで代案を出すが、そんな超絶クリーンな案が実現する見込みは皆無であるとわかっていて、クリーンなフリをするわけだ。(詐欺師たるゆえんだ。)
 そこで最終的に、公明党と国民民主は相談して、自民党にも飲めるような大甘の案を出した。それは「規制するフリだけして何もしない」という案だ。これなら飲めるので、自民党は飛びついた。そして結局、この「やったフリ」という案が裁決されて、可決された。大山鳴動ネズミ一匹。

 さて。以上のことから、何がわかるか? 
 政治資金を一切禁止するというのは、理想論だが、そんなことは実現するわけがない、ということだ。自民党だけが得をするという状況を否定するのは、理想論ではあるが、それを自民党が飲むわけがない。政治というものはギブ・アンド・テークだ。片方だけが一方的にギブするということはありえない。自民だけが一方的に損をするような案が実現するわけがないのだ。
 何かを提案するのなら、実現可能な案を出すしかない。(さもないと、実現不可能なホラを吹聴する国民民主の嘘にだまされることになる。)

 妥協


 そこで私としては、妥協案を出そう。自民にも飲めるような範囲内で、最大限に譲歩してもらう案だ。

 (1) 禁止しない

 政治資金を一切禁止するという理想論は取らない。そんな案を出しても、自民党が反対するに決まっているのだから、禁止は無理だ。ゆえに、禁止はしない。

 (2) 収入の明朗化

 禁止はしないが、会計は明朗化することを義務づける。汚い賄賂みたいな金については禁止する。
 まずは、収入を明朗化する。特に、パーティー収入の匿名化を禁止する。パーティ収入は、1人 5000円以上を義務づけて、全員を報告させる。チケット代は、電子化して、全員を名簿で記録して提出させる。(一般公開はしなくてもいいが、代議士ならば見ることができるようにする。)

 パーティー券は、匿名が横行しているので、特に明朗化が必要となる。
   ・ パーティー券の購入は、党を経由するようにする。
   ・ パーティー券は 5000円以上として、購入を電子化する。(クレカなど)
   ・ パーティー券の購入者の氏名一覧を、党から政府に報告させる。
   (一般公開は不要だが、議員秘書がチェックできるようにする。)


 (3) 支出の明朗化

 さらに、支出を明朗化する。現状では支出は議員の経理秘書が管理しているが、これを政党の経理部が管理するようにする。大学の研究者や企業の会社員だって、支出するときには経理部に伝票を出して許可を得るはずだ。それと同様に、議員の支出はすべて政党の経理部に伝票を出して許可を得るようにする。現実の現金の支出は、政党の経理部を経由するようにする。(会社と同じだ。)
 現状では議員が好き勝手に政治資金を使えるので、飲み食いにも、海外旅行にも、愛人とのホテル代にも、好き勝手に使える。小泉進次郎も不倫のホテル代を政治資金でまかなったほどだ。( → https://x.gd/QRIDK ) こういうことがあるのは、議員が政治資金を管理しているからだ。そういう現状を改めて、政党の経理部が政治資金を管理するようにする。


hotel-bill2.jpg


 例。
 小泉進次郎  「愛人と不倫旅行したので、ホテル代を払ってください」
 政党の経理課 「そんな金は政治資金では下りません」
 小泉進次郎  「でもこれまでは政治資金で払っていたんだよ」
 政党の経理課 「これからはダメです」

 こういうふうに改めるべきだ、というのが、私の提案だ。
 あるいは、次のようにしてもいい。

 政党の経理課 「わかりました。1泊5万円を二人分で、10万円ですね。その額を払います。その分を、ネットで公表します。不倫ホテル代 10万円、小泉進次郎、と」
  → 不倫ホテル代はやっぱり政治資金だったのか。国会を嘘で塗り固める自民党と進次郎の罪

 なお、このような「明朗化」には、二つの条件が必要だ。
  ・ 経理を党の経理部に集中する。(議員単位は不可)
  ・ 経理の伝票はすべて電子化する。(現金は不可)
  (例外的に現金を扱う場合には、現金出納の電子記録を公開する。)


 ※ なお、支出については、一切を(電子化して)一般公開するといいだろう。諸外国ではそうしている国もある。収入はともかく支出に関しては、(電子化して)一般公開するべきなのだ。
 ※ 仮に一般公開できないのであれば、その分の収入については「非課税」という特権を剥奪するべきだ。贈与税 50%の対象とするべきだ。


 (4) 免税廃止

 現行制度では、政治献金をした企業は、免税の優遇措置を得ることができる。建前上は、「そんな優遇は得られない」という方針があるのだが、現実には、抜け道みたいな方式がいくつもあるので、免税の優遇措置を得ることができる。
  ・ 政治献金には、損金算入限度額という設定がある。
  ・ パーティー券は、出席した場合には交際費として損金算入できる。
  ・ パーティー券は、欠席した場合には寄付金として損金算入できる。

 こういう形でいろいろと免税措置を受けることができる。損金算入で、法人税の支払いを免除される。(詳しくはAIに質問するといい。上記の話題で質問すると、いろいろと情報を得られる。)

 しかし、献金した企業が献金の分に免税措置を受けるというのは、「泥棒に追銭」みたいなものだ。あまりにも馬鹿げた制度だ。本来ならば、政治献金をもらった政党には「所得税」みたいな課税をするべきだ。なのに逆に、「すでに払った税金を還付する」という形で、賄賂を贈る企業に国が追銭を払うわけだ。これでは泥棒に追銭を払うのと同じだ。馬鹿馬鹿しいにもほどがある。

 そこで、私は新たに提案しよう。
 「政治資金をした企業・団体が、免税措置を受けることができるのは、条件がある。それは、全政党に公平に献金した場合だ。(得票率に応じた額で公平に献金する。) その場合のみ、公共に奉仕するという意義があるので、免税措置を受けることができる。一方、特定の政党だけに献金した場合には、賄賂と同等のものと見なして、献金した企業は献金分に免税措置を受けられない。献金した分の収入にはきちんと法人所得税を払う必要がある」

 これならば道理が通るだろう。こういうふうにするのが道理だろう。

 ──

 以上で、いろいろと示した。このような形で規制すれば、献金はクリーンになる。この条件で、自民は献金を受けることができる。全面禁止ではない。その意味で、自民にとっても飲める案だ。しかも、汚い裏金を排除できる。
 これを私の提案としておこう。


 ※ オマケ。
 読者の疑問もありそうだ。
 「それじゃ結局、企業献金も団体献金も禁止しないのか? 立憲や国民民主の案に比べて、大甘だな」
 それはその通り。禁止ではないという点では、大幅に甘い。しかし、禁止というのは、自民が反対するに決まっているのだから、実現性はない。実現性のない理想論を唱えても、玉砕するだけだ。意味がない。そのあげく、国民民主や公明みたいに、名ばかりの形式規制だけをして、実質的には何も規制しない結果になる。
 そこで私の提案は、「規制はしないが公開する。さらには、課税する」という案だ。これによって裏金を完全に規制する。あらゆる裏金を表に出す。このことが、私の提案の本質だ。
 



 [ 付記 ]
 なお、上記を義務づけるまでには、過渡的措置として、次の案もある。
 「政党が上記のように支出を明朗化し場合に限り、その明朗化した分についてのみ、政党助成金を出す。明朗化しない分には、政党助成金を出さない」

 たとえば、自民党が「使途は5億円だけ公開します」というふうにしたなら、「ならば政党助成金は5億円しか出しません。使途を明かせないような金のためには、政党助成金を出せません」というふうにする。
 これは当り前だ。私党不明金のために金を出せるわけがない。会社だってそうだろう。使途が不明ならば、伝票を切れない。「使途を明かせないが、金を払ってください」なんてデタラメが通るわけがない。
 なのに、こういうデタラメが通るのが現状だ。呆れるね。
 


 [ 補足 ]
 立憲は「企業献金禁止」という方針を取ろうとする。だが、この案は実現するはずがない。(自民が絶対反対するからだ。)
 では、このような法案を立憲が提出することは、無駄だろうか? 
 「無駄ではない」というのが、私の判定だ。なぜなら、否決されることに意味があるからだ。国会で自民が否決すれば、否決する自民の不当性が明らかになる。また、立憲案に反対する公明と国民民主の不当性も明らかになる。こうして立憲は自らの正当性を宣伝できる。たとえ否決されるとしても、否決されることに意義があるわけだ。だから、実現はしなくても、法案を提出することには意義がある。

 さらにもう一つ。うまい手がある。提出する案を、立憲の案でなく、国民民主の案にしてしまえばいい。(つまり政治団体の献金も禁止する。)……こうすれば、国民民主としては(自分の案には)反対できなくなる。かくて、自縄自縛となる。本心では(自民と手を結ぶために)企業献金禁止をやりたくない。なのに、口先では企業献金禁止を公約したので、その自分の公約に縛られてしまう。……これは、詐欺師が自分の口車に縛られるというわけだ。自縄自縛。立憲の提出した自分の案に、賛成することもできず、反対することもできず、立ち往生するハメになる。詐欺師が逃げ場をなくす。……これこそ、立憲の取るべき策だ。
( ※ 詐欺師としては、まさか、自分の案を立憲が採用するとは、思ってもいなかったわけだ。口車は口車で終わると思っていたわけだ。なのに、それが本当に実現すると、「まさか、おれの手に乗るなんて。ヒョウタンから駒が出た」と驚いて、立ち往生してしまうわけだ。)
 


 【 追記 】
 書き落とした点があったので、追記する。細かな話。

 (1) 献金先は、政党だけに限る。政治家個人(政党支部)への献金は禁止する。このことで、政治献金(収入)を明朗化する。……現状では、政治家個人への献金が認められているので、こっそり隠れて裏金や賄賂をもらうことが可能になっているわけだ。これを政党本部への献金だけに限るようにすれば、献金が明朗化するので、汚い金がなくなる。

 (2) 政治家から政治家への献金を禁止する。たとえば、親の政治団体から子の政治団体への献金を禁止する。そもそも献金が非課税なのは、その金が政治活動に使われるからだ。なのに、自分の政治活動に使わずに、他人の政治活動に使うのでは、当初の目的を果たしていないのだから、政治活動として使われるという条件を満たしていない。ゆえに、非課税所得でなく、贈与税の対象となるべきだ。仮に実行するとしたら、その所得に贈与税 50%を払うべきだ。
 たとえば、政治家Aがあちこちから合計1億円の政治献金を集めたとする。そのせい事件金は政治家Aの政治活動に使うという名分で集めた金だ。それを自分の政治活動に使うのならば問題ない。しかしその金を政治家Bに寄付したら、政治家Aの政治活動に使うという名分を果たしていない。ゆえにその金は政治活動に使われたのでなく、他の目的のために使われたのだから、非課税にはならず、贈与税の対象となる。1億円の収入に対して、5000万円の贈与税を払うべきだ。その残りの分についてだけ、他人への寄付を認めればいい。
 ただし、そういうふうにするよりは、一律に禁止する方が手っ取り早いだろう。
 

posted by 管理人 at 23:09 | Comment(4) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
概ね賛成です
Posted by カエル at 2024年12月18日 03:27
 最後に 【 追記 】 を加筆しました。
 個人間の資金移動を禁止する、という話。


 本文の最後のあたりで、企業の政治献金の免税の話がおかしくなっていた箇所があったので、記述を改変しました。
Posted by 管理人 at 2024年12月18日 08:58
そもそも政党とは何か?

もし政党がなく、各議員がばらばらに議案を提出し、個別に採決するのでは大変。だから1人のカリスマのもとに、その意見に賛成する議員が集まり、党ができる。参政党はこの状態。

さらに政党が大きくなると、1人のカリスマというわけにはいかず、政党内に複数のリーダーが存在する状態になる。各議員はより自分の考えに近い人につくことになる。これが派閥。

カリスマでない普通の議員はヒラとして党や派閥に所属し、新人は党の看板を背負って選挙に臨む。

ここまでの流れを政党と企業で比較すると

1人のカリスマ=創業者
複数のリーダー=部長など役員級
ヒラの議員=平社員
立候補する新人=求職者

になる。

企業であれば、全員が会社のために働き、上げた収益の一部が基本給として、役職があれば役職給が分配される。

一方、党はそれ自体が収益を生む存在ではない。そして、現在は議員の兼業が禁じられているので、基本給にあたる部分は歳費として国から支払われている。

社員が働くことに相当するのが「パーティー」であろう。現在は「金だけ集めてろくな食べ物も出さないぼったくり」状態だ。

こう考えていくと、解決策は
・議員の兼業を認め、党の運営に必要な資金は各議員が拠出する(非営利団体なのだから手弁当)
・「パーティー」を魅力的なものにし、誰もが喜んでお金を払いたくなるものにする(ぼったくりをやめる)
・党が機関誌紙を発行するなどして収入を得る(営利団体になる)
・パーティーや寄付を全面禁止し、政党交付金(半分は議員数に、半分は得票数に比例した金額)だけで賄える範囲の活動しかしない

最後の案について追記。
どんな組織でもそうですが、組織を運営するための費用は所属人数に比例ではなく、指数関数的に増えていくはずなので、派閥がいくつも存在するような巨大な党は存在できなくなり、卓越したリーダーのもとに同志が集まるという、本来の党の形に近づくのではないかと思います。それであれば、党の運営にそんなに多額の資金はかからないはずです。
Posted by のび at 2024年12月18日 09:52
> 組織を運営するための費用

 政治活動は個人単位であり、組織運営は特に必要ないが、個人活動の経費は組織を経由して明朗化する、ということ。
 会社で伝票を切るのもそうでしょ。交通費も資材費も、個人が仕切って金を払うが、その金は経理に伝票を切って支払いを受ける。
 本項は経費の明朗化の話をしているのであって、金銭管理の独裁化を主張しているのではない。
Posted by 管理人 at 2024年12月18日 10:17
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