2024年12月16日

◆ 立憲の戦略ミス .2

 ( 前項 の続き )
 立憲の戦略と 国民民主の戦略。あっと驚く 詐欺の手口。 👌

 ──

 キャスティングボート 


 国民民主の戦略は何か? 「キャスティングボートを握る」ということだ。与野党伯仲という状況を利用して、自分の票を高く売りつける。ただし、野党側に売ることはなく、自公に売るだけだ。
 国民民主の政治傾向はあくまで保守(右翼)であり、その範囲内で、自分の価値を最大限にして、自分たちの議席による票を自公に高く売りつける。それが国民民主の戦略だ。
 その戦略は一応、成功してきた。前項冒頭で示したように、国民の支持率は上がってきた。それというのも、「所得税減税」という政策を自公に飲ませることで、国民の歓心を買ったからである。
 この状況で立憲は埋没しつつある。つまり、敗北だ。
 自民、公明、国民民主3党が「年収103万円の壁」見直しで合意したことを巡り、立憲民主党が存在感の発揮に苦慮している。
 自公国協議の進展で立民は埋没気味となっており、幹部は「代表の考えがあるので協議には加われず、もどかしい」と漏らした。
( → 「103万円の壁」合意、立憲民主は存在感の発揮に苦慮…党幹部「協議に加われずもどかしい」 : 読売新聞

 自公と国民民主の交渉ばかりが報道されて、立憲は蚊帳の外に置かれている。報道もされず、何もしていないと思われる。

 では、どうしてこうなったか? 立憲が対立路線を取るからだ。自公の方針に対して、立憲は対立路線を取る。それゆえ、真ん中にいる国民民主の価値が上がる。立憲が対立すればするほど、キャスティングボートとしての国民民主の価値は上がる。価値がどんどん高騰するので、国民民主の言い分が通るようになる。かくて国民民主が一人勝ちするようになる。
 何のことはない。立憲が対立路線を取れば取るほど、自公が困るのではなく、国民民主が得をするばかりなのだ。漁夫の利のように。
 立憲は「自公を困らせたい」と狙っているのだが、その狙いは達成されず、自公はちっとも困らない。かわりに、国民民主ばかりがウハウハと大きな利益を得るばかりなのだ。
 狙っていることと結果とがまったくズレている。これは立憲の戦略ミスと言える。馬鹿丸出しとも言える。

 ※ 結果的には詐欺師ばかりが得をする。馬鹿なカモがいるせいで。詐欺師がだまそうとするまでもなく、カモが勝手に自発的にだまされる。カモがネギしょっているようなものだ。

 囚人のジレンマ


 ともあれ、愚かな立憲のおかげで、国民民主は得をする。その効果で、自公も政権維持が可能となる。自公と国民民主は win-win となる。(こいつらのせいで、国民は lose になるが。)
 では、愚かな立憲は、どうすればよかったのか? 正解は何か? それを教えよう。

 この問題は「囚人のジレンマ」という概念で説明される。ゲーム理論の概念だ。
 立憲と国民民主は、たがいに囚人の立場にある。双方が協力すれば、双方が最大利益を得る。しかし、片方が裏切れば、裏切った方だけが得をして、他方は損をする。双方がともに裏切ると、双方がともに損する。

  ・ 双方が協力する …… 双方が得をする
  ・ 片方が裏切る  …… 裏切った方だけが得をする
  ・ 双方が裏切る  …… 双方が損をする


 現状は「片方が裏切る」という状況だ。つまり、国民民主だけが裏切るという状況だ。この状況では、国民民主だけが得をする。立憲は裏切られて損をするばかりだ。
 最善は「双方が協力する」ことだ。この場合、「野党共闘」という形で、国民民主も立憲も得をする。ただし、その利得は小さい。小さな利得では、満足しがたい。

 すると、どうなるか? 上の二つを比較した上で、強欲な国民民主は「裏切り」を選ぶ。この場合には、とても大きな利得を得られるからだ。
 実際、とても大きな利得を得ている。それが現状だ。まさしく狙い通りになった言える。
 しかし、この状況は、立憲にとっては受け入れがたいだろう。食い物にされるだけで、馬鹿丸出しだからだ。

 では、立憲はどうすればいいか? 「自分だけが食い物にされる」という状況を拒否すればいい。そのためには、「双方が裏切る」という道を選べばいい。
 別の形で言うと、「タカ・ハト・ゲーム」において、「タカに食い物にされるハト」という方針を捨てて、「タカと戦うタカ」という方針を取ればいい。一方的に食い物にされることを拒否するわけだ。たとえそのせいで双方が傷つくことになるとしても。

 具体的には、どうするか? 次の二つだ。
 (1) 自公との政策協議では、対立路線を捨てて、協調路線を取る。このことで、キャスティングボートを無効化する。自公は国民民主に(所得税減税のような)代価を払わなくても、立憲の協調を得ることができる。(補正予算が通る。)
 (2) 選挙では、小選挙区で国民民主に協力しない。国民民主のいる選挙では、必ず対立候補を立てる。それによって共倒れをしてもいい。自民の候補が当選してもいい。とにかく、国民民主の候補者を落選させることを最優先とする。(つまり、自分だけが食い物にされるという現状を、徹底的に拒否する。それを最優先とする。)

 以上のようにすれば、こうなる。
  ・ 国民民主はもはやキャスティングボートを握れない。所得税の減税も実現されなくなる。そんなことをしなくても、立憲が協力してくれるので、国民民主の存在価値はなくなるからだ。
  ・ 小選挙区では、立憲と共倒れをすることで、小選挙区における国民民主の議席数は壊滅的になる。現状の 11から1に激減する。(当選するのは玉木だけだ。あとは全員が落選する。)

 
 以上のようにして、立憲は自分の身を切りながらも、国民民主を壊滅させることに成功する。こうなったとき初めて、国民民主は理解する。「立憲を怒らせると怖いぞ」と。そこで以後は改めて、「では今後は野党共闘をします。自公とはくっつきません」と言うようになる。
 これは、「囚人のジレンマ」における「双方が協調」という状態だ。「タカ・ハト・ゲーム」における「双方がハト」という状態だ。このようにして状態は安定する。
 ただし、そのためには、いったん「双方が血みどろになって傷つけあう」という状態を経由する必要があるのだ。喧嘩で傷ついた体験がないと、「喧嘩を回避しよう」という意思も生じないものだ。(特に片方が愚かなエゴイストだと、そういうものだ。)


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 国立市の事例


 国立市の市長選があった。本日の結果。
  ・ 立憲系のリベラル候補が当選(新顔)
  ・ 自公維ファの保守候補が落選(現職)

 僅差ではあるが、リベラル系が勝利した。( → 朝日新聞

 このこと自体は、不思議ではない。東京ではほとんどの選挙区でリベラル系が強い。保守系の票は過半数を割るのが普通だ。実際、2021年の衆院選(小選挙区)でも、立憲の候補が勝利している。(19区)
 しかし 2024年の衆院選(小選挙区)では、自民の候補が勝利している。(21区:選挙区の区割り変更あり。)
 さて。どうして 2024年には、自民が勝ったか? もちろん、リベラルの方が票は多かった。しかし 2024年には、国民民主が候補を立てたので、非自民の票が割れたのだ。かくて非自民は共倒れ。自民が当選した。(票は少ないくせに、漁夫の利を得た。)

 ここでは、国民民主は、「立憲の候補を落選させて、自民の候補を当選させるため」に立候補したことになる。それが玉木の方針だった。
 そして、それは、見事に成功した。本来ならば、あちこちで自民の候補が落選して、立憲の候補者が当選して、野党連立政権ができるはずだった。しかし国民民主にとって、それは困る。国民民主はあくまで、自公政権に恩を売りたいのだ。自公の腰巾着にはなりたいが、立憲の腰巾着にはなりたくないのだ。
 だから、立憲の議席を減らして、自民の議席を増やしたのだ。

 結果的には、それは大成功。自公に恩を売る形で、国民民主は国民の支持率を大幅に上げた。「してやったり」と喜んでいるだろう。
 選挙前には自民批判をしても、選挙後には自民にすり寄るのが、国民民主なのだ。こっそりと寝返ったユダのように。

 維新との関係


 維新は代表が替わった。「維新は第二自民でいい」と自分で言っていた馬場代表が退任して、かわりに吉村知事が代表になった。
 すると、維新は吉村代表の下で、新たな方針が取られた。それまでの自民べったりの方針を捨てて、「野党共闘」という方針を取るようになった。
  → 立民・野田代表&維新・吉村代表、来夏の参院選1人区で“共闘”へ、野党候補一本化へ

 維新は「野党共闘」という方針を取るとき、国民民主もいっしょに組もうという考えでいるらしい。しかし、国民民主は野党共闘をするはずがない。国民民主はあくまで、「野党共闘を裏切って、自分だけが得をしたい」というユダの方針を取るのだ。それが基本である。国民民主に「いっしょに組もう」と思うなんて、馬鹿げた妄想だ。そんなことを望めば、立憲のように、「一方的に食い物にされて、何も与えられない」というふうに、食い逃げされるだけだろう。
 玉木は不倫をする。不倫をする人間は人を裏切る。こういう裏切り者を信用するというのは、詐欺師を信用するのと同じことだ。馬鹿げている。

 立憲と維新は、いい加減、国民民主を見限った方がいい。むしろ「国民民主をたたきつぶす」という方針を取るべきだ。そうしてこそ、「裏切ると、怖い目に遭う」という体験を味わって、国民民主は裏切れなくなるだろう。
 裏切り者には、お仕置きを与える必要がある。さもなくば、いつまでも裏切り続けるだろう。ユダのように。自分だけが甘い蜜を吸おうとして。

 政治資金で野党共闘を破壊する


 国民民主が野党共闘を破壊しようとしていることは、政治資金規制の問題を見てもわかる。
  → 政治団体献金禁止 「抜け穴ない」立憲案に国民・玉木氏「意味なし」 | 毎日新聞

 立憲は「企業・団体献金を禁止」という方針を出した。「この方針で野党共闘をしたい」と提案した。
 すると国民民主は「ダメだ」と否定した。「立憲の方針では、企業団体献金は禁止されるが、政治団体の献金は禁止されない。それでは抜け道がある。政治団体の献金も含めて、全部の献金を禁止するべきだ。さもないと、野党共闘は認められない」と。
 これを額面通りに受け取った人々が、拍手喝采した。「国民民主は抜け道をふさいでいる。厳しいことを言う正論だ。これに比べて、立憲の方式は甘すぎる」と。

 しかしこれは詐欺師の口車にだまされているにすぎない。
 国民民主の本心は何か? 「立憲の提案する野党共闘を破壊すること」である。これが最優先となる。なぜなら、野党共闘が実現したら、「裏切り者のユダとして、自分だけがこっそり大きな利益を得る」というメリットが消えてしまうからだ。裏切り者としての利得を得るには、何としても野党共闘を破壊しなくてはならない。そこで、もっともらしい正義の理屈を唱えて、野党共闘を破壊しようとするのだ。
 「立憲の方針は、90点だ。それでは 100点にならないので、反対する」
 というふうに。

 しかし、これは理屈にならない。本気でそう思うのであれば、「90点の方針に賛成したあとで、さらに 10点を追加して、100点にする」というふうにすればいいはずだ。「90点を採用してから、100点にする」というふうにすればいいはずだ。
 しかし国民民主は、そういうふうにはしない。「90点は 100点に満たないので、90点には賛同しない」と結論する。かわりに、「10点だけの案を提案する」というふうにする。
 たったの 10点だけ! あまりにも実効性のない骨抜き法案。しかし、それならば、自民党は大喜びだ。企業献金は何も規制されないのも同然だからだ。かくて国民民主と公明が提案した「10点だけ」という提案を受けて、この方式が採用されることになった。90点の立憲の案はお蔵入りとなり、10点の国民民主と公明の案に決まった。自民は、国民民主と公明に同意した。
 公明党と国民民主党は、政治資金をチェックする第三者機関を国会に設置するための法案を共同で衆議院に提出しました。
 公明党と国民民主党が10日午前、共同で提出した法案では、政治資金をチェックする第三者機関として、国会に「政治資金監視委員会」を置くとしています。
( → 公明・国民 政治資金チェックの第三者機関設置法案を共同提出 | NHK | 政治資金

 この案では、第三者機関が資金をチェックするだけだ。企業献金も団体献金も禁止しない。まったくの骨抜きである。
 こうして「完全なる骨抜き法案」を提案することで、自民党に迎合した。これなら自民党も大喜びだ。企業献金はまったく規制されないからだ。骨抜き。禁止項目はゼロも同然だ。( 10点どころか、0点と言ってもいいくらいだ。)

 こうして、「政治資金規正については、100点をめざします」と口に出しながら、実際には「0点の法案にします」とふうにする。口で言うことと、実際にやることとが、天と地ほどにも違う。100を与えると言って、0を与える。
 これぞ、詐欺師の面目躍如というものだろう。(自民べったりという方針も露見した。まさしく第二自民。)




 ※ 国民民主と立憲の話については、これで終わります。
   政治資金をどうするべきかというのは、別の話題なので、次項で考えます。
 
posted by 管理人 at 23:01 | Comment(5) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
国民民主党の価値を過大評価しすぎてますね。
別に国民民主党がいなくても維新が補正予算に賛成すれば法案は可決されます。
今国会では、維新の代表戦があり実現しなかったが
今後はそういう動きが出るでしょう
(現に維新は補正予算賛成した)

直近の選挙は来年の参議院選挙で、残念ながら立民は国民党に対立候補立てて叩き潰すことは事実上無理。
参議院選挙は衆議院選挙と違って比例復活がない。
よって国民民主党の主戦場は3人区以上になりますが、そこは元々どの政党も候補者を立てている。
一方1人区や2人区はほぼすべての選挙区で立民が候補を立てます。
一部の2人区で国民党が候補を立てることがあるが、そこで国民党の当選を妨害できるとしても
せいぜい1議席程度。
逆に、国民党が怒り狂って、1人区2人区に立民の対立候補を立てたら、立民が崩壊します

詐欺師が詐欺師に向かって「詐欺師!」と憤って大喧嘩したら
ヤクザが勝ってしまうようなバカみたいな話ですね
Posted by カエル at 2024年12月16日 23:33
 まあ、小選挙区は衆院だけなので、国民民主を叩き潰せるのは衆院だけだ。参院ではもともと国民民主は比例区が大部分なので、参院は対象外ですね。おっしゃる通り。
 叩き潰すのはあくまで衆院選限定です。

 ※ 現実には、そうする必要はなく、その方針を示すだけでいい。びびらせればいい。

 ──

> 別に国民民主党がいなくても維新が補正予算に賛成すれば法案は可決されます。

 それならそれで、国民民主の「所得税減税」もつぶれるので、それでOK。
 キャスティングボートをなくせばいい。

 ※ 私が過大評価しているのではなく、過大評価するように維新と立憲が下手を打っている。
Posted by 管理人 at 2024年12月16日 23:52
>※ 現実には、そうする必要はなく、その方針を示す>だけでいい。びびらせればいい。

確かにそれはそうですね。
Posted by カエル at 2024年12月16日 23:56
本当に立憲が国民に対立候補を立て、両社が共倒れし、自民が勝つようなことがあれば、それは自民一強体制への逆戻りです。自民は弱体化した立憲や国民に遠慮することなくやりたい放題です。

一方、脅すだけでは国民は「はいそうですか、では立憲の言うことを聞きます」とはならないでしょう。
Posted by のび at 2024年12月18日 08:54
> 自民一強体制への逆戻り

 それはもう確定していますよ。先の衆院選で自民党が大敗したのは、歴史的に見て特別な事情があったからだ。それで自民が大敗したので、国民の溜飲は下がった。もう満足した。
 だから、次の選挙では、自民は信任されて、ふたたび圧倒的多数を得る。
 その時期は、来年の夏だ。石破が衆院解散して、衆参同日選挙になる。そのとき、裏金問題のことは国民は忘れているので、自民が圧勝する。
 立憲と国民民主が共倒れしてもしなくても、自民が圧勝することには変わりない。
 そもそも、国民民主は立憲の選挙区に候補を立てて、立憲を共倒れさせることに熱中しているのだから、現状だって共倒れはたくさん起きている。立憲は、やられるだけでなくやり返す、ということなのだから、たいして違いはない。

> 脅すだけでは

 脅すだけのわけがないでしょう。言うことを聞かないのなら、当然、実行します。
 有言実行が道理だ。口先だけの有言不実行は国民民主に任せておけ。
Posted by 管理人 at 2024年12月18日 09:30
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