2024年12月14日

◆ 103万円・106万円の余話

  103万円の壁(所得税減税)や、106万円の壁(厚生年金)について、細かな話。

 ──

 103万円の壁(所得税減税)と立憲


 103万円の壁(所得税減税)が話題になっているが、国民民主の方針ばかりが報道されて、立憲はまったく蚊帳の外だ。立憲は何もしていないと国民に見なされている。情けない。みっともない。
 しかしながら、政策としては、立憲の方針が最も妥当だ。それはこうだ。
 「給付付き税額控除」
 記事はこちらだ。
  → 立憲民主党、衆議院選挙へ公約 給付付き税額控除で「分厚い中間層」 - 日本経済新聞
 党の公式はこれだ。
  具体的には、中低所得者世帯が負担する消費税の半額相当を、所得税の額から控除し、控除しきれない分は給付することにより、負担した消費税の一部を実質的に還付する仕組みとしています。なお、この控除額(給付額)は、一定の所得以上からは逓減するものとすることで、消費税の負担割合が相対的に高くなる中低所得者世帯に対象を限定しています。
( → 「新しい財政政策」の実現に向けて「消費税還付法案」を衆院に提出 - 立憲民主党

 これは、実質的には「一律給付」と同党の効果を持つ。だから、その意味では、前項で述べた「一律給付」と同様で、非常に優秀な方式なのだ。だから、これを政府に要求するべきだったし、これを国民に訴えるべきだった。

 しかしながら、この方式には大きな難点がある。
  ・ 結果は一律給付と同等なので、その点は問題ない。
  ・ 納税や減税の計算が一人一人個別に異なるので、莫大な手間がかかる。無駄の極み。
  ・ 方式が複雑すぎて、たいていの人は理解しがたい。


 結局、立憲の方式を聞いても、たいていの人は理解できないし、それで得をするとも思わない。そんな方式を出しても、意味がないのだ。
 国民民主の方式は「詐欺師」と言えるが、立憲の方式は「愚の骨頂」と言える。やった場合の結果は妥当なのだが、やる手順が最悪だし、やり方の PR も下手すぎる。要するに、次の差がある。
  ・ 国民民主 …… 頭の良い悪党(詐欺師)
  ・ 立憲   …… 頭の悪い善人(愚か者)


 どっちもダメだ。
 では、どうすればいいのか? それについては、前項で示したとおり。
 「一律減税にすればいい。国民全員に同額(一部は半額)を均等に給付すればいい」
 となる。かつての 10万円給付と同様だ。
 そもそも、そのためにこそ、マイナンバーの銀行口座を設定したのだ。そのための制度があるのだから、その制度を使えばいい。これなら、手間は口座振り込み費だけで済む。一人一人で異なる莫大な計算は一切不要である。ごく簡単だ。手間はゼロだと言ってもいい。

 ※ 一方、国民民主の方式も、立憲の方式も、一人一人で異なる莫大な計算が必要となる。大いなる無駄だ。日本中で企業の経理担当者が泣くよ。

 106万円の壁(厚生年金)と専業主婦


 専業主婦は厚生年金の保険料を払っていないのに、あとで年金をもらえる。「これは不公正だ」ということから、「これを廃止せよ」という企業と労組の声が上がった。
  → 経済同友会・連合が年金「第3号被保険者制度」廃止要望で一致 - 日本経済新聞

 しかるに現実には、「当面は廃止を延期」と決まった。
  → 専業主婦優遇「3号」廃止見送り 厚労省、次期年金制度改革で | 毎日新聞

 この問題をどう考えるか? 私の考えを言おう。
 (1) 原理的には、廃止するのが筋だ。保険料を払っていなければ、年金をもらえないのは当然である。
 (2) しかし単純に廃止すると、その額を政府が懐に入れてしまうことになる。国民全体が金を奪われることになる。それでは不公正だ。だから、その額の分を、国民に還元する必要がある。つまり、(専業主婦以外の)受給者全体への支給を増やすか、保険料を下げる必要がある。
 (3) 専業主婦には、何らかの補償措置が必要となる。なぜなら、これまでは厚生年金への加入を禁止してきたからだ。「厚生年金の年金料を払うべきだったのに、払わなかった」というのなら、年金を受給できないのも仕方がない。しかしながら現実には、「専業主婦が厚生年金に加入することを禁止する」という制度になっていた。政府が「年金制度に加入することは禁止」という方針を取ったのに、「年金制度に加入していないから年金を払わない」というのは、滅茶苦茶すぎる。ゆえに、何らかの補償措置が必要だ。(たとえば、既存加入者については、従来の半額だけを払う。新規加入者については、厚生年金への加入を認める。この件は、後述する。)

 ──

 すぐ上では、こう述べた。
 「新規加入者については、厚生年金への加入を認める」
 これは、次のことを意味する。
 「現行では 106万円以下の所得では、厚生年金への加入を認めない。これを改めて、106万円以下の所得でも厚生年金への加入を認める。認めるというよりは、義務づける。年収 20万円ぐらいを減として、これより高い所得を持つ全員に、厚生年金の年金料の支払いを義務づける」

 このような所得調査は、手間がかかるので、昔ならば大変だった。しかし今はマイナバーがある。だから所得の捕捉は容易である。そこで、所得を捕捉して、年金料の納付を義務づければいい。これによって国民のほぼ全員が厚生年金に加入するようになる。(子供を除く。)

 ──

 なお、現行制度では、「低所得者は厚生年金に加入することは禁止」となっている。加入したくても、加入は禁止なのだ。このことは、AIの回答でもわかる。
 Felo の回答

  厚生年金保険料は、標準報酬月額に基づいて計算されます。2024年の時点で、標準報酬月額の下限は88,000円です。このため、月収が88,000円未満の場合、厚生年金に加入することはできません。
 年収が88,000円×12ヶ月=1,056,000円未満の場合、厚生年金保険料の納入義務は発生しません。つまり、年収がこの金額を下回る場合、厚生年金に加入することができず、保険料の納入も必要ありません。

 ちなみに、103万円の壁については、こうなる。
 日本における所得税の最低課税所得額は、給与所得者の場合、年収103万円です。この金額は、基礎控除48万円と給与所得控除55万円を合計した額です。具体的には、年収が103万円以下であれば、課税所得がゼロとなり、所得税は発生しません。

 以上が現状の制度だ。
 
 ──

 実を言うと、さらに補足することがある。
 「現行制度では、少額の所得があるだけでも、いきなり多額の保険料の納付を要求される。それは国民保険料という基礎分である。これは頭割りで、かなりの高額を要求される。そこで、この分を廃止して、働いた時間に比例して納付するようにすればいい」

 現行の年金制度では、国民年金という基礎部分は頭割り方式となっていて、これが均等の年金料となるので、低所得者には負担が重い。そこで、この部分を、国庫負担にして、消費税の増額でまかなうといいだろう。
 一方で、所得に比例する部分は、所得に比例する年金料でまかなえばいい。
 このように二本立てにすることは、すでに各所で提案されているので、私としても支持する。

 AIに質問したところ、次の回答を得た。
  → https://x.gd/zg9sq
 この方式を取ると、消費税は 12% になるそうだ。その分、社会保険料は引き下げられるのだから、その方が好ましい、と言えるだろう。
 
 ちなみに、厚生年金の保険料の支払額の最少額は、最低所得の月額 88000円についての分が 8,052円。基礎年金の分が 16,980円。その合計額を支払うことになる。低所得者の場合、基礎年金の支払額が大きく のしかかる。(特に短時間労働者はそうだ。)



 [ 付記1 ]
 上のことからわかることがある。こうだ。
 「主婦を優遇するのを廃止するのでなく、逆に、主婦以外の全員を主婦と同じように優遇すればいい」
 つまり、「あいつだけ得するのはズルい」と言って、その方式を廃止するのでなく、あいつ以外の全員も、その方式を適用すればいい。
 「年金料を払わなくても年金をもらえる」というのが、主婦に適用されるのなら、主婦以外の全員が、年金料を払わなくても年金をもらえるようにすればいい。特に、基礎年金について。
 こうすれば、問題は丸く収まる。なぜなら、103万円の壁を越えても、基礎年金の年金料を払うわけではないから、年金料が急激に増えるわけではないからだ。103万円の壁は自動的になくなる。
 基礎年金の分は、年金料でなく消費税でまかなうようにすれば、問題は一挙に解決する。

[ 付記2 ]
 実は、専業主婦がズルをしているというのは、一種の錯覚がある。実はたいしてズルをしていない。

 (1) その分、子育てに貢献しているので、育てた子供があとで年金を払ってくれる。少子化の解消に貢献して、日本という国家を成立させるのに貢献している。一方、専業主婦のいない独身者の家庭(男女とも)では、子育てをしていない。子供がいないので、子供があとで年金を払ってくれることもない。……つまり、専業主婦優遇を廃止すると、子供を産まない独身者を優遇することになるので、日本は少子化の道をまっしぐら。韓国のように出生率が1以下となり、国家は亡国の道をたどるようになる。「専業主婦の優遇をやめて、独身者が優遇されるようになった!」と喜んでいたら、国家そのものが滅びてしまうわけだ。 

 (2) 「いや、独身者だけでなく、共働きの家庭も優遇されるぞ」という反論もありそうだが、それは成立しないようだ。専業主婦の形で、妻が夫の所得に貢献することで、夫が高所得を得るなら、夫が二人分の年金料をいっぱい払うからだ。試算すると、次のようになる。
  ・ 夫が二人分で 1000万円の所得を得て、妻が専業主婦の場合 …… 334万
  ・ 夫婦がそれぞれ 500万円 ずつの所得を得る、共働きの場合 …… 379万

 ※ 出典は右記。→ タマルWeb|イオン銀行

 同じく合計 1000万円の所得があった場合、専業主婦よりも共働きの方がお得なのだ。前者は 334万 をもらえるだけだが、後者は 379万をもらえるからだ。
 つまり、「専業主婦は共働きに比べてズルをしている」ということはないのだ。夫が二人分を稼いで、二人分の年金をもらうのならば、ちゃんと二人分の年金料を払っているのも同然だし、もらえる年金の額は共働きの場合よりも少ない。特に不合理ではないのだ。
 「専業主婦はズルをしている」というのは、一種の やっかみ かもしれないね。まあ、その傾向はあるのだが、言われるほどひどくはないようだ。
 それよりは、子育ての貢献を考えた方がいいね。(1) のことからして、専業主婦を虐待することばかり考えていると、国家が少子化で滅亡する。馬鹿丸出しだ。( 出生率が1以下の韓国 みたいだ。)
 


posted by 管理人 at 20:51 | Comment(3) | 一般(雑学)6 | 更新情報をチェックする
この記事へのコメント
 たびたびすみません。

> では、どうすればいいのか? それについては、前項で示したとおり。
 「一律減税にすればいい。国民全員に同額(一部は半額)を均等に給付すればいい」
 となる。かつての 10万円減税と同様だ。

⇒ かつての 10万円減税というところは、かつての 10万円給付ですね。
Posted by かわっこだっこ at 2024年12月14日 22:11
 ご指摘ありがとうございました。修正しました。
Posted by 管理人 at 2024年12月14日 22:23
 最後に [ 付記1 ][ 付記2 ] を加筆しました。
 専業主婦の優遇についての話。
Posted by 管理人 at 2024年12月15日 08:36
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