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以下では章分けをする。目次は次の通り。
・ 物価上昇が起こる
・ 物価上昇を抑止せよ
・ 金持ちばかり得をする
・ 均等給付をせよ
・ 社会保険料を下げよ
物価上昇が起こる
国民民主の案は、「所得税の減税」だが、財源を考えていない。だが、財源なしで所得税の減税をすれば、減税をした分、物価が上昇する。たとえば、減税で所得が5%増えても、国民の生産量は同じなので、買える物が5%増えるのではなく、物の価格が5%上がるだけだ。
わかりやすく言うと、お札をたくさん刷って国民に配ると、財布に入る紙幣の量が増えるだけだ。お札をたくさん刷ったからといって、自動車や食料の生産量が増えるのではないので、自動車や食料をたくさんもらえるわけではない。勘違いしないように。単に物価上昇が起こるだけだ。
このことを隠して、だましているのが、国民民主党だ。「減税でお得になりますよ」と。本当は「減税で物価上昇が起こるだけですよ」と唱えるべきなのに。
※ 国民民主が財源を考えていないことは、下記記事で示されている。
→ 国民民主、財源確保は「政府・与党の責任」 「103万円の壁」解消へ自公と強気の協議 - 産経
※ 「減税をすれば景気が回復するので問題ない」という主張もある。なるほど、不況期には、それが成立する。減税によって生産量が拡大する。なぜなら遊休設備と失業者が稼働するからだ。しかるに、今は不況ではなく、インフレだ。遊休設備も失業者もいない。減税すると、遊んでいた設備や人員が稼働するようになる(生産量が増える)のではなく、生産量は変わらないまま、単に物価だけが上昇する。……つまり、不況期とインフレ期では、減税の効果が全く異なるのだ。この点を理解する必要がある。
※ 物価上昇がひどいことについては、下記記事がある。
→ 日本のエンゲル係数、G7で1位 時短優先で割高でも総菜 チャートは語る - 日本経済新聞
→ 賃金を上回るインフレが起きすぎてて、日本人の平均体重が減るレベルのグラフに驚愕 - Togetter
※ ちなみに、近所のパン屋では、フランスパンのバゲットの販売が中止になった。高くなりすぎて、売れないせいらしい。かわりにハーフサイズのバゲットを売るようになった。価格は以前のバゲットと大差ない。量だけ半分になった。大幅値上げ。かくてバゲットを買えなくなった。これまで何十年も買えたものが、今や買えなくなった。日本はかくも貧しくなった。
→ フランスパンの香り: Open ブログ
できたてのフランスパンの香りは、とてもいい。香りを嗅ぐと、幸福な感じになれる。
このような幸福は、今や失われてしまった。
( まあ、パン屋を変えれば、何とかなるが、選択肢が減ってしまった。)
物価上昇を抑止せよ
現状の問題は何か? 賃金が上がらないことか? いや、それは民間の問題だから、政府はどうにもできない。問題は、賃金が上がらないことではなく、物価が上昇することだ。そのせいで、実質賃金の低下が生じている。このことは、前に別項で述べた。
→ 日本の実質賃金上昇率: Open ブログ
「実質賃金がマイナスだ」という状況が、ずっと続いている。これこそが生活困窮化の真の理由だ。
しかも、上のグラフでは、生鮮食料品の物価上昇率を含んでいない。生鮮食料品の物価上昇も含めると、実質賃金の低下はさらにひどくなる。
※ ただし、政府の統計だと、消費者物価上昇率は、生鮮食品を含んでも含まなくても、どちらも 2.3% である。(2024年10月)。……この数字は、あまりにも低すぎる。おかしいね。一方で、食料品の値上げは 17%になるという報道もある。これが生活実感に近い。( → https://x.gd/Gmknk ) どうも、政府の公称値は、「大本営発表」みたいに、信頼できない嘘数値であるようだ。(その理由については、AIに質問したところ、どうも調査方法のせいらしいが、はっきりとしない。)
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さて。問題が物価上昇であるとしたら、解決策もわかる。それは、(国民民主の言うように)「減税でお金を配ること」ではなく、「物価上昇を抑止すること」である。これこそが、実質賃金を高めるからだ。
つまり、なすべきことは、「減税して手取りを増やすこと」ではなく、「物価上昇を抑止して実質賃金を上げること」なのだ。ここを間違えないようにしよう。
では、物価上昇を抑止するには、どうすればいいか? その点は、すでに別項で述べた。
その方法は? 1ドル=152円 程度の円安を是正して、1ドル=125円 に誘導します。これによって輸入品の価格が 18% も下落するので、国内物価も 10%安程度に導くことが可能です。
では、いかにして円安を是正するか? それは金利を引き上げることで実現できます。
( → 私の選挙公約: Open ブログ )
物価を下げるには、円安を円高に誘導すればいい。そのためには、金利を引き上げればいい。これによって、輸入品の物価を下げることができる。
これに加えて、「関税の引き下げ」「輸入の自由化」を併用すれば、さらに大幅に価格を下げることができる。小麦や米の輸入を進めることで、米・パン・うどん・インスタントラーメンなどを、すべて大幅に値下げすることが可能となる。
こうして、物価上昇を解消することができれば、実質賃金の上昇が起こるので、国民は得をする。これが正解だ。(ただの所得税減税は不正解だ。)
※ 現実にはどうかというと、物価上昇を止めることができない。そのせいで、国民生活は苦しくなる。特に、食料品の値上げがひどいが、他に、原料価格の値上げに苦しむ企業も多い。製造業も販売業も苦しんでいる。
※ たとえば、スーパーは値上げを圧縮しているせいで、利幅が縮小して、経営が悪化している。
→ 大手スーパーで減益、赤字が相次ぐ異常事態の深層 メーカーと消費者の「板挟み」で苦しい経営に | 東洋経済
この記事を見て、減益は大手スーパーだけかと思ったが、違った。調べると、中規模の食品スーパーも大幅減益だ。原因は構造的だと言える。明らかに円安による輸入物価の高騰が理由だ。それを売価に転嫁できないわけだ。(だから将来は値上げが不可避である。というか、すでにスーパーの値上げは始まっている。)
※ この状況を知って、「へえ」と思うだけではダメだ。このようなことは長続きはしない。スーパーはそのうち値上げをする。消費者はだんだんと損をする。たとえば、「イオンでは値引きの5割引がなくなった」という報告がある。
→ はてなブックマーク
また、イオンでは「無料の氷サービス」が大幅に縮小して、提供する氷の量が一挙に5分の1ぐらいに減らされた。今は冬だからいいが、夏になったら氷不足のせいで、生ものが腐りかねない。やばい。イオンが氷をケチるせいで、食中毒が大量発生しかねない。貧すれば鈍す。(これほどにも日本は貧しくなったのか。哀れ。)
※ 食料品の増加で、何とか対策はできないか? かろうじて対策の方法を示すと……
・ 野菜では、豆苗がお薦めだ。これは値上げしていない。いまだに 98円で買える。
・ 炭水化物では、お餅を探すといい。今はまだ、値上げ前の在庫品が売られることもある。それなら、比較的お買い得である。1kg 500円なら、米よりも安いかもね。
(しかしまあ、哀れだな。日本は貧しくなった。米もまともに買えないほどだ。)
金持ちばかり得をする
所得税の減税という案には、別の難点もある。同じように金をばらまくにしても、もらえる額が人によって異なる。金持ちばかりが得をして、低所得者は得をしない。
この件については、次の試算もある。
→ 国民案なら減税7.6兆円 「年収の壁」で政府試算 | 共同通信
このように高所得者ばかりが得をすることは、所得分布を見れば推察できる。
出典:厚生労働省
中央値は 427万円であり、これが国民の中央だ。したがって国民の半数は 10万円以下しかもらえない。一方で、残りの半数は多額をもらう。金持ちがたっぷりと多くの減税をもらうから、残りの大多数は(指をくわえながら)金を奪われるわけだ。
国民の多くは「減税で金をもらえる」と喜んでいるが、実は、金をたんまりともらえるのは金持ちであって、大多数の国民は小額の金しかもらえないのだ。それでも「もらえる、もらえる」と大喜び。目先の金に喜ぶのは、猿も同然だ。(もっとひどい。)
均等給付をせよ
では、どうすればいいか? 簡単だ。「一律減税」の形にすればいい。仮に納税者全体ならば、一人あたり 20万円ぐらいになりそうだ。納税者でなく国民全体ならば、一人あたり 10万円ぐらいになりそうだ。(子供を含めるか否かで、また額は変わるが。年金受給者を除外するか、半額にするかで、また額は変わるが。)
私のお薦めは、「消費税の軽減税率を廃止するのと引き替えに、均等額で一律給付する」という方針だ。ただし 65歳以上(または年収 103万円以下)は半額でもいい。
※ 103万円以下の人は、もともと税金をまともに払っていないのだから、給付をもらえなくても仕方ない。納税していなければ、納税の還付金も得られない。ただし、全くもらえないのも可哀想だから、半額をもらえるようにする。(物価上昇の分。)
※ この方式だと、納税者1人あたり 10万円、子供や高齢者やパートは5万円、総額で 7.6兆円……というふうになる。本人 10万円と、妻と子供1人(5万円+5万円)の合計で、 20万円。国民民主案の倍額をもらえる計算になる。
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さて。給付の額はどれほどにするべきか?
国民民主の案では、減税額の総額は 7.6兆円に達する。これはいくら何でも巨額すぎるだろう。
今回は、物価上昇で生活が苦しくなった分を補填するだけでいいのであって、やたらと巨額の金をばらまけばいいというものではない。国民民主党の詐欺的なばらまき政策に協調する必要はない。そんなことをやり過ぎると、物価上昇の弊害が来るので、かえって有害だ。(前出)
※ つまり、分配方式は先の方式でいいが、規模は縮小した方がいい、ということ。財源しだいだ。
社会保険料を下げよ
実は、所得税の減税よりも、もっと大切なことがある。それは、社会保険料の引き下げだ。
なぜなら、現行制度では、低所得者の社会保険料がやたらと高額だからだ。所得税に比べても、社会保険料やたらと高額だ。
実際、それで困っている人も多い。下記の参考記事ある。低所得者が多額の社会保険料を取られる例。
→ 雑誌に載ってた「41歳女性、派遣社員、手取り年収190万円」の家計簿が自分に近くて「あなたを詳しく知りたい、こういう人のを見たい」 - Togetter [トゥギャッター]
このことは、一般論としても成立する。前にも述べたとおり。( → 少子化の対策 .5(補足): Open ブログ )
出典:Twitter
図を見ればわかるように、低所得者では、所得税の占める割合はごくわずかだ。このわずかな所得税を、たとえゼロにしても、還付される額はごくわずかだ。一方で、高所得者では、所得税の占める割合が高い。少し税率を下げただけでも、多大な額の還付を受けることになる。
つまり、所得税の占める割合が異なるがゆえに、所得税を減税すると、低所得者では効果が小さく、高所得者では効果が大きい。
逆に、低所得者では社会保険料の負担比率が大きく、高所得者では社会保険料の負担比率が小さい。だから、社会保険料の負担比率を引き下げることこそ、負担の公平化のためには有益なのだ。先に「一律給付」というアイデアを示したが、それと同じぐらい効果的な方法が「社会保険料の引き下げ」なのだ。
なお、そのための財源としては、消費税を上げてもいい。
「消費税を 10% から 15%または 20% に引き上げるが、その分、社会保険料を大幅に引き下げる」
というのは、十分に成立する案だ。
こういうふうに「消費税の引き上げ」という案を出すと、猿のような国民は大反対するだろう。しかし、猿よりも知性のある人ならば、ちゃんとわかるはずだ。「支出時に払う金は増えるが、社会保険料の引き下げで手取りの額が増えるから、差し引きしてお得だね。少なくとも、高所得者以外では、みんなお得だね」と。
国民が猿よりも知性があるなら、消費税の引き上げに賛成するだろう。しかし現実には、国民は猿よりも知性がない。だから、あえて損をするために、「消費税の引き上げには大反対」と騒ぐはずだ。そして、「所得税の減税に賛成」と叫ぶはずだ。……猿よりも知性がないがゆえに。
買い主は言う。「朝に三つ、夕に四つ」(計七つ)
猿たちは叫ぶ。「朝に四つ、夕に三つ」(計七つ)
日本人は騒ぐ。「朝に五つ、夕にゼロ」(計五つ)
目先の手取りさえ増えればいい、もらえる総量が減ってもいい、と思う。それが日本人なのだ。総額の損得を計算できず、目先の手取りだけで考える。
※ そこを利用して、うまくだましたのが、国民民主だ。愚かな国民をだまして、自分たちが得をする。(国民民主のせいで、国民 貧す。)
日本は好況によるインフレで物価が上がったわけではなく、外的要因(@日本以外の諸外国は好況→マイルドインフレを継続していること、A円安による輸入価格の上昇、など)により世界の物価上昇傾向に巻き込まれているために物価が上がっている、という認識の方がしっくりくると思います。
社会保険料低減は私も大賛成です。
所得税よりも負担が格段に重いですからね。
しかし、就職氷河期世代がいまだに低賃金のために少子化が促進されてしまいました。もう彼らに子をもうけることは不可能なので、社会保険料を払ってくれる将来の日本人が増えていくことは絶望的です。
これからは移民受け入れも行いつつ、日本国内での働き手を増やし、彼らにも社会保険料を支払ってもらわないと日本の社会保障は維持できないのではないかと考えてしまいます。
長々と失礼しました。