──
朝日新聞の記事から。
内閣府の宇宙政策委員会は9日、宇宙基本計画工程表に「プラネタリーディフェンス(地球防衛)」を新たに盛り込む案を大筋で了承。年内にも宇宙開発戦略本部(本部長・石破茂首相)で正式決定する見通しだ。
2013年にはロシア上空で大きさ約17メートルの隕石(いんせき)が爆発し、1500人以上がけがをした。
政府は今回の工程表改訂案で、29年4月13日に約3万2千キロの距離まで近づく小惑星アポフィス(直径約340メートル)への対応を想定する。
米航空宇宙局(NASA)などでは、地球接近天体(NEO)を早期発見・追跡し、大きさなどを調べ、回避策などを検討する地球防衛研究が進む。
日本独自でも、宇宙航空研究開発機構(JAXA)や千葉工業大が共同で開発する小惑星探査衛星「デスティニー・プラス」をアポフィスへ接近させて、撮影する案が検討されているという。
( → 小惑星の接近に備えよ 「地球防衛」日本でも宇宙計画工程表に明記へ:朝日新聞デジタル )
地球防衛計画! カッコいい! ……と思えそうだが、これに SF 以上の意味があるのだろうか? 私の判定を言えば、こうだ。
「これはまったくの SF であり、実用的な意味は皆無である。やるべきことを根本的に取り違えている、ゴミ計画だ」
理由は二つ。
(1) 約3万2千キロの距離まで近づく小惑星アポフィス(直径約340メートル)への対応は、まったく意味がない。衝突する可能性は皆無なのだから、これを監視するために宇宙探査機を飛ばしても、何の意味もない。どうせ手も足も出せないのだから、観測する意味もない。つまり、今回の地球防衛計画は、効用がゼロである。やってもやらなくても、結果の違いは皆無である。やるだけ無駄。SF と同じだ。
(2) 2013年にはロシア上空で大きさ約17メートルの隕石、という事例がある。これはなぜ、防げなかったのか? 科学的には現在とほぼ同レベルの水準にあるのに、事前に予測することも検知することもできなかったが、それはなぜか? ……ここを突き止めるのが先決だ。その上で、このときの失敗の再発を防ぐことこそ、喫緊の課題だ。
──
以上をまとめよう。
・ 小惑星アポフィス(直径約340メートル)への対応は、意味がない。
・ 別の小惑星(直径 20メートルレベル)への対応は、是非とも必要である。なのに現状では、何もしない。
要するに、現状はこうだ。
「やらなくてもいい無駄なことばかりをやっていて、肝心のやるべきことを何もやらずにサボっている」
その結果は?
「どっちみち被害の生じないアポフィスへの対策ばかりに目を奪われていて、現実に起こる別の小惑星への被害を怠っている」
これは要するに、「詐欺師にだまされる」というのと同様である。政府の唱える「地球防衛計画」という詐欺計画に引っかかるせいで、地球全体が小惑星衝突の危機にさらされるわけだ。
ちなみに、2013年にはロシア上空で大きさ約17メートルの隕石、という事例があったが、これはほんの少し軌道がずれていただけで、地表に衝突していたはずで、そのときには壊滅的な被害が生じたはずだ。
隕石が仮に分裂せずに秒速15kmで地表まで落下した場合に変換される運動エネルギーは約1.1兆J (1.1TJ) であり、これによって地表には直径100mのクレーターが形成され、周辺も衝撃波で吹き飛ばされる。……周辺は壊滅的な被害。
隕石の元の質量は1.3万 トン(不確かさは2倍程度)で直径は15〜25 mあったとされる。
今回の隕石の落下では、事前に小惑星としての観測はなされていなかった。このサイズの小惑星は元々観測が難しい上に、地球に接近した側は当時日中であったため、事前の観測による落下の把握は極めて困難であった。
( → 2013年チェリャビンスク州の隕石落下 - Wikipedia )
直径は15〜25 m の小惑星と言えば、決して観測不可能なサイズではない。しかしながら、地球の軌道の内側にあると、太陽の光を浴びない陰に入ってしまう。そのせいで、発見が非常に困難となる。(なぜなら、可視光線では見えないからだ。)
しかし、手も足も出せないで何もしないとしたら、ふたたび同じようなことが起こるかもしれない。そのときは、軌道が少しズレて、地球上に大被害が起こるかもしれない。
そいつはまずい。困った。どうする?
そこで、困ったときの Openブログ。うまい案を出そう。こうだ。
「地球の内側の軌道を周回する、観測衛星を飛ばして、地球に接近する小惑星を漏れなく観測する。また、小惑星をレーダーの電波で検知する技術が開発されているので、ここでも小惑星を検知する。可視光線では見えなくても、電波を使えば見えるわけだ。……こうして事前に小惑星を検知した上で、近づいた小惑星をミサイルで破壊する。直径 20メートルぐらいの小惑星ならば、通常弾頭のミサイルで足りるだろう。(核弾頭は不要だろう。)」
なお、小惑星があまりにもデカいと、核ミサイルで破壊した場合、たくさんの巨大断片が広範に発生するので、被害はかえって増えてしまう。それはまずい。
しかしながら、直径 20メートルぐらいの小惑星ならば、破壊すれば、断片は直径5メートル以下になる。その場合、隕石のほとんどは大気中で燃え尽きるはずだ。(実際にそうなっているそうだ。)
隕石は、今回よりやや小ぶりなもの(落下前の直径3m〜7m)はほぼ毎日落下しているが、そのほとんどは大気圏で燃え尽きるか、人がいない地域や海上に落下している。これより大きいと見られる隕石が人口密集地帯の近くに落下するのは珍しい。( Wikipedia )
──
結論。
政府の地球防衛計画は、やらなくてもいい無駄なことばかりをやっていて、肝心のやるべきことを何もやらずにサボっている。とんだ見当違いだから、是正するべし。
[ 付記 ]
Q: ミサイルで破壊できないような巨大な小惑星には、どうするか?
A: 小惑星の軌道を変えて、地球に衝突しないようにすればいい。巨大な惑星なら、早期発見が可能なので、事前に対策が可能となる。たとえば、速度を 0.1% 遅くさせるだけでも、1年後には距離の差が大きく変動する。それゆえ、衝突のタイミングをずらして、衝突を回避できる。
【 追記 】
2013年にロシア上空で大きさ約17メートルの隕石が生じたが、このときの隕石は鉄隕石であったようだ。
組成は鉄隕石に近い、鉄などの硬い物質で構成されていると考えられている。
( → 2013年チェリャビンスク州の隕石落下 - Wikipedia )
このような隕石は(花崗岩に比べて)非常に固いので、単に通常弾頭のミサイルをぶつけただけでは、うまく破壊しかねるかもしれない。
では、核弾頭を使うべきか? それも一案だ。小型の核弾頭は、現時点では ICBM 用に W78弾頭が配備されている。これは直径 54cm、長さ 181cm、重量は 350kg 前後である。しかしこれはどうも大げさすぎる。
私の提案は、こうだ。
映画の「トップガン マーヴェリック」の爆撃方法にならって、二段攻撃とする。1発目で穴をあけてから、2発目で穴の奥で大爆弾を爆発させる。
具体的には、こうだ。
・ 1発目は超高速の劣化ウラン弾をぶつける。これで深い穴をあける。
・ 2発目は、その穴をめがけて、巨大な通常爆弾を落とす。精密誘導で。
このうち、「精密誘導」のところが問題だ。人間がいればいいが、人間がいないと、自動化する必要がある。ここをうまく開発する必要がありそうだ。
「それだけやっても完全な破壊は無理かも」という懸念もありそうだ。しかし、大丈夫。完全な破壊はできなくてもいい。罅割れるだけで十分だ。罅割れたなら、あとは大気圏突入後に、罅があちこちで拡大して、バラバラになる。それで片付く。
※ その意味でも、穴の位置が大事だ。進行方向の頭部(最前部)に穴をあける必要がある。その裏側では、意味がない。穴が最前部にあるからこそ、そこから罅が広がって、最終的にはバラバラになるのだ。
ミサイル爆撃の方法。
日々落ちてくる、あるいは掠めていく隕石&小惑星は観測できたり出来なかったり、事後的にわかったり、まだまだ基礎研究の域を出ないものと思います。
アポフィスを題材にして研究を前進させようということであれば、否定されるべきものでもないような。
「地球防衛計画」という題目が大げさ、時期尚早、費用対効果、実効性など、批判を受けそうな要素はたくさんありそうですが。
管理人様追記の策を検討するためにも、実際に近接してくるあらかじめ軌道のわかっている小惑星を間近で観測して、どうしたら破壊or軌道変更できるかという検討の材料を得る必要があるものと思います。
「しまった! あのとき Openブログのアイデアを聞いておけば、こんなに大惨事にならなくて済んだのに」
と思っても、後の祭り。
福島事故でも何でも、災害が起こったあとで騒ぐのが、一般人だ。
災害が起こる前に予防しようというのが、Openブログだ。